【インタビュー】Rest of Childhood、新曲「MILK」に失恋と青春と美学「疾走するビートに乗せて振り切る瞬間があればいい」

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Rest of Childhoodが三作目の流通盤シングル「MILK」を完全数量限定リリースした。先ごろ公開したHAL(G&Vo)と漫画家のふるかわしおり対談では、ジャケットイラスト制作秘話から、同楽曲に登場する人物像の背景などが浮き彫りになると同時に、HALの口から「「MILK」は、Rest of Childhoodとして勝負を賭けようと思っている曲なんですよ」という強い想いが語られた。

◆Rest of Childhood 動画 / 画像

コロナ禍においても絶え間なくライブを行なってきた彼らは、現在、全国ツアー<Rest of Childhood “The Terminal" Tour '23”>を開催中だ。OLDCODEXのYORKE.ことHAL、元Hysteric BlueのTakuya(Dr)、元RIZEのu:zo(B)といったツワモノから成るトリオバンドが、今もなお荒々しさと瑞々しさ、駆け抜ける青さをキープし続けている。初の女性目線で描かれた失恋ソング「MILK」の制作エピソードを織り混ぜながら、Rest of Childhoodの現在地についてたっぷり話を訊いたロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■過去と現在のシーンではアレンジを変えたり
■映画だと2時間使うことを数分間で表現する

──三作目となる流通限定シングル「MILK」は、どんな過程を経て完成した楽曲なんですか?

Takuya:けっこう前から存在している曲なんですよ。プロトタイプはu:zoが加入する前からありました。

u:zo:初めて聴いた時には形になってましたね。


▲HAL (G&Vo)

HAL:u:zoがサポートでベース弾いてくれていた頃かな。歌詞も含めてフルサイズの状態で出来ていたんだけど、その後、ライブの時にギターでストロークする間奏が生まれて、u:zoが加入したことでベース始まりの曲になって。

u:zo:リハーサルで「何か足りなくない?」っていう話になって、イントロを加えた感じですね。

HAL:あと「展開が似てきちゃうから変化をつけよう」っていうTakuyaの提案で最後のサビのコードを3人で考えたりとか。

Takuya:ライブの時期によってアレンジのバージョンが進化していったね。

HAL:歌詞も多少前後が違ったりとか。

Takuya:リリースしていなかった分、ライブで育っていった曲ですね。Rest of Childhoodにはいろいろなタイプの曲がありますけど、「MILK」はその中でもストレートで瞬発力があって、野球でいう決め球みたいな曲ですね。

u:zo:ライブでも、全員の集中力が高い曲ですね。考えないでもグッと入り込める。

──疾走感と甘酸っぱさが同居していて、女性目線の歌詞にも驚きました。

Takuya:僕個人は、女性ボーカルのバンド(Hysteric Blue)をやっていたことがあったりとか、女性に曲を作り続けてきたから、あまり違和感がなかったんです。だけど、HALくんが書くという意味では、確かにそうかもしれないですね。ただ1人称を“僕”にしたとしても、この歌詞と似たようなことを思う人もいるんじゃないかな。そういう意味では、「MILK」の歌詞を意外に思う人もいるだろうし、しっくりくる人もいると思います。疾走感と甘酸っぱさに関しては年齢を重ねた自分からすると、疾走していること自体が青春だなって思いますね。

u:zo:今日、この取材場所に来る途中で、尾崎豊さんの記念碑に一礼してきたんです。若い頃は現実感がありすぎてあまり聴かなかったのが、今聴くと甘酸っぱかったり、青い感じがする。「MILK」にも共通した匂いがあるのかなって。女性目線だけど、青春感があって。

HAL:うん。いろいろな世代の人に聴いてほしいよね。

Takuya:そうだね。どの年代の人にも刺さると思います。


▲u:zo (B&Cho)

──形にする上でほかにどんな意見が飛び交ったんですか?

HAL:僕が「この曲の世界観はこうなんだ」って伝えて、みんながその意見を尊重してくれる中で、「この部分のサビはカットしたほうがいいんじゃない?」って案が出たんですよ。だけど、「そこは外せない。必要なんだ」っていうやりとりがあったりとか。「だったら、サウンドはこうしようか」とか新たなアイデアが膨らんだり。

Takuya:Rest of Childhoodの曲のほとんどがそういうやり方でできていくね。HALによる弾き語りのデモがすごくわかりやすいから、それを土台に膨らませていく。

HAL:たまに、「こうするのは?」って意見を言う時はあるけど、Takuyaとu:zoを完全に信頼しているので。3人で「ここだ!」っていうゴールが見えた瞬間は、一緒にやっていてすごく面白い。1人じゃ辿り着かなかったと思うし。

──では「MILK」をプレイする上で、各自こだわったところは?

Takuya:特にないんですけど、一息で最後まで駆け抜ける感じですかね。

u:zo:Takuyaくんはバンド全体をいつも見てくれてるから。

Takuya:さっき話に出たやりとりは、同じリフやサビが繰り返されるから間延びして聴こえるかなと思ったからなんですよ。HALくんは「最後のサビは前のサビと歌詞が繋がっているから絶対に必要だ」って言ってて。

u:zo:確か、俺が「サビをカットしよう」って言ったんだと思う。

Takuya:なので、サビが何度来ても変化が感じられるようにコードを変えたり、リズムを一度落としたりしているんです。だから、駆け抜けて響くのかもしれないですね。サビごとに違うことをやっていて、過去のシーンと現在のシーンではアレンジで色を変えてみたり。映画だと2時間使えるけど、数分間で表現するのは難しかったですけどね。

HAL:そうだね。楽曲ではそれを5分とかで表現するわけだからね。


▲流通盤シングル「MILK」

Takuya:ドラムへの細かいこだわりはそこまでないんです。ただ、変化をつけるという意味ではアレンジ面でもテクニカル面でもいろいろな引き出しを使っています。

u:zo:ベースは、最初は同じフレーズの繰り返しだったんですが、同じ音を使わないで、スケールの中で音を外してみたり、フレーズを変えたり。ギターがずっと一緒のことやっている曲だから、ベースは“ここがAメロで、ここが間奏”ってわかるように変化をつけています。それと「MILK」はストレートな音色は違うなと思ったから、歪ませたんです。綺麗な音で弾いちゃうと不完全な感じがなくなってつまらなくなるんですよ。若い頃の“歪んでりゃカッコいいじゃん”っていう発想というか(笑)。

Takuya:ある種、偏った感じのね。

u:zo:そう。壊したいなと思ったんです。Rest of Childhoodにおいての自分の役目はそこにあると思っているので。

──エッジーな部分を担っているんですね。

HAL:いい話だね。僕はTakuyaやu:zoみたいに深く考えてないから、ナチュラルに表現していて。ギターに関してはフレーズがずっと同じだからラクなんですよ。逆に言うとシンプルなぶん、ドラムやベースが主役になれる瞬間がある、だからいいなって。後半でブレイクする部分は3人で息を呑むように止まって、ドン!ってまた合わせる瞬間が気持ちいいし、バンドだなぁって思う。

──スキルのあるリズム隊が、こだわりを持って衝動性とか青春感を出すって、ハードルが高いというか。なかなかできることじゃないと思うんですよね。

HAL:そうだね。Takuyaやu:zoみたいにキャリアを積んだ上で柔軟にできる人は少ないと思うし、そこがRest of Childhoodの武器ですね。みんな楽器を初めて触った時の気持ちのまんまプレイすることもできるんだなって。

u:zo:上手くなったから、できなくなることっていうのもあるからね。

HAL:u:zoがすごいと思うのは、わざと上手く弾かない時があって。そういうことって作品に寄り添わないとできないから。

u:zo:最初はバンド(RIZE)のメンバーとしてデビューして、その後のキャリアはサポートだったり、人に合わせる作業だったので、いろいろ経験してよかったなと。

HAL:Rest of Childhoodではこの3人の個性が爆発しているからね。きっと、「MILK」を他の人たちがカバーしたら、全然違うものになるだろうし。

◆インタビュー【2】へ
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