【ライブレポート】新山詩織、デビュー10周年記念公演で「感謝しきれないくらいのありがとう」

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新山詩織が12月12日、東京・神田明神ホールでデビュー10周年記念ライブ<10th Anniversary live 〜My Roots〜>を開催した。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆新山詩織 画像

2022年12月12日にデビュー10周年を迎えたシンガーソングライター新山詩織。作品をコンスタントにリリースし、それと並行して数多くのライブ活動やイベント出演を展開するなど、着実にキャリアを積み重ねていた。しかし2018年、「音楽とは異なる新たな夢にチャレンジしてみたい」という決断から、突如アーティスト活動を休止。約3年におよぶ旅を経て、ついに昨年、音楽シーンに復帰した。活動休止中は音楽から離れ、福祉系の専門学校に通っていたという。自らの人生と誠実に向き合い、常に挑み続けてきた新山詩織の10年は、凡庸な生き方では体験できない濃密な時間だったに違いない。

そうして辿り着いたデビュー10周年記念ライブ<10th Anniversary live 〜My Roots〜>は、これまでの人生経験により導き出した答えを示すかのような内容だった。「自分らしくいること」を終始貫いた潔いステージだったといっていい。


ライブ本編前に、同会場で行われた初のオフィシャルファンクラブイベントのアットホームな空気がそのまま残る神田明神ホール。開演前の場内には恒例となった新山選曲のBGMが流れていた。ちなみにこの日は、ニール・ヤング、The Jam、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTなど、男性縛りの選曲。詳細は新山自身のツイッターで全曲リストを公開している。

ステージ後方の巨大スクリーンには、黒地に白文字で“My Roots”と記された直筆ライブロゴが掲げられている。それ以外、目立ったオブジェなどはない。楽器だけが並べられたシンプルなステージセットだ。定刻を迎え、場内が暗転。スクリーンが灯り、自己表現が上手くできず思い苦しんでいた学生時代のこと、心の拠りどころとしていたギターと歌のこと、そこからデビューに至る経緯を振り返った映像が、新山の語りと共に映し出された。

そして静寂の中、ステージ中央に立つ新山にスポットライトが当たり、アコースティックギターの弾き語りによる「Don’t Cry」からライブがスタート。今この瞬間、自分の中に沸る情熱をぶつけるかのような剥き出しの歌声が満場のホールに放たれた。アーティスト新山詩織の存在証明のような幕開けだ。2曲目のイントロに乗せて、「今日は集まっていただき、ありがとうございます。最後まで楽しんでいきましょう!」と笑顔で挨拶すると、1stアルバム『しおり』収録曲「「大丈夫」だって」をドロップ。バッチリ揃った客席一面のクラップも軽快なサウンドにマッチして心の弾みが聞こえるようだ。


「初の神田明神ホールでのライブ。今日はバンドセットでのライブということで楽しみにしていました。皆さんに会えるのもすごく嬉しいです。本当に本当にありがとうございます。今日は10周年を記念したライブということで、新旧問わずの選曲になっているので、いろいろ思い出しながら最後まで楽しんでもらえたらなと思います」──新山詩織

最初のMCの後は2ndアルバム『ハローグッバイ』から2曲。ライブでは久々の演奏となった「好きなのに」、ファンや家族や友人の存在によって自分を肯定できるようになった20歳前夜の思いが綴られた「Hello」を披露。「Hello」のエンディングでは新山のリードによって会場全体が頭上で腕を左右に振り一体感を高めていった。

続いて、上原俊亮(Dr / このライブにベースで参加した森光奏太とデュオ“dawgss(ドーグス)”で先ごろデビュー)のカウントを合図に、最新アルバム『I’m Here』収録曲「New」へ。同時に青空を想起させる鮮やかな照明に切り替わった。シンプルなリフをベースに、キャッチーな歌メロが駆け抜けていく快活なバンドサウンドが心地良い。彼女の新たな心の芽生えを感じられる特別な一曲に対して、エールさながらオーディエンスが鳴らす手拍子も一層大きく響き渡った。


大いに盛り上がった後は一転、和久井沙良(Pf / 先日ソロアルバムを発表)と2人だけのアコースティックコーナーへ。まずは和久井の伴奏に乗って、復帰後最初に発表された「Smile for you」を丁寧に歌い上げた。さらにジャジーで芳醇なピアノソロを挟み、新山と和久井で届けられたのはYUIのカバー「It’s happy line」。この夏、アコースティックライブツアーで全国を一緒に回った二人は、細かい感情の起伏までぴったり寄り添わせながら、リリカルな世界を見事に描く。もう一曲、他のバンドメンバーも加わり披露したカバーはThe Birthdayの「涙がこぼれそう」。愛用のテレキャスターを掻き鳴らしながら実に楽しそうに歌う新山は、最も素に近い彼女本来の姿なのかもしれない。

「YUIさんとThe Birthdayは私にとってのヒーローというか、本当に“My Roots”で。中学時代、高校時代からずっと聴き続けてきた方達です。本当に本当に心から尊敬している、大好きな人たちの曲をここで皆さんに聴いていただけてすごく幸せでした。そして、次のオリジナル曲はライブではもう何度も歌ってきたお馴染みの曲。今日この場で皆さんに届けられたらと思います」──新山詩織

そう語り、デビュー曲よりも前に歌詞を書いたという思い入れの深い曲「Looking to the sky」を熱唱。新山の歌に呼応し合うイシイトモキ(G)のエモーショナルなギターソロも聴きどころとなった。

ライブ中盤は復帰後に発表された3曲を配置。盟友・山崎あおいとのコラボ作「Free」では持ち前の透明感と温かみ溢れる歌声を響かせ、自身にとっての究極のラブソングという「ミルクティー」ではこの曲が生まれた礎にもなっているファンに向けて優しく語りかけるように歌う。そしてコロナ禍に誕生したという「Do you love me ?」では客席との心の距離をより一層縮めたハートフルな時間を紡いでいった。

終盤は未来への決意表明とも取れる映像に続いて、10年前の今日発表したアーティストデビュー曲「だからさ」をあの頃よりも逞しくなった歌声で、堂々と歌い上げた。さらに「帰り道」「絶対」と運命が動き出す瞬間の生々しい感情をぶつけた2曲を熱く届け、ラストはロックナンバー「Everybody say yeah」。ここまでじっくり聴かせる楽曲が多かったが、最後は「行けますか? もっと行けますか?」と激しくアジテートするなど一気にロックモードに転換。この日のクライマックスを迎え、盛大に本編の幕を閉じた。


高揚感が立ち込めるフロアにすぐさま起こったアンコールのクラップ。これに応えて1人でステージに戻ってきた新山のはにかんだ笑顔は十代の頃と変わらない愛らしさがあり、ふとした仕草に飾らない彼女らしさが溢れている。

深々とお辞儀をして改めて感謝の想いを伝えて、2023年に向けての発表があった。来春にサブスク解禁と、アニバーサリー企画盤をリリースするというもの。アニバーサリー企画盤収録予定の新録のうち、数曲を森光奏太(B)がアレンジを担当するほか、今回のバンドメンバーがレコーディングに参加したことを告げると、客席から喜びの拍手が湧き上がった。

「感謝しきれないくらいの『ありがとう』が、今、私の中に溢れています。4月にメジャーデビュー日が控えていますが、そこに繋げられるように、最後はデビュー曲で終わりたいと思います」──新山詩織

自身のルーツをテーマにしたステージのセットリストを締めくくったのは、ライブのラストソングとして定番化しつつあるメジャーデビュー曲「ゆれるユレル」。多くを語らずとも万感の想いが溢れる。バンドと渾然一体となった気迫溢れる歌声から、10周年の軌跡が十分伝わってきた。アニバーサリーだからといって豪華な演出を施すこともなく、感慨を述べる特別なMCが用意されているわけでもない。ただただシンプルに歌と演奏で、ありのままの今を届ける。彼女らしい節目のライブは、こうして幕を閉じた。

2023年4月で復帰から丸2年。音楽以外の社会勉強も重ねて成長した彼女だが、これからも人間として、女性として、まだまだたくさんの経験を積んでいくことだろう。どんな作品を作り、歌っていくのか。シンプルゆえにアーティストとしての本質が浮き彫りになった直球勝負のステージを目の当たりにして、今後のさらなる進化に期待が高まった。

撮影◎達川範一

■<新山詩織 10th Anniversary live 〜My Roots〜>2022.12.12(月)/神田明神ホール SETLIST

01. Don’t Cry
02. 「大丈夫」だって
03. 好きなのに
04. Hello
05. New
06. Smile for you
07. It’s happy line (YUIカバー)
08. 涙がこぼれそう(The Birthdayカバー)
09. Looking to the sky
10. Free
11. ミルクティー
12. Do you love me?
13. だからさ
14. 帰り道
15. 絶対
16. Everybody say yeah
encore
en1. ゆれるユレル

▼サポートメンバー
森光奏太(B)
上原俊亮(Dr)
イシイトモキ(G)
和久井沙良(Key)

■イベント<東京オートサロン2023>

2023年1月15日(日) 幕張メッセ イベントホール
※ライブステージ<TOKYO AUTO SALON 2023 “AUTO SALON SPECIAL LIVE“>に出演
※新山詩織 出演日
※TOKYO AUTO SALON入場券(3,000円/税込)で観覧可能
https://niiyama-shiori.com/news/index.html

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