【2022年を振り返って】V系は絶滅するのか?

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「V系が廃れた」という話は、どこからともなくよく聞こえてくる。

確かにひと昔前にはV系、ヴィジュアル系と定義されるバンドがドーム規模のライブを行うこともあったし、ヴィジュアル系バンドが地上波テレビ番組に出演することも、有名アニメの主題歌を担当することなども多々あったけれど、最近はそういった“メジャー級”の話題は少ない。

身近なことでも、大御所ヴィジュアル系バンドのライブ後にフライヤーを配る若手バンドマンは激減したし、街を歩いていても「あ、バンギャだな」と一目でわかる人を見かけることも少なくなった。専門雑誌もことごとくなくなってしまった。好きだったヴィジュアル系バンド自体もバンバン解散した。


コロナ禍も一気に追い打ちをかけた。ライブができなくなった時期に他ジャンルのアーティストが挑戦したYouTubeを使った生配信やSNSを使ったコミュニケーションは、“非日常”的なヴィジュアル系バンドには向いていなかったし、あの頃はダークな世界観の音楽よりも“みんなで歌おう”“頑張ろう”といった歌が求められていた。

また、サブスク主流でTikTokから曲がバズるといったように、インスタントであることが好まれる時代性も、“世界観”の強いヴィジュアル系バンドには向かないように思う。ヴィジュアル系がずっと好きな私でも、「今の時代にヴィジュアル系が合うか?」と聴かれたら、「YES」と即答はできない。

でも、「絶滅」はしないし「希望」はある。そう思えたのは、DEZERTが6月に渋谷に掲出した、日比谷野音ワンマンの告知広告。とんと街中で“ヴィジュアル系っぽいもの”を見かけることが少なくなった時代の渋谷に、突然の、ヴィジュアル系バンドマンの顔面。そしてシンプルで目を引く「V系って知ってる?」の文字。

この言葉は「#V系って知ってる」というハッシュタグで、トレンドにも浮上するなどSNSを騒がせた。このハッシュタグを使って、ヴィジュアル系バンドマンとバンギャ&ギャ男はもちろん、昔バンギャだったママ、昔バンドに憧れたお兄さん、他ジャンルのアーティスト……本当にたくさんの人がこのハッシュタグで「V系愛」を語った。私も、「あぁまだこんなにV系を好きだという人たちがたくさんいた」と胸が熱くなった。(みんな一体いつもどこに隠れているの)


そしてその「#V系って知ってる」ムーヴはDEZERTの日比谷野音を成功させ、さらに12月27日に日本武道館で開催されるイベント<V系って知ってる?>へ続いていく。このイベントはDEZERTのSORAがオーガナイザーとなり、大御所D’ERLANGERから次世代シーンの担い手キズまで出演、girugameshが復活したり、ヴィジュアル系シーンを語るに外せないメンツがこの日限りの特別セッションを行なったりと、とにかくすごい。詳細は公式サイトにて。

(DEZERTは昔は「殺意」ばっかり聴いてましたが、最近はこの2曲が沁みます。大人になりました)

一見「廃れた」かのように見えるヴィジュアル系シーンでも、きっかけがあればみんな愛を語り始めるし、それがパワーとなって何かを生み出す。この「#V系って知ってる」一連の流れで、「みんなの声」の「力」に改めて気付かされた。

あのバンドがかっこいいとか曲がいいとか、そんなヴィジュアル系に関する誰かのツイートが、全く接点のなかったどこかの誰かがヴィジュアル系のことを知るきっかけになるかもしれない。そしてその中の何割かが「ヴィジュアル系ってカッコいい」って思ってくれるかもしれない。そしてかっこいいヴィジュアル系バンドを始めるかもしれない。こんなことがたくさん起これば、「絶滅」はしない。

2022年のヴィジュアル系シーンを振り返ってみると、YOSHIKIとHYDE、SUGIZO、MIYAVIが、スーパーバンド・THE LAST ROCKSTARSを結成なんて超超超ビッグニュースがあれば、相変わらずLUNA SEAの黒服限定GIGは大盛り上がり。SOPHIAは復活するし、DIR EN GREYは25周年ツアーの追加公演でいち早く声出し解禁ライブを行って話題をさらう。lynch.は念願の日本武道館公演を実現した。the GazettEも20周年を迎え、-真天地開闢集団-ジグザグも武道館を埋める。0.1gの誤算はSNSで定期的にバズるし、DEVILOOFはヴィジュアル系バンドとして久々のメジャーデビューを飾る。



「V系は廃れた」なんて言われても一部を取り上げただけで、どうだ。本当に廃れているのか? もしかすると、昔のように「V系のカッコよさ」が世間に広まっていないだけかもしれないし、「V系のカッコよさ」を伝えきれてないだけかも知れないし、みんなが語り合えてないだけかもしれない。全然、未来はある。イベント<V系って知ってる?>は、明日12月27日に開催。このイベントの後には、きっと「V系のカッコよさ」を叫ぶ声がたくさん上がると信じている。そしてそれが、誰かの心を動かすことも……!

ちなみに個人的には、ヴィジュアル系はこれからの時代、もっと売れる可能性を秘めていると思う。K-POPアーティストやメンズアイドルがガンガン化粧する時代だから、昔みたいに「男性がメイクなんてして!」って思われることがない。メン地下に通っているオタクなんかにはまさに刺さると思う。

ヴィジュアル系が歌うようなダークな曲は、歌い手やボカロも歌っているから受け入れられやすくなったし、『マガツノート』という、ヴィジュアル系の楽曲と2次元イラストで展開されるメディアミックスコンテンツなんかも生まれているから2次元や声優のオタクに対しての入り口もある。派手なメイクに華やかな衣装で歌い演奏するという、2.5次元系のオタクを取り込む要素もある。



加えて、昨今のヴィジュアル系にはいろんなバンドがいる。音楽性はゴリゴリのメタルコアだったり、はたまたヒップホップを取り入れたものやアイドル寄りのバンドなんかもあったりして一度知れば“刺さる”バンドがいると思う。こんな風に考えてみても、潜在的ヴィジュアル系ファンはたくさんいるはず。



ちなみに、ヴィジュアル系専門誌や媒体が少なくなってしまったいまだからこそ、BARKSにできることもあると思う。まだヴィジュアル系を知らないどこかの誰かにも届くよう、BARKSは2023年も“カッコいい”ヴィジュアル系の情報発信を続けていく所存だ。

文◎服部容子(BARKS)

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