【インタビュー】13.3g、様々な音楽ジャンルが混ざり合い強烈なグルーヴで踊らせる1stアルバム『Ashtray』

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2021年に大阪で結成された13.3g。彼らの音楽性を端的に説明すると「ポップス」と言えるだろう。ヴォーカルの藤丸将太が歌い上げていく聴き心地のよいメロディは、多くの日本人の琴線に触れるような親しみやすさがある。しかし、そのポップスを構成する要素は、ファンク、ドリームポップ、シューゲイザー、シンセポップ、チルアウトなどなど、かなり様々な音楽ジャンルが混ざり合い、かつ、強烈なまでにグルーヴィーで、心も身体もしっかりと踊らせてくれるものばかり。このたび完成させた1stアルバム『Ashtray』は、そんな彼らの豊かな音楽性が存分に発揮された超良盤に仕上がった。昨年末には東京での初ワンマンを成功させ、着実にその名と音を広め始めている今、バンド結成から最新作のエピソードまで、4人にじっくりと話を聞いた。

■数字のバンド名も良いよねと数字を探しているときに見つけたのが
■タバコの箱に書いてあった13.3です


──まず、バンド名が気になったんですが、これは何の重さなんですか?

奥野“ロビン”領太(以下、ロビン):これは魂の重さで……

ロビン以外:違う(笑)。

──それは21gですね(笑)。

ロビン:バレてた(笑)。

藤原聖樹(以下、聖樹):バンド名を決めるときに、英語とかじゃなくて数字のバンド名も良いよねという話をしていて。何か良い数字がないか探しているときに、テーブルの上にあったマネージャーのタバコに“13.3”って書いてありまして。

輪田拓馬(以下、拓馬):語感で選びました。

──それで前作が『Chocolate Cigarettes』、今作が『Ashtray』とタバコにかけたタイトルになっているんですね。今日は結成の経緯からお聞きしていきたいんですが、4人はどういうところから集まったんですか?

拓馬:僕と聖樹がバンドをやっていたんですけど、そこが解散するタイミングで、また新しくやろうということになりまして。で、僕が聖樹とやる前に組んでいたバンドがあったんですけど、そこで一緒にやっていたロビンに声をかけて、楽器隊がまず集まって。


▲Ba. 藤原聖樹

──拓馬さんとロビンさんがやっていたバンドはどんな感じだったんですか?

拓馬:そっちはめっちゃスクリームとかするラウド系のバンドでしたね。

ロビン:僕が好きやったんで、そういうの。

拓馬:ロビンはすごく良いバイブスを持っていて。一緒にいるときにポジティヴな意見が出てくるメンバーっていう記憶があったんで、声をかけました。

──ロビンさんと聖樹さんは、このバンドで初めて会ったんですか?

ロビン:顔を合わせたことは何回かあったけど、そんなに深くしゃべったりはしていなくて。

聖樹:1、2回ぐらいしか会ったことなかったからな。

──スタジオで合わせてみて、手応えがありました?

ロビン:僕はめっちゃありました。とにかく音がめちゃくちゃ良いし、ベースがやってほしい帯域のロー感をしっかり主張してくれていて、すごく安心感があるなと思って。だからすごく好印象でした。このベース良いなって。彼が僕に対してそう思っていたかはわからないですけど(笑)。

メンバー全員:はははははは(笑)。

──(笑)。実際どうでした?

聖樹:僕は演奏的なところというよりは、モチベーションとかバイブスが同じ方向だったというか。そこら辺の波長がとても合ったので、すぐに「俺らやっていくぞ!」ってなりましたね。だから、どちらかというと、スキルとかよりもハートの熱い印象が強かったです。

──ヴォーカルの将太さんはどういう経緯で入ったんです?

拓馬:ヴォーカルはなかなか見つからなかったんですよ。で、SNSなどで探してたら、そのなかにひとりだけ、めちゃめちゃ歌が上手い、全然再生数が回っていない人がいて。なんじゃコイツ!と思って、「バンドとか興味ないですか?」ってDMを送ったら、「いま熊本から大阪に出てきて、ひとりで活動しています」と。それでスタジオに入ることになって、その日にバンドに入ることが決まりました。

──将太さんは、それまでひとりでライヴハウスに出たりとか?

藤丸将太(以下、将太):いや、まったくしてなかったんです。音楽を学んだこともなく、人前で歌ったのも文化祭で1回あるかなぐらいの感じで、趣味で始めたアコースティックギターの弾き語り動画をSNSに載せることしかしてなかったんですよ。音楽をやっている人達に触れたのも、このメンバーが初めてで。


▲Vo/Pf/Gt. 藤丸将太

──13.3gが人生初バンド。

将太:そうです。音楽をやってみたいっていう漠然とした思いだけを抱えて飛び出してきたけど、正直何をしたらいいのかわからないときにみんなと出会えて。ようやく音楽ができるんだっていうワクワクはすごくありました。

──オリジナル曲を作ったりとかは?

将太:してなかったです。初めて作ったのも、このバンドで最初にリリースした「ベイビーブルー」という曲だったので。だから、基本的にはカバー動画をあげていました。

──ご自身の好きな曲をアップしていた?

将太:そうですね。親の影響で、小さい頃から90年代の曲をずっとCDで聴いてたので。歌謡曲とかJ-POPを聴いて歌って……という感じでした。

──ちなみに、メンバーのみなさんそれぞれのルーツやフェイバリットって、結構バラバラだったりします?

ロビン:めちゃくちゃバラバラですね。僕は洋楽のロックが好きで、ラウドな感じというか、アメリカの乾いたロックみたいなのが好きで。

──ニューメタルとかエモとか。

ロビン:そっち系ですね。言葉やボーカルのメロディから力強さを感じるもの、ハートで歌うようなロックに昔から心を動かされていたので、いまでもそういうものが好きなのかなって思います。でも、それをやりすぎちゃうとジュウサン(13.3g)の音楽と馴染まないところもあるので(笑)、自分の好きなものと今の僕たちの音楽に合うものを、感覚を研ぎ澄ませながら作っていく感じですね。

聖樹:僕は小学校の頃から耳馴染みのいいポップスばかり聴いていて、洋楽とかは全然通ってなかったです。浅く幅広くっていう。

拓馬:僕はメロコアにハマり、聴き漁っていました。あと、ロビンからラウド系とかを教えてもらったりして、こういう音楽もかっこ良いなとか。だから基本的には、魂の先に出ている音楽というか。

ロビン:わかる(笑)。

拓馬:そういう感じの音楽が好きでしたね。あと、スケボーをやっていたのもあって、スケーターライクなものが好きでした。

──拓馬さんって、ヒップホップとかネオソウル的なニュアンスを感じさせるドラムを叩いたりもしますけど、その辺りはあまり通ってないんですか?

拓馬:いや、ルーツはいま言った音楽なんですけど、ドラム始めたときぐらいから、ヒップホップとかファンクとか、ちょっとノリ感が違うものにハマったんですよ。D'Angeloとかが好きになって、こういうビートあるんや!とか、渋いなぁとか。あの時代のヒップホップって、すごく生感があっていろいろこだわっているけど、こういうビート叩きたいっていう意思から来ている感じがするんですよ。そこが、僕が音楽を好きな理由とリンクしていて、そこからいろいろディグっていったので、いま対応できているんだと思います。

──かぶっているところもあるけど、各々守備範囲がちょっと違っていておもしろいですね。そんな4人が集まり、こういう音楽をやろうというのを話して決めたりしたんですか?

拓馬:話して決めたというよりは、みんなでビルドしたらそうなったっていう感じでした。最初にみんなで構築したのは「MONSTER」(『Chocolate Cigarettes』収録)だったんですけど、僕らも将太のことをまだあまりわかっていなかったから、どうなるんやろうと思って作ってみたら、すごくハマった感じがあって。あまりジャンルとかは決めずに、みんなが持ち寄ったものを感覚で作っていったらおもしろいんかなっていう流れになりましたね。

──なるほど。

拓馬:だから、いまだにこういうジャンルをやりたいっていうのは、定まってないと思います。“ポップスをしたい”というのは芯にあるんですけど、このジャンルというフィルターを通してポップスをやりたいっていうのはなくて、クリエイティヴにいろいろやりたい、みたいな。

──これは茶化してるわけじゃなく、すごく良いなと思ったんですけど、ポップスをしたいと思いながら、あの若干変態的なイントロの曲を最初に作ったっていうのが……。

メンバー全員:ははははははは!

拓馬:確かに(笑)。あの曲はイントロから作ったんじゃなくて、リズム隊のフレーズとかを軸にして、そこにメロディを乗せていったんですよ。

ロビン:グルーヴとかそっち先行で、リフが入って方向性が定まった感じがあったな。

拓馬:そうそう。でも、確かにあそこだけ聴いたらなんて変態な曲を……っていう(笑)。

──そういうところがいいなと思いました。ポップスって、ただ聴き心地がいいのではなく、フックがあって刺激的であることが大事だと思うので。いつも曲を作るときは、具体的に何かを決めてから始めるというよりは、作っていったら「なんかこんな感じになった」ってワクワクしながら進めていくことが多いですか?

拓馬:そうですね。ちょっと作り上げたものを将太が歌った瞬間に、いいなってなることが多くて。将太が歌うと、自分達がやりたいポップスにしっかりなる安心感があるので、他でやりたい放題できちゃうところはあるかもしれないです。だからあのリフも入れられるし。

──将太さん、めっちゃニヤニヤしてますね。

将太:いや、そう言われると嬉しいなと思って(笑)。

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