【ライブレポート】defspiral、「2023年をみんなで迎えにいきましょうね。新しいdefspiralです」

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名古屋、大阪と回った<defspiral tour 2022 "CARPE DIEM”>のツアーファイナルが12月26日、渋谷REXで行われた。

◆ライブ写真

東名阪の3本ではちょっと物足りない気もするが、元々は12月26日、MASATOの誕生日当日にライヴを行うはずだった予定を急遽、名古屋、大阪の公演も決めてツアーに切り替えたという経緯がある。つまり、defspiralのライヴへの情熱、ステージにもっと立ちたい欲求が今、高まっているということだ。それは渋谷REXに集結したFreaks(=ファンの呼称)も同じだったはず。コロナ感染拡大予防の規制も以前より緩和され、かなりギュウギュウのフロアは、開演前から熱気に包まれていた。今年の冬は寒さが厳しいというのに。

このツアーのために新しく作ったSEが流れる中、メンバーが登場、定位置につくと耳新しい演奏からライヴはスタート。イントロでは何の曲なのかわからぬまま唄が始まり、ようやく「MASQUERADE」だと知る。幾度も披露している楽曲も違った魅せ方をする、そういったギミックを散りばめるのも、defspiralらしい粋なサプライズだ。それも今回はノッケからとくれば、お客さんも度肝を抜かれたようで、テンションも一気に爆上がり。“踊れマスカレード”の歌詞に併せて、Freaksが手を掲げてリズムに合わせ、その場でジャンプするお馴染みのノリかたも、いつもより激しい。


「ようこそ! 今夜も心の底から楽しんで行きましょう!」(TAKA)

TAKA(Vo)の挨拶から和樹(Dr)にスポットが当たり、華やかなドラミングで注目を集めつつ「Arcorimancer」へ。客席に向けるTAKAの強い視線の破壊力に圧倒されつつ、それに答えるように拳を振り上げるFreaks。そんな客席の熱量に触発されてるのだろう、感情の赴くままに要所要所で発せられるTAKAのフェイク、いつもより多い気がする。冒頭の2曲で会場を温めた後に続けたのは、しっとりめの「STARDUST」、そこから流れるように「MOBIUS」へと続ける。この2曲は同じ“GALAXY”というテーマで作られた別々の作品に収録されているにも関わらず、元からニコイチかのごとく、ごくごく自然に流れていくセットリスト。そこには毎度毎度、感心させられる。

穏やかなセクションの後、両手を広げたMASATO(G)が観客の注目を集め、迫力あるシャウトとTAKAの冷静な唄の掛け合いからスタートした「Babylon」。妖艶な雰囲気を漂わせながら、時にファルセットでしっとり歌うTAKAと、それに相反するエッジの効いたサウンドが織りなす曲の世界観はdefspiralが得意とする闇の部分。繰り返しながら熱量を挙げていくこの曲では、MASATOのギターソロは、いつも以上にメラメラと燃えていた気がする。


「あらためましてファイナルへようこそ。今夜もたっぷりと一緒に楽しんでいきましょう」(TAKA)

短めのMCを挟んで、聞きなれないベースのちょっと跳ねるRYO(B)のフレーズと和樹のドラム、そこにテンションコードでMASATOがリズムギターを乗せる。defspiralサウンドの一部分といってもいい同期の音はなく、何の曲かもわからないままTAKAが歌い始め、やっと「PULSE」だとわかる。本来、突き抜けるような疾走感のあるこの曲を、こんなにもムーディーな曲に変えてしまうとは。様変わりした「PULSE」に驚きつつも、そこに無理が感じられないのは、元々、エロティシズムな要素が歌詞に盛り込まれているからかもしれない。むしろ、今回のツアーで披露されたアレンジでは、よりその部分が強調された気がする。

その雰囲気のまま披露されたムーディーな「花とリビドー」も、彼らのキャリアをもってこそ成立する大人な表現。中盤戦、「COLD SLEEP」を情感たっぷりで魅せた後、披露されたのは新曲。サビ始まりのミディアムテンポのこの曲は、ありったけのdefspiralらしさを盛り込んだような膨よかなサウンド、そして一筋縄ではいかないコーラスワーク。これまでも彼らの半音をうまく用いた胸を打つメロディーに幾度となく心を鷲掴みされてきたが、この新曲もまた違うアプローチで聴き者の感情を大きく揺さぶる大曲といえそうだ。そのスケールの大きさと、そこはかとない悲しみに襲われるような感覚。この曲の演奏を聴いて、映画のバッドエンドのシーン、エンドロールが頭に思い浮かんだのは筆者だけではないだろう。音源化が非常に楽しみだ。


「声は心の中でしか発せられませんけど、手がちぎれるまで拍手して帰ってください。いいね、割れんばかりの拍手。本当にみんなの想いを拍手で伝えてください。いいか!」(TAKA)

一旦、静まった会場を和樹の軽快なビートが焚き付け、MASATOの不思議なギターリフが踊らせた「PARADISE」。声は出せずとも、生の音を浴びて踊れば、まごうことなくココはパラダイス。「BREAK THE SILENCE」で頭を振り、「AURORA」で駆け抜ける。

「CARPE DIEMツアーは、今その瞬間を楽しもう、というテーマでやってきてますけど、今日も最高の瞬間をたっぷり感じてます。ライヴは、かけがいのない時間だと感じます。こうやってみんなが集まって最高の時間を過ごせていることが最高に幸せです。これからも、こういった時間を、月日を、年月を一緒に重ねていきましょう。そして時間を重ねていって、この人生は夢のような時間だったと言えるように、一緒に歩んで行きましょう」(TAKA)


その言葉の意味をより印象づけるかのように演奏された壮大なナンバー「GALAXY」、本編最後はRYOのオクターブ奏法のベースでグイグイ引っ張って行く「IRIS」でハッピーに幕を閉じた。掌が真っ赤になるくらいのアンコールを求める拍手に応え、再びステージに登場したのはMASATO。

「バースデー・ボーイ、MASATOです。まだボーイでいい(笑)? 楽しんでますか? 1年がめっちゃ早いですね。それだけに悔いが残らないように生きていこうと思います」(MASATO)


どちらかといえばMCが得意なほうではないMASATOがステージで孤軍奮闘、要所要所で沸き起こるFreaksの温かい拍手に支えられながら話し、その後RYO、和樹、バースデーケーキを手にしたTAKAが登場、一気にお祝いムードに。

「キミと出逢ってから27回目の誕生日ですよ」(RYO)
「ここまできたら死ぬまで付き合って…」とMASATOが言い終わらないうちに、「イヤです(笑)!」と被せてくるRYO。この絶妙な間合いは長年の活動で育まれた、よき関係があってこそ。「じゃあ、新入りの和樹からも」とTAKAに話をふられた和樹からは「お誕生日、おめでとうございます。ちょうど1年前ですよ、一緒のステージに立たせていただいたのは。ありがとうございます」と、あっさりめのコメント。これに関しては付き合いの深い浅いではなく、飄々としてる彼のキャラクターのせいだ、とFreaksは理解しているようで、笑いを押し殺しながら頷いている。そして締めの言葉はTAKAから。MASATOとはいちばん古い仲である。


「MASATOとは高校時代からの付き合いで。僕のほうが1年お兄さんなんですけど、後輩に生意気そうなヤツが入ってきたなと思ったんですね。でも、お互いバンドが好きで、上を目指そうというので、ここまで一緒にやってきました。あの時、出逢わなければ、こんなバンド人生はなかったわけですよ。出逢ってくれてありがとう!」(TAKA)

TAKAの言葉を受けて「そんなこと言われたら嬉しいな」と照れるMASATO。今年は敢えて、主賓が唄ったり踊ったりするような奇抜な企画はなかったものの、普段のMASATOなら絶対やらない曲の前フリをすることになっていたようで、唐突に音楽の話へ方向転換。

「曲を作る時はテーマを作るんです。何かしら1つ、明るい曲にしようとか、ライヴで盛り上がるような曲にしようとか、何かしらのテーマを。次の曲は、応援してくれるみんなの心の支え、拠り所、みんなに寄り添えたらいいなと思って作った曲です」(MASATO)

という曲紹介で演奏されたのは「ESTRELLA」。スケールの大きなこの曲は、正にMASATOが目指したものが形になっているなと再認識。defspiralのサウンド、TAKAの唄で、会場のFreaksをやわらかく温かくふんわりと包み込んだ。アンコールの最後には、いつしかライヴでテッパンの盛り上がりを見せるようになった「LOTUS」も演奏。さらに2回目のアンコールのラストでは、「2023年をみんなで迎えにいきましょうね。新しいdefspiralです」という言葉に続き、今夜は2つめの新曲を初披露。最後の最後に、defspiralは次へ向かって進んでいる姿をしっかりと魅せ、Freaksの希望を未来へと繋いだ。


ライヴの最後には2023年の予定、和樹バースデーライヴ<かじゅ誕>や3月からのツアースケジュールを発表。楽しい瞬間がこの先にもたくさん待ち受けていることを示してくれた。思えば2022年はdefspiralにとって激動の1年だった。ちょうど1年前の2021年12月26日のMASATOバースデーライヴにサポートドラマーとして同じステージに立った和樹が5月のバンド結成12周年ライヴで正式加入したのも今年の出来事。人生同様、バンドの歩みも波瀾万丈だが、何が起きても決して心折れることなく、しなやかな強さをもって前へと進むさを今宵も体現してくれた。これから先、近い未来では新しい音源もきっと発表されるだろう、きらめく瞬間もたくさん待ち受けているだろう。2023年も、defspiralとそのすべてを共有していけると確信した。

文◎増渕 公子[333music] 
写真◎@Lc5_Aki

2023年ツアー情報

3/12 (日)初台DOORS
3/18 (土)柏 Thumb Up
3/19 (日)西川口 Hearts
3/24 (金)新横浜 NEW SIDE BEACH!!
4/8 (土)福岡 DRUM SON
4/15 (土)江坂MUSE
4/16 (日)姫路Beta
4/22 (土)浜松 FORCE
4/23 (日)名古屋 ell.FITS ALL
5/5 (金・祝)川崎セルビアンナイト
5/12 (金)HEAVEN’S ROCK 宇都宮 2/3 (VJ-4)
5/13 (土)仙台 Space Zero
5/20 (土)札幌 BESSIE HALL
5/21 (日)札幌 BESSIE HALL
5/28 (日)TOUR FINAL Veats SHIBUYA

◆defspiral オフィシャルサイト
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