【ライブレポート】KISAKI、バンド活動30周年記念公演。V系への大きな愛と強い信念

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2022年1月に、MIRAGEが結成25周年を迎えた。これを記念して、KISAKIはMIRAGEを再結成した。

◆ライブ写真

そして、KISAKI自身は2023年にキャリア30周年を迎えることに寄せて、30周年記念公演<KISAKI BANDWORKS 30TH ANNIVERSARY LIVE「BEYOND THE KINGDOM -TOKYO-」>の開催とこの日のために錚々たるメンバーを集めた当日限定バンド・THE LOCUSを組んだことを発表した。

<KISAKI BANDWORKS 30TH ANNIVERSARY LIVE「BEYOND THE KINGDOM -TOKYO-」>は、これまでのKISAKIの‘‘軌跡‘‘を辿る公演。本項では、1月29日に行われたライブのレポートをお届けしよう。

この日は、キボウ屋本舗、NEGAというかつてKISAKIが立ち上げたレーベル「UNDER CODE PRODUCTION」に所属していたバンドが、KISAKIの為に限定復活。共にシーンを盛り上げていた彼らがKISAKIのために再び音を重ねるというのは、ファンにとってとても嬉しい出来事だ。「いらっしゃいませぇぇぇぇ!」と威勢のいい掛け声と共に登場したキボウ屋本舗と、轟音をかき鳴らしにやってきたNEGAは華を添えるどころか、記念すべきこの日の為に祝福の大きな花火を打ち上げたように序盤から会場を大いに盛り上げていった。


この日の真打となるTHE LOCUSの登場。和訳すると“軌跡”という意味を持つこのバンドのメンバーには、KISAKIのこれまでの戦友とも言える仲間たちが集結。ボーカルには真緒(Sadie/The THIRTEEN)、幸樹(ダウト)、ギターにJUN(Phantasmagoria/GOTCHAROCKA)HIZAKI(Versailles/Jupiter)、ドラムにyusuke(HERO)、そしてベースはもちろんKISAKIという、豪華絢爛なメンバーでだ。

壮大なSEで幕が開くと、そこにはシルエットで浮かび上がったメンバーの姿が。「welcome!」と真緒の掛け声と共に、メンバーは前へと踊りだし、KISAKIとHIZAKIは拳を交わし、THE LOCUSの今宵限りのステージがスタート。


第1幕としてボーカルに真緒を迎え入れ、1発目に届けられたのは凛の「The psalms and Lamentations」。そう、このバンドではKISAKIの歴代バンドの楽曲たちが時代を問わず繰り広げられるのだ。かき鳴らされるギターサウンドは会場を疾走し、真緒の煽りが今日この日の為に集まったファンの感情を高めていく。下手で麗しくも鋭い眼光でギターを奏でるHIZAKIは、KISAKIがレーベル「Matina」を動かしていた時代からの仲だ。今や国内外問わず名を轟かせる彼がこのステージに華を添えるのも大変貴重な瞬間である。


「暗黒に染まりなさい──」と始まった「Unknow zero distance」(Phantasmagoria)では、なんとステージ前方から勢いよくガスが噴出。派手な演出に会場は驚きながらもボルテージを更に上げていき、KISAKIはHIZAKI、真緒、JUN、yusukeのもとへ駆け寄り、それぞれ顔を寄せ合って、この瞬間の共鳴を確かめあっていく。レーベルメイトであったJUNと肩を寄せ合って音を奏でる姿は、KISAKI自身がメンバーとのライブを純粋に楽しんでいるからこそ。1度しかない30周年、そして今後の展望はあると言いながらも、KISAKIは30周年のステージは現在この日だけとしか考えていないという。


「沈黙の羽」(KISAKI PROJECT)、「deep sky」(Syndrome)と次々と繰り広げられる歴代の楽曲。こうしてナンバーが揃うと、いかに彼がヴィジュアル系シーンで常に一線を走ってきたかということを再確認させられる。「KISAKIさんの作った曲達をお前たちに刻んでいく」と放った真緒の言葉は、これまでのKISAKIの功績を称えると共に、これからのシーンへ彼の想いを楽曲に込めて継承することを誓っていた。


第1幕ラストを彩るは「百花繚乱」(MIRAGE)。センターへ来たKISAKIの顔を覗き込むように仰ぎながら歌い、最後には彼の背中に手を添えた真緒の姿が印象的だった。華やかに彩られるステージと、咲き乱れるように荒れるフロアに心掴まれた。


第2幕は幸樹がボーカルとして登場。貴公子のような衣装に身を包んだ彼は、真っすぐと前を見つめてMIRAGEの「…Air」を歌い上げる。彼の歌声は会場を優しく包み込み、ゆっくりと照らし出されるステージは、神々しささえ感じさせた。
ここまで怒涛の如く披露されてきたステージで恍惚となった会場をさらに惹きつけたのは「小夜時雨」(Syndrome)。身体の芯まで鳴り響くベース音が、yusukeの情熱的なドラムで更に奥の方まで打ち付けられていく。目や心だけでなく、身体ごとステージに惹きつけられる感覚が心地良い。


実は全員関西出身なTHE LOCUSのメンバー。幸樹の「関西人やから喋りましょ」という言葉にKISAKIは「長くなるぞ(笑)」と返しながらも、今回のメンバーとのかつての思い出や感謝を語る。「このメンバーでステージ立つって初めてじゃない?最初から、やるのであればこのメンバーでって決めていて」と語るKISAKI。各々に活動するバンドがありながらも、このようにメンバーが揃ったのは、やはりシーンを築き上げてきたKISAKIだからであろう。


「懐かしむのは後にして、今は暴れよう。やれる奴、手ぇあげろ!」という幸樹の煽りで始まったのは、「狂想曲-Cruel Crucible-」(Phantasmagoria)。ヒリヒリとするサウンドとスピード感に触発されて、フロアはヘドバンで埋め尽くされていく。そのまま会場は感情を加速させ、「Pixy false」(Phantasmagoria)ではセンターに立つKISAKIに、四方八方から手が伸びる。KISAKIの楽曲が会場を駆け巡り、会場全体が一体化する光景は美しく、もっと、もっとこの時間を堪能させてくれとフロアが求めていた。「KISAKIバンド活動30年間の歴史をここにおいて帰ります」と幸樹が告げ、ラストに奏でられたのは「Dedicate to Graveyard」(凛)。


KISAKIはステージ上から真っすぐと前を向いていた。その目には、この会場の光景以外にも、様々な光景が浮かんでいたのではないだろうか。数々のバンド、レーベルメイト、楽曲、そしてファン。語りきれぬ今日この日までの想いは、メロディーとなり全てこのステージに捧げられる。髪を振り乱しながらの全身全霊のステージングは、こちらもまばたきのひとつも惜しいくらいに眩しい。

ステージが終わると会場いっぱいの拍手が。そして、鳴りやむことなく、アンコールを求める手拍子へと変わっていった。アンコールは第1幕を務めた真緒も登場し、ツインボーカルのステージへ。「フロアーの気合が足りないんじゃないですか?ボーカル二人の力が弱いんじゃないですか?」というKISAKIの煽りでアンコールに披露されたのは、「Foolish」(凛)、「神歌」(Phantasmagoria)。真緒が「拳を上げろ!」と叫ぶと、会場の隅から隅まで拳が突き上がる。幸樹は水を吹き飛ばし、HIZAKIがドレスと髪を振り乱しながらシャウト。KISAKIもマイクを取り上げたりと、一気に破天荒なステージへと変貌。


KISAKIはベースを外すと、ステージ上から荒れた会場を堪能する。ステージでメンバーが煽り、それに呼応するフロア。KISAKIにはこの荒れ狂う会場がよく似合う。真緒と幸樹が隅々までフロアを盛り上げると、会場は振り切ったボルテージを更に壊すように滾っていく。

そこへ、ステージ袖からKISAKIに渡されたのはなんとCO2ボンベ。KISAKIはホースを握ると楽しそうにフロア、メンバーと容赦なくガスを噴出。至近距離でガスを受ける真緒、幸樹、JUNはKISAKIの強烈な一撃に叫びながらも嬉しそうだ。同じくガスを受けたHIZAKIは、浴びながらも艶やかさを失わない姿は流石と言ったところ。そんな光景をフロアの荒れ模様と共に後方から眺めるyusukeのドラムが、「まだまだ終わらせない!」と言わんばかりに更に叩きつけてくる。


悪戯な笑みを浮かべながら暴れまわるKISAKIを目に、フロアは更に燃え上がっていった。そして、HIZAKIが弦から手を離したかと思えば、優雅に歩きながらフロアーにキャンディーを投げ入れていく。彼らのアンコールならではの遊び心ある演出だ。曲が終わると、KISAKIは立ち上がれなくなっていた。そして、そのままこの時間を噛みしめるように、ゆっくりと会場を見渡す。


2023年、30周年を迎えるにあたって華々しいスタートとなったこの日、KISAKIは今後も活動はあるとしながらも、ステージの予定は未定だという。そして、東京は無いと思うと語っている。KISAKI30周年企画はまだ続くが、それは追って発表するとのこと。はやる気持ちは山々だが、続報を心待ちとしていよう。

数々のバンドだけでなく、レーベルも立ち上げ、シーンをひたむきに走ってきたKISAKI。30年という節目で振り返ると、THE LOCUSのメンバーのように彼と携わってきた者たちが、現在のヴィジュアルシーンを牽引していく存在となっている。楽曲を生み出してきただけでなく、彼等のような存在を育て上げたのもKISAKIの功績であり、軌跡であると言えるだろう。


「これがヴィジュアル系だぞ!」と叫んだ幸樹の言葉が今日この日を物語っているように、KISAKIはヴィジュアル系シーンになくてはならない人物。そんん彼は、最後にこれまでの感謝と共に「これから、僕はともかく、皆(メンバー)はバンドしているんで。まだまだシーンを引っ張っていって欲しいと思います」と述べた。彼がいかにこのジャンルを大切に、そして愛しているか──。その想いは計り知れぬ苦しみや葛藤があると思うが、大きな愛と強い信念が彼にはあると伝わった1日であった。

そして我々も、ヴィジュアル系を愛してよかったと、そして今も愛していると再確認、確信した。改めてKISAKI活動30周年に祝福と感謝を。

文◎茉奈佳
編集◎BARKS
写真◎ 春川 眞 / zoi

セットリスト

第一部(Vo.真緒)
1.The Psalms and Lamentations(凛)
2.Unknow zero distance(Phantassmagoria)
3.沈黙の羽根(KISAKI PROJECT)
4.deep sky(Syndrome)
5.百花繚乱(MIRAGE)

第二部(Vo.幸樹)
SE
6....Air(MIRAGE)
7.小夜時雨(Syndrome
8.狂想曲-Cruel Crucible-(Phantasmagoria)
9.Pixy false(Phantasmagoria)
10.Dedicate to Graveyard(凛)

アンコール(ツインボーカル)
11.Foolish(凛)
12.神歌(Phantasmagoria)
エンディングSE

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