【ライブレポート】岸谷香、ビッグバンドを迎えた年末公演で全身から溢れていた“歌う喜び”

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Billboard Live Tokyoで12月30日に行われた岸谷香による<岸谷香 KAORI PARADISE 2022 年末スペシャル>。総勢9名のビッグバンドを迎えたこの公演のうち、1st Stageの模様をレポートする。

開演時間を迎えて、楽屋から現われたsugarbeans Jazz Orchestraの湯本淳希(Tp)、大泊久栄(Tp)、Tocchi(Tb)、橋本和也(A.Sax, Fl)、河村緑(T.Sax, Fl)、中村尚平(B.Sax, Fl)、岡本啓佑(Dr)、千ヶ崎学(Ba)、sugarbeans(Pf, Arr)。階段をゆっくりと降り、客席内の通路を歩きながらステージへと向かう彼らを大きな拍手が包む。そして演奏が始まり、岸谷香(Vo)が登場すると、観客の手拍子の波動が会場を心地よく震わせた。ハンドマイクで「パレードしようよ」を歌う姿が、眩しいくらいにキラキラしている。絶妙にビートを乗りこなし、パンチを利かせつつも、爽やかな明るさも帯びている歌声は、かけがえない。スウィングするビッグバンドのサウンドによって、お馴染みの曲が新鮮な色合いを浮かべる様も楽しくて仕方ない。今回のライブが特別なひと時となることを予感させられるオープニングであった。











「あと1日で2022年が終わろうとしていますが、忙しい年末にお集まりいただきまして本当にありがとうございます。今日はもう26、27年歌ってないような曲、初めて歌う曲も待ってます。次に歌う曲はプリンセス プリンセスの時代のナンバーです。プリプリの夏の曲と言えば「世界でいちばん熱い夏」。この曲の陰に隠れてなかなか歌ってもらえないかわいそうな夏の曲があるので、素敵なバンドでみなさんにお届けしたいと思います」と語ってから披露された「THE SUMMER VACATION」。青い空、白い雲を感じさせるサウンドが躍動する中、どこまでも伸びていくかのように響き渡った歌声。首に巻いたピンクのストールを握りしめながら優雅に揺らし、歌う喜びを全身に溢れ返らせる姿に引き付けられずにはいられなかった。その次に届けられたのは、1994年に“奥居香”名義でリリースされたソロアルバム『Renaissance』の曲「ある朝魔女になってたら」。ライブで歌うのは27年ぶりだったそうだが、奥行きの深い世界を体感できる曲だった。起伏に富んだ展開を遂げる中、多彩なニュアンスを浮かべる歌が、無数の情景を想像させてくれる。エンディング間際のソウルフルな歌声は、悲しみを心の底に抱えながらも力強く生きる女性の姿を浮き彫りにしていた。









東京ウインドブラス・オーケストラのコンサートに行き感銘を受けた直後、彼女の作品やライブを支えているsugarbeansに連絡して、今回のビッグバンドによるライブを提案した旨を語ったMCタイム。特別なバンド編成は、その後も素晴らしい演奏を届けてくれた。ロマンチックなサウンドに包まれながら、温かな歌声を響かせていた「スターライト・セレナーデ ~星光小夜曲~」。1995年にリリースされた映像作品『奥居香 音楽会』の特典CDに収録されたこの曲は、ライブで歌われたことが一度もなかったのだという。「曲が喜んでいると思います」と言って歌い始めていたが、音楽活動の中で生み出してきた1つ1つの曲に深い愛情を持っていることを感じる言葉だった。

モータウン風味のベースから始まり、他の楽器パートも合流した瞬間、観客の心を一気にときめかせているのを肌で感じた「Diamonds <ダイアモンド>」。ステージを見つめる人々の胸の内には、この曲を聴きながら歩んできた日々の思い出が溢れ返っていたのではないだろうか? 躍動する手拍子が、まるで大合唱のような一体感を帯びていた。そして、「恋は素晴らしい」は、バンド演奏と歌がエネルギーを豊かに交わし合っていた曲として、ありありと思い出される。様々な場面を描き上げる展開は、ミュージカルのようなドラマ性を体感させてくれた。





完璧なタイミングで打ち鳴らされる観客の手拍子が、永遠の名曲の1つであることを再確認させてくれた「OH YEAH!」。椅子に座りながら身体を揺らして踊っている人もいたが、華やかなビッグバンドのアレンジは、ワクワク感を桁外れに掻き立ててくれた。そして、「たくさんの拍手をみなさんからいただいて、それをガソリンにして1年間走ってきました。来年もまた、私とバンドのみんなに大きな拍手をガソリンだと思って注いでください。本当に1年間ありがとうございました! 最後の曲は“愛に溢れる優しい1年でありますように”と心を込めて、プリンセス プリンセスのナンバーの中でも一番のバラードかなと思うこの曲をお届けします」という言葉を添えた「ジュリアン」が本編を締め括った。スタンドマイクに向かい、一心に響かせる歌声がとても優しかった。



アンコールを求める手拍子に応えてステージに1人で戻ってきた岸谷は、小学生の頃から憧れていたミュージシャンと会った12月6日の出来事について話し始めた。小学生だった“奥居香”を構成していたのはゴダイゴ、宮川泰が手掛けたサウンドトラックを買っていたくらい大好きだった『宇宙戦艦ヤマト』や松本零士作品の数々、ショパン。そんな憧れの存在の1人であるゴダイゴのタケカワユキヒデをラジオ番組『岸谷香 Unlock the heart』にゲストとして招いた際、小学校6年生の頃の彼女がピアノでコピーしていた「銀河鉄道999」を当時と同じアレンジで一緒に歌ったのだという。「歌った自分を客観的に見て、“まるで私の曲みたいだな”って思ったんです。タケカワユキヒデさんというメロディメイカーが私の一部として存在していると思ったんですね。タケカワさんからいただいたエッセンスが入ってプリプリがああいう音楽になって、それを聴いた次の世代の人たちが……っていうのが、“歴史ってこういうことだな”って感動したんです。“タケカワさんのエッセンスをいただいて自分になり、そして自分が音楽や喜びをちょっとかもしれないけどお届けすることができて”っていうのが繋がっていくんだなあと」──このMCの後にピアノを弾きながら歌った「銀河鉄道999」は、憧れて止まない音楽に少しでも近づきたくて小6の少女が一生懸命にコピーしていた様を想像させてくれた。好きな音楽をコピーして歌うというのは、音源を聴くのとはまた別の喜びに繋がる。「憧れの世界が自分の中により深く沁み込んできた!」という感覚を噛み締められる行為だ。かつての彼女も、そういう幸福を感じながらピアノを弾いて、歌っていたのだと思う。ミュージシャンとしての原点、ピュアな原動力を感じるラストの曲だった。少女時代から変わらずに抱き続けている音楽に対する深い愛情は、これからも彼女を突き動かしていくのだろう。





文:田中 大
撮影:MASAHITO KAWAI

■セットリスト

<岸谷香 KAORI PARADISE 2022 年末スペシャル>〜1st Stage〜
M0. OPENING/Instrument
M1. パレードしようよ
M2. THE SUMMER VACATION
M3. ある朝魔女になってたら
M4. スターライト・セレナーデ ~星光小夜曲~
M5. Diamonds <ダイアモンド>
M6. 恋は素晴らしい
M7. OH YEAH!
M8. ジュリアン
En. The Galaxy Express 999

■イベント情報

■<岸谷香 感謝2023>
出演:岸谷 香/Unlock the girls
ゲスト:荻野目洋子/藤巻亮太
公演日:2023/2/23(木祝)
会場:EX THEATER ROPPONGI
開場 16:45 開演 17:30
席種・料金(税込):全席指定 9,000円 (ドリンク代別)
一般券売日:12/17(土)
【問い合わせ】
DISK GARAGE 050-5533-0888(平日12:00-19:00)

■<TOKYO GUITAR JAMBOREE 2023>
2023年3月5日(日)
会場:両国国技館
https://www.j-wave.co.jp/special/guitarjamboree2023/
【問い合わせ】
DISK GARAGE 050-5533-0888 (平日12:00~15:00)

■<The Unforgettable Day 3.11-2023->
日時:2023年3月11日(土)
開場 15:00 / 開演15:30
会場:仙台PIT
出演者:岸谷香CHEMISTRY、ゴスペラーズ、一⻘窈、水谷千重子、宮沢和史 (50音順)

<一般発売>
2023年1月22日(土)10:00〜
チケット料金:全席指定 6,600円(税込・入場時ドリンク代別途必要) ※1人4枚まで購入可能
【問い合わせ】
GIP https://www.gip-web.co.jp/t/info

■<祝・日比谷野音100周年 「オールナイトニッポン MUSIC10 Sunset Party」」>
2023年4月23日(日)
会場:日比谷野外大音楽堂
開場:15:30/開演16:30
出演:森山良子、鈴木杏樹、名取裕子、森高千里、岸谷香、渡辺満里奈

一般発売日:2023年1月28日(土)10:00
チケット料金:全席指定 9,500円(税込)
【問い合わせ】
キョードー東京 0570-550-799 ※オペレータ受付時間(平日11:00〜18:00/土日祝10:00〜18:00)

オフィシャルHP:https://event.1242.com/events/music10/

■プリンセス プリンセス ライヴ・フィルム上映

40周年を記念して、全国16都市21館の映画館にて1日限定で上映されるプリンセス プリンセスのライヴ・フィルム。今回は3か月に渡り、1月29日(日)、2月26日(日)、3月21日(火・祝)に開催される。上映第一弾は、1996年に開催された全国47都道府県を廻るツアー『PRINCESS PRINCESS PANIC TOUR’96 解散を遊ぼう』(全50公演16万人を動員)の最終公演で解散ライヴとなる日本武道館公演を完全収録したライヴ・フィルム『The Last Live』の画・音のマスターから最新デジタル・リマスタリングし上映。
2月26日(日)上映作品及び、3月21日(火・祝)上映作品は、後日改めてお知らせされる。

「プリンセス プリンセスライヴ・フィルム『The Last Live』~メンバーの出会いから40周年記念プロジェクト-DIAMONDS STORY-~一日限定上映(第一弾)」
日時:1月29日(日)
開映:17:30
前売券:3,300円(全席指定/税込)
当日券:4,000円(全席指定/税込)
【2023年/日本/DCP/2023最新デジタル・リマスタリング/4:3/2K/2ch/approx175分】

■チケット / イープラス
https://eplus.jp/princess2_thelastlive/

詳細は特設サイトをご覧ください。
https://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/Princess/40th/

※2月26日(日)・3月21日(火・祝)の上映作品は後日発表いたします。

<映画館>全16都市21館
1.北海道|札幌シネマフロンティア
2.宮城|MOVIX仙台
3.埼玉|MOVIXさいたま
4.東京|T・ジョイ PRINCE品川
5.東京|シネマート新宿
6.東京|MOVIX亀有
7.東京|立川シネマシティ
8.千葉|T・ジョイ蘇我
9.神奈川|横浜ブルク13
10.新潟|T・ジョイ新潟万代
11.石川|イオンシネマ 金沢
12.静岡|静岡東宝会館
13.愛知|ミッドランドスクエア シネマ
14.京都|T・ジョイ京都
15.大阪|梅田ブルク7
16.大阪|なんばパークスシネマ
17.兵庫|OSシネマズ神戸ハーバーランド
18.兵庫|MOVIXあまがさき
19.広島|広島バルト11
20.松山|シネマサンシャイン衣山 
21.福岡|T・ジョイ博多

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