【ライヴレポート】Psycho le Cému、ツアー＜RESISTANCE～君がいる世界～＞ファイナルに2023年の確固たる約束

Psycho le Cémuが12月23日および24日、東京・Veats SHIBUYAにてツアー＜RESISTANCE～君がいる世界～＞のファイナル公演を開催した。聖なる夜にファンとの絆を深め、2023年の目標を力強く宣言した彼らが見つめる先には何があるのか。同2DAYS公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆Psycho le Cému 画像 / 動画

2023年の年間ライヴスケジュールとリリーススケジュールが明らかになったのは、最終日24日のアンコールの後だった。ツアーファイナルで次のライヴやツアーを発表するのは定石だが、1年間分ともなれば、異例。ファンも情報量の多さに喜びつつ驚きを隠せない。もちろんそこには、Psycho le Cémuの2023年に賭ける熱い思いがある。


そして明かされたスケジュールは、2023年3月の声出し解禁ライヴなどを経て、5月から12月まで全国ツアーを実施。そのツアーファイナルの会場であるZepp Shinjukuを「フルキャパでソールドアウトさせたい」とDAISHIははっきり口にした。彼らがずっと追いかけてきたあの夢の舞台へとつなげるために。長く続くコロナ禍、守るだけで精いっぱいの活動を強いられてきた彼らが、2023年、反撃に転じようとしている。

前日23日の最後の最後に、DAISHIは「明日はすげえものを見せる！」と発言していた。ツアーの充実ぶりを感じさせるステージを展開していただけに、テンションの高さから飛び出した言葉かとそのときは思ったが、それだけではなかったようだ。“この決意をファンに告げるんだ”という思いを秘めていたからだったのだろう。


2022年5月3日にLINE CUBE SHIBUYAで行った23周年記念ライヴから、彼らは“RESISTANCE”なる新コンセプトを掲げている。今回のツアー＜RESISTANCE～君がいる世界～＞では各地2DAYSずつ、趣向の異なる二本のライヴを実施してきた。衣装もそれぞれ異なり、＜Day1少年の右目＞と題した初日は、まさにレジスタンスな戦闘服スタイルだ。セットリストも両日で大きく異なり、このツアーから披露している新曲「君がいる世界」や最新デジタルシングル「もう一度、くちづけを」といった両日共通の楽曲をポイントに、“少年が見る世界”と“少女の見る世界”の違いをイメージさせる内容になっていた。

今回のコンセプトのプロデュースを担当したYURAサマは、細かなこだわりを随所に入れ込んでいた。たとえば、歌詞の一文をDAISHIの台詞に引用したほか、「もう一度、くちづけを」と「KISS OF DEATH」を続けて披露し、“くちづけとKISS”という関連ワードを連続させるなど。また、“雨が降りやまない世界”を舞台とする今回のコンセプトが始まってからは、ライヴ中にお芝居は入れず、本編はあくまで演奏に徹した。それでいて、一例ではあるが前述した仕掛けなどで楽しませることも忘れないところがPsycho le CémuがPsycho le Cémuたるゆえん。なお、この2DAYS公演はアーカイブ配信を年内いっぱい楽しむことも可能。繰り返し観てじっくり謎解きをするのも一興だろう。


＜Day1少年の右目＞と題された初日23日だけに演奏されたのは、「漆黒のゲルニカ」や「Revenger-暗闇の復讐者-」といったハードな曲調、「哀の雨」といったシリアスなナンバーだった。そんなセットリストは、ロックバンドとしてのカッコよさが際立つように感じられるものだった。特にプレイに集中するAYAの姿に目を奪われ、そこから放たれるプレイの説得力も強く感じられた。また、YURAサマの力の入ったドラミングやプレイ中の真剣な眼差しも印象深い。ツアーファイナルということもあって、すっかり曲は体に入っているだろうが、それをこの瞬間、高い集中力で表現するミュージシャンとしての魅力を存分に味わえたDay1だった。

そして翌24日は＜Day2 少女の左目＞。クリスマスイブで渋谷の街もにぎわいを見せる中、このツアーすべてのライヴ同様、新曲「君がいる世界」でステージがスタート。ライヴで新曲を披露するという試みを続けている彼らだが、同曲もツアー初日の1曲目を飾るというチャレンジを経て、ファイナルでしっかり育っていることが実感できた。


「未来少年×未来少女」「Song for…」「愛の唄」といった曲を盛り込み、Day1よりもポップで明るい印象を残す。優しさや希望といったイメージなのだろうか。中でも、Lidaがアコースティックギターを優しく奏でた「この星に願いを...」は、繊細さと温もりを届けてくれた。また、DAISHIの歌声からは存在感に加えて、温度まで感じられるようだ。そして、ファンが腕を左右に大きく振ってフロアをサイリウムが彩り、曲の世界をメンバーとファンが一緒になって作り上げている姿も美しかった。

もちろん「LAST EMOTION」など激しい曲では会場を熱気が包み込み、フロアがヘドバンに埋め尽くされるシーンも。緩急に溢れ、息つく暇も与えない充実したライヴとなった。そんな全力投球の本編の後、アンコールの1曲目は、クリスマスイブにぴったりな「祈り」。クリスマスに愛を誓う曲に披露は、会場をすっかりロマンチックな雰囲気にさせる。忘れられない特別な一夜だ。


すっかりリラックスした様子でMCに興じた後、「命のファンファーレ」が鳴り響く。タイトルそのままに、生命の輝きや生きることの喜びが音になり、歌になり、会場中の空気を満たした。幸福感という言葉では足りない、爆発するような歓喜。今にも大声で叫び出したい感情。seekが口づさみ、メンバー同士視線を交わし肩を寄せ合う。ステージも会場も、ただただ光に満ちて、輝きを放っていた。

2023年のスケジュールが告知されたのは、この後のことだった。DAISHIが思いを静かに、真剣に口にした。そして最後の最後に演奏されたのは「REMEMBRANCE」。彼らの終わりや始まりを彩ってきた特別な曲だ。“今 爪を立てた 未来はもう始まる 何時か その手で掴むまで”という歌詞のとおり、彼らは未来へ歩みを進めていく。そんな逞しさが滲むツアーファイナルだった。なお、Psycho le Cémuは2023年5月3日にフルアルバム『RESISTANCE』をリリースすることも明らかとなっている。