【コラム】『関ジャム』でいしわたり淳治がサカナクション、水カンに並び選抜した新人idomの才能

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テレビ朝日系『関ジャム 完全燃SHOW』が、1月22日・29日の2週にわたって行った年始恒例企画『プロが選ぶ年間マイベスト10曲』。毎年、大きな注目を集める企画だが、今回は常連の音楽プロデューサー蔦谷好位置、作詞家/音楽プロデューサーのいしわたり淳治に加えて、きのこ帝国のボーカリストであり、現在はソロでシンガーソングライターとして活躍する佐藤千亜妃が、2022年の「年間マイベスト10曲」を選出した。蔦屋「リアルに胃が痛い」、いしわたり「10月ぐらいからソワソワ」、佐藤「10曲というのが難しかった」と、それぞれ悩みに悩んだ末の選出だったことを吐露しつつ、サカナクション「ショック!」(いしわたり)、SEKAI NO OWARI「Habit」(蔦谷)、Official髭男dism「ミックスナッツ」(佐藤)といった日本を代表する存在のキラーチューンから、IVEなどのK-POP、imaseなどのSNS発のアーティスト、そして3人が揃ってランクインさせた水曜日のカンパネラ「エジソン」などの中で、いしわたりが9位に選んだidom「i.d.m.」に注目したい。


いしわたりは「曲にインパクトと人懐っこさを与えるイントロに注目!!」とし、「作詞家という職業柄、耳にする音楽はいつも無意識で歌詞を聴いてしまうのですが、歌詞のないイントロ『La la la la』を聴いた瞬間『これ誰?』と胸が騒ぎました。この『La la la la』は、サビの歌メロなのだけれど、イントロだけは歌詞をなくす引き算によって、曲にインパクトと人懐っこさが出て、スッと耳に入って来る。メロディーセンスが素晴らしい」と評していた。私が今回idomに注目したのも、まずはそのイントロの「La la la la」の歌声を聞いた瞬間、甘くしなやかでセクシーさを感じる歌声が非常に魅力的に感じたのと、R&Bを軸にした男性ソロアーティストが少ない昨今、idomは貴重な存在だと瞬時に思ったからだ。

このランクインに、即リスナーも反応。Twitterのタイムラインには「関ジャムで教えてもらったidom」「関ジャムidomくんじゃん~!」「嬉しくて見惚れてた」などなどの声もポストされた。さらに、AWAリアルタイムランキングに「i.d.m.」が、iTune R&Bチャートに「帰り路」が登場し、idomの名と音がさらに広まっていることを証明した。


「i.d.m.」は、軽やかながら穏やかな、心地よいテンポ感のR&Bで、歌声もさらさらと耳にすべり込んでくる。歌詞は、英語と日本語をスムーズに織り交ぜ、トラックへの乗りやすさを重視しているようで、世界観に没入すると、切ない物語が浮かび上がってくる。とてもクオリティが高く品がいいのだが、確かにいしわたり氏の言うように、イントロの『La La La』のおかげで、楽曲の入り口が広くなっているように感じられる。もっとわかりやすくいうと、歌詞を知らなくてもイントロがはじまった途端に口ずさめるので、リスナーの心身に楽曲が浸透しやすい。ライブで聴いても、より楽しむことができると思う。そして、のちに訪れるサビのメロディーや歌詞も、より染み渡ってくるような構成になっている。

作詞家であるいしわたり氏に、歌詞のない『La la la la』で胸を騒がせたidom。このランクインやいしわたり氏のコメントからは、メロディーやのちの歌詞を活かす構成の大切さ、もっと言えばイントロの意味合い、みたいなものを改めて考えさせられた。いわゆるイントロがない、いきなり歌からはじまる── つまり、いきなり答えを見せます!というような楽曲も多い昨今。それも、時代の目まぐるしい速度感には合っているのかもしれない。でも、「i.d.m.」のように、ほんの少しだけ答えを見せます、ぐらいのほうが色っぽく感じられるし、その先も聴き進めてみたくなるのは、私だけだろうか?

idomの楽曲には、ほかにも聴き進めることで、物語に深みが出てくるようなものが多い。たとえば、現状いちばん彼の楽曲の中で広く知られている、昨年フジテレビ月9ドラマ『競争の番人』主題歌となった「GLOW」は、ほぼ日本語詞なのだが、終盤に差し掛かった頃に《I can’t be someone else,So I’ll live my life as I am》という英詞が効果的に表れるのだ。さらに、大ラスにはゴスペルのような神々しいコーラスに包み込まれる。これらは、フルコーラスじっくり聴いた人だけが味わうことができるもの。ただ、この楽曲はイントロがほぼないし、いちばん印象的なのは《ねぇ 僕らは何故/失うまで気づけないのだろう》というサビ。大切なところをすぐに味わいたい人も、きっと満足できる楽曲だと思う。どちらのタイプのリスナーにも届く楽曲を、しなやかに生み出すidom。そのしなやかさは、デビューEP『GLOW』に収録された全5曲の振り幅にも表れている。そして、それは決して、リスナーや時代に合わせているだけではなく、音楽活動をはじめて長くないピュアな状態の彼らしく「これもやってみたい、あれもやってみたい」という志向性が活かされているように感じられる。


大学でデザインを専攻し、イタリアのデザイン事務所で就職予定だったものの、コロナ禍で断念。そこから未経験だった音楽活動へ踏み出し、あっという間に才能を発揮してからもうすぐ3年がたつ。いよいよ4月12日には、2nd EPがリリースされることも発表された。2023年、どんな音楽を聴かせてくれるのか。引き続き注目して間違いない。

文:高橋美穂

EP『GLOW』

発売中

■初回生産限定盤


CD+Blu-ray (SECL-2790~2791) ¥1,800(tax in)
<CD収録曲>
・GLOW
・i.d.m.
・Savior
・HELLO
・GLOW -Instrumental-
<Blu-ray収録内容>
・「GLOW」MUSIC VIDEO
・「GLOW」Behind The Scenes

■通常盤


CD(SECL-2792) ¥1,400(tax in)
<CD収録曲>
・GLOW
・i.d.m.
・Savior
・HELLO
・GLOW -Instrumental-

ダウンロード・ストリーミング配信:
https://idom.lnk.to/GLOW

CD購入:
https://idom.lnk.to/GLOW_0907

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