【ライブレポート】Rachel Mother Goose、コロナ禍を経て3年ぶりのレコ発ツアー完遂

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国産プログメタルバンドRachel Mother Gooseの『SYNRA BANSHO / 森羅万象』レコ発ツアーファイナルが、彼らの地元は名古屋ell.SIZEにて行われた。

2021年に4年ぶりのスタジオアルバム『SYNRA BANSHO / 森羅万象』をリリース、各所レビューで好評だったにもかかわらず、コロナ禍によりシンガーであるキム・ソンフンが韓国から来日が叶わなかったため、今回が3年ぶりのツアー開催となったものだ。


ファイナルのワンマン名古屋公演はソールドアウト、今回のツアーは最新作をフルに披露する怒涛の内容だと事前アナウンスもあり、期待が高まる。

ネオクラな疾走チューン「Under 500 Million」と「Why So Serious?」から圧倒的なキム・ソンフン(Vo)の超絶ハイトーンはどこまでも突き抜ける。むしろ音源よりも高音域は出ているくらいだ。韓国では音楽のジャンルにおける垣根が日本ほどはないようで、メタルな装いとはまた違うドレッシーなジャケットで登場したキムはさながらK-POPスターにも見える。


冒頭でオーディエンスをグッと掴み、ステージはそこからが彼らの本領発揮。メジャーキーな楽曲もあれば、キムがデスヴォイスを使ったものまで、様々な色が表現されていく。

演奏陣は全く隙のない仕上がりで、ツアーができなかった間にどれだけリハを重ねていたのだろうか。バンドの中心人物であるリーダー、植木英史(G)はバーガンディミストのストラトキャスターと彼のスタイルからはやっぱりイングヴェイ・リスペクトを感じるが、それをハムバッカー&ラージヘッドにしているところはこだわりか。「やっとツアーができて、今こうしてみんなと会えている事が奇跡のようです」と感無量の思いを何度も伝えていた。




「The Clock Is Tickin’」や「Love Will Never Reach You」での植木のアコギでのプレイや、6弦ベースを使用した中村和正(B)とのユニゾン曲も見せ場。盛り上がりを通り越して見惚れてしまうほど美しいメロディとアンサンブルの連続だ。このバンドの激しいアンサンブルでも中村のベース音は非常に抜けが良いしステージでの存在感もある。堀 博貴(Dr)と中村の正確なリズム隊と植木の渾身のプレイ、そこに煌びやかな音色とフレーズを持つ松原 匠(Key)の鍵盤が合わさり緻密なアレンジ曲がステージで完全に再現されていく。

20年以上のキャリアを持つバンドがメンバーチェンジや浮き沈みの紆余曲折を経ても諦めずにここまでの進化と変容を遂げる事は決して容易ではないはずだ。己を信じてここまでやってきたバンドの信念を強く感じて胸が熱くなるのと、決してギタリストだけをフィーチュアしたバンドではなくメンバーシップがしっかりと見えるショウになっている。むしろ植木はもっとステージセンターへ出ても良いと思う場面もあった。


他に課題点を挙げるとすれば、アルバムがかなり豪華で重厚に制作されている為か、コーラス部分が同期で再現されているのは少々勿体無いところ。この課題はまた次回の楽しみにしておくが、鍵盤の松原は全曲を歌いながらプレイしていたので、そこにマイクを立てても良いのではないだろうか(笑)。


正統派ネオクラメタルバンドからメロディックプログメタルへシフトした前作『TOKIWA NO SAI』からも数曲披露。このアルバムの時点でここまでの道のりを見据えていたのかはわからないが、前作から2作品をミックスとマスタリングにアレッサンドロ・デルヴェッキオ(イタリア、フロンティアーズ・レーベルの作品を多く手掛けるエンジニア兼プレイヤー)を起用した事もリーダー植木の幅広い音楽性による選択なのであろう。本編ラストに演奏された「Tomorrow Is Another Day」ではウリ・ロートへのリスペクト感もたまらない。



すでに『SYNRA BANSHO / 森羅万象』はドイツのレーベルからヨーロッパでもデビューしている。EUリリース盤収録の「The Erath Bounder」も披露され、この楽曲はボーナストラックでありながらも、現体制でいちから制作された紛れもない新曲である事も珍しい。非常にクオリティが高く、今のバンドの順調さと気合いを感じられる曲に仕上がっているので是非ともEU盤も手に入れてみて欲しい。

来年の予定は現状未定のようだが、彼らがヨーロッパのステージに立つ日も夢ではないのかもしれない。


文・写真◎Sweeet Rock / Aki
写真◎Kazunari Nagaya / Chiharu Fukui

<Rachel Mother Goose SYNRA BANSHO Tour 2022 >

2022年12月18日
@Nagoya ell.SIZE
1.Under 500 Million
2.Why So Serious?
3.AMATSU KAZE
4.Summon The Instinct To Fight
5.The Clock Is Tickin’
6.There Is No Time Left
7.KOTODAMAIST
8.Dainsleif
9.The Erath Bounder
10.Love Will Never Reach You
11.Tokiwa No Sai
12.My Ascending Day
13.The Sixth Sense
14.Tomorrow Is Another Day
Encore.1
15.Stuck In The Past Glory
Encore.2
16.The Never Ending Story


◆Rachel Mother Gooseオフィシャルサイト
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