【対談】Tetsu (D’ERLANGER) × 逹瑯 (MUCC)が語る<V系って知ってる?>、「歴史やラインがあることが素晴らしい」

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新イベント<V系って知ってる? powered by MAVERICK DC GROUP>が12月27日、日本武道館にて開催される。ヴィジュアルロックに敬意を表して行われる同イベントには、DEZERT、キズ、アルルカン、ムック、D'ERLANGER、girugameshが参加するほか、“V系Respect Super Session”と題して、蜉蝣、LUNA SEA、GLAY、DIR EN GREY、BUCK-TICK、シド、ZI:KILL、ムック、hideといったアーティストを尊び敬う9つのセッションバンドが出演。セッションバンドを構成する参加メンバーの豪華さも話題だ。

◆Tetsu (D’ERLANGER) × 逹瑯 (MUCC) 画像

イベントタイトルの<V系って知ってる?>は2022年6月、SHIBUYA109の巨大ボードにDEZERT千秋の写真とともに掲出されたキャッチコピーであり、当時このワードが数日間トレンド入り。V系アーティストやファンがV系について改めて語るハッシュタグが飛び交った。そして開催される<V系って知ってる? powered by MAVERICK DC GROUP>はV系シーンの次世代を担うDEZERTよりSORAがオーガナイザーを務め、“V系の再興”をテーマにしたイベントになることが明かされている。

BARKSは同イベント出演者から、D‘ERLANGERのTetsuとMUCCの逹瑯を招いて対談を実施した。“V系”という呼び名がなかった時代から活動し、後のV系シーン形成に多大な影響を与えたD‘ERLANGER。「V系バンドがやりたかった」とバンド結成当時を振り返って公言するMUCC。世代もV系に対する捉え方も異なるTetsuと逹瑯のトークセッションに浮かび上がったのは、V系の歴史であり、その本質だった。若いバンドマンへのアドバイスや自身のスタンスも明確となった対談をお届けしたい。


   ◆   ◆   ◆

■僕らの時代はPoserとNo Poserって言葉だった──Tetsu
■V系やってますと言うことに躊躇する自分がいた──逹瑯

──12月27日に東京・日本武道館で開催されるイベント<V系って知ってる?>に向けて、D‘ERLANGERのTetsuさんとMUCCの逹瑯さんに“V系”をテーマに語っていただければと思います。まず最初にお聞きしたいのですが、D’ERLANGERはV系、ヴィジュアル系ですか?

Tetsu:それをね、イベント当日、聞いて回ろうかと思ってるんですよ。今回<V系って知ってる?>っていうタイトルだよね?

逹瑯:はい。

Tetsu:俺自身、V系って知ってるような知らないような……MUCCはV系なの?

逹瑯:うちはヴィジュアル系、V系です。“ヴィジュアル系のバンドをやりたい”と思って始めたバンドなので、ヴィジュアル系です。

Tetsu:じゃあ、D‘ERLANGERはどうなんだろう?

逹瑯:D‘ERLANGER自体がヴィジュアル系かどうかは分かりませんけど、うちら世代で「ヴィジュアル系のバンドがやりたい」って言って始めた人たちがみんな好きなバンドでした。

Tetsu:じゃあヴィジュアル系ですね(笑)。

逹瑯:うちら世代のヴィジュアル系のバンドマンは、D‘ERLANGERもそうなんですけど、みんなマリリン・マンソンが好きだったりするんですよ。「じゃあ、マリリン・マンソンがヴィジュアル系ですか?」って言われると、本人はそんな自覚はないだろうしね。そんなふうに、後進の人たちが影響を受けたバンドっていうイメージですね、D’ERLANGERは。


▲D’ERLANGER

──D‘ERLANGERが結成された頃はまだ“ヴィジュアル系”っていう言葉はなかったですよね?

Tetsu:僕らの時代はまだ“ヴィジュアル系”っていう言葉はなくて、“Poser(ポーザー)”と“No Poser(ノーポーザー)”って言葉があったんです。ざっくり言うとメイクをしてるのは“Poser”。それで言うとメタリカは“No Poser”だったんですよ。それこそ僕がSAVER TIGERをやってた時に、SAVER TIGERって独特なバンドで、メイクをしたくないチームもいれば、メイクが大好きなチームもいたりしたようなバンドだったんで、よくバンド内で“Poser”と“No Poser”の話をしてたんですね。当時、神楽坂EXPLOSIONや目黒鹿鳴館っていうライヴハウスに、全然メイクしないで、ロックTシャツを着て、長髪のパーマ頭で、汗びっしょりになりながらやってるようなごっつい感じの人たちがいて。「メイクしてないという点では“No Poser”なんだけど、決まったスタイルでやっているっていうことは、それはもう“Poser”なんじゃない?」っていうような議論をよくしてたんですよ。もう30年ぐらい前だけど、当時はそういう話が白熱してましたね。

逹瑯:手法とかスタイルっていろいろとあると思うんですけど、ステージに立つ時、見た目にまったく気を遣ってないバンドっていませんよね。そういうスタイルが好きで敢えてやってるわけだから、それって好みの話で、みんな自分が思うカッコいいロックスター像でステージに立っているんですよ。だからヴィジュアル系の人たちは、メイクをして黒い服を着てカッコよくしている妖艶な人たち、そういうスタイルで音楽をやっている人たちに憧れてバンドを始めてるから、そうなるわけで。だからヴィジュアル系か?そうじゃないか?でガッツリ分けちゃうけど、その根本は好きなご飯を食べるのと一緒。こだわってないミュージシャンはいないと思うんですよね。ヴィジュアル系っていう言葉がよく出てくるようになったのは、LUNA SEAや黒夢以降ですよね。


▲Tetsu (D’ERLANGER)

──先日、cali≠gariの方と話をしていた時に、「メイクをしてロックをするというのは、ロック史においてとても古典的なことだと思う」とおっしゃっていて、確かにそうだなと思ったんです。

Tetsu:そうですね。振り返って、自分がなぜ化粧をしたのかというと、やっぱり僕は44MAGNUMのローディーだったからで。彼らがステージに立つ時に当たり前にメイクをしていたし、僕にとってもそれが当たり前でしたから。そこに選択の余地はなかったんで、化粧に関してはそこなのかな。でも改めてヴィジュアル系か?って聞かれると、その言葉自体がなかったんで、クエスチョンなんですけどね。

逹瑯:それに今は、ヴィジュアル系の中でも細分化されるじゃないですか。D‘ERLANGERが活動を始めた頃にヴィジュアル系っていう言葉がなかったように、うちらがcali≠gariのローディーをやってた頃は“密室系”っていう言葉はまだなかったんですよ。そういう仲間とか、同じ匂いのする人たちが増えてくると、その系統で括るようになりますよね。ラーメン二郎が出来た頃は“二郎系”なんて言葉がなかったのと一緒で(笑)。

Tetsu:はははは。そうだね。

逹瑯:強烈な個性が突然のように出てきて、“それがカッコいい”ってフォロワーが増えてまとまってくると、ブランド化されるのかなっていう気はしますね。

Tetsu:海外とかでも今でこそ認識されてるけど、その昔はV系って説明するのが難しかったんですよね。「ヴィジュアルロックって何なんだい?」って海外の方から聞かれても、「ロックはロックだよ」って感じだったし。

逹瑯:ヴィジュアル系は音楽のジャンルじゃないですからね。


▲MUCC

──2016年に開催された<VISUAL JAPAN SUMMIT 2016>のステージでは、逹瑯さんがMCを務めてましたよね。そのとき、「いつからヴィジュアル系はカッコ悪いものになったんだろう」「ファンやミュージシャンがヴィジュアル系をやってるって胸張って言えるような未来にしたい」っていうようなことをおっしゃっていて、それがすごく印象に残っているんですよ。

逹瑯:あれはイベント全体の司会をジョージさんと一緒に担当して。MUCCの出番は最終日だったから、いろんなバンドを3日間観ていたんですけど、煽り系やイケイケのMCをする人たちばっかりだったんで。だからここはしっとりと、ちゃんと語る系のMCをやったほうが勝てる気がすると思って(笑)。

Tetsu:そういうことばっかり考えてるんですよ、逹瑯は(笑)。昔、「渋谷公会堂で、寄せ集めメンバーでバンドするからお前ドラム叩け」って逹瑯から言われて。しかも「チェッカーズを叩け」って上から目線で言われたわけですよ、背が高いもんだからね。その時も勝った気になってるというか(笑)。転換時のサウンドチェックでマイクを通してわざとでかい声でアピールしてみたりとか、昔からそういうことばっかりで。そういう勝負してきてるんですよね、逹瑯は。でね、D‘ERLANGERのほうがちょっと年上じゃないですか。

逹瑯:ちょっとじゃないですよ(笑)。

Tetsu:ちょっと先輩なんで、逹瑯のやり方っていうのはkyoちゃんと俺とで分析をしてて。

逹瑯:あははははは!

Tetsu:「絶対あいつはこうくるから先手を打とう」って話すんだけど、いっつもこちらの予想とは違う戦法でくるんで、イベントの時は。裏をかかれる。本当にこしゃくですよ。


▲逹瑯 (MUCC)

──(笑)。ちょっと話を戻しますが、先ほどの逹瑯さんのMCの真意を教えていただけますか?

逹瑯:ヴィジュアル系ってフェスがないし、ああいう大きなイベントってそれまでなかったじゃないですか。幕張メッセにいろんなバンドが集まって、それがちゃんとフェスになっている、“すごいな”と思って。うちらがヴィジュアル系をやり始めた頃ってカッコよかったんだけど、「どんなバンドやってるの?」って聞かれた時に、いつの間にか「ヴィジュアル系やってます」って言うことに躊躇しちゃう自分がいて。「ヴィジュアル系やってます」ってもっと胸張って言えるようになりてぇな、なれたらいいなって思ってたので。そういうところに一歩ずつ、ちょっとずつ戻っていけたらいいんじゃないかなっていう思いだったのかな。

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