【ライブレポート】ALI、1stアルバムツアー完走「音楽万歳!」
ALIが2月26日、東京・EX THEATER ROPPONGIにて全国7都市を巡る<ALI 1st Album Release Tour - MUSIC WORLD->ファイナル公演を開催した。ここでは、イベントのオフィシャルレポートをお届けする。
◆<ALI 1st Album Release Tour - MUSIC WORLD->ライブ画像
フロントマンのLEO(Vo)を中心に、CÉSAR(G)、LUTHFI(B)と、さまざまな国々のルーツを持つ多国籍音楽集団・ALI。今回の全国ツアーは、今年1月リリースの1stフルアルバム『MUSIC WORLD』を携えてのものだが、そもそも彼らの結成は2016年6月にまで遡る。今日までなんと約6年半以上。そんな長い歴史の重みをずっしりと抱えながら、これまでの想いを放出するように、会場に集まった全員が熱狂した一夜。バンド史上最大キャパシティで迎えた本公演に刻まれたのは、誰よりも高い純度で音楽を愛するALIの姿勢そのものだった。
「ALI、始めます!」。「仁義なき戦いのテーマ〜Dance You, Matilda」が始まり、ドラム、コーラスのほか、サックス、トロンボーン、トランペットのブラス隊を含めたバンドメンバー全員が揃うなか、満を持してLEOがステージに登場して開幕宣言。続く「EL MARIACHI」で、コテコテのラテン乗りを堪能すると、4曲目「IN THE MOOD FOR LOVE feat. SARM」では、他アーティストのライブでは見られないALI特有の熱量をぶつけられる。
客演のSARMとともに激しく歌っていたかと思えば、3拍子のワルツ調のパートで穏やかな空気が流れると、間奏では突沸が起きたかのように、演奏の熱量が再び急上昇。ステージ上の全員が思うがままに踊り狂い、締めくくりにはLEOがソロパートを熱唱。文字に起こすとあっさりと捉えられてしまうかもしれないが、メンバー全員がありえないくらいにステップを踏み、動き回っているのである。演奏がブリッジを挟むたびに思いもよらぬ方向に切り替わるのだ。ありえない光景が目の前に広がっていた。
順番は少し前後するのだが、ダンステイストな3曲目「MELLOW CRUISE」そして「STAYING IN THE GROOVE」では、この日のテーマはもとより、ALIの音楽が“なんたるか”を早くも思い知らされる。“It's time to movin' up”。そんなフレーズが力強く示すように、ALIの音楽は、まさに情熱。情熱そのものなのだ。その情熱とは例えば、どんな困難があっても乗り越えてしまい、何かを続けようとする情熱。ALIが歌い、踊り続ける姿から、彼らがライブの目的として“歌”や“演奏”のみならず、その先にある“全員で楽しむこと”を目指しているのだと明確に伝わってきた。
そして、フロアの全員が彼らの音楽に身を委ね、ステージに熱っぽい視線を向ける。その先にいる彼らは、ただ爆音で音の快感を届けていく。LEOが手を離したマイクスタンドの足元がぐらつき、静かに立つまでの数秒間。その人を愛するあまり、その人の家の屋根に止まっている烏さえ愛おしく感じてしまう“愛及屋烏”という言葉があるくらいだが、そんな言葉が自然と思い浮かぶくらい、ALIの音楽に酔いしれてしまう。彼らのような存在を、スーパースターと呼ぶべきなのだろう。
さて、前述のSARMをはじめ、数多くの客演アーティストが参加したこの日のライブ。なかでも印象的だったのが、いまなお揺るがぬ“ラップスタア”ことAKLO。6曲目「SHOW TIME feat. AKLO」でのLEOは、AKLOがこの後に登場するステージ下手側を、首を長くしてちらりと覗くなど待ちきれない様子を見せていたくらいだ。
そんな期待に応えるように、AKLOは軽やかにハネるようなバースをキック。そのフロウは、ALIと同じく日本以外の国々にルーツを持つような、“サバイブしたメキシコシティ育ち”なフロウだったほか、AKLOの楽曲にもたびたび登場する“Just Do It!”というフレーズで、LEOからパスを受け取るなど、歌詞の文脈的な側面でも胸に沁みるワンシーンだった。
ステージが進み曲数を重ねても、ALIの手が緩むことはない。8曲目「TEENAGE CITY RIOT」は、一言でいえば“大騒動”。直前の「I Want A Chance For Romance」から一転して、会場全体が狂乱の空気に。“Don’t waste your life”というこの楽曲のフレーズに強烈なメッセージ性が象徴されていたが、女性の腰を抱き抱えるように繊細でセクシーに、それでいて荒々しく、ほとんど上空90°に向けてマイクスタンドを抱き抱えるLEO。その横で細かなフレーズを爪弾くCÉSARと、ただ笑顔で自由にステップを踏むLUTHFI。誰も同じことをしていない。その光景がまさにALIの音楽やグループ観を映し出しているようだった。
ライブ中盤のハイライトを語る前に、歌唱前のMCについて触れておきたい。ここで語られたのは、アルバム『MUSIC WORLD』のアナログ盤を豪華仕立てにするあまり、多くの枚数を売らないとペイラインにのせられないこと。それでも「オレは、好きな音楽を聴いて、それをALIに昇華して。それでアナログを作って、みんなに届けられれば、オレはずっと死ぬまでそれでいいの。だからこの先も、命ある限り続けていくから、みんなも本当にどうにか生き抜いて、一緒に歳をとっていこう」という、ファンに向けた覚悟だった。
その上で「オレたちすべてを失いかけたときに、“それでも音楽が……”って作った曲があって」「どうかみんなのために歌うんで、聴いてください」と披露されたのが、10曲目「MY FOOLISH STORY」。LEO自身がかつて、この楽曲は教会で懺悔をする想いで歌っていると語っていたが、歌詞の意味も相まり、この楽曲のストーリーテリングの力にはどうしても気持ちを引き込まれる。ピアノの一本弾きから始まり、LEO、そしてALIの独白のような時間がゆったりと流れる。
そこから徐々にバンド隊があくまで静かに音を重ねていき、サビでは一気に視界が明るくなる。ブラス隊はこのサビで初めて音を鳴らしたのだが、その瞬間にはっきりとわかった。この楽曲は“起死回生”を描いているのだと。ボーカルの歌う歌詞と違い、メロディとは言葉なきもの。それでも、このメロディは起死回生の想いを伝えてきているし、そのままどこか明るい世界へと導いてくれるはず。誰もが引き込まれる数分間の音楽だった。
ライブ終盤には“KAZUOタイム”が。ここでは、ラッパーのKAZUOが登場し、順に「Wild Side」「NO HOME NO COUNTRY feat. KAZUO」「FIGHT DUB CLUB」と3曲をキック。マシンガンラップで畳み掛けて会場の空気を我が物にすると、「NO HOME NO COUNTRY」ではKAZUOのラガっぽいフロウを織り交ぜたラップに対して、LEOがレイドバックしたボーカルで応える場面も。曲中には魂の叫びのように重みのあるコール&レスポンスもあり、どっしりとした曲調にさらに磨きがかかる。「FIGHT DUB CLUB」では、LEOがフロア最前のポールに足をかけて、ファンの手を熱く握り締めるシーンも見られた。
そのままALIとヒップホップとの好相性を発揮する時間は続き、再びAKLOが姿を見せる。披露されるのはもちろん、TVアニメ『呪術廻戦』エンディングテーマであり、バンドの代表曲となった「LOST IN PARADISE feat. AKLO」。イントロの時点で歓声が湧き上がったほどだ。ライブ本編の締めくくりとなったのは、アルバムのラストナンバーでもある「(BUT)WONDERFUL」。カラーを用いない、ただ一色のスポットライトに照らされたステージにすべてが込められていたが、メロディアスな“人間賛歌”で、ALIとしてのありのままが届けられた。
アンコールでは、全4曲を披露。そのうちTVアニメ『ゴールデンカムイ』第4期オープニングテーマ「NEVER SAY GOODBYE feat. Mummy-D」では、この日最後のゲストであるMummy-D(RHYMESTER)がマイクを握る。限りある人生のなかで、どのようにして音楽を愛するのか。その命題を語る上で、どのように生きるのかを歌うと同時に、どのように死ぬかを考えるのもまた大切なこと。大先輩であるMummy-Dと向き合いながら、壮大なトラックに歌詞をぶつける姿は、アンコールに相応しいもの。
もちろん、彼らが音楽から身を引く日はいつまでも遠くあってほしいもの。だが、ライブ終盤のこの位置で披露されたことに、わずかならがらにも意味、というより彼らの音楽に懸ける想いを改めて痛感させられたほか、だからこそ歌唱後のLEOとMummy-Dのエモーショナルな抱擁には目頭を熱くさせられるものがあったのだろう。
アンコールまで続いたこの日のライブ。LEOが演奏中、最後に放った言葉は「音楽万歳!」だった。我々を魅了するスーパースターが、愛してやまない音楽。ALIが我々を肯定してくれるように、我々もまたALIを肯定し、彼らの音楽を求めている。大きな舞台で音楽を続けることには、それだけの責任が伴うかもしれない。それでも音楽が彼らにとっての救いであり続ける限り、どんな困難も“なんとかしてくれる”と信じさせてくれる。なぜなら、それがスーパースターであり、誰にも他ならないALIなのだから。
取材・文◎一条皓太
撮影◎Saiga-nagi
配信限定シングル「LONELY LONELY」
収録楽曲:
1. LONELY LONELY
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