【インタビュー】上野優華、“泣ける恋愛ソング”だけじゃない様々な方向性のラブソング

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2023年に25歳の誕生日を迎え、デビュー10周年イヤーに突入するアーティスト上野優華。彼女が4年ぶりのフルアルバム『恋愛シグナル』を完成させた。今作は上野が作詞した楽曲はもちろん、andropの内澤崇仁やNakamuraEmiなど豪華アーティストによる提供曲も多数収録。今まで育んできた“泣ける恋愛ソング”だけでなく、様々な方向性のラブソングが揃い、さらに上野優華の可能性を広げる作品へと仕上がった。プライベートでは入籍もし、環境の変化を迎えながら25歳という大人の女性へと踏み出していく彼女は、どんなアーティストを目指しているのだろうか。

■アルバムで今までの集大成的なものを作るのか
■未来を見せていくのかはすごく悩んだ


――今作『恋愛シグナル』は、“今あらためてやりたいことをやろうと決めた1枚”とのことですが、具体的に言葉にするとどのような内容でしょうか?

上野優華:“自分に似合うものと好きなものは違う”と言われることが結構あると思うんですけど、わたしも音楽でそれを大事にしていたところが大きかったんです。上野優華というと“泣ける声”と言っていただけることが多くて、今まではその声を生かしたバラードやアップテンポの楽曲を作ってきていたんですよね。でも2023年は25歳になった年でありデビュー10周年を迎える年なので……やっぱり節目となるとこの先のこととかを考えるじゃないですか。

――そうですね。

上野優華:わたしはこの先も長く歌い続けていきたくて。そのためには可能性を広げる必要があるなと思ったんです。今までの10年間は自分に似合うものを突き詰めてきたので、これから先はそういう楽曲もやりつつ、自分が好きでよく聴いていたジャンルの音楽や、自分の声には合わないかもしれないジャンルの音楽もやってみようと思ったんです。

――それを意識しだしたのはいつ頃ですか?

上野優華:コロナ禍に入って、やっと有観客ライヴが始まったぐらいです。ライヴができない時期は皆さんに求めていただけるものを届けることをすごく意識していて、前作のミニアルバム『ヒロインにはなれなくて』はその精神性がすごく出ていたと思うんです。でもライヴができるようになって、歌える環境があることや曲を作ってリリースできることがすごく大きなことだなと実感して。

――その気持ちから生まれたのが2022年春にリリースされた「ジャスミン」でしたよね。あれはファンの方に向けた感謝や愛情でしたが。

上野優華:今まで当たり前だったものが急になくなって、また戻ってきたときにみんなが待ってくれていて――その大きさに気付かされたんです。ライヴはすごく刺激をもらえる場所で、自分の音楽の活力やモチベーションでもあって。それに対する感謝だけでなく、そういう環境があるならやりたいことやっていかないともったいないなとすごく思ったんですよね。でも今回はデビュー10周年のタイミングではあるので、アルバムで今までの集大成的なものを作るのか、未来を見せていくのかはすごく悩んだんです。結果どちらも反映させつつ、“この先”を意識して作っていくことにしたんです。


――そのシンボルとなる言葉がアルバムタイトルにもなっている『恋愛シグナル』であると。

上野優華:今回は珍しく、最初のうちからアルバムタイトルを決めていたんです。というのも、コンセプトが1つに定まるような作品にならないだろうなという予感がチーム内でもあったんです。だから今までやってきたことと、これからやりたいことがどちらも反映できたタイトルを考えて、そこからひらめいたのがこのタイトルです。これからも背中を押したい恋愛だけでなく、これは踏みとどまるべきなんじゃないかという危うさを持った恋愛もどっちも歌いたいからこそ、この二面性のあるタイトルにしたんです。ジャケットが赤と青なのも、シグナル=信号機をモチーフにしています。

――シグナルは“信号”や“警告”という意味が代表的ですが、“合図”という意味から派生して“きっかけ”や“前兆”という言葉で使うこともあるそうです。そういう意味でも上野さんの精神性につながりますね。

上野優華:わ、そうなんですね。わたしは“信号”のイメージでいたので、そんな意味もあったなんて知らなかった。10周年に相応しいタイトルをつけられてうれしいです。


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――今回は上野さんの作詞曲と豪華作家陣の提供曲が収録されていますが、今回楽曲提供をしてらっしゃるのがほとんどシンガーソングライターさん、もしくはバンドのフロントマンさんなのも特徴のひとつだと思います。

上野優華:それにこだわったわけではないんですけど、1曲1曲それぞれどう作っていくかを考えた時に、この方にお願いしたいなと思った方にお声掛けをしたんです。

――となると、上野さんは実際にステージで表現をしている方の音楽に惹かれるところが大きいのかもしれませんね。

上野優華:ああ、あまり意識してなかったけどそうなのかな……。やっぱりステージに立っている方はパワーがあるなとは感じますね。

――先ほど話していただいた新しい要素というと、昨年デジタルシングルでリリースされた「ジコアイキセイ」ではないでしょうか。秋元リョーヘイさんの提供曲で、R&Bのテイストが色濃く出ています。

上野優華:前々から秋元さんの曲が大好きでよく聴いていて、ライヴに行ける日がないかどうか頻繁にチェックしていたし、マネージャーさんにもおすすめしていたんです。でもR&Bのノリは昔から楽器をやっていたり、昔からあのジャンルを好きな人にしか出せないだろうなと思っていて、歌える自信がなくて。だからチャレンジの1曲ですね。秋元さんがいつも書かれている世界観を歌わせてほしいとお願いしました。



――秋元さんは1996年生まれなので、年齢が近いぶん楽曲の恋愛観は共有しやすかったところも?

上野優華:秋元さんが描かれるテーマ的にも、楽曲の主人公も大学生から20代半ばぐらいの女性を描かれることが結構多い気がしていて。やっぱりその時代を生きたその世代にしかわからないこと、感じられないことってあると思うんです。自分の同年代のこういう恋愛観を曲にしたいけど、どうしたらいいかな……とは思っていたので、それができてうれしかったですし新鮮でした。ヴォーカルディレクションを秋元さんがしてくださって、お互いのニュアンスが伝わりやすかったのも世代感が出たかなと思います。


――andropの内澤崇仁さんが手掛けた「恋をしました。あなたに」は、どうやら上野さんから曲のイメージとなる言葉をいろいろと内澤さんに投げかけて、そこから内澤さんがインスピレーションを受けて、さらに上野さんが梶原岳人さんに楽曲提供した「君と恋をしたいんです。」のテイストを盛り込んでいるそうですね。

上野優華:そうなんですよ! 「君と恋をしたいんです。」から着想を得ているなんてまったく気づいていなくて、さらっと『角打ちゆうか』(※上野がMCを務めるトーク番組)で明かされて……。レコーディングの時に言ってくださったらいいのに!(笑) でもそれを言わないのが内澤さんですよね。おしゃれ!



――曲作りのミーティングはどう進みましたか?

上野優華:“こんな曲を作ってほしい”というオーダーというよりは、なんだか世間話みたいな感じでした。“朝起きれない”みたいな自分の直したいとことか、カップルは男性のこういうところが嫌だと言いがちとか、でもそこがなんかいいよねとか、みんなこういうことで悩んでるみたい、みたいな世間一般で語られがちなことを話していって。それに加えて、あとからそういう内容のメモを送ったりもしました。だからわたしの恋愛観というよりは、多くの人が共感できるような王道の恋愛観を共有したというか。

――となると普遍的な恋愛観を内澤さんに書いてもらいたいと潜在的に思っていたところも?

上野優華:うーん、どうなんだろう。そういう狙いもあまりなかったんです。お話しているなかで内澤さんが面白いと思ってくださったとこをピックアップしていただいただけというか。わたしだったら絶対にマイナスに捉えるであろうことも、内澤さんは違う受け取り方をなさるんですよね。内澤さんは日常的に使う言葉で映画のワンシーンのようなドラマチックな歌詞を書かれる方なので、何気ない言葉も特別に聞こえる魔法だなと思っていて。だからわたしが話したことが曲になっていることにすごく驚いたんです。

――内澤さんが上野さんの人柄や世界観に寄せた結果、生まれた曲なのではないかと思いました。

上野優華:ああ、そうだったら光栄ですね。これまで楽曲をわたしのイメージで書いていただくと大体悲しかったり、切なかったりすることがほとんどで。

――なるほど。“泣ける声”のイメージもあって。

上野優華:それは自分の大きな強みだと思っているので、そういう曲を提供していただくことも、切ない声が素敵だと言っていただくこともとてもうれしいんです。でも内澤さんがわたしと話して、わたしの曲をいろいろ聴いてくださって、ライヴも観てくださった結果「恋をしました。あなたに」という明るい曲が生まれたことも、本当にうれしいんですよね。

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