【ライブレポート】神はサイコロを振らない、初のZeppツアー完遂「本日、願いがようやく叶います」

ツイート
no_ad_aritcle

<Zepp Tour 2023「雪融けを願う飛行船」>と銘打ち、自身初のZeppツアーを開催した4人組ロックバンド神はサイコロを振らない。奇しくも彼らのメジャーデビューは、新型コロナウイルス感染症のパンデミック初年度2020年の7月。歓声やシンガロングの禁止など様々な制約下にあっても、決して立ち止まることなく、果敢なライブ活動を行なってきた。2月5日、東京・Zepp Haneda。ツアータイトルの<雪融け>という言葉に託していた声出し解禁という願いが遂に叶ったファイナルは、熱くエモーショナルな一夜となった。

◆神はサイコロを振らない 画像

OPENING SEが流れると手拍子が起き、桐木岳貢(B)、黒川亮介(Dr)、吉田喜一(G)、最後に駆け込むように柳田周作(Vo)がステージに登場。

「Zepp Haneda、ブッ飛ぶ準備できてるか?」と柳田は荒々しく叫び、四つ打ちのダンスナンバー「巡る巡る」を放つと、オーディエンスは身体を揺らした。“始まりの唄を今歌おう”というフレーズは、このライブの幕開けに相応しく思える。アウトロのドラムを黒川は徐々にテンポダウンさせ、時空が歪むようなトリップ感覚をもたらすと、次曲「タイムファクター」(アニメ『ワールドトリガー』主題歌としての書き下ろし)へと鮮やかにBPMごと繋げた。メジャーデビュー以前から、曲間も含めた場の演出にこだわってきた彼ららしい魅せ方である。柳田は「聴かせろ、東京!」などとしきりに煽り、“♪ラララ”のコーラスを観客に求めていく。間髪入れずに「イリーガル・ゲーム」(ドラマ『愛しい嘘~優しい闇~』主題歌)のストリングスが鳴り響くと、ひときわ大きな歓声が沸いた。ゴージャスな同期のバックトラックとバンドアンサンブルが絡み合い、それを盤石な土台として柳田は伸びやかに歌い、ギターを鳴らした。


▲柳田周作(Vo)

MCでの柳田は、昂る気持ちを抑えきれない様子を見せながら、ファイナルを迎えることのできた感慨を熱く語っていく。

「<雪融けを願う飛行船>というツアータイトルなんですけど……いつか声出しができて、僕らが元々ずっとしていたライブが戻ってきて、みんなと最高の空間をつくれる、夢見ていた場所を取り返したくて、こういうツアータイトルにしていました」──柳田周作

初日の福岡公演、名古屋、大阪、札幌を柳田は振り返り、「100%の声は出せずとも、ファンのみんなはそんな中、すごく愛をくれていました」と感謝を述べつつ、「ファイナルにして声出しOKになりました! これはもう“持ってる”としか思えない」と喜びを露わにした。

「この瞬間を楽しみに、コール&レスポンスとかシンガロングできるような曲を、声出しできないコロナ真っ只中で、敢えてつくり続けてきました。その願いが本日ようやく叶います。思う存分最後まで楽しんでいってください!」──柳田周作

フロアの観客たちの体調を気遣い、「助け合ってくれよ? みんなのそういう小さな愛が、このライブ、Zepp Hanedaを飛び越えて、日本中いつか世界中に広まってくれたら、この世の中がちょっぴり愛に満ち溢れたものになるのかな、と思います」と柳田が語り、「LOVE」を披露。跳ねるリズムと朗らかなメロディーに加え、頭上でハートマークをつくったり手をウェーヴさせたりするアクションで盛り上げ、一体感をもたらした。“雪融けの夜/Zepp Hanedaに”と、この日ならではの歌詞を付け加えて歌い終えると、「新しいの持ってきたぞ! その名も、“Call&Towelponce”!」と柳田が叫んだ。コール&レスポンスとタオル回しが融合したコミュニケーション方法をファンにレクチャーし、勢いの付いたまま「1on1」へ突入。約3年を経てようやく取り戻した自由なライブ空間に、メンバーもオーディエンスも笑顔で酔いしれていた。


▲吉田喜一(G)

ここまでの5曲は、2022年3月にリリースした2枚組1stフルアルバム『事象の地平線』収録曲。ひと時の静寂の後、インディーズ時代から人気を誇るミディアムナンバー「REM」のイントロが鳴ると、歓喜の悲鳴が響いた。暗いブルーの照明の下、白いピンスポットが吉田、黒川、続いて柳田を照らし、最後に桐木を含め全員に光が当たった。しっとりと曲を披露し終えると柳田は、2022年11月からのMonthly Winter Release“冬の大三角形”についてコメント。「どの曲が一番好きか?」を観客に問い掛け、「キラキラ」という声を拾うと、こう続けた。

「僕自身の青春を歌った楽曲。中でも、2番ぐらいから“音楽ってそもそもなんで好きだったっけ?”という自分のルーツから掘り返して、今僕がここに立って歌う意味とか、メンバーが演奏する意味も込められている。ミュージシャン目線からしてもグッとくる楽曲」──柳田周作

と明かした。『冬の大三角形』第二弾楽曲の「朝靄に溶ける」をこの後に披露したのだが、コラボレーション相手であるasmiがスペシャルゲストとしてサプライズ登場し、初のステージ共演を果たした。柳田とasmiは時に見つめ合いながら声を重ね、オーディエンスはじっとその場に佇んで美しいユニゾンに耳を傾ける。音の余白を活かしたシンプルなアレンジは、繊細なブレスまでも際立たせた。



▲with asmi

asmiを送り出し、「最高でございましたね。ええ声や」と柳田は絶賛、「私も負けじと頑張りますね。たまには俺のことも褒めてね(笑)」とメンバーにリクエスト。じゃれ合うようなMCで場を和ませたが、直後の「目蓋」では再び深く集中。ライブ序盤でシャウトしていた姿が幻だったのか?と目を疑うような穏やかなトーンで、柳田は歌唱した。深海の底を思わせる光の中で届けたスローバラード「徒夢の中で」では、ステージに霧のようなスモークが立ち込めた。4人で向き合ってそれぞれの演奏に没頭し長いアウトロを奏でると、遠い夢の世界へとオーディエンスを誘っていく。残響音が消えると、ようやく夢から覚めたかのように、大きな拍手が会場を包んだ。

折り返し地点を迎えてのMCでは、メンバー間の楽し気なやり取りの合間に、特別な感慨が滲んでいた。

「声出しが解禁されて……今までルールを守ってくれて本当にありがとうございます」──桐木岳貢


▲桐木岳貢(B)

ツアー開幕前に彼らに話を聞く機会があったのだが、コロナの感染拡大状況とそれを防止するための規制が果たしてどう変わっていくのか? 誰にも先が読めない中で彼らは<雪融け>の訪れを強く願っていて、それと同時にルールをしっかりと守りながら、一本一本のライブを地道に積み重ねていこうとしていた。「やりたかったこと、やっていい?」と柳田は問い掛け、「男の子!」「女の子!」とコール。大きな歓声を受け止め、柳田は心底うれしそうに笑っていた。フロアから受け取った熱量を自分たちのパワーに代えて、インディーズ時代からライブを沸かせてきたヘヴィチューン「解放宣言」ではアグレッシヴなギターリフで空気を切り裂き、掻き混ぜていく4人。かと思えば、Sexy Zoneへの提供曲「桃色の絶対領域」のセルフカバーでは、ジャジーなアレンジと甘い歌声で魅了。次曲「愛のけだもの」ではファンキーなグルーヴを繰り出して躍らせた。彼らの楽曲は多種多様、変幻自在のパフォーマンスで楽しませたのだった。

「いくつになってもキラキラしていいんだよ! 笑ったり泣いたり、悲しんだり。死ぬほど笑って帰れよ!」──柳田周作

絶叫に近い口調でオーディエンスにそう語り掛けた後、披露したのは、自身の青春を綴った曲だと前述していた「キラキラ」。黒川はパワフルにドラムを強打。柳田は桐木に近付いて肩を抱く。吉田がセンターで髪を振り乱しながらギターソロを奏でる場面では、柳田が隣に跪いて引き立てた。「出会ってくれてありがとう! 生きてくれてありがとう! また会う日までな!」と柳田は叫び、ステージ後方のLEDヴィジョンに曲のイメージを具現化したような星空が広がると「クロノグラフ彗星」を間髪入れずスタート。「聴かせろよ、羽田!」と柳田がマイクを突き出し、観客にコーラスを求め、自身は声を枯らして熱唱した。本編ラストの「夜間飛行」では、観客にしゃがむよう呼び掛けて「今日イチのでっかいジャンプ見せてくれよ!」と叫び、一斉にジャンプ。盛大な盛り上がりの中、メンバーはステージを後にした。


黒川亮介(Dr)

アンコールでは、赤と青のライトに染められたステージで、アッパーチューン「パーフェクト・ルーキーズ」を披露。歌も曲間のシャウトも演奏も、全てがテンション高く、4人のパワーがこれ以上なく漲っているのが伝わって来た。フロアから“oi!コール”が起きていたことに対し、「コロナ前にも俺ら、“oi!コール”って無かったもんね」と桐木が歓喜していたのも印象的。声出しOKいう規制の緩和と、神はサイコロを振らないというバンドの音楽性の広がり、彼らのオーディエンスのノリの多様化。そういったすべての要素が相まって実現した場面だったのだろう。

「こんな日が来るとは思っていませんでした」と柳田はしみじみ語り始めると、メジャーデビュー以降、コロナ禍でライブを思うように開催できず、「何とかバンドを存続させようと音楽以外にも活動の幅を広げていった」という日々を回想。一見するとピンチだが、実はそれが功を奏し、メンバー間の関係性が改善されたという意外な打ち明け話をした。そして、「コロナ禍を経て、音楽外でコイツらといろんなことをするうちに、“やっぱ大好きかも”って思いました」と率直な想いを明かした。

照れ臭そうにしながらも柳田は、「こいつは頑張り屋なんですよ」と桐木を讃え、黒川を「唯一の同い年。頑張り屋で天然で……遠征先でもスタジオで個人練習をしていた」と裏話を明かした。吉田はレコーディング時に、柳田のリクエストをノートにメモして忠実に再現しようとするそうで、「健気なんだよな、お前」と柳田はやはり褒め称えた。

「真面目なヤツらに囲まれて、この不真面目な男が自由に歌わせてもらって、自由に曲を書かせてもらってます。この場を借りて、いつもありがとうございます」──柳田周作

そうフロントマンが謝意を述べると、桐木は「柳田さんがバンドを一番引っ張ってくれて、曲も書いて。嫌なことも、俺らの何倍も経験しとると思う。俺らも、この場を借りてありがとう」と返し、メンバーは異口同音に感謝を伝えた。



結成から8年。音楽をする理由は「どう考えても、みんなのことが好きだから」と言葉を絞り出し、柳田はファンへの気持ちを切々と述べ始めた。ファンから届く“神サイの音楽があるから生きていけます”というメッセージを真っ直ぐに受け取め、「転んで転んで、躓いて躓いて、立ち上がれなくなってもそっと起こしてあげられるような、僕らはそんなバンド、ちっちゃなロックスターでいいかなと思っている」と語り、存在意義に想いを馳せた。

「ずっとこの瞬間を信じて、つくりました!」と柳田が叫んで最後に放ったのは、インディーズ時代からの人気曲「illumination」。ファンのコーラスによって完成するこの曲を、4人は全ての力を出し尽くすように力強く奏で、優しくピュアな歌声で届けた。最後に全員で前へ出てラインナップすると、柳田は感極まったのか、声を震わせながら挨拶。「出会ってくれてありがとう!」と声を振り絞り、4人は「ありがとうございました!」と声を揃えて深く礼をした。

コロナ禍とメジャーデビューのタイミングが重なるという不運に見舞われながらも、逞しく活動を繰り広げ遂に<雪融け>の夢を叶えた神はサイコロを振らない。コロナ禍に人々が抱く不安な心情にシンクロし、既存曲が掘り起こされる形で異例のバイラルヒットを巻き起こした「夜永唄」や、メジャー1stデジタルシングル「泡沫花火」といった彼らの代表曲が今回のセットリストに含まれていなかったことには驚いたが、それは彼らが新たな航路へと羽ばたこうとする決意表明に思えた。詳細の明言は避けたものの、柳田は最後に、次なるツアー開催を予告した。神はサイコロを振らないが開けようとする新たな扉は、目前にある。

取材・文◎大前多恵
撮影◎Viola Kam (V'z Twinkle)

■<Zepp Tour 2023「雪融けを願う飛行船」>2月5日(日)@Zepp Haneda(TOKYO) セットリスト

01.巡る巡る
02.タイムファクター
03.イリーガル・ゲーム
04.LOVE
05.1on1
06.REM
07.朝靄に溶ける with asmi
08.目蓋
09.徒夢の中で
10.解放宣言
11.桃色の絶対領域
12.愛のけだもの
13.キラキラ
14.クロノグラフ彗星
15.夜間飛行
encore
en1.パーフェクト・ルーキーズ
en2.illumination

https://kamisai.lnk.to/hikousenPR

▼『M-ON! LIVE 神はサイコロを振らない Zepp Tour 2023「雪融けを願う飛行船」』放送
https://www.m-on.jp/program/detail/mon-live-kamisai-2302/

■ライブ/イベント出演情報

▼<ORANGE RANGE × アレンジレンジ「スペシャヒットパレード」~ついに本家とトリビュートバンドが対バンライブやっちゃいます~>
2023年2月22日(水) Zepp Haneda(TOKYO)
※ORANGE RANGEとトリビュートバンド「アレンジレンジ」の対バンライブにゲストボーカルとして柳田が出演
https://lit.link/orar

▼<ツタロックフェス2023 supported by Tポイント>
2023年3月19日(日) 幕張メッセ国際展示場 9・ 10・ 11ホール
https://cccmusiclab.com/tsutarock2023

▼<Ivy to Fraudulent Game Presents “春の中へと”>
2023年4月14日(金) Zepp DiverCity(TOKYO)
※Ivy to Fraudulent Game, SHE'Sとの3MAN LIVE
http://www.ivytofraudulentgame.com/

▼<rockin'on presents JAPAN JAM 2023>
2023年4月30日(日) 千葉市蘇我スポーツ公園
2023年5月03日(水・祝) 千葉市蘇我スポーツ公園
2023年5月04日(木・祝) 千葉市蘇我スポーツ公園
2023年5月05日(金・祝) 千葉市蘇我スポーツ公園
2023年5月06日(土) 千葉市蘇我スポーツ公園
※出演日後日発表
https://japanjam.jp/

▼<OSAKA METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2023>
2023年5月13日(土) METROCK大阪特設会場
※会場:大阪府堺市・海とのふれあい広場
https://metrock.jp/

▼<TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2023>
2023年5月21日(日) 新木場・若洲公園
https://metrock.jp/

▼<百万石音楽祭2023~ミリオンロックフェスティバル~>
2023年6月03日(土) 石川県産業展示館1~4号館
2023年6月04日(日) 石川県産業展示館1~4号館
※出演日後日発表
https://www.millionrock.com/

この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス