【ライブレポート】Mrs. GREEN APPLE、全14公演のZeppツアー完遂「次の境地に進めた気がした」

ツイート
no_ad_aritcle

年の瀬も押し迫った12月27日、Mrs. GREEN APPLEが全国ツアー<Mrs. GREEN APPLE Zepp Tour 2022 ゼンジン未到とリライアンス~復誦編~>ファイナル公演を東京・Zepp DiverCityで開催した。

◆Mrs. GREEN APPLE 画像

約1年8ヵ月の活動休止期間を経て、彼らは2022年3月18日に“フェーズ2”の開幕を宣言し、メジャーデビュー記念日である7月8日には、一夜限りのアリーナワンマン<Mrs. GREEN APPLE ARENA SHOW “Utopia”>を開催。これが新体制で迎えた約2年半ぶりのライブであった。同日にはミニアルバム『Unity』、11月9日に10枚目のシングルとして映画『ラーゲリより愛を込めて』の主題歌「Soranji」をリリースするなど、活動再開するや否や、相変わらずの“爆速”ぶりで制作活動を展開してきたが、多くのファンが待ち望んでいたのは、やはり彼らの歌を直に聴くことができるライブツアーだっただろう。


そんな期待に応えるべく、Mrs. GREEN APPLEは11月9日、神奈川・KT Zepp Yokohamaを皮切りに全14公演のツアーをスタート。そのタイトルは、彼らがアマチュア時代から継続的に行ってきた自主企画、いわゆる<ゼンジン未到>だ。

<ゼンジン未到と○○○>と銘打たれたライブは、これまで観客と距離感の近いライブハウスを中心に開催。今回、復帰活動再開後初のツアーというタイミングで選ばれた会場は、観客と目を合わすことができ、リアルな空気感を共有できるキャパシティの全国のZepp。このあたりにも、Mrs. GREEN APPLEがこのツアーで多くのファンと直接コミュニケーションをはかりたいという想いが表れていた。


しかも幸いなことに11月中旬、“音楽コンサートにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン”が改定。コロナ禍により、長い期間ライブハウスでも指定席公演が行わることが多かったが、この日はスタンディングの観客がびっしりとフロアを埋め尽くし、歓声を上げられる(マスク着用で、合唱等の禁止は従来通り)ようになっていたことは、Mrs. GREEN APPLEのライブを心待ちにしてきたファンにとって、より喜びが増幅しただろうし、それと同時に、少しずつ日常が戻りつつあることも実感できたに違いない。Mrs. GREEN APPLEもまた、ツアーを行うということでミュージシャンとしての日常に戻ってきたと感じていただろう。そう、実質的な“フェーズ2”開幕のファンファーレとして行われた<Utopia>ともまた違う、ミュージシャンとしての日常を取り戻すツアーだったのだ。

こうした様々なバックグラウンドが幾層にも積み重なったツアーであったが、ファイナル公演のステージを観て率直に感じたことは、とてもシンプルに、Mrs. GREEN APPLEが驚くほどに骨太のバンドになったということだった。分かりやすく例えるならば、MLBで大活躍している大谷翔平選手。国内プロ野球で活躍していたころから身体の大きな選手ではあったが、当時の映像と見比べると、米国に渡って身体がひとまわりもふたまわりも大きくなっていることに気付くだろう。同じようにMrs. GREEN APPLEもこの日、バンドの筋力を以前よりも大幅にアップさせたと強く感じさせるライブを展開したのだ。




その要因は何だろうか。考えるに、新しい編成となったことで生まれた新たなに3人の絆、ツアーがもたらしたバンドの成長、そして活動休止期間中に積み重ねたスキルアップという3つが挙げられる。

<ゼンジン未到とリライアンス~復誦編~>は、そこに至るまでに<Utopia>と夏フェスを経て、ステージ上の大森元貴(Vo, G)、若井滉斗(G)、藤澤涼架(Key)が形作るトライアングルが、演奏面はもちろん、ステージ上のパフォーマンスやMCまで含め、とても強靭なものにアップグレードされていた。

そのトライアングルに森夏彦(B)、クラカズヒデユキ(Dr)という強力なサポートメンバーが邂逅。さらに今回のツアーには<Utopia>でドラムを叩いた神田リョウがスーパーバイザーとして参加しており、“メンバー+サポート”という関係性ではく、全員が同一のレベルで“チーム”としてバンドの土台をしっかりと固めていた。これは、単に練習を重ねるだけではなかなか得られるものではない。やはり実際に観客を目の当たりにして演奏を行い、全国各地をツアーで周ることで生まれる一心同体感だ。ライブツアーは、やはりバンドにとって重要なものであり、バンドを強くさせるものなのだ。

もちろん、そこには音楽家としてのスキルも必要不可欠だ。その点に関しても、3人のパフォーマンスはとても素晴らしいものであった。



まず、藤澤。以前から彼の演奏力はとても高かったが、この日のステージでは、表現力の豊かさと表現の幅広さがより一層、大きく増していた印象だった。使用機材はヤマハCP4 STAGEとノードNordStage2、それにアレシスの小型MIDIキーボードとシンプルだが、「ニュー・マイ・ノーマル」での軽やかで繊細なピアノの響きや、新アレンジで披露された「パブリック」では大森と呼吸を合わせながら実に丁寧に音を奏でており、ピアノを演奏しているという以上に、音楽と一体になっているかのような、そんなシーンにとても惹きつけられた。加えて、ステージを上手から下手へと駆け抜け、観客との一体感を生み出す彼のパフォーマンスもMrs. GREEN APPLEのライブに欠かせない重要な要素だ。

そして、若井。彼は今回、トレードマークであるギブソン・レスポールやストラトタイプのギターに加え、このツアーでは新たに手に入れたビンテージのギブソンES-335を多くの曲でプレイ。そして、「No.7」の中盤ではハードにギターを歪ませると、「アボイドノート」ではタッピング、続く「ダンスホール」で小気味良いカッティングを聴かせる など、プレイ面でも大きくスキルアップしていた。ただそれ以上に注目すべきは、彼が全身で発する“ギターヒーロー”感だ。大森の歌を支えるだけでなく、「オレを見ろ!」と言わんばかりの立ち振る舞いは、Mrs. GREEN APPLEのライブをより一層カッコいいものに引き上げていた。



ギターに関して言えば、若井も大森も足元のエフェクターを極力排除し、若井はAMT WH-1(ワウ)とボスTU-3 (チューナー)のみ、大森に至ってはエフェクターのみならずギターアンプをステージ上に置かないセッティングであった(ちなみに、大森もまた大半の曲でギブソンES-330をプレイしていた)。2人のギターサウンドとのマッチングが素晴らしく、非常にクリアで、かつエッジの鋭さと太さを両立させており、リズム隊の強力なグルーヴと、藤澤が奏でるレンジの広いピアノ&シンセの中でも埋もれない、主張の強いギターサウンドを生み出していた。

そうした解像度の高いバンドサウンドの上で大森は、まるで自分自身の内面をさらけ出すかのように、実直に、かつ感情豊かなヴォーカルを聴かせてくれた。それぞれの歌が持つストーリーの起伏を表情豊かに表現しながら、時には観客に語りかけるように身振り手振りを交えて歌う姿が実に印象的。元々、彼は歌の表現力、ピッチ感、ハイトーンの艶やかさが大きな魅力であったが、声にさらなる力強さと芯の太さが加わったことで、キーが低めの「藍」や「インフェルノ」(Aメロ)など、とても奥行を感じさせるメロディを聴かせてくれた点も注目だ。


またライブ中盤、バラード調にリアレンジされた「青と夏」、大森がフィンガーピッキングでES-330を爪弾きながら感情を吐露するように歌った「僕のこと」は、ある意味でこの日のクライマックス。そしてアンコールの最後、「この曲を書けて、リリースすることができて、僕が、そしてMrs. GREEN APPLEが次の境地に進めた気がした」(大森)と語って歌われた感動的な「Soranji」によって、2022年のMrs. GREEN APPLEのライブは幕を閉じた。

「去年の今頃って、ものすごく不安じゃなかった?」──大森元貴
「いやぁ、本当にそうだった……」──藤澤涼架
「うん、間違いないね」──若井滉斗

「Soranji」前のMCでさらりと交わされた3人の会話だったが、この何気ない会話に、3人が過ごしたここまでの2年半が凝縮されていたように感じた。Mrs. GREEN APPLEがどうなるのか、ファンはとても不安だったろうが、実のところは、彼ら自身が一番不安だったのかもしれない。ただ結果論かもしれないが、3人がこうして自己を高められたのも、そしてMrs. GREEN APPLEに対する意識、役割、覚悟をそれまで以上に確固なものとできたのも、勇気を持って一度バンドとしての活動を止め、20代の貴重な時間を有意義に過ごしてきたからこそ。だからこの日、ツアーファイナルのステージは、まさしく2020年からの、彼らとファンの2年半という時間をを総括するライブだったのだ。


最後の曲を歌い終え、フロアに向かって深々と頭を下げると、手を振りながらステージから去っていった大森、若井、藤澤。その様子は、笑顔がはじけた<Utopia>時とは対照的に、とても凛々しく、そして何かを掴んだかのように引き締まった表情をしていた。やり切った感と達成感、充実感がきっとそうした立ち振る舞いをさせたのだろう。その姿を見ると、バンド結成10周年のアニヴァーサリーイヤーとなる2023年、彼らが新しくどんな物語を描き、そして飛躍していくのかを想像するだけで、ワクワク感が止まらない。2023年もまた、Mrs. GREEN APPLEから目が離せない一年となりそうだ。

取材・文◎布施雄一郎
撮影◎鳥居洋介

■<Mrs. GREEN APPLE Zepp Tour 2022ゼンジン未到とリライアンス~復誦編~>12月27日/東京・Zepp DiverCity セットリスト

01. 藍
02. 灯火
03. ニュー・マイ・ノーマル
04. CHEERS
05. How-to
06. インフェルノ
07. No.7
08. soFt-dRink
09. 青と夏
10. 僕のこと
11. 私は最強
12. Soup
13. アボイドノート
14. ダンスホール
15. スターダム
16. パブリック
17. フロリジナル
18. CONFLICT
encore
en1. StaRt
en2. Soranji




■<Mrs. GREEN APPLE 対バンライブ>

▼2023年
4月4日(火) 東京・Zepp DiverCity
4月5日(水) 東京・Zepp DiverCity
※公演情報及びチケット受付詳細は後日発表

■<Mrs. GREEN APPLE ARENA TOUR 2023>

▼2023年
7月08日(土) 埼玉・さいたまスーパーアリーナ
7月09日(日) 埼玉・さいたまスーパーアリーナ
7月15日(土) 大阪・大阪城ホール
7月16日(日) 大阪・大阪城ホール
8月03日(木) 愛知・Aichi Sky Expo
8月04日(金) 愛知・Aichi Sky Expo
※公演情報及びチケット受付詳細は後日発表

この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス