【インタビュー】BAND-MAID、2万人動員全米ツアー総括「幸運をさらに来年は開花させたい」

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■みんなが成長して、バンド自体が向上しているなっていうのを感じながらツアーを回れていた

──そんな具合に日々演奏環境が違う。そうなってくるとセットリストだけでも固定的にして安定を目指そうとするのが普通じゃないかとも思うんですが、皆さんはその状況下でも毎回マイナーチェンジを重ねながら実験を続けていたようですね。そういった攻めの姿勢を貫いていたのはすごいことだな、と思います。

SAIKI:それを貫きたかったというよりは、臨機応変にやっていきたいというのがあって。実際に向こうに行く前から、日本でのお給仕でやってきたセットリストを基盤にはしつつも、とにかくアメリカは広いし西から東に向かって行く中でカルチャーとかもめちゃくちゃ違いがあるのを感じることになるはずだから、それに対応してこうっていう話はしてたんですね。それプラス、体力的にちゃんともつのかどうかとか、そういった不安要素もあったので、予備曲みたいなものも事前に決めてはいて。でも結局、その予備曲は全然やらなかったんですけどね。

──やる必要がなかった。つまり体力的にもOKだったし、選曲も正解だったということですね?

SAIKI:そうですね。それこそサブスクの再生回数とかでも曲の人気度はある程度わかるわけですけど、本当にその数字が正しいのかどうかを確かめてみたい気持ちもあったし、それを参考に曲をどんどん組み込んでいったり。ただ、そうやっていろんな曲を試しながら挑戦していく中で、結果的にはよりハードになっていったというか、いっそうBAND-MAIDらしくなったというか。正直、日本でのプレお給仕では“声出し”もできないし、ちょっと窮屈さもあったじゃないですか。だからみんなの盛り上がりをあんまり肌で感じることができない部分もあったんですけど、アメリカに行ってみたらもうみんな全力で向き合ってきてくれたから、もっとそこでコミュニケーションを濃くしていきたいみたいな感じになっちゃって。しかもその感覚がメンバー全員一致してたんですね。だから「コレ、やれちゃうんじゃない?」「もっともっと笑顔が見たいよね」みたいになっていって……。

──お給仕を重ねていくほどに「もっと!」という気持ちが強まっていったわけですね。しかも予備曲をやらずに済んだのは事前情報が間違っていなかったことの証でもあるだろうし、いわば良い意味で想定通りではあったわけですよね。

小鳩ミク:予想以上でしたっぽね。もちろん「これは絶対盛り上がるだろうな」と思ったものが意外とそうでもなかったりして、そこで曲を変えてみるというのはありましたけどっぽ。逆もまた然りでしたっぽ。


──なるほど。先ほどもちょっと話に出ましたけど、ツアー中には小鳩さんの誕生日もありましたよね? ダラス公演当日でした。その日はどんな感じだったんですか?

小鳩ミク:いやー、もうあの日はびっくりしっぱなしでしたっぽ。ダラスの会場は3年前にも一度やったことがあるところだったんですけど、そこの小さいホールから大きいホールのほうに今回は変わっていて、それも今回嬉しかったことのひとつだったんですっぽ。それで、会場に入ってみたら、ご主人様お嬢様からのプレゼントで、私のシグネチャー・ギターそのままのデザインとサイズ感のケーキが用意されていて。「これ、ホントにケーキ?」って言いたくなるくらいの美術品のような完成度の高さに驚かされたんですっぽ。そのあと、メンバーからもサプライズでケーキと寄せ書きをもらって。MISAの誕生日の時は、私とAKANEでお買い物をしてる時に「MISAに寄せ書きのカードを渡したらきっと喜んでくれるっぽね」という話になったんですけど、私の時はないだろうなと思ってたんですっぽね。

KANAMI:あ、そうだったんだ?

SAIKI:そんなわけないじゃない(笑)。

小鳩ミク:自分ではそう思ってたんですけど、あれはすごく嬉しかったですっぽ。スタッフ全員でお祝いしてもらえるのもすごく久しぶりでしたし。で、本番の時は……MISAの誕生日の時は、みんなMISAの名前が描かれたタオルを掲げてくれてたんで、私の時はどうなるのかと思っていたら……。渋谷公会堂のライヴDVDで、副音声でも話題にしてたんですけど、“Play”の中の「Say!」っていう掛け声の時の私の顔がすごく劇画タッチの絵で抜かれているシーンがあって、前々からその画像がGIFとかで上げられたりしていじられてたんですけど、それがさらに版画みたいな感じでタオルに印刷されたものを、みんながおまじないタイムの時に掲げ始めて……。

SAIKI:みんながあれを持ち始めた時のざわざわ感が良かったよね!

小鳩ミク:そうそう、一気に持ち始めるんじゃなくて、ざわざわざわって(笑)。

SAIKI:だんだんと視界の中に小鳩の顔が増えてきて(笑)。

小鳩ミク:最初はそれが自分の顔だとすらわからなくて、何人かがタオルを掲げ始めた時点では「あれ? みんな何か掲げ始めたな」ぐらいに思ってたんですっぽ。ところがそれが増えていくにつれて自分の顔だって気付かされて。なんかもうシュールすぎる光景でしたっぽ。ドッキリかと思いましたっぽ(笑)。

SAIKI:小鳩のリアクションが面白かった。サプライズ大成功、みたいな(笑)。

小鳩ミク:もちろん嬉しいんですけどっぽ、お祝いされてる以上にいじられてる気もして、素直に喜んでいいのかわからない気もしましたっぽ(笑)。

──そこは素直に喜びましょう(笑)。でも皆さん、今後、海外で誕生日を迎える時にはサプライズに用心が必要ですね。そして、アメリカツアーで何が大変かといえばやはり移動だと思うんです。バスに乗っている時間が異様に長くなるわけで。

小鳩ミク:ああ、それは間違いないですっぽね。

SAIKI:でも今回はすごくツアーバスが良くて。

小鳩ミク:すごいバスでしたっぽ。すごく楽しかったですし、退屈もしなかったですっぽ。以前、ヴァンとかで移動したことはありましたけどっぽ、こんなに長い期間バス移動だけ、全員でバスの中に寝泊まりするっていうのが、お給仕の規模が大きくなってきてからは初めてだったので、“すごい規模のバス旅行”みたいな感じで1ヵ月間楽しく過ごせましたっぽ。日本食をみんなで持ち寄って、バスの中でレンジでお米を炊いたり、みんなで楽しみながらそういうこともできたので、心地いい旅になりましたっぽね。

SAIKI:いいバスだったよね。べつに3年前の環境に不満があるわけじゃないんですけど(笑)、今回はそれ以上に良くなっていたので「これなら全然平気」みたいな。もちろん疲れはするんですけど、すり減ったような疲れではなくて、満足感のある疲労感という感じだったので。

AKANE:バスは快適でしたね。なにより充分な睡眠がとれたので。しかも睡眠の質が良かったので身体がラストまで持ちましたし、睡眠って大事だなーって改めて思いました。マットレスの質も良かったし(笑)。

KANAMI:3年前とかだと、AKANEも私もお給仕の時にテーピングをしてたんですね。特にAKANEの場合は移動が身体的に厳しいというのがあって。ところが今回はそういうのが一切なくて、むしろ日本に帰ってきてからも彼女がいちばん元気でした。

小鳩ミク:確かにAKANEは元気だったっぽね。

AKANE:もうずーっと元気だった(笑)。

KANAMI:なんか全然疲れてないみたいな感じだったので、やっぱりバスの快適さのおかげだねっていう話をしてました。

小鳩ミク:時間帯として夜にちゃんと眠れてたのも良かったのかもしれないですっぽ。お給仕が終わって、シャワーを浴びて、寝ながらバスで移動。夜中はずっと眠れてたっていうのが結構大きかったと思いますっぽ。これまでの海外ツアーの時は、ちょっとだけ仮眠して早朝の5時に次の土地に向けて出発とか、3時間だけ休んで移動とかっていうのも多かったのに対して、夜しっかり眠れたのが大きかったと思いますっぽ。

──睡眠時間の長さだけでなく「昼間に活動して夜に寝る」ということが国内に時差がある環境下でもできていたことに意味があったわけですね。しかし、元気な状態で帰国したとはいえ、まさかその直後にさいたまスーパーアリーナで演奏することになるとは!

SAIKI:ヤバいですよね。ホントに帰国直後でしたから。

小鳩ミク:私、客席に増田さんの姿を探しましたっぽ。観にいらしてるのをツイッターで知っていたので。

──実を言うと、6列目のど真ん中で観ていました。

SAIKI:えーっ! ツイッターでBAND-MAIDの緑のTシャツに着替えてるのを知って私も探してたんですけど、見つけられなかった。


──大型アリーナでは最前列でもステージから距離が結構ありますし、前のほうが意外と視界に入りにくいというのもあるかもしれません。

SAIKI:ホントにそれは思いました。初めてのアリーナだったし、こんなに最前列までの距離があるんだって。

──1月の東京ガーデンシアター公演はBAND-MAIDにとって過去最大規模のお給仕ということになるわけですけど、その前にそれ以上に大きな場所でやる機会が巡ってくるという流れもなかなか面白いですよね。

小鳩ミク:なかなかないことですっぽね。でも私たちとしては、あの日までがアメリカツアーみたいな感覚ではありましたっぽね。アメリカツアー終了後の帰り道みたいな。それにしては規模がデカすぎるんですけどっぽ。

SAIKI:帰り道じゃないでしょ(笑)。でも、確かにそれも含めてアメリカツアーみたいな感覚ではあったかな。

小鳩ミク:1時間とかじゃなくて30分というのもすごく私たち的には良かったですっぽ。

──<AFTERSHOCK FESTIVAL>での30分ステージが全米ツアーの序章だったように、最後にガンズ・アンド・ローゼズ公演での30分のステージで締め括る、みたいな。

小鳩ミク:そうですっぽね。流れ的にはすごくきれいな感じになりましたっぽね。

──ただ、フェスの場合は客層がさまざまとはいえ自分たちのファンも確実にいる状態。それに対してガンズ公演の件はわりと急に決まった話でもあっただけに、ほとんどガンズのファンばかりという環境での演奏になりましたよね。そうした状況で観客を振り向かせようとするとイケイケの曲ばかりの構成になりがちなものですけど、そこで「Manners」とか「Daydreaming」とかが入っているのがすごいなと感じましたし、実際とても印象に残りました。僕のまわりにいたガンズ・ファンの中にも同じようなことを話している人たちがいましたよ。

SAIKI:それはホントに良かったです。アメリカでいろんな曲をやってたじゃないですか、セトリを変えながら。そういうのを経て、予想能力というか「ここではこれが受けるんじゃないか」とか、「ここではこれが人気そうだね」みたいなのを察する力がみんな向上していて。ガンズの日のセトリはアメリカで決めたんですね。みんなで「ガンズのファンの人たちはバラードも好きなはずだから」みたいな話をしたうえで「Daydreaming」を入れたので、今みたいなお話を聞けて嬉しいです。

──それこそメタルフェスに出る場合とかは意識することが違ってくるわけですよね?

SAIKI:そう、まさに。夏に<DOWNLOAD JAPAN>フェスに出た時は「やり逃げしてやるわ!」ぐらいの感じで(笑)、とにかく攻めでやりきるセトリにしたんですけど。

──「早くお客さん入って来いよ!」と思いながら演奏していたはずですよね、あの日は。

SAIKI:そうそう。「損してるぞー、みんな!」と思いながら。

小鳩ミク:そういう意味で言うとガンズの時は逆だったっぽね。ガンズの演奏開始の2時間前ということもあったので、きっとお客さんも少ないだろうなっていう予想もあって。

SAIKI:グッズ販売の列がすごいっていう話も聞いていたし。私たちとしては「観られない人も多いだろうけど、初アリーナを体験させてもらいます! ありがとうございます!」みたいな(笑)。

MISA:確かにお客さんはまだ少なかったし、自分たちのファンじゃない人たちもたくさんいたんですけど、アメリカツアーを経てきたことで自信をもって臨めたというか。以前の自分だったらシャイな感じで、心がキューンとなってたと思うんですね(笑)。ちゃんと聴いてもらえてるのかな、みたいな心細い感じになってたというか。だけどすっかり自信がついていたから「みんな、聴いてるか!」みたいな強気の感情でステージに立つことができて、すごく余裕がありました。

SAIKI:それはメンバー全員が感じたことだと思います。リラックスできてたし。

MISA:それこそ今までで一番いいお給仕ができたんじゃないかっていうくらいの手応えがありました。

──良い流れで1月に繋がりそうですね。そして、2023年の幕開けとなるガーデンシアターでのお給仕についてはどんなものにしたいと考えていますか?

MISA:観に来てくれるみんなにとって忘れられない想い出になるといいな、と思います。自分自身としては、なんかもうホントにシンプルにいつも通り楽しみたいっていう感じでもありますね。あんな広いところで普段通りにやれれば、それだけでもすごく気持ちいいはずだし。

AKANE:海外ツアーから帰ってきて、ガンズの公演にサポート・アクトで出演した経験を経てきた今、私自身がすごく無敵モードに突入していて。

KANAMI:すごーい!

AKANE:自分でも今、いちばんいいドラムを叩けてるなって思えてるんですね。そういう気持ちで自分たちの10周年を迎えられるというのが嬉しくて。その10周年の年の始まりを飾る景気づけというのもあるし、これまでのドラム人生の中で最高の状態にあると思えている自分の演奏をそこで披露できるのがすごく楽しみですね。どんどんどんどん成長していきたいなって思います。

KANAMI:ガーデンシアターでは新曲もお聴かせできたらいいなあ、みたいな気持ちもあるので、アメリカツアーを経てこういう曲もできるようになったんだね、みたいなものを聴かせられるように頑張ります。バンド全体のグルーヴ感というか音のパートナーリングも、メンバー同士の繋がりという部分でも、すごくアメリカツアーで成長できたなと思うので、それをガーデンシアターで披露できたらなって思います。

──バンドの状態がとても良いことが窺える言葉ですね。頼もしいかぎりです。

SAIKI:海外に行くたびに毎回成長して、身体も気持ちも強くなってひと回り大きくなって帰ってくるBAND-MAIDですが(笑)、ホントに今回もみんなが成長して、バンド自体が向上しているなっていうのを感じながらツアーを回れていたんですね。それもすごく良かったし、その良い雰囲気のままガンズと同じステージに立たせてもらえたというのもあって。実はアメリカツアーのステージでは毎回、日本語教室みたいなコーナーを設けてたんですけど……。

小鳩ミク:あれは楽しかったっぽね!

SAIKI:いちばん最後のシカゴ公演の時、どんな言葉をレクチャーしようかって考えた結果、「運あるわぁ」というのにしたんですね。運があるよね、持ってるよね、みたいな意味で。私、ホントにBAND-MAIDが今回のアメリカツアーを完走できたこと自体、奇跡だなって思うんですよ。だから「運あるわぁ」って思ったんです。

KANAMI:そう、運あるわぁ。

小鳩ミク:ちゃんと完走できるとはあんまり思ってなかったっぽね。どこかで何かあるんじゃないか、みたいな話はよくしたし。

SAIKI:うん。そういう問題もなかったし、メンバーが体調を崩すことも全然なかったし、みんな基本的に元気だったんで「運あるわぁ」という言葉を選んだんです。で、それこそガンズのことも「運あるわぁ」だし、ちょうどいいことに2023年で10周年だし、ホントに「運あるわぁ」と思うんです。その幸運をさらに来年は開花させたい、見せつけたいみたいな気持ちがすごくあって。10年続けるってホントに大変なことだし、とても素晴らしいというか奇跡みたいなことだと思うんですね。バンドを続けるのって難しいことだから。だけどこうしてやっと10周年を迎えられて、その10周年記念のお給仕をみんなに観てもらえる環境になったわけじゃないですか、コロナ禍もだんだんと空けてきて。そこについてもやっぱり……。

AKANE:運あるわぁ(笑)。


──全米ツアー最終公演のシカゴでその言葉を言いたくなったということ自体が象徴的だと思えます。最後の最後が「知らんけど」とかだったら嫌じゃないですか。

小鳩ミク:そうですっぽね(笑)。

SAIKI:なので、ホントに乗りに乗っている私たちを見て欲しいというか、今のBAND-MAIDを見逃さずに、記憶にとどめておいて欲しいなと思います。

小鳩ミク:そうですっぽね。日本でまだツアーとかをきちんと回れてないというのに海外をちゃんと回れて、しかも“声アリ”の環境というのを久々に味わうことができて……そういうツアーを経てきたからこそのすごくいいお給仕ができるはずだと思えているわけなんですっぽ。やっぱりそういう意味では「運あるわぁ」と思わされますっぽね。日本での10年目のお給仕を、こうしてアメリカツアーを回ったうえでできるっていうこと自体、すごくプラスに働くはずだと思っているので。だから海外でのお給仕から持ち帰ってきたパワーを、今度は日本のご主人様お嬢様に与えたいというか、見せつけたいなという気持ちがすごくありますし、そこから「10周年を始めるよ!」「今の私たちはコレだから!」「もっともっと10周年を盛り上げていこうね!」っていうひとつ大きなスタートとなるお給仕にできたらいいなと思ってますっぽ。

──新年早々の、良いお祭りにしたいですね。

小鳩ミク:そうですっぽね。ホントにお祭りだと思いますっぽ。新年のお祝いと一緒にお給仕ができるなんてなかなかないことだなと思うし、しかもそれがまた10年目という素敵なアニヴァーサリーの年なので。もうこれは絶対に成功させて「素敵な1年になること間違いなし!」って思えるようなものにしたいですっぽ!

取材・文◎増田勇一

単独公演概要

<BAND-MAID TOKYO GARDEN THEATER OKYUJI>
各プレイガイドにて一般発売開始
受付期間:11月26日(土)12時00分~売り切れ次第終了
同日よりグッズの受注販売も開始
詳細: https://bandmaid.tokyo/contents/534358

◆BAND-MAID オフィシャルサイト
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