【ライブレポート】11年ぶりの来日公演、ジェファーソン・スターシップの偉大なる軌跡

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1960年代、サイケデリックロック時代のジェファーソン・エアプレインから幾度のメンバーチェンジと音楽性の変遷を経て、ジェファーソン・スターシップが約11年ぶりの来日公演を行った。

彼らの歴史を辿ると、ジェファーソン・エアプレイン、ジェファーソン・スターシップ(ポール・カントナーの復帰含む)、スターシップ(グレイス・スリック在籍時と脱退後含む)等、なかなか複雑にして、幾度も危機を乗り越えながらも必ずやヒット曲を産み出すという伝説的なバンドである。

現在はポール・カントナー亡き後もジェファーソン・スターシップ名義にて、2020年に12年ぶりの新作『Mother of the Sun』も発表している。ラインナップは創設メンバーであるデヴィッド・フライバーグ(G, Vo)を中心に、クラシックメンバーのドニー・ボールドウィン(Dr)、キャシー・リチャードソン(Vo, G)、クリス・スミス(Key)、ジュード・ゴールド(G)というベースレスのトリプルギター編成となっているが、果たしてどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。



ステージスクリーンに、1960年代からの映像が映し出され、これまでの軌跡が綴られる。そしてカウントダウンするように2023年へ、そのタイミングでメンバーが登場する。これまでのバンドの歴史や前任者の思いを伝えるかのようなキャシーの歌声は、長くバンドを繋いできたフライバーグだけでなく、彼女自身の歌とパフォーマンスがしっかりとバンドの看板になっているように感じる。

フライバーグもマイクを取る「Run Away」「With Your Love」では、84歳とは思えぬ美声を披露、エアプレイン時代の故マーティ・バリンへの敬意を表しているかのように感じる。鐘の音が鳴ると、最新アルバムでグレイス・スリックと共作した「It's About Time」の合図。スリックの後任という大きな任務を果たすキャシーの代表曲になりそうだ。


産業ロック時代の80'sタイムには、当時のほとんどの曲に参加したドラマーであるドニーを紹介し、「Sara」「Nothing's Gonna Stop Us Now」がMTV時代を思い起こさせる。フライバーグとキャシーが向かい合って歌う姿も印象的であったし、ポール・カントナーが存命であれば、もしかしたらこのあたりの選曲はなかったかもしれない。



控えめながらも様々なプレイで楽しませてくれるギタリストのジュード・ゴールドは、ギターソロの場面でジェフ・ベックの「Cause We've Ended as Lovers」や「Led Boots」のフレーズも挟みつつ、彼の解釈を感じる「Embryonic Journey」を見せてくれた。ベックの訃報は日本で知ったであろうし、予定調和ではなくこういう見せ方が出来るところにもジンと来る。






掃除に使うコロコロローラーを手に客席フロアをぐるりと一周するキャシーはサイケデリックなトランス状態を表していたのだろうか。鍵盤のクリスをフューチャーする流れも秀逸に終盤の見せ場は、キャシーのカウベルも冴え渡る名曲「Jane」。そして、あえて邦題で書きたくなる「シスコはロックシティ」「あなただけを」には実に気持ちが高揚した。

複雑なバンドの経緯も「もういいじゃないか」的にこれまでの代表曲を網羅した内容と、フライバーグがスターシップの曲を歌う事ももう「Miracles」そのものな時間であった。


文◎Sweeet Rock / Aki
写真◎Masanori Naruse

<Jefferson Starship "Mother of the Sun" Tour 2023 >

2023.1.13 Billboard Live Tokyo 1st Stage
1.Find Your Way Back
2.Ride the Tiger
3.Count on Me
4.Runaway
5.With Your Love
6.It's About Time
7.Sara
8.Nothing's Gonna Stop Us Now
9.Miracles
10.Embryonic Journey
11.White Rabbit
12.We Built This City
13.Jane
14.Somebody to Love

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