【対談 -連載最終章-】渋谷すばる × ドリアン・ロロブリジーダが語る選択と生き方、「じゃあ普通って何なんだろ?」

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■キッチリし過ぎなんじゃない?
■想像力こそが大事というかね

渋谷:僕はかつて、子供の頃にザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトさんを観て衝撃を受けて。それからずっといろんな雑誌とかでヒロトさんのインタビューとかを読んできたんですけど。ヒロトさんは強い主張をするわけでもなく、何かを懇々と説くわけでもなく、本当にすごく自然体でお話しされているだけやのに、その何気ない言葉に勝手に感銘を受けているんですよね。それが自分にとっては本当にいろんなキッカケになっていたり、力になっていたりするんです。冒頭のほうでお話しさせてもらったように、僕自身が“すごく狭いところで生きている感覚”を持ちながら生きてる人間だからこそ、同じように生きづらい生き方をしている人達が、この対談を読んだことで少しでも元気に、少しでも明るく楽しく、前を向いて生きるキッカケになったら嬉しい。最近の世の中って、本当に生きづらくなってしまっていると思うんですよ。“すごく狭いところで生きている感覚”を持ちながら生きてる人達だけに限らず、完璧を求められるところがある気がしていて。少しでも輪からはみ出したら非難されたり、特に意図がなく呟いたことでも、すごく曲がってとらえられて大騒ぎされたりとか。だんだん自分の意見すらも言えなくなっていく感じがあるというか。

ドリアン:SNSとかの影響もすごくありますよね。

──発言の自由と言いながらも、そんな自由はどこにもないですよね。

ドリアン:本当にそうね。真っ白じゃなくちゃダメっていう感じというか。

渋谷:そう。そういうのも分からなくはないけど、なんかすごく窮屈になりすぎてる気がして。

ドリアン:潔癖になり過ぎているところは感じますよね。

渋谷:そう。物事って、もっとあやふやでいいのになって思うことが多々あるんですよね。僕がアナログが好きなのはそこなんです。レコードなんて本当に昔のやつは歌詞カードも入ってなかったりするし、英詞の和訳も付いてないから、歌詞の本当の意味とかも分からなかったし。でも、それくらいザックリしてていいと思うんですよね。何事に関してもキッチリし過ぎなくてもいいと思ってるんです。キッチリしていくことも大事やとは思うよ。思うけど、なんかキッチリし過ぎなんじゃない?って思うことがすごく多いというか。

──想像する余白、考える余白こそが楽しいことってありますからね。

渋谷:ほんまにそう。そういう想像力こそが大事というかね。キッチリさせられ過ぎて、思考や行動を狭められてしまってる人達がたくさんいるんじゃないかな?って感じるくらい、“もっと自由があったら、そこからすごい発想や才能が生まれたりするんじゃないかな?” “もっと面白いことが起こるんじゃないかな?”と思っちゃうんですよね。僕ね、よく自分のライヴで、“好きなように楽しんでってね!”って言うんです。それって、そういう意味だったりするんですよ。せめて僕のライヴでは、手放しで好きなように楽しんでほしいなって思うんです。人に迷惑をかけることは絶対に良くないから、人に迷惑をかけなければ何をやってもいい空間でありたいなと思っているんです。好きなように楽しんだことで、何かが見えてくるかもしれないしね。本当に何かのキッカケになってくれたらいい。

──ドリアンさんとのこの対談からも、映画『ひみつのなっちゃん。』からも、渋谷さんが映画のために書き下ろした「ないしょダンス。」からも、ライヴからも、キッカケを見つけてもらえたら嬉しいですよね。

渋谷:本当にそう思いますね。“こうしなくちゃいけない” “こうでなくてはならない”っていう、誰が決めたわけでもないことだけど、勝手にそう思い込んでいることって、すごくあると思うから。そういうのをちょっとでも取っ払えるキッカケになりたいなと思いますね。僕は本当に特別なことは何も出来ないから、音楽を通して歌うことや、時にこうしてお話をさせてもらうことしか出来ないですけど。本当に少しでもみんなの心を支えることが出来たなら、とても嬉しいなと思っています。それくらいしか出来ないですけど…何かのキッカケになってくれたら、本当に嬉しいです。

取材・文◎武市尚子
撮影◎西村彩子
ヘアメイク◎矢内浩美 (渋谷すばる)

■ドリアン・ロロブリジーダ PROFILE

ドラァグクイーン。1984年生まれ。東京都出身。180cmの長身に20cmのハイヒールと巨大なヘッドドレスを装着し、ひたすらに空を目指すその姿はさながらバベルの民か。
2006年のデビュー以来、長い手足とよく回る舌、豊かな声量を活かして、各種イベントやMC、モデル業や映画/舞台/CM出演もこなすマルチなクイーン。新宿二丁目発本格DIVAユニット「八方不美人」や、好きな歌を好きな場所で“ただただ歌う”ユニット「ふたりのビッグショー」メンバーとしても活動するなど、その活躍はとどまることを知らず 今夜もちょっぴり高いところから、耳障りな笑い声をお届けします。
2023年2月10公開映画『エゴイスト』に出演。2023年春公開映画『ストレンジ』に主演として出演。

■楽曲「ないしょダンス」

2023年1月11日(水)配信リリース
※映画『ひみつのなっちゃん。』主題歌



■映画『ひみつのなっちゃん。』

▼公開日
2023年1月13日(金)より新宿ピカデリー他にて全国公開
2023年1月6日(金)愛知・岐阜にて先行公開
▼出演
滝藤賢一、渡部秀、前野朋哉、カンニング竹山、豊本明長、本多力、岩永洋昭、永田薫、市ノ瀬アオ、アンジェリカ、生稲晃子、菅原大吉、本田博太郎、松原智恵子
脚本・監督:田中和次朗
製作:東映ビデオ 丸壱動画 TOKYO MX 岐阜新聞映画部
ロケ協力:岐阜県郡上市
ドラァグクイーン監修:エスムラルダ
主題歌:「ないしょダンス」渋谷すばる
配給:ラビットハウス 丸壱動画
(c)2023「ひみつのなっちゃん。」製作委員会



▼ストーリー
 これは3人のドラァグクイーンの物語。俳優の滝藤賢一が映画初主演を務める『ひみつのなっちゃん。』(2023年1月13日全国公開。岐阜・名古屋は6日から上映)。
 “オネエ”仲間である“なっちゃん”の突然の死をキッカケに、バージン(滝藤賢一)、モリリン(渡部秀)、ズブ子(前野朋哉)の3人のドラァグクイーンが、お葬式に参列する為に、なっちゃんの地元である岐阜県郡上八幡へと向かうことに。“オネエ”であることを知らないなっちゃんの家族の為に、なっちゃんの秘密を守り抜こうと“普通のおじさん”になりきる3人が繰り広げるハートフルヒューマンコメディ。
 3人のドラァグクイーン(滝藤賢一、渡部秀、前野朋哉)達は、“普通のおじさん”として無事に葬式に参列することが出来るのか !?
 本作が映画デビューとなる田中和次朗が自らのオリジナルの脚本で監督を務めた期待作となっている。



▲(c)2023「ひみつのなっちゃん。」製作委員会

■渋谷すばるオフィシャルファンクラブイベント「babu会 vol.2」

2023年
4月16日(日) 東京・Zepp Haneda
4月22日(土) 北海道・Zepp Sapporo
4月30日(日) 愛知・Zepp Nagoya
5月04日(木/祝) 福岡・Zepp Fukuoka
5月06日(土) 大阪・Zepp Namba


■<ライブナタリー 5周年記念公演 “渋谷すばる × THE BAWDIES”>

2023年2月5日(日) 東京・日比谷公園大音楽堂
https://live.natalie.mu/event/5th03?_normalbrowse_=1


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