【コラム】Kroiの最新シングル「Hard Pool」にみる現代的アイデンティティ

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Kroiが1月9日に最新シングル「Hard Pool」をリリースした。また、LINE CUBE SHIBUYAにて開催された<Kroi Live Tour 2022 “BROADCAST”>のファイナル公演にて、今年3月にメジャー2nd EP『MAGNET』をリリースすることが発表されている。

“モダンなミクスチャー感”は、今や彼らの特長のひとつだが、「Hard Pool」も例外ではない。サイケデリックなギターのソロで始まり、ディアンジェロ(&ザ・ヴァンガード)的なコーラスワークが乗り、中盤からShing02を彷彿させるフロウがドライブし、最後は強烈なジャムセッションで締めくくる。パッチワーク的だが楽曲としての完成度は非常に高く、4分半の中でオールジャンルのDJ Mixを聴いているような感覚にさえなる。構成としては「Fire Brain」に似ているが、「Hard Pool」はよりジャンル的な広がりが感じられる。

彼らの楽曲がDJのミックスと異なるのは、その演奏が極めてアナログなところだ。楽器の鳴らし方ひとつで世界観を覆すことができる。終盤のジャムセッションを聴く限りでは、恐らくこの曲も大いにライブで化けるだろう。



Kroiの楽曲を聴いていると、ポップミュージック(ひいてはカルチャー)の現在地のようなものが見えてくる。

「最近どんな曲を作っても正解っぽくなるから逆にムズイ」。ある日の夜、クラブイベントで友人のプロデューサー/DJとの会話で出てきたトピックである。このとき、私の頭には即座にKroiが浮かんだ。クラブ界隈に限らず、昨今の音楽シーンにはレガシーを再定義・再解釈する潮流があると思われる。直近かつ分かりやすい例がアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』だろう。本作では2000年代のエモ・ロックやオルタナ(いずれもJ-Rock文脈における)が踏襲され、そこへメタルの要素も乗ってくる。要は組み合わせでもって、オリジナリティやアイデンティティを醸成してゆくわけだ。この方法論は、Kroiのそれにも当てはまるだろう。

サブスクやYouTubeの台頭によって、「入手」ではなく「アクセス」が音楽と接する重要な手段になった。レコード屋に行かないと買えなかった音源が、今や簡単にネットの海を漂流するだけで手に入る。その結果、我々が得る情報量は飛躍的に増えていった。が、同時に能動的態度のプライオリティは下がっていった。サブスク側で好きな音楽をアナライズし、我々に提案してくれるので、「好きな音楽」にアクセスしたい場合にはプラットフォームが耳までお届けしてくれる。そうして“選ぶこと”そのものがアイデンティティを形成する上で重要な行為になっていった。

それをバンドとして続けているのが、Kroiである。しかも、彼らは選び続けている。R&Bやファンクを中心に収められた『LENS』(2021年)から、『telegraph』(2022年)で飛躍的に音楽のリファレンスが増えた。そして今回の「Hard Pool」。冒頭でも少し触れたが、今作ではジャンルだけでなく楽曲の構成にすらも広がりを感じる。「Aメロ→Bメロ→サビ」(リフレイン)のようなオーセンティックな構成でなく、たとえTikTokでどの部分を切り取られてもおいしく仕上がりそうなプロダクションだ。

新しさを追求することに使命感を持つアーティストは多い。が、昨今はその“新しさ”のベクトルは実に様々だ。今年3月にリリースされるEP『MAGNET』の全貌はまだ不明だが、我々の予想をはるかに凌駕するものになるだろう。彼らのアイデンティティが、ここからどのように広がるのか注目したい。

文◎川崎ゆうき

New Digital Single「Hard Pool」

2023年1月9日リリース
https://lnk.to/hardpool

<Kroi 2023 "Magnetic" Tour BLUE / RED>

【BLUE】
4月13日(木) 神奈川 KT Zepp Yokohama
4月15日(土) 静岡 浜松窓枠
4月16日(日) 愛知 DIAMOND HALL
4月22日(土) 福岡 DRUM LOGOS w/ BREIMEN
4月23日(日) 福岡 DRUM LOGOS
5月6日(土) 北海道 PENNY LANE24 w/ BREIMEN
5月7日(日) 北海道 PENNY LANE24
5月12日(金) 大阪 Zepp Namba
5月13日(土) 岡山 YEBISU YA PRO
5月18日(木) 東京 Zepp Shinjuku
5月20日(土) 宮城 仙台Rensa
5月26日(金) 石川 金沢AZ
5月27日(土) 新潟 新潟LOTS
【RED】
6月2日(金) 大阪 オリックス劇場
6月23日(金) 東京 NHKホール

■TICKETS
ライブハウス公演【BLUE】 : 前売り ¥4,800(+1DRINK)
ホール公演【RED】 : 前売り ¥5,800

■チケット
プレオーダー(抽選)
〜 1月15日(日)23:59まで
https://eplus.jp/kroi/

■注意事項/備考
※未就学児童入場不可/ / 小学生以上チケット必要
※公演前に発表する注意事項をご確認の上、ご来場をいただきますよう、お願い申し上げます。
※当日は新型コロナウイルス感染拡大防止のガイドラインを遵守し、然るべき安全対策を講じた上で開催されます。
※ガイドラインに合わせて随時レギュレーションを変更する可能性ごさいますことご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

◆Kroi オフィシャルサイト
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