【インタビュー】ブラジル音楽を背負う今井亮太郎「僕がやらなきゃいけないのは、新しい門戸を広げて、新しいファンを増やすこと」

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これまでも、そしてこれからも、すべては愛するブラジル音楽のために── 。メジャーデビュー10周年を迎えた、ブラジル音楽のピアニスト&オルガニストの第一人者・今井亮太郎の最新作は、ファンの人気投票をもとにした『今井亮太郎 メジャーデビュー10周年記念リクエストベスト〜Seus Dez〜』。世界的アーティスト・廣中薫が手掛けた美しいアートワークに包まれ、ライブでの人気曲を余さず収録しながら、新録音4曲を加え、今井亮太郎の過去、現在、未来が一望できる作品だ。ブラジル音楽への深い愛情、パッションに満ち溢れた、入門編にして決定盤。触れてほしい、感じてほしい。

  ◆  ◆  ◆

■たまたま絶妙になったんですよ

── 決定盤だと思います。ソロピアノ、歌もの、フルートやストリングスとのアンサンブル、そしてオルガン。亮太郎さんのこれまでの活動のいいとこ取りで、しかもファンが選んだリクエストベスト。

今井亮太郎:ありがとうございます。去年の秋ぐらいからコンサート、イベント、ラジオ番組などで「私の好きな今井亮太郎楽曲」というアンケートをとって、51曲の中から選んでいただきました。1、2、3位のポイントを一緒にしたものと、1、2、3位のポイントに差をつけたものがあったんですが、上位はほとんど変わらなかったですね。それを忖度なく、上から順番に並べていきました。新録音以外は全部、順位の通りです。

── 絶妙ですよね。曲の流れに緩急があって。

今井:たまたま絶妙になったんですよ。やっぱりファンの方が選んだので、ちょうどそういう感じになったのは面白いなと思ってます。いろんな曲順も考えてみたんですけど、ベタに上から並べた順番が一番面白かったですね。「月の光満ちて – Lua Cheia Iluminando –」「橙 – Daidai –」「スカイブルーの肖像 – Retrato em Céu Azul –」「貝殻のペンダント – Pingente de Concha –」の4曲が新録音で、新録音は先に録り始めていたんですけど、「月の光満ちて」がリクエスト1位になったので、それを1曲目に置きました。そして「橙」「スカイブルーの肖像」を途中に入れて、「貝殻のペンダント」を最後にして、それ以外はリクエストの順番に並べています。 



── 新録音も楽しめました。まったく印象が変わったものもあるので。

今井:今回、新録音した4曲にはそれぞれ意味があるんです。「月の光満ちて」は、僕が初めてブラジルに行ったのが21歳の時で、日本に帰って来てすぐに作曲した中の1曲なんです、2003年かな。僕は湘南の平塚で生まれ育ったんですが、満月の日には月の光が海の上でまっすぐな道のように見える。それがすごく美しくて好きな風景で、見ていると、届かない夢や願いが今日なら叶うんじゃないか?と思うんですね。月の光を借りて。

── とても詩的ですね。

今井:それが、リオデジャネイロでまったく同じ風景を見たんですよ。満月の夜に月の光が海の上に道を作るのを見て、地球の裏側なのに繋がってるなと思った時に、“遠さ”を感じなくなって、帰って来てパッと浮かんだのがこの曲でした。そのあと、PraiaPraiaというグループをやっていた時に初めて録音して、ソロ活動になってからも、2007年にリオのミュージシャンと一緒に録音しています。それは『湘南-リオデジャネイロ』(2011年)というアルバムに入っています。ファンの人からしたら一番長く聴いている曲でもあり、大事にしている曲だから、今回バンドバージョンで録ったら喜ぶんじゃないかなと思って、リクエストが1位になることを知らずに新録音していたんですよ。

── 嬉しいですよね。ファンの方には。

今井:録音は、今一緒にやっているメンバーと石川県の小松市のスタジオに行って、一発録りみたいな感じで録りました。すごく広くていいスタジオなんですが、生ピアノがないから、ピアノだけは地元の平塚で録ったんですけど、それも1テイクだったと思います。エンジニアさんと「できるだけライブっぽくしよう」と相談して、生々しい音にしてあります。インディーズの時に録ったものは、若くて勢いがあって、リオのミュージシャンと一緒に演奏できている喜びがあったんですけど、今のほうが大人っぽい感じになっているし、信頼できている仲間たちとはぐくんだ音楽になっているので、いい意味で違う作品になったんじゃないかなと思います。

▲『今井亮太郎 メジャーデビュー10周年記念リクエストベスト〜Seus Dez〜』ジャケット

── 「スカイブルーの肖像」は、渡海真知子さんの素敵な歌が乗ったバージョンになっています。

今井:「スカイブルーの肖像」は、アルバム『コバルト・ダンス-COBALT Dance-』(2015年)に初収録しているんですけど、その時にパーカッショニストのセウシーニョ・シルヴァという、今やリオデジャネイロのレジェンドみたいなプレイヤーになっちゃいましたけど、こっちで録った音源をブラジルに送って彼にパーカッションを入れてもらったら、パーカッションのほかに歌が入って返ってきたんですよ。

── 頼んでもいないのに?

今井:そう(笑)。僕のピアノが聴こえないぐらいの歌が入っていて、「どうだ?」って言うんだけど、どうだって言われても、ピアノのアルバムなのにって(笑)。でもその時の歌詞があったから、今回のベストのために、彼がつけた歌を録り直してもいいんじゃないか、と。渡海真知子さんは、セウシーニョのプロデュースでリオでアルバムを作ったこともあるから、真知子さんに歌ってもらうのが一番いいんじゃないかと思ったんですね。さらに今回の音源は、セウシーニョのパーカッションと、こっちで録ったアレックスという人のドラム、外園健彦のギターは残して、ピアノを消して僕のオルガンを新しく入れて、そこに歌を乗っけたので、昔の音源とコラボしてる感じになってます。

── セウシーニョさん、良かったですね(笑)。長年の願いが叶いました。

今井:聴いてもらったら、喜んでました(笑)。



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