【コラム】ザ・ローリング・ストーンズ、今も転がり続ける伝説の軌跡

2023.2.13 14:30

ザ・ローリング・ストーンズの結成50周年ツアーをとらえた映像＆音源作品『GRRRライヴ！』が、2月10日にリリースされた。およそ21世紀に入ってからのストーンズは、やることなすこと、ロックンロールの世界記録を更新中だが、ここにあるのは紛れもなくそのピークのひとつだ。新旧織り交ぜた最強セットリストや、ミック・テイラー、ブルース・スプリングスティーンといった豪華ゲストの参加、そして今は亡きチャーリー・ワッツの雄姿。過去の感傷と現在進行形の希望が交錯する、優れた作品に仕上がっている。

収録は2012年12月15日、ニュージャージー州ニューアークのプルデンシャルセンター。NHLやNBAなどが開催される大型室内競技場だが、カメラ位置が近距離中距離で、小ぶりのホールで観ているような迫力がある。1曲目は1965年のナンバーワンヒット「ゲット・オフ・オブ・マイ・クラウド（一人ぼっちの世界）」で、シルバーのジャケットにボルサリーノをかぶって登場するミック・ジャガーがいきなりかっこいい。「ラスト・タイム」の背景に映る、ブライアン・ジョーンズとビル・ワイマンがいるオリジナル・ストーンズの写真がいい。とにかく映像がクリアで音がいいので、キース・リチャーズの豪快に見せて実は繊細なプレーのニュアンスもはっきり聴きとれる。爆音鑑賞がお薦めだ。

なにしろ、とにかくミックが元気過ぎる。ステージセットはおなじみのベロ出しマークを立体化し、ベロの部分を客席の花道に仕立てたものだが、花道をずんずん歩く。踊る。シャツを振り回す。クラップをうながす。コール＆レスポンスを煽る。キースは裏ボスの存在感でどっしり構え、ロン・ウッドはエレクトリックギター、スティールギター、「黒くぬれ！」のエレクトリックシタールなどを持ち替えながら華麗なプレーを聴かせる。そして穏やかなアルカイックスマイルを絶やさず、あの独特のハイハット抜き奏法でバンドをグルーヴさせるチャーリー。ミックとキースはこの時点で“まだ”70歳。若い。

豪華ゲストの参加も見どころだ。「ギミー・シェルター」で、ミックに挑みかかるようなド迫力のシャウトを聴かせるレディ・ガガ。ジェフ・ベック・グループもカバーしたリズム＆ブルースの古典「ゴーイング・ダウン」で、嬉々としてギターを弾きまくるジョン・メイヤーとゲイリー・クラーク・ジュニア。ボ・ディドリーの「フー・ドゥ・ユー・ラヴ」を、ワイルドなガレージサウンドに染め上げたザ・ブラック・キーズの二人。いずれも100%のテンションで挑みつつ、ストーンズへのリスペクトをひしひしと感じる快演だ。

「ドゥーム・アンド・グルーム」「ワン・モア・ショット」の2曲はこの時点でリリースされたばかりの最新曲で、どこを切ってもストーンズでしかない古典的なリフ主体のロックンロール。お馴染みの曲が並ぶセットリストの中で何の違和感もない。さらにメンバー紹介を経て、ここまで裏ボスに徹してきたキースがスポットライトを浴びて歌う「ビフォー・ゼイ・メイク・ミー・ラン」と「ハッピー」の晴れやかさ。そこに満を持してミック・テイラーが登場し、「ミッドナイト・ランブラー」でキース、ミック・テイラー、ロンの3人が並ぶシーンには感動しかない。ミック・テイラーのソロの後ろで、ロニーがガッツポーズを繰り返して煽ってる。ふたりのミックが向かい合い、ハーモニカとギターで会話をしてる。これがストーンズの50年の歴史だ。

ライヴ終盤、この日の特別ゲストの中でひときわ大歓声を浴びたのは、ここニュージャージー出身のブルース・スプリングスティーンだ。「ダイスをころがせ」で、ミックからリードボーカルを奪う勢いで歌い、リードギターもばりばり弾く。今日はあまり表情を動かさないキースが満面の笑みでハグをする、ボスの放つポジティブなオーラはやはりすごい。そこから「ブラウン・シュガー」へ、「悪魔を憐れむ歌」へ、定番のストーンズ・クラシックスを連ねて一気にゴールラインを駆け抜ける。イェイイェイ、フーフー。観客全員を巻き込んだコーラスに、画面のこちら側からも参加したくなる。

時間の経つのも忘れ、アンコールの最後を飾る「サティスファクション」まで全23曲、たっぷり2時間半のロックショー。セットリスト、ゲスト、演奏、とりわけずば抜けたミックのバイタリティも含め、50周年を飾るエネルギッシュなパフォーマンスは、永久保存版にふさわしい。2012年当時、このライヴがペイ・パー・ビューで生中継されたのを観た人もいると思うが、映像の再編集と音源のリミックスでクオリティは格段に上がった。さらにパッケージはDVD／ブルーレイを中心に、CDをセットしたもの、CDのみ、アナログなどが用意されているが、やはり映像を楽しむべきだろう。ボーナストラックを多数収録したパッケージもあるので、チェックしてほしい。

2023年、チャーリーはもういない。サックスのボビー・キーズもこの世を去った。コーラスのリサ・フィッシャーはバンドを離れた。映像を見ていて感傷的になる瞬間もあるが、今もストーンズは転がり続けている。ミック、キース、ロンにブルースとロックンロールの神様の祝福を。ザ・ローリング・ストーンズの作品は過去も現在も、これから出るもの含めてすべてが伝説だ。

ザ・ローリング・ストーンズ『GRRRライヴ！』

2023年2月10日発売
DVD+2CD
UIBY-15137 7,150円税込
日本盤のみ日本語字幕付／英文解説翻訳付／SHM-CD仕様
1.一人ぼっちの世界
2.ラスト・タイム
3.イッツ・オンリー・ロックン・ロール
4.黒くぬれ！
5.ギミー・シェルター（ウィズ・レディ・ガガ）
6.ワイルド・ホース
7.アイム・ゴーイン・ダウン（ウィズ・ジョン・メイヤー・アンド・ゲイリー・クラーク・ジュニア）
8.デッド・フラワーズ
9.フー・ドゥ・ユー・ラヴ？（ウィズ・ザ・ブラック・キーズ）
10.ドゥーム・アンド・グルーム
11.ワン・モア・ショット
12.ミス・ユー
13.ホンキー・トンク・ウィメン
14.バンド・イントロダクション
15.ビフォ―・ゼイ・メイク・ミー・ラン
16.ハッピー
17.ミッドナイト・ランブラー（ウィズ・ミック・テイラー）
18.スタート・ミー・アップ
19.ダイスをころがせ（ウィズ・ブルース・スプリングスティーン）
20.ブラウン・シュガー
21.悪魔を憐れむ歌
22.無情の世界
23.ジャンピン・ジャック・フラッシュ
24.サティスファクション
ボーナス映像[12月13日ニューアーク初日公演から]
1.ラスト・タイム　[日本盤のみのボーナス映像]
2.リスペクタブル（ウィズ・ジョン・メイヤー）
3.アラウンド・アンド・アラウンド
4.ダイスをころがせ　[日本盤のみのボーナス映像]
5.ギミー・シェルター
CD1
1.一人ぼっちの世界
2.ラスト・タイム
3.イッツ・オンリー・ロックン・ロール
4.黒くぬれ！
5.ギミー・シェルター（ウィズ・レディ・ガガ）
6.ワイルド・ホース
7.アイム・ゴーイン・ダウン（ウィズ・ジョン・メイヤー・アンド・ゲイリー・クラーク・ジュニア）
8.デッド・フラワーズ
9.フー・ドゥ・ユー・ラヴ？（ウィズ・ブラック・キーズ）
10.ドゥーム・アンド・グルーム
11.ワン・モア・ショット
12.ミス・ユー
13.ホンキー・トンク・ウィメン
14.バンド・イントロダクション
CD2
1.ビフォ―・ゼイ・メイク・ミー・ラン
2.ハッピー
3.ミッドナイト・ランブラー（ウィズ・ミック・テイラー）
4.スタート・ミー・アップ
5.ダイスをころがせ（ウィズ・ブルース・スプリングスティーン）
6.ブラウン・シュガー
7.悪魔を憐れむ歌
8.無情の世界
9.ジャンピン・ジャック・フラッシュ
10.サティスファクション
日本盤のみボーナス・トラック[12月13日ニューアーク初日公演から]
11.ダイスをころがせ
12.ドゥーム・アンド・グルーム
13.ラスト・タイム

ブルーレイ+2CD
UIXY-15050 8,250円税込
日本盤のみ日本語字幕付／英文解説翻訳付／SHM-CD仕様
ブルーレイ
1.一人ぼっちの世界
2.ラスト・タイム
3.イッツ・オンリー・ロックン・ロール
4.黒くぬれ！
5.ギミー・シェルター（ウィズ・レディ・ガガ）
6.ワイルド・ホース
7.アイム・ゴーイン・ダウン（ウィズ・ジョン・メイヤー・アンド・ゲイリー・クラーク・ジュニア）
8.デッド・フラワーズ
9.フー・ドゥ・ユー・ラヴ？（ウィズ・ブラック・キーズ）
10.ドゥーム・アンド・グルーム
11.ワン・モア・ショット
12.ミス・ユー
13.ホンキー・トンク・ウィメン
14.バンド・イントロダクション
15.ビフォ―・ゼイ・メイク・ミー・ラン
16.ハッピー
17.ミッドナイト・ランブラー（ウィズ・ミック・テイラー）
18.スタート・ミー・アップ
19.ダイスをころがせ（ウィズ・ブルース・スプリングスティーン）
20.ブラウン・シュガー
21.悪魔を憐れむ歌
22.無情の世界
23.ジャンピン・ジャック・フラッシュ
24.サティスファクション
ボーナス映像>[12月13日ニューアーク初日公演から]
1.ラスト・タイム　[日本盤のみのボーナス映像]
2.リスペクタブル（ウィズ・ジョン・メイヤー）
3.アラウンド・アンド・アラウンド
4.ダイスをころがせ　[日本盤のみのボーナス映像]
5.ギミー・シェルター
CD1
1.一人ぼっちの世界
2.ラスト・タイム
3.イッツ・オンリー・ロックン・ロール
4.黒くぬれ！
5.ギミー・シェルター（ウィズ・レディ・ガガ）
6.ワイルド・ホース
7.アイム・ゴーイン・ダウン（ウィズ・ジョン・メイヤー・アンド・ゲイリー・クラーク・ジュニア）
8.デッド・フラワーズ
9.フー・ドゥ・ユー・ラヴ？（ウィズ・ブラック・キーズ）
10.ドゥーム・アンド・グルーム
11.ワン・モア・ショット
12.ミス・ユー
13.ホンキー・トンク・ウィメン
14.バンド・イントロダクション
CD2
1.ビフォ―・ゼイ・メイク・ミー・ラン
2.ハッピー
3.ミッドナイト・ランブラー（ウィズ・ミック・テイラー）
4.スタート・ミー・アップ
5.ダイスをころがせ（ウィズ・ブルース・スプリングスティーン）
6.ブラウン・シュガー
7.悪魔を憐れむ歌
8.無情の世界
9.ジャンピン・ジャック・フラッシュ
10.サティスファクション
日本盤のみボーナス・トラック[12月13日ニューアーク初日公演から]
11.ダイスをころがせ
12.ドゥーム・アンド・グルーム
13.ラスト・タイム

2CD
UICY-80230/1※限定盤 3,960円税込
日本盤のみ英文解説翻訳／歌詞対訳付／SHM-CD仕様
CD1
1.一人ぼっちの世界
2.ラスト・タイム
3.イッツ・オンリー・ロックン・ロール
4.黒くぬれ！
5.ギミー・シェルター（ウィズ・レディ・ガガ）
6.ワイルド・ホース
7.アイム・ゴーイン・ダウン（ウィズ・ジョン・メイヤー・アンド・ゲイリー・クラーク・ジュニア）
8.デッド・フラワーズ
9.フー・ドゥ・ユー・ラヴ？（ウィズ・ブラック・キーズ）
10.ドゥーム・アンド・グルーム
11.ワン・モア・ショット
12.ミス・ユー
13.ホンキー・トンク・ウィメン
14.バンド・イントロダクション
CD2
1.ビフォ―・ゼイ・メイク・ミー・ラン
2.ハッピー
3.ミッドナイト・ランブラー（ウィズ・ミック・テイラー）
4.スタート・ミー・アップ
5.ダイスをころがせ（ウィズ・ブルース・スプリングスティーン）
6.ブラウン・シュガー
7.悪魔を憐れむ歌
8.無情の世界
9.ジャンピン・ジャック・フラッシュ
10.サティスファクション
日本盤のみボーナス・トラック[12月13日ニューアーク初日公演から]
11.ダイスをころがせ
12.ドゥーム・アンド・グルーム
13.ラスト・タイム

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◆ザ・ローリング・ストーンズ・レーベルサイト

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