【インタビュー】JIRO(GLAY)、61stシングル発売「コロナ禍が無ければ絶対に生まれなかった」

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■未だに楽しんでベースを弾けるというのが、ありがたい

──TERUさん作詞作曲の「限界突破」についても伺います。新作モバイルゲームアプリ『ブラッククローバーモバイル 魔法帝への道 The Opening of Fate』のテーマ曲として書き下ろされたアグレッシヴなロックナンバーですが、JIROさんの第一印象はいかがでしたか?

JIRO:まず、タイトルを聴いた時に「TERUだな」という感じはしましたね(笑)。マイナー調からスタートする曲なんですけど、「限界突破」という言葉にTERUらしさが出てるなぁって。

──ベースのフレーズが重要な役割を果たしている曲でもあります。アレンジにYOW-ROW(GARI)さんが参加していて、デモ段階でフレーズをかなりつくり込んで来ていたそうですね? 

JIRO:YOW-ROWさんは、『FREEDOM ONLY』に収録されている「Holy Knight」の時もそうでしたけど、割りとカチッとデモテープをつくってきてくだって、しかもそのベースラインがめちゃくちゃカッコいいんです。フレーズを俺節に変換してしまうと曲がかなり大幅に変わりそうな、逆に言うと、そのぐらいベースのカウンターメロディーが大事な楽曲を今回もつくってきてくれて。なので「そのベースフレーズを邪魔しないように」と思っていたら、YOW-ROWさんのつくってきてくれたシンセベースのフレーズが結果的に重要になったので、参考にさせてもらって弾いています。



──ご自分でゼロからフレーズを紡ぎ上げていくのと、そうではないパターンと、比較してどちらがやりやすい・やりづらいとか、違いはあるんですか? ケースバイケースだとは思うのですが。

JIRO:ケースバイケースではあります。もちろん「もっといいのが出るな」と思ったら自分のアプローチをするんですけど、僕はわりと、その楽曲に対してアレンジャーが持ってきたベースアプローチが良かったら、それはそれで何の抵抗も無いんですよ。「結局弾くのは俺だ」ということに変わりはないので。逆に新しいアイディアを教えてもらって、未だにこういうふうに楽しんでベースを弾けるというのが、むしろありがたいことだと思えるから。なので、どっちもどっちかな?

──曲としての完成形が良いものになるのが一番いい、と。

JIRO:うん、そうですね。「限界突破」にはちょっとややこしいフレーズもあって、リハーサル前の今の段階だと、気を抜いていたら間違えそうな感じがするぐらいなんですけど(笑)。HISASHIの曲にも、こういったベースラインが複雑だったり、展開が速くて追い掛けていくのに一生懸命な曲って多いんですけど、「限界突破」もそういう感じかな。リハーサルを経て、集中力高くも楽しめるようなところに行けたら、また一歩成長できると思っています。

──これはタイトルから派生させた質問ですが、JIROさんが限界や壁を感じた時は、どういう方法で突破なさいますか? 例えば、時間を置いて後で再挑戦しようとするのか、とにかくいろいろなアプローチをしてみるのか。

JIRO:僕は、時間は掛けたいかな? なので、今のコロナ(の時代)になってからの活動の、一旦落ち着いた流れというのは、自分にとってはすごくいいなぁって思います。それ以前は「じゃあツアーやります。次は制作します。プロモーションします」という、何となくのサイクルの中で活動していて。コロナになった当時はまだ50歳手前だったけど、これまでの音楽人生の中で、“簡単にできること”“ちょっと頑張ってできること”“全くできないこと”が、自分の中でもいろいろと見えた数年になったから。「そこにどうやって向き合うか」ということを、時間を掛けてじっくりと考えられたのは良かったと思います。

──時間を掛けたことによって得られたものもありますよね。ベースへの新たなアプローチもそうでしょうし。

JIRO:そうですね、今回の「THE GHOST」は、このコロナが無ければ絶対に生まれなかった曲調だと思います。

──M3「海峡の街にて」は、TAKUROさん作詞作曲による王道のミディアムバラード。以前ツアーで「The Light of my life」という別タイトルで披露されていた楽曲を今回、初音源化されたんですよね。レコーディングはいつ頃されたのですか?

JIRO:レコーディングは、アルバム『NO DEMOCRACY』の頃で、2018年だったみたいです。だから正直、弾いたフレーズに関してあまり記憶になくて(笑)。曲は覚えているんですけども。去年の“R&Bブーム”の後だったら、また少し違ったアプローチの仕方をした可能性もあるんですけど。でもTAKUROとしては「あの時のままで行きたい」ということだったので、「じゃあ全然いいよ」って。


──なるほど。M4の「GONE WITH THE WIND (Gen 3)」は、「ずっと2人で…」と両A面扱いで‘95にシングルリリースされたのが初出。今回アレンジを大幅に変え、インディーズ時代に近い形でリレコーディングされたんですよね。

JIRO:メジャー盤のほうは佐久間(正英)さんのアレンジで、その時は佐久間さんにお任せしたんですよ。当時TAKUROが「インディーズ盤より、もうちょっとメジャーを意識したようなアレンジにしたい」ということであのような形になったんですけど、なかなかお披露目する機会も無くて……。この曲はHISASHIが気に入っていて、ことあるごとに「演りたい」と言っていて、夏のファンクラブライブ(<GLAY LIVE TOUR 2022 ~We♡Happy Swing~ Vol.3 Presented by HAPPY SWING 25th Anniv.>)でも選んできたんです。その流れで今回「レコーディングしよう」ということになりました。

──全ての音がキラキラとしていて眩しくて、メジャー盤に比べてBPMも速く、疾走感に満ちています。

JIRO:そうですね。僕、夏のライブが終わった後、マネージャーからレコーディング前日に連絡があるまで、この曲をレコーディングするということを忘れていて(笑)。新曲のことしか考えていなかったから、慌てておさらいしたら「あ、弾けるじゃん。まだ覚えてるな」と思って。リズムに関してはスタジオに行って永井(利光/Toshi Nagai。GLAYのサポートドラマー)さんと一発録りしました。たぶん、HISASHIが「今、このアレンジで演りたかった」というのは、丁寧なサウンドよりも勢いみたいなもの重視だと思ったから。これを三度も四度も録っていたら、新鮮さが逆になくなると思ったので。

──この曲はそもそも、JIROさんが加入された‘92年頃から存在していた、歴史の長い曲ですよね?

JIRO:たぶん僕が入った後にできた曲なんじゃないかな? このアレンジのほうがやっぱり、インディーズ時代のイメージのそのままですよね。

──JIROさんはこの曲で、ライブだと熱くコーラスをされていましたが、あれって立候補なのですか?

JIRO:佐久間さんのヴァージョンの、イントロの出だしのコーラスが僕なんですよ。レコーディング音源もそうなので、流れ的に。アマチュアの頃は、TERUが一本で全部歌っていたんじゃないかな?

──なるほど。では、佐久間さんアレンジで生まれたJIROさんコーラスが、ヴァージョンの垣根を超えて生き残っているわけですね。今作収録の4曲は、結果的にメンバー4人の個性が色濃く出た“G4”シリーズ的なものになったと感じます。

JIRO:そうですね、たしかに。

──続いて、ベーシストとしてのJIROさんの現在地についてお聞きします。佐久間さんと過ごした20年があり、亀田誠治さんのプロデュース参加が2013年からですので、そこから既に10年経っているんですよね。

JIRO:おぉ~! そんなになりますか。

──逆アングルピッキングの提唱者であり、指弾きは決してなさらなかった佐久間さんへの敬意を示しつつも、JIROさんは近年指弾きを探求されています。加えて、亀田さんとの関わりからもベーシストとして多くを学び、独自のスタイルを開拓しようとされている、今まさしくタイミングなのかな?と。JIROさんはベーシストとして今、どのような心境なのでしょうか?

JIRO:まさについ2週間ぐらい前の話なんですけど、僕の尊敬しているベーシストが2人、家にやってきたんですよ。ご飯のときからベースの話ばかりしていたんですけど、じゃあ家に移動して実際に弾いてみよう、という流れになって、皆でベースを弾いていたんです。2人は指弾きがめちゃくちゃ巧くて、スラップとかも上手で、僕の中には無い演奏スタイルを持っていて。ただただ「すごいなぁ!」と思いながら見ていたんですね。その中で僕がベースを弾いた時に、ベーシストの一人が「JIROさん、それピックで弾くってすごくないですか?」と言ってくれて。それは僕の中では普通のことだったんですけど、「あ、そっか。ピックでこだわってやってきていた、この自分の良さを、自分自身で見過ごしていたんじゃないかな?」と思って。

──それは大きな発見ですね。

JIRO:ちょうどツアーに向けた練習をしていたタイミングだったので、「この曲は指で弾くと難しいな」と思っている部分も、ピックで弾くと意外と「あ、こっちのほうが自分の味を出せるな」とか「グルーヴを出せるな」とか、そういうことに気が付き始めて。あと、ピックの薄さとかね。薄い・厚いでも音がだいぶ変わってくるんですけど、それも僕の家の中で3人でいろいろと弾いていた時に、「JIROさん、こんな薄いの使ってるんですか?!」と驚かれて。家にある厚めのピックを出してきて弾いてみたら、「あれ?全然音が違うな」と気付いたりもして。最近指弾きにこわだっていたんですけど、またピック弾きの魅力に目覚めている、というか。

──なるほど。ベースはギターに比べて弦が太い分、ピックも厚く大きいものを使う人が多いですよね?

JIRO:たしかに厚みがあるものを使う人は多いんですけど、弾くスタイルとかによっては、厚いことでスムーズに弾けなかったりすることもあるんですよね。柔らかいほうがやっぱり反発力が少ないからスムーズなんです。そこを追求するあまり、僕の使うピックは薄くなっていったと思うんですけど、そうなることによって、厚いピックよりも低音が若干弱くなるというか。今更ながらではあるんだけど、そのあたりも意識しながらやっていきたいですね。指弾きはもちろん継続するんですけど、ピック弾きの、自分の得意だとしているものを更に精度を高めて伸ばすのもありかな?と思っている、本当にまさに今、それが近況です。

──佐久間さんから学び継承なさっている良さと、指弾きと、JIROさんは今後両輪で進んでいかれるんですね。

JIRO:そうですね。まだまだできること、追求すべきことはあるなと思っているので。何はともあれ、“演奏したい”という自分のテンションが下がらなかった、というのが良かったんだと思う。これから始まるリハーサルでは、皆で演奏して、そのことを一個一個試していくのが楽しみです。

──JIROさんに憧れ、尊敬している後輩たちがたくさんいると思います。そういったベーシストたちにJIROさんが伝えていきたいものは何でしょうか? 

JIRO:いや、無い無い無い(笑)。逆に教えてもらってばっかりですよ。

──その謙虚さがすごいですよね。

JIRO:いやいやいや、本当にそうです。

──ベースを練習するのが楽しい、という言葉をJIROさんは近年よくおっしゃっている印象があります。

JIRO:そうですね。友だちにもバンドにも恵まれていて、それは本当にありがたいことだなと思いますよ。

──デビュー30周年を目前に控えた今なお、4人全員が高いモチベーションを保ちながら、円満にバンド活動が続いているのはすごいことです。

JIRO:そうですよね、うん。


──冒頭でも触れましたが、コタツに入って全員で爆笑トークなんて、普通あり得ないと思うんです。それを特別なこととも思っていない、というGLAYの皆さんに驚くばかりです。

JIRO:『カタカナ禁止飲み』が嫌だったのは第一回目だけですね。どうなるか分からなかったから不安で、「ヤだな~……」と思っていましたけど(笑)。でも、それを「やりたい」と言い出したHISASHIが、俺たちにストレスを掛けないように一生懸命やってくれたという実績があるから、2回目も皆たぶん集まったんだろうし。

──平和を象徴するような、尊い光景だと感じております。3月から始まるツアーは、ライブを楽しみに日常生活を頑張る、という方も多いと思います。コロナ禍で叶わなかったロングツアーがようやく実現します。JIROさんのお気持ちを聞かせてください。

JIRO:今回は、コロナ(の時代)になって初めていろいろな街を細かく廻ることになります。あと、初日からは無理かもしれないですけど、声出しがOKになりそうな流れもあるので、楽しみですよね。

──3月2日、北海道・帯広で初日を迎えます。どんな印象の街ですか?
 
JIRO:冬場に何度か行ったことがありますけど、雪はそんなに無いのに寒い、という印象がすごいあるなぁ……。

──どのようなツアーになりそうでしょうか?

JIRO:前回の<UNITY ROOTS&FAMILY,AWAY>ツアー(『GLAY Anthology presents -UNITY ROOTS & FAMILY,AWAY 2022-』)では、ストリングスやコーラス隊の皆さんに参加してもらって、これまでのGLAYのライブの空気感とは真逆の、かなり緊張感のある空間をつくれたと思うんです。今回のツアーでは、デビューした頃のようなソリッド感というか、そういった心地良さを出せたらなと話しているので、かなりタイトなライブになるんじゃないかな?と思います。

──セットリストには、“GHOST”という言葉に象徴されるような、“隠れた”“秘めた”名曲たちも含まれるのでしょうか?

JIRO:そういう曲が多いですね。隠れた名曲とか、逆に言うと、普段なかなか演っていない曲ばっかりです。

──いわゆる代表曲と呼ばれるシングル群は、ほぼ無さそうですか?

JIRO:無いですね。シングルはあまりやらなくていいよ、というファンの人にとってみたらうれしいツアーだと思います(笑)。マニアックな曲ばっかりかもしれないけど、僕らは「久々にツアーが出来て皆と喜びを分かち合いたい」という気持ちが強いので。もし知らない曲があったとしても楽しめると思います!

取材・文◎大前多恵
写真◎加藤千絵

「HC 2023 episode 1 - THE GHOST/限界突破-」

2023年2月15日(水)発売
CD+BD:PCCN-00054 ¥2,310(税込)
CD+DVD:PCCN-00055 ¥2,310(税込)
CD Only:PCCN-00056 ¥1,650(税込)

[CD収録内容]
1. 限界突破
2. THE GHOST
3. 海峡の街にて
4. GONE WITH THE WIND (Gen 3)

[Blu-ray収録内容]※DVD同一内容
・限界突破 Music Video
・限界突破 Studio Session
・episode of HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2003-2023

[初回封入特典](全品番共通)
Invitation of 「The Ghost of GLAY」

【ショップ別先着予約購入特典】
G-DIRECT:クリアポスター(A4サイズ)
Amazon.co.jp:メガジャケ
楽天ブックス:オリジナルアクリルキーホルダー
セブンネットショッピング:オリジナルアクリルカラビナ
全国HMV・HMV&BOOKS online:オリジナルステッカー
タワーレコード・TSUTAYA RECORDS他全国CDショップ:オリジナルポストカード
※特典は数に限りがございますので、発売前でも配布終了となる可能性がございます。
※一部取り扱いのない店舗等もございます。詳しくは対象店舗およびネットショッピングサイトへお問い合わせください。

< HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023 -The Ghost of GLAY>

2023年
3月2日(木)北海道・帯広市民文化ホール
3月4日(土)北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru
3月5日(日)北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru
3月12日(日)秋田・秋田芸術劇場ミルハス
3月14日(火)山形・やまぎん県民ホール
3月19日(日)三重・三重県文化会館大ホール
3月21日(火)岐阜・長良川国際会議場
3月24日(金)新潟・新潟県民会館
3月25日(土)新潟・新潟県民会館
3月30日(木)東京・NHK ホール
3月31日(金)東京・NHK ホール
4月4日(火)和歌山・和歌山県民文化会館 大ホール
4月7日(金)愛媛・松山市民会館 大ホール
4月9日(日)高知・高知県立県民文化ホール オレンジホール
4月12日(水)京都・ロームシアター京都 メインホール
4月13日(木)京都・ロームシアター京都 メインホール
4月18日(火)広島・広島文化学園 HBG ホール
4月19日(水)広島・広島文化学園 HBG ホール
4月23日(日)佐賀・鳥栖市民文化会館
4月25日(火)鹿児島・川商ホール ( 鹿児島市民文化ホール ) 第 1
4月29日(土)沖縄・沖縄コンベンションセンター劇場棟
4月30日(日)沖縄・沖縄コンベンションセンター劇場棟
5月17日(水)福島・けんしん郡山文化センター
5月20日(土)静岡・静岡市民文化会館大ホール
5月21日(日)静岡・静岡市民文化会館大ホール
5月26日(金) 長野・ホクト文化ホール ( 長野県県民文化会館 )
5月28日(日)富山・富山オーバードホール
6月1日(木)北海道・函館市民会館
6月3日(土)北海道・函館市民会館
6月4日(日)北海道・函館市民会館
6月10日(土)東京・東京ガーデンシアター
6月11日(日)東京・東京ガーデンシアター

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