【連載】Hiroのもいもいフィンランドvol.120「もしLinkin Parkが2013年に結成されてたらどんなバンドになってただろうか」

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今フィンランドで人気沸騰中のバイオレント・ポップバンドBlind Channelは2021年ユーロビジョン・ソング・コンテストに圧倒的な支持を得てフィンランド代表で出演、結果はフィンランド勢としては2006年に優勝したLordiに次ぐ好成績の6位に。その後一気に人気大爆発!


Pic:Rauno Liivand

バンドは2013年フィンランド北部のオウルで結成され、翌年フィンランドのWacken Metal Battleで優勝しドイツで開催されたWacken Open Airに出演。2016年デビューアルバム『Revolutions』、2018年セカンドアルバム『Blood Brothers』、2020年サードアルバム『Violent Pop』リリースの後、このユーロビジョンで披露し大ヒットした曲「Dark Side」を含む4作目となる最新アルバム『Lifestyles of the Sick & Dangerous』を昨年夏リリース。12月にはこのアルバムの日本盤がリリースになり、めでたく日本デビューとなりました。彼らは自分たちの音楽をバイオレント・ポップと呼んでますが、一般的にはニュー・メタル扱いかなと思います。

ブレイクのきっかけとなった「Dark Side」は2021年度フィンランドで最も多くストリーミングされた国内の曲にのし上がり、フィンランドのグラミー賞ともいえる昨年のエンマ・ガーラではノミネートされた6部門(イヤー・オブ・バンド賞、イヤー・オブ・ソング賞、イヤー・オヴ・ロック賞、最も多くストリーミングされた国内の楽曲賞、フィンランドの音楽を国外に広めた功績をたたえるイヤー・オヴ・輸出エンマ賞、一般投票による国内バンド賞)すべてを受賞。その後も人気は衰えず、今フィンランドで最もホットなバンドといえそうです。昨年末に予定されていたフィンランド国内ツアー4公演のプロモーターだった会社が秋に倒産というニュースが伝わり、その国内ツアーが危ぶまれましたがヘルシンキとタンペレの2公演は救うことができ、彼ら初の国内アリーナヘッドライナー公演ともいえるヘルシンキのアイスホール公演の前にヴォーカルの2人ヨエル・ホッカとニコ・ヴィルへルムが取材に応じてくれました。

──ニューアルバム『Lifestyles of the Sick & Dangerous』の日本盤リリースおめでとうございます。今の気持ちは?

ヨエル:日本に行くのが待ちきれない。すでにファンがいてくれるのは知ってるけど、まだ1度も行ったことがないんだ。東京が見れたら素晴らしい。それから北海道って場所があること知ってるんだ。俺の苗字がホッカだから(笑)。北海道にも行けたらいいな。

ニコ:日本はいつも俺の心のすぐそばにいるんだ。子供のころから漫画やアニメの大ファンで、漫画の本をいっぱい持ってる。今でも見てるアニメがあるよ。そういうこともあって日本に行くことをとっても心待ちにしている。まずアルバムをリリースして、そのあと日本にライブに行けたらいいなと思ってた。アルバムの評価もいいようだし、次のステップは日本に行ってライブすることだ。

──以前自分のコラムであなたたちのバンドのことを紹介したことがあるのですが、今回はあなた達からバンド紹介してもらえますか?

ヨエル:俺たちは6人の北出身の貧しい男たちのLinkin Park。

ニコ:いやいや俺たち北からやってきた6人のバイオレント・ポップバンドだ。

ヨエル:まさにその通り。

──オウル出身ですよね。

ヨエル:そう。北の境オウルから飛び出してきたポップバンドだ。

──2021年ユーロビジョンのフィンランド代表にダントツの人気で選ばれ、それをきっかけに多くの人に知られるようになったと思うのですが、このユーロビジョンに出ようというのはそもそも誰のアイデアだったのですか?

ヨエル:俺たちのバンドのヨーナスのアイデアだったんだ。ちょうどコロナのパンデミックが始まってライブできないし、何かクレイジーなことしなきゃって話してたら、ヨーナスがユーロビジョンの話を出してきて、そんな馬鹿なことはしないって言ってたんだけど(笑)、幸いに参加してよかったよ。知られる近道になった。

──その後人気爆発したことは驚きましたか?

ヨエル:あぁびっくりしたよ。こんなに大規模に、しかも国際的になんて期待もしてなかった。ヨーロッパでもチケット発売とか、日本にもファンいてくれるし、アメリカにもで、「Dark Side」でこんなにブレイクするとはほんとに思ってもいなかった。期待以上だったよ。

──そのユーロビジョンで披露した曲「Dark Side」は2021年度フィンランドで最も多くストリーミングされた曲になりましたが、この曲はユーロビジョンのために書き上げた曲ですか?それとも次のアルバム用の曲だったのですか?

ニコ:その曲はユーロビジョンのためにというわけでも、次のアルバム用というわけでもなくて、この曲を作った時は特に何も考えてなかったんだ。コロナのパンデミックが始まって、ライブがキャンセルになったりで俺たちはいらついて、そのフラストレーションをどこかで吐き出さなくてはならなくて、普段ならライブで吐き出すことができるけど、それが無理で曲に吐き出したんだ。そのフラストレーションを吐き出すって意味で曲のタイトルが「Dark Side」になった。俺たち音楽的にいらだたせる奴らだから、もし1曲だけ3分間でBlind Channelの曲を何か演奏するってなった時、この「Dark Side」だって曲なんだ。

──このニューアルバムからは「Dark Side」の他にも「Balboa」「We Are No Saints」「Bad Idea」や「Don't Fix Me」など数多くのヒット曲が誕生しましたが、このアルバムの中から一番個人的な曲はどれですか?

ヨエル:俺にとっては「Balboa」がそうだ。なぜならその曲は弱者たちへのサウンドトラックだから。この曲を書き上げた時俺たちまだそれほどビッグじゃなかったセンシティブな時期で、この曲はバンドの存在を総括したような曲だ。「Dark Side」の後にこの曲が大ヒットしたのはとても素晴らしい。Spotifyのストーミング回数をみてもこの曲もうすぐ8ミリオンに達しそうで、それは強いファンベースがあるって意味でもあるし、はっきりとバンド独自の人生が誕生したといえる。

ニコ:俺にとって最も個人的な曲は間違いなく「Bad Idea」って曲だ。以前は曲の中で自分の心を開く勇気がなくて書けなかったことが書かれてるんだ。なのでこの曲を作る工程もリリースするのも緊張した。俺にとっては曲の中で怒鳴ったりどやったりは簡単だけど、自分のセンシティブな面を曲に出すってのはちょっと赤面する感じがして、でも「Bad Idea」でそれを出してみた。幸いにこの曲を作ってよかったよ。素晴らしい曲ができ上がったと思う。

──あなたたちのLinkin Parkのカヴァー「NUMB」が大好きなのですが、よくLinkin Parkと比べられたりしているのを見かけるんですが、比べられることが気になったりはありませんか?

ヨエル:気にはならないよ。Linkin Parkの大ファンだし彼ら以上はいないし。

ニコ:(比べることを)禁止はできない。

ヨエル:俺たちのメンバー構成を見ても6人で、ヴォーカルが2人にDJって彼らと同じ構成になってるし。ただ俺たちはスカンジナヴィア、北欧っていうかちょっとヨーロッパぽいものがあると思う。アメリカ人ではないし。

──確かにあなたたちの曲を聴いてるとフィンランドっぽさが感じられます。

ニコ:そう。暗くて陰な面があるな。

ヨエル:あぁ、そうなんだ。それが俺たちの強さでもある。アイデアはLinking Parkと同じものをやるってことではなくて、Linking Parkにあこがれるのは彼らのいろんなジャンルを総合したパイオニア的な思考なんだけど、彼らは俺たちより20年近く前に結成されていて、もしLinkin Parkが2013年に結成されてたらどんなバンドになってただろうかという考えからバンドを結成した。当時ラジオではLinkin Parkが結成された時とは違う音楽が流れてたのでね。彼らのそのパイオニア的な思考、それがなぜ彼らにあこがれるかの理由なんだ。そしてそれが彼らから学んだことでもある。

──ヨーロッパツアーも行い、アメリカから帰ったところだと思いますが、国外のツアーなどで一番面白かった思い出を教えてもらえますか?

ヨエル:ロサンゼルスにある映画でも知られてるミュージッシャン達の行きつけの有名なウイスキー・ア・ゴーゴーでライブがあったときのことだけど、有名人が2人来てたのに俺たち気が付かなかったんだ。一人はVolbeatのギタリストで、他にスマックダウンの有名なプロレスラーもきてて、ライブ後誰だか知らずに話をしてほめてくれてたんだけど、後でそれが誰だったか聞いて、気がつかなくてちょっと恥ずかしくもあったな。それからベガスで真夜中に起き上がって大通りのカジノで遊ぶ時間が1時間あり、大負けしてしまった(ニコ大笑い)。

ニコ:ロサンゼルスで3週間ほど 30 Seconds to Marsをプロデュースしたこともある人と一緒に曲を作ってたんだけど、俺たちの住まいにやってきて、この辺りは素晴らしい場所で、あそこにジャレッド・レトが住んでてって教えてくれて、え?ってなったり。ハリウッドヒルズだったんだけど。

ヨエル:ロサンゼルスの通りを歩いてたら誰に出会ってもおかしくないよ。そんなことがあるのはロスのみだ。パーティに行ってたら突然アヴリル・ラヴィーンが突然ステージに現れたり、トラヴィス・バーカーがいたりとか。有名人とばったりなんてことがある。映画とかで何度も見てるが、アメリカはクレイジーで不思議の国だよ。日本もきっとまたちょっと違ってそうだと思うけど。

──日本にもいけること祈ってます。では日本と聞いて一番に思い浮かぶことはなんでしょうか?

ニコ:アニメ(笑)。

ヨエル:プレイステーション。子供の頃よく遊んでたんだ。それからLinking Park。日系人のマイク・シノダがメンバーだよね。神秘的だ。純にアメリカ人だけってのはつまらないと思うんだ。他からのエスセティクスが加わるとさらにうまく機能すると思うんだ。俺たちにはそういう意味でフィンランドっぽさが加わってる。

──では来日が実現して自由な時間があったらどこか行きたい場所とかはありますか?

ニコ:俺は写真でいろいろ見てた漫画売ってるお店。それからご当地の料理を食べたいな。文化的な場所にも行けたらいいな。

ヨエル:俺は北海道。苗字が似てるから日本人じゃないかと思う人がいたりもするんだ。

──最後に日本のファンにメッセージをもらえますか?


「BARKSの読者のみんな!俺たちBlind Channelだ。ニューアルバム『Lifestyles of the Sick & Dangerous』チェックするの忘れないでね。日本のファンやリスナーのみんなに感謝する。もうすぐ会えるといいな。アリガトウ」

日本から来た友達が日本盤を持ってきてくれたので2人にプレゼントしたら喜んでくれました。



この日のヘルシンキアイスホール公演は会場前に並ぶのは12時以降でそれ以前に並ぶのは禁止というお知らせメールが届いていたのですが、取材の後1度外に出て開場の18時頃アイスホールに戻ってくると会場に向かう歩道にまで長い列ができてました。お知らせメールにはメンバーにプレゼントがある人は物販で受け付けることも書かれていて、並ぶ時間制限とかプレゼント受け取りとかこれまでに私がこっちで行ったライブでは聞いたことがなかったので、彼らの人気のすごさを物語っているかと思います。

この日のライブはまずラジオの人気パーソナリティ、サミ・クロネンがステージに現れバンドを紹介。メンバーがステージに登場すると女の子達の熱狂的な黄色い歓声が会場中に響き渡りニューアルバム収録曲「Alive or Only Burning」で幕開け。国内バンドのライブでこういう女の子達の熱狂的な光景を見るのはほんとに久々に思いました。ニコが最も個人的な曲だといっていた「Bad Idea」が個人的にもお気に入りなのですが、曲の始まる前にニコがスマホにライトつけてとお願い。MVでもバラの花があしらわれてましたが、スクリーンにバラの花が映し出され赤いライトに包まれ観客席はスマホのライトが揺れ動き、あぁなんだか感動的と思っていたらサプライズでフィンランドの人気アイドルシンガー、ロビン・パッカネンがステージに登場したではありませんか。

ニューアルバムからは数多くのヒット曲が生まれましたが、以前の曲も交え、YouTubeでもカヴァーを公開してたAnastaciaの「Left Outside Alone」もライブで披露。色とりどりの照明に加えてステージからはレザー光線が放ちだされ、ステージ前からはパイロの炎や火花が舞い上がり、ヨエルのちょっとポップなヴォーカルとニコのラップだったりシャウトだったりのヴォーカルが合わさり、これはもうジャンルがどうのなんて関係なく見て聴いて楽しいエンターテインメントなショーでした。

アンコールは2度あり、一番最後はやっぱりこの曲しかない。「Dark Side」で会場は最高に盛り上がりました。歌詞に中指立てろとありますが、あちこちからほんとに中指があがってたのも印象的でした。3年ほど前に見た彼らのライブからは想像もできないぐらいの成長ぶりでたっぷり楽しめ、彼らの今後の活躍をさらに期待。日本公演近いうちに実現するといいですね。その時ヨエルは北海道にも行けることを祈っておきましょう。

















ヨエルのニューアルバムの中で最も個人的な曲「Balboa」。


ニコのニューアルバムの中で最も個人的な曲「Bad Idea」。


昨年ユーロビジョンのフィンランド代表を決めるUMKコンテストにゲスト出演し2曲パフォーマンスした時の映像ですが、バレエダンサーも歌詞に合わせて中指立ててます。


文&ライブ写真:Hiromi Usenius

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