【対談 -連載最終章-】渋谷すばる × ドリアン・ロロブリジーダが語る選択と生き方、「じゃあ普通って何なんだろ?」

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■“楽しそうだな!楽しいな!”って
■自分がそう思えることが一番大事

──ところで唐突ですが、おふたりは悩みや迷いや葛藤ってありますか?

ドリアン:私はあります。私は一生迷ってますよ。何に?ってことではなく、とにかくいろんな迷いは常にあります。でも、そんな中で自分が大事にしているのは、“自分がどっちをやったら楽しいだろう?” “どっちがやりたいかな?”っていう感覚で。自分がこれをしているときはドキドキしているとか、ワクワクしているとか、これをやっているときの自分は好きって思えるか?というアンテナはいつも磨いていたいなと思ってます。すばるさんは迷われたりしますか?

渋谷:迷いかぁ……迷うかなぁ……。

ドリアン:あんまり迷わないですか?

渋谷:そうですね。もちろん、“どっちがいいかなぁ?”って思うことは、日々たくさんありますよ。何か一つのことを決めるときも、“どっちがいいかなぁ?”って思うし。でも、いろいろなものを見たり、周りの人の意見を聞いたりして、“なるほど。たしかにこっちのほうがいいね”って感じたら、そっちを選択するし。優柔不断とか、完全に任せっきりということではなく、自分の意見だけを頑なに押し通すのは違うと思っているから。そう思われがちなんですけどね(笑)。もちろん“ここだけは譲れない”っていうものは自分の中にあるから、何でもかんでもいいわけじゃないし。だから迷いはないけど、切り替えは意外と早いほうかもしれないです。

ドリアン:素敵な方々が周りにいらっしゃる証拠ですね。迷いには、“どっちもいいけど、どっちにしよう”っていう迷いだったり、そういうのもありますしね。“なるほどね”って思えて前に進めたら、もうそれは迷いにはならないですから。


──どっちを選ぶかは、やっぱり自分の気持ち次第なのかもしれないですよね。ドリアンさんがおっしゃる通り、自分自身がワクワク出来るか?というところだと思うし。どっちを選んだほうが正解かは、“これをやっているときの自分のことを好きって思えるか?”だと思いますから。

ドリアン:そう。自分が“楽しそうだな!” “楽しいな!”って思えることが一番大事なんだと思うんですよね。

渋谷:ほんまにそう思う。それって一番大事だと思うし、俺は自分だけじゃなくて、ファンのみんなや渋谷すばるに関わってくれるみんなにも、同じように楽しんでもらいたいと思うんですよね。

──渋谷さんは、自分自身が楽しみたい!ということ以上に、ファンのみんなや渋谷すばるに関わってくれるみんなにも、同じように楽しんでもらいたいというところをとても強く願う人でもあるから。考えすぎて苦しくなってしまうこともあると思うんですよね。一緒にお仕事していて、本当にそれを強く感じます。さっきお話に上がっていた“らしさ”のくだりで、まさしくそこだなって思いました。

渋谷:本当にそうかもね。頑なに“これはやっちゃダメだと思う”って、自分の中で自分を押し付けてしまっているところがあるからだと思うので。それって、さっきドリアンさんが言ってた「選択の結果が今だし、今やってることが自分なだけであって。今の自分と地続きにしか自分らしさってないと思うから。そこを切り離して、幻のような“本当の自分”ばっかりを考えちゃってる人が多い気がしてる」っていう言葉そのものだったりするよね。ほんまにそうやなって思う。

──本当にそうですね。『ひみつのなっちゃん。』も、そういうことを教えてくれた気がするんですよね。主演の滝藤賢一さんが演じるバージンは、年齢を重ねて衰えを感じた自分に自信を失い、踊ることを辞めてしまったドラァグクイーンという役柄でしたけど。周りはバージンさんの踊りが見たいと思っているのに、バージンさん自身の気持ちが開かないという。

渋谷:自分が思っているだけで、周りはそこまで思ってないよっていうところやねんな。それはすごく伝わってきたけどね。

──自分のことになると、どうしてもいろんな葛藤がありますからね。ドリアンさんは今回、初めてご一緒させていただきましたけど、本当にスタジオに入って来られた瞬間から、その場がすごく明るくなった印象でした。すごいパワーを感じたというか。その上、自分が積極的に前へ出るというより、渋谷さんを立たせる位置に自分が立とうというお気遣いを感じましたし。場を盛り上げるトーク力とか、本当に素晴らしいなと思いました。

ドリアン:とんでもございません! 本当に貴重な体験をさせていただけて感謝しかないですよ。今回お話しさせていただけたことで、すばるさんからもいろいろな気持ちをいただけましたし。

渋谷:こちらこそです。本当にお話しできて楽しかったし、本当に逢えて良かったと思ってます。


──追求しているものが違えど、いろんな共通点が見えたりした。そういうこともお互いにとっていい刺激になったらいいですね。この対談のキッカケをくれた映画『ひみつのなっちゃん。』も、主題歌の「ないしょダンス」も、とても好評らしく、幅広い層にメッセージが届いているみたいで本当に嬉しいです。

渋谷:すごく嬉しいですね。今回「ないしょダンス」を書かせていただいたことで、田中監督をはじめ、滝藤賢一さん、ドリアンさんに逢えたことを本当に嬉しく思ってます。

──渋谷さんは4月からファンクラブツアー<babu会 vol.2>が始まりますね。4月16日に東京・Zepp Haneda、4月22日に北海道・Zepp Sapporo、4月30日に愛知・Zepp Nagoya、5月4日に福岡・Zepp Fukuoka、5月6日に大阪・Zepp Nambaと全国主要都市をまわります。

渋谷:はい、すごく楽しみにしています。今、いろいろな気持ちの変化が自分にある中でのツアーになるので、今まで以上にみんなを楽しませたいという思いが強くなっています。本当に楽しみにしていてほしいです! ファンクラブの人達はもちろん、『ひみつのなっちゃん。』や「ないしょダンス」をキッカケに渋谷すばると出逢ってくれた人達にも、存分に渋谷すばるを感じてもらえるライヴにしたいと考え中なので、ぜひぜひいらしてください! 待ってます!

──ドリアンさんも、ご自身がご出演された映画の公開が続きますね。

ドリアン:はい。鈴木亮平さんと宮沢氷魚さんがゲイカップルを演じられる映画『エゴイスト』に、鈴木亮平さんの親友役として出演させていただいております。2月10日公開です。そして春頃に公開される映画が、つゆきゆるこさん原作の短編コミック『ストレンジ』の実写版で。ドラァグクイーン役で主演を務めさせていただいております。こちらはドラァグクイーンと男子高校生の友情を描いたストーリーです。お時間ありましたら、どちらもご覧になっていただけると嬉しいです。



──はい。

ドリアン:LGBTQ +問題は、日本だけじゃなくて、世界中どこにでもあることなんです。自由になってきたとは言うけれど、やっぱり日本はまだ制度が追いついていないですし、まだ偏見や誤解があると思うので、そういった中でエンターテインメントの果たす役割だったり、効果だったりはとても大きいと思うんです。20年前とか30年前だったら、ヘテロセクシュアル(異性愛)の現役俳優さん達がドラァグクイーンを演じるというのは、日本では考えられなかったことだったと思うので。ちりつも(塵も積もれば山となる)じゃないですが、エンタメを通してみなさんの心に、こういう人達が居るという事実が伝わっていけばいいのかなって思ってます。

渋谷:本当にそうですね。そういう意味では僕達の役割って、すごく大きくて責任のあることやなって思いますよね。実際、滝藤さんもおっしゃっていたんですけど、滝藤さんのお子さん世代は、学校の先生がLGBTQ +でも偏見も差別も特別視もないそうなんです。子供達は本当に先生が大好きだし、ご両親達にもその先生はすごく人気だそうで。世の中も徐々に変わってきているんだと思います。ドリアンさんがおっしゃるように、結果として、この対談も、読んでくれた人達の何かのキッカケになってくれたら嬉しいなって思うんですよね。自分の存在が人のキッカケになれるって、ほんまにすごいことやと思うんです、僕。そんな嬉しいことはないなって思いながら日々生きてるんです。

ドリアン:すごく分かります。キッカケですよね。本当にそう。何かのキッカケになってくれたら嬉しいなって本当に思います。

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