【インタビュー】龍ヶ崎リン、低音ボイスが映えるチルかつ情熱的なナンバー「Twilight Stream」

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2020年3月のデビュー以降、ヒップホップ、ブラックミュージック、シティポップ中心の歌唱配信やカヴァー動画、ゲーム配信やラジオ配信などVtuberとして多岐にわたる活動を展開する龍ヶ崎リン。彼女が1stデジタルシングル「Twilight Stream」をリリースする。同曲は作詞をOHTORA、作曲をOHTORA ・maeshima soshiが務め、彼女のVtuberとしての歩みや葛藤、音楽にかける思いを楽曲に落とし込んでいる。その結果、彼女の低音ボイスが映えるチルかつ情熱的なナンバーに仕上がった。キリンジの「エイリアンズ」やCreepy Nutsの「のびしろ」など、自身の生活や思考と結びつく楽曲をカヴァーに選んできた彼女は、いったいどんなメンタリティで音楽と向き合っているのだろうか。新たなスタートに立った彼女に、じっくりと話を聞いた。

■心が音楽に動かされるなかで歌う側になりたいと思うようになった
■自分と価値観が共通する人に聴いてもらいたかったんです


――Vtuberの方々には、音楽活動に力を入れている方が増えていますよね。音楽をやりたくてVtuberの世界に入る人も多い印象があります。

龍ヶ崎リン:僕もまず音楽をやりたいなと思ったことが、Vtuberの世界に飛び込んだきっかけなんです。もともとつらいことがあったとき、朝、元気を出したいときとかに、常に音楽をかける生活をしていて。自分の心が音楽に動かされるなかで、歌う側になりたいと思うようになりました。あと、不特定多数の人ではなく、自分と価値観が共通する人に聴いてもらいたかったんですよね。

――ご自分の思考や人間性も伝えられて、それを支持してくれる人に音楽を届けたかったということでしょうか。

龍ヶ崎リン:そうです。やっぱり普通のアーティストさんだとまず音楽や楽曲がいちばん前にあると思うんですけど、自分のパーソナルな部分を知ってもらったうえで曲を聴いてもらうと、全然違う聴こえ方になるなと思っていたんです。そんなことを考えていたのと同時期に、Vtuberの音楽シーンを知ったんですよね。

――初めてVtuberの音楽シーンに触れたきっかけはMonsterZ MATEだったと、2022年のバースデーライヴでおっしゃっていましたよね。

龍ヶ崎リン:MonsterZ MATE はVtuberの音楽に興味を持つきっかけになったユニットですね。それまでVtuberやアニメというコンテンツに全然詳しくなかったので、Vtuberはアニメ声で可愛い曲やキャラソンを歌っていたり、VOCALOIDをカヴァーしているという固定観念を持っていたんです。だからMonsterZ MATEの音楽に初めて触れたとき、ヴォーカリストとラッパーのユニットという構成のVtuberがいることにびっくりしたし、こんなユニットがVtuberのシーンにいるなら、僕もここで音楽をやりたいと思ったんです。


――龍ヶ崎さんはヒップホップやブラックミュージック、シティポップのカヴァー動画やオリジナルラップを定期的に投稿していますが、このようなジャンルの音楽を好むようになったのはどんな経緯があるのでしょう?

龍ヶ崎リン:いちばん大きいのは母の影響ですね。幼い頃に車の中でKREVAさんやスティービー・ワンダー、チャンス・ザ・ラッパーとかが流れていたんです。そこからヒップホップやブラックミュージックをJ-POPに落とし込んだ楽曲を聴くことが増えたので、自然とそういう音楽が好きになる生活環境でしたね。学生時代によくカラオケに行ったり、文化祭でバンドをやったり、ヒップホップシーンにおける音楽以外の要素とも言われているファッションへの関心も幼いころからあり、現在の洋服への興味や好みもかなり音楽が影響していて、つねにずっと音楽がそばにある生活でした。

――そして音楽活動のためにVtuberの世界に飛び込んで、トークやエンタメ的な配信はもちろん、音楽動画投稿や歌唱配信を約3年間なさって。そして今回、念願の初オリジナル曲「Twilight Stream」をリリースするというわけですね。

龍ヶ崎リン:はい。ずっとこの日を夢見てきていたので、念願すぎる1stシングルです。やっとスタート地点に立てた感覚があります。でもこれまでにカヴァーを続けてきたことで、曲の意味や意図を自分なりに汲み取って表現することに向き合えたし、この3年の配信活動でリスナーさんとの関係値を作れたので、このタイミングで初オリジナル曲を出せて本当に良かったなって心の底から思っています。だから初シングルは、これまでの歩みや人生、リスナーさんへの気持ちを歌で表現できる楽曲にしたかったんですよね。


――今作の作詞はOHTORAさん、作曲はOHTORAさん・maeshima soshiさんというササクレクト所属アーティストが務めています。

龍ヶ崎リン:好きでよく聴いていた楽曲を作ってらっしゃったmaeshima soshiさんにお声掛けをして、maeshimaさんとよくタッグを組んで楽曲制作をしているOHTORAさんが歌詞を書いてくださることになりました。お受けいただいた後に、普段気に入って聴いていた曲にOHTORAさんが参加していたり携わっていることを知って、とても嬉しかったです。おふたりには僕の活動年表と一緒になぜVtuberになったのか、Vtuberになってからどういう苦悩があって、どういうときに楽しいと感じたのかを書き出してお渡ししたので、今までに悩んだことや、悩んだことによって楽しいと感じられたことみたいなことも書いていただけて、曲に深みが出たと思います。

――歌詞のテーマはそれ以外に考えられませんでしたか?

龍ヶ崎リン:デビュー当時からずっと音楽をやりたいことを活動で提示してきて、音楽がやりたいと叫び続けてきていたので、自分の音楽に対する気持ちはリスナーさんたちもわかっていて。だから1stシングルは自分だけでなくリスナーさんにとっても“やっと出せたんだね”と思ってもらえるような、大きなものだと思うんです。だからリスナーさんが自分自身に重ねられる楽曲にもしたかったし、今までリスナーさんと過ごした時間や、これから一緒に作っていきたい未来を語った1stシングル曲にしたかったんです。

――歌詞に着目すると、やはり《模索していたアイデンティティ》から《あの日以降 キミとボクの幸せはイコール》までのくだりは気になります。おっしゃっていた“悩んだこと”に当たるのかなと。

龍ヶ崎リン:そのくだりの元になっているエピソードがあって……。僕は女性の中でも声が低いほうなので、中性的なキャラでいないといけないのかな、それをリスナーさんが求めるんじゃないかな、と思い込んで自分を偽っていた時期があったんです。それこそ歌詞の通り《模索していたアイデンティティ》で、自分の強みが何なのかわからない時期でした。でもそれが限界に達して、リスナーさんに“本当の僕はこんなんじゃない。だけどどうしたらいいかわからない”みたいなことを泣きながら全部配信で話したんですよね。

――そうだったんですか。本音をファンの方々に吐露なさったと。

龍ヶ崎リン:そしたらリスナーさんが、“キャラを作らなくていいよ”って受け入れてくれたんです。その言葉で自分が勝手に身構えていただけだったんだ、考えすぎていただけだったんだと思うことができて。だから“こんなこと言ったらかっこ悪いだろうな”とか“暑苦しいだろうな”と言わないでおいたことを、すべて話すようになりました。リスナーさんたちが受け入れてくれたことで、自分のアイデンティティを見つけることができたんです。歌詞にはそのエピソード含め、OHTORAさんが僕の3年間を落とし込んでくれました。

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