【インタビュー】PENICILLIN、「30年の軌跡をみなさんと楽しんでいきたい」

ツイート

PENICILLINが2月1日に、30周年記念ベスト『30 -thirty- Universe』を発売した。

本作は活動10年ごとに代表曲をまとめたDisc1〜3の3枚組の通常盤、メンバーがセレクトしたマニアックチューンを詰め込んだDisc4とバンドのヒストリーをまとめたブックレットが付属した限定版の2形態でリリースされた。30年というPENICILLINの長い期間を振り返えることができる記念碑的作品だ。

BARKSでは本作についてのインタビューを実施。どんな思いでこの作品をリリースしたか、セレクトした楽曲にはどんな意味があるのか、そしてPENICILLINが今後向かう先。彼ら自身の言葉で語ってもらった。

   ◆   ◆   ◆

■目の前にあることをカッコ良くやっていくにはどうしたらいいか?
■その結果として迎えたのが30周年


──このたびPENICILLINは30周年記念ベストとなる『30 -thirty- Universe』を発表されました。HAKUEIさんは年明けに行われたキネマ倶楽部での<30th anniversary WINTER TOUR「パライゾマスター」>千秋楽公演にて「2023年でPENICILLINは31歳ですが、去年から続いてきている30th anniversaryはまだ続きます。そこはご時世的な影響もあったりはしつつ、それ以上に我々としては丁寧にしっかりとした活動をしていくことでみなさんにもお祝いをしていただけたら嬉しいな、と思っているんですよ。だから、単にベスト盤だけを出すじゃなく『パライゾ』という新譜を出して一番新しい音を表現しましたし、このあとには30th Anniversary BEST『30 -thirty- Universe』を出したうえで全国ツアー<30th anniversary TOUR「30 -thirty- Universe」>もやっていきます」と発言されていらっしゃいました。そうした一連の流れからは、PENICILLINの誠実にして堅実なスタンスを感じることが出来るように思います。さすがは30年以上続いてきたバンドだけありますね。

HAKUEI(Vo):30周年を迎える2年くらい前あたりから、今回のアニバーサリーイヤーに向けた話をバンド内で始めてはいたんですけどね。やっぱり、どんなことであっても思いついてすぐに出来るというわけではないですし、前の20周年の時も11年かけていろいろアニバーサリーイヤー的なことをやったんで、30周年はまたそれとも違うアプローチでPENICILLINらしい表現をしていこう、となったんですよ。しかも、ただ30年の過去を振り返るベストを出すというだけではなく、その前にちゃんと新譜も出すことでPENICILLINの現在進行形で動いている姿も見せたかったんです。


──確かに、昨年発表されたニューアルバム『パライゾ』は8年ぶりのフルアルバムにして攻めの姿勢が顕著に音として具現化された仕上がりが印象的でした。それを経ての30th Anniversary BEST『30 -thirty- Universe』について、O-JIROさんは今回どのような見解を持っていらっしゃいますか。

O-JIRO(Dr):僕ら自身は30周年を目指そうとか、長く続けようっていうことを第1に考えてやってきたバンドではないですし、コロナ禍だろうとそうじゃなかろうと、常に目の前にあることをPENICILLINとしてカッコ良くやっていくにはどうしたらいいか?ということをやってきて、その結果として迎えたのが30周年だと思うんですよ。だから、この『30 -thirty- Universe』も自分にとってはこれまでひとつずつの積み重ねがベストとしてかたちになった、という感覚ですね。

──千聖さんはこの大きな節目を迎えられた今、30th Anniversary BEST『30 -thirty- Universe』に対してどのような思いを持っていらっしゃいますか。

千聖(G):もともとは、2019年11月にミニアルバム『九龍頭 -KOWLOON HEAD-』を出したあたりから、当然メンバーおよびスタッフ間で次に向けた動きや30周年に向けた話はいろいろいと出ていたんだけど。でも、ちょうど年が明けた2020年からコロナ禍というものに突入してしまったから、予定はかなり狂ってしまったわけ。それこそ、当初は20年上半期のスケジュールも全て飛んじゃったから。でも、我々としてはとにかく活動を続けようという気持ちでいたし、なかなか先が見え難い中ではあったけど、メンバーみんなで話しあって「まずは出来ることをやっていこう」「希望は捨てずに動いていこう」という姿勢で続けてきた。ちょっとこじつけな感じではあるんだけど、一応PENICILLINというのはバレンタインが結成日なんでね。つまり、2023年2月14日まではまだ30周年期間中なわけですよ。

──PENICILLINは1992年2月14日が始動日でしたね。

千聖:そこは色々な解釈もあるとは思うけど、PENICILLINとしてはなかなか動きたくても動けなかった期間があったことも踏まえつつ、昨年はオリジナルアルバム『パライゾ』を出して「コロナ禍でもPENICILLINはちゃんと動き続けてるぞ」っていうアティテュードを示すことが出来た。そこから年をまたいで今回の『30 -thirty- Universe』へとつなげられたのも良かったんじゃないかなと感じてますよ。しかも、今回のベストは敢えてあんまり再録、つまり録り直しもしてないんですよね。基本的に既存のオリジナル音源を収録してる、そこが20周年のベストの時とは大きく違うかな。

──20周年の時はメンバーの選曲による『20th Anniversary Member Selection Best PHOENIX STAR』と、ファンの方々の選曲による『20th Anniversary Fan Selection Best Album DRAGON HEARTS』の2枚が発表され、収録曲の大半が“20th Ver. ”としてリレコーディングされていた記憶があります。

千聖:今回敢えて録り直しを少なくしたのは、20周年の時にリレコーディングをたくさんやらせてもらったことがひとつ。もうひとつには、30周年ともなると、人によっては当時持っていたCDがそれぞれの様々な事情で今は手元に無いこともあると思って。こういう30周年ベストがあったらいっぺんにいろんな曲を聴けるだろうし、それにはオリジナル音源の多い内容の方が良いだろうと考えたわけ。最新のPENICILLINの音は『パライゾ』で提示出来ている分、ベストの『30 -thirty- Universe』では懐かしさを感じてもらうのもいいんじゃないかと思う。

HAKUEI:ただ、今回の『30 -thirty- Universe』でも一部の曲は録り直しをしてるんですよ。3枚組になってる通常盤の場合はDISC 1のうち6曲が“30 -thirty- Universe ver.”になってますし、DISC 3には『パライゾ』に収録した「パライゾ -30th ver.-」が入ってます。

千聖:あと、DISC 1の最後に入ってる「イナズマ」は“Live ver.”ね。


──DISC 1からDISC 3にはそれぞれ1枚ごとに10年分の曲たちが収録されていますが、この選曲はどのような基準で決めていかれたのでしょうか。

HAKUEI:メンバーみんなで投票して決めました。「これは絶対に入れたい」曲は○、「これも入って欲しい」に△をつけてくみたいな感じで、それを集計してすりあわせて10年ごとに振り分けてった感じですね。

──その投票内容に関して、メンバー個々によって特徴や傾向が違ったりするところはありましたか?

HAKUEI:いや、それはあんまりなかったんじゃないかなぁ。

O-JIRO:このベストに入ったのはどれも○が2票以上入った曲ですし、時代によって偏りが出ちゃったところも話しあって決めたんで、大体どれも「ライブで聴いて欲しいのはこれだよね」とか「PENICILLINと言えばこれだよね」っていう曲たちが選ばれていくことになりました。意見はそんな割れなかったです。

千聖:メジャーデビュー以降の曲はシングルになったものを中心に考えていったから、そこも意見がまとまりやすかった点ではあったかもしれない。

HAKUEI:そのかわり、限定盤のみについてるDISC 4はマニアックチューンだけを詰め込んだものになってるんですよ。その存在があったことは、今回の選曲をしていくうえでけっこうデカかったです。わりと「ライブでそこまでやってるわけじゃないけど、この曲ってカッコ良いんだよね」とか「我ながらこれは凄い完成度の曲だったよな」みたいなのがいろいろ入ってるんです。


──なお、その限定盤は装丁もLPサイズジャケットで豪華ですし、伝説のV系雑誌『Vicious』の元編集長である井口氏が編纂されたという、PENICILLINのヒストリーをまとめたブックレット『Vicious 特別編集版』 も封入されています。マニアックチューンだけでまとめられているDISC 4も含めて、これはコアファンの方たちからしてみるとプレミアムな記念品であり、家宝にしたくなるような構成なのではないでしょうか。

HAKUEI:30周年ならではの作品に仕上がったのは間違いありません。

千聖:通常盤のデジパックも手軽でいいんだけど、限定盤のこのデカいやつは存在感が凄いんで、部屋に置くオブジェとしても最高だよね。

HAKUEI:みなさんそれぞれのニーズによって通常盤と豪華版を自由に選んでいただけるようにしてあるので、好きな方を手に取っていただければと思います。

O-JIRO:DISC 4に関してはメンバーの遊び心というか、PENICILLINの王道からは少し外れちゃうとしてもこれはこれで凄く聴いてもらいたいな、という曲たちがいっぱい入ってるのでぜひ聴いてもらいたいですね。

◆インタビュー(2)へ
この記事をツイート

この記事の関連情報