【インタビュー】逹瑯(MUCC)、ソロプロジェクト第三弾に大胆な実験「決め込まずに試してみよう」
■俺の世界観は大島さんによって広がり
■大島さんの音は俺の歌詞によって広がり
──ピッタリと語呂もハマッていて、歌がリズミカルで痛快です。「残刻」という言葉は、造語ですかね?
逹瑯:そうでもなくて、元々ある言葉なんですよ。“酷い話“という時の「残酷」よりも、残りを刻んでいく、という意味合いのほうがいいなと、こっちの字にしました。残された時間、とか。
──そのほうがより生き死に、命、人生のことに触れる、というニュアンスでしょうか?
逹瑯:そこは糊代があって良くて。聴く人によってどう捉えるか?だと思うんですけど。例えば、自分にとっての対誰かに残された時間とか、今置かれている生活の残りの時間とか、そういう“迫ってくる”もの。時間って待ってくれないし、そこで生まれてくるドラマがあるから。それをいい匙加減のファンタジーに落とし込みたいと思いながら書いていきました。
──リアル過ぎない感じの?
逹瑯:そうですね。MUCCだと根本がフォークな匂いのする曲が多いので、歌詞もリアルなものに舵を取るし、パーソナルなものに落とし込んで、それを匂わせていく方向になっていきたいんですけど。この曲はそもそも成り立ちが違うから、“もうちょっと遊びたいな”と。“宇宙的なものを入れて飛び抜けてみようかな?”と思って、そういったワードを散らばせながら書いてみました。
──壮大な世界観のゲームであったり、例えば新海誠監督のSFアニメ映画であったり、そういった大きな物語を感じさせてくれる曲でもあります。
逹瑯:すごくパーソナルな細かい一個の点のところと、SF的な広がっていく視点と、その行き来ができるような感じで遊んでいきたいとは思って歌詞は書いてたかな。最初の一行が付いてからは早くて、2日ぐらいで書き上がりましたね。
▲<1st Anniversary 逹瑯 ONE-MAN SHOW「Kitchen Guys 1st Kitchen Party」>
──歌詞に関して、大島さんとのキャッチボールで前回と何か違ったことはありましたか?
逹瑯:今回は歌詞に関してはほぼノーレスポンスでしたね。「エンドロール」の時は、“ハマりが悪いな”と俺も分かって書いていたところを大島さんにやっぱりツッコまれた、というやり取りがあったんですけど、今回は全くなし。
──歌録りもスムーズでしたか?
逹瑯:とにかくスピードが速い曲なので、歌詞を目で追いながら、“次のメロディー何だっけ? その次は? ブレスどこで入れんの?”みたいな感じで、大変ではありましたけど。わりとスムーズだったと思います。大島さんは、歌っているこっちが気分が良くなるように進めてくれるんです。あまり細かいダメ出しもなく、「ここもうちょっともらっていい?」「分かりました」みたいなやり取りをしながら、「いいよいいよ~」という感じでテンションを上げてくれるディレクションなので、やりやすかったです。それに歌詞に沿ったアレンジもしてくれてるし。
──聴き手の受け取り方に余地は残すにせよ、逹瑯さんは、登場人物について具体的なイメージはされるのでしょうか?
逹瑯:結構思い浮かべますね。
──例えば年齢とか服装とか、どういう生活をしている人だとか?
逹瑯:内面かな? 性格ですね。聴こえ方とかハマり的にはこっちの口調のほうがハッとするんだけど、“この主人公はこの口調でしゃべらないな”とか。“一貫してないな、このキャラクターがブレてくるな”と思ったら“言葉遣いを変えよう”となるし。“少年性を持たせたいんだけど、この言い回しはちょっと大人っぽ過ぎるな”とか、“しめっぽ過ぎるからやめよう”とか、結構考えます。
──「残刻」についてはどうでしょう? 大人な設定ですか?
逹瑯:大人な設定なんだけど、少年性は持たせたいという塩梅が難しかったし、せめぎ合いがありました。でも、自分の中ではいいところに落とせたかな?という感じですかね。
──ロマンティックな世界なんですが甘過ぎない、その匙加減はさすがだな、と。
逹瑯:取る人にとっては“ハッピーエンドなの? バッドエンドなの? これどっち?“という感じがいいな、と。“君にできる事って何なの? いいことなの? 悪いことなの? どっち?”という、何かを含ませてモヤッとした感じで終わらせるのがいいなと思っていました。
▲2ndシングル「残刻」限定盤
▲2ndシングル「残刻」通常盤
──バックトラックの聴き応えもすごくて、間奏がフュージョンっぽかったり、ジャンル横断的で濃密です。
逹瑯:あれは大島さんが悪いです(笑)。あそこでいきなりプログレになった、みたいな。“2番Aメロの演奏、難し過ぎません?”っていうのもあるし。打ち込みをしながら「いや、これ誰が演奏するんすか?」っていう(笑)。
──ベースが躍動していて心地良いグルーヴを生んでいますが、フレージングは超絶的に難しいですよね。
逹瑯:ドラムは打ち込みなんですけど、ベースはIKUO (BULL ZEICHEN 88, Rayflower, The Choppers Revolution, etc.)さんが弾いてくれていて。IKUOさんでも結構大変だったらしい。スラップの間にちょこちょこいろいろなことをやっていて。やっぱり“これ、ライヴで誰が弾くん?”ですよね(笑)。
──ライヴでの再現は難易度が高そうです。
逹瑯:さすがに大島さんもマズいと思ったのか、「ライヴではこの通りやらなくてもいいからね」というメッセージが来ていました(笑)。
──その一方で、静けさの中で響くアウトロのギターは叙情的で、詩的でした。
逹瑯:余韻をどう持たせるのか?というのは、すごく意識しました。それまでの空気感を全てポーン!とアウトロにバトンタッチする時、“じゃあ、どんな言葉でアウトロに渡す?”とか“締めをどうやって余韻に持っていくの?”を考えるのは結構好きで。書き出した時は終わり方のことまで頭が回っていないんですけど、“答えが出たよ”というので終わって、アウトロの余韻に入っていくのがすごくいいな、とは思っていました。
──“流れ星”という言葉も美しく、ロマンティックですよね。
逹瑯:これまでMUCCで“流星”という書き方はしていたけど、“流れ星”という言い方はあまりしてこなかったかもしれないですね。“♪あの日に出会ってしまった2つの流れ星”という締め方がすごく綺麗だな、と。“流れ星って消えちゃうもんな”って。その儚い感じが、頭の中でずっと流れている映像と匂いにリンクするな、というので書きました。
──大島さんからは歌詞についてフィードバックが無かったということですが、ソロの場合、逹瑯さんの詞は誰か第三者的な方からジャッジされたりするんですか?
逹瑯:なーんも無いですね。大島さんは歌詞が付いたのを見て、歌も録った後に「宙とか星とかいう宇宙っぽいワードが出てきてるから、キラキラッとしたスペイシーな音を入れたいな」と言って、最後のミックスの段階で音を足してくれたんですよ。だからサウンドで詞のほうに寄せてくれたっぽいですね。大島さんが原曲に後から付けたシンセのリフによって、俺の頭の中での景色がパーッと広がって、歌詞を付けて。その世界観をみて大島さんはハープを入れ、「女性コーラスを入れたい」となり、さらに最後にはキラッとしたスペイシーな音が加わったという。俺の世界観は大島さんによって広がり、大島さんは大島さんで俺の歌詞によってサウンドがまた広がり、というやり取りが面白かったな。
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