【インタビュー】『マガツノート1周年』コンテンツPが語る、こだわりと思い「マガツノートはうまく生きられない人たちのお話」

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ダーク楽曲メディアミックスプロジェクト『マガツノート』。2022年1月にMUCC「大嫌い」、アルルカン「ダメ人間」を声優がカバーする動画が突如アップされ、3月にZepp DiverCity(TOKYO)で声優とアーティストが共演するライブイベント<解放区>が開催された。

このイベントで、『マガツノート』では“近未来戦国”を舞台に、ダークな世界観の物語が展開されることが発表された。ラジオドラマのシナリオライターには祁答院慎、キャラクターデザイン・イラストにはカズキヨネを迎え、物語を彩るダークな楽曲にはヴィジュアル系バンドを始めとするアーティストが参加する。そして現在に至るまでに複数回のライブイベントが開催され、アルバムも発売、ラジオドラマもSeason:2が完結し、新たなシーズンが発表されている。メディアミックスコンテンツとして新たな世界を切り開いていっているのは間違いない。

このように『マガツノート』が支持を集めているのは、“圧倒的なこだわり”と“リアルさ”があるからだ。今回BARKSでは、マガツノートプロジェクトを代表してコンテンツプロデューサーの“うちP”氏にインタビューを実施し、『マガツノート』がどのようなコンテンツなのか探ってきた。『マガツノート』に込められた熱い想いを知ってほしい。

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■それぞれの好きな気持ちの熱量で出来上がっている

──まずは、どのようなチームがこの『マガツノート』プロジェクトを手がけられているのか教えてください。

うちP:もともと、戦国、悪魔をモチーフにヴィジュアル系楽曲を使ったコンテンツを作りたいという総合プロデューサーの企画があり、私自身はそこにあとから参加した形です。イラストやシナリオ、ラジオドラマという根幹を作っている原作チームと、楽曲やライブ、プロモーション展開の部分を考えるコンテンツチームがあり、お互いに擦り合わせながら1つの作品を作っています。私はコンテンツ側のプロデューサーを担当しています。

──マガツノートは、“今の世代”の第一線で活躍しているヴィジュアル系バンドを起用しているので、プロデューサーはちゃんとV系シーンがわかっている人なんだろうなと思っていたんです。

うちP氏:正直にお話しすると、私は「出戻り」です(笑)。ヴィジュアル系は学生時代に好きでしたが、好きだったバンドが解散したことであがってしまって、しばらく通わなくなっていた人でした。離れてからはK-POPやアイドル、乙女ゲームなどの二次元コンテンツを追いかけたりしていました。

──なるほど。つまり、マガツノートが含んでいる要素を、すべてお持ちというか。

うちP氏:確かにそうですね! 結果的にはですけど、自分がマガツノートのペルソナ像、ターゲット層に近いかもしれないです。いわゆる元ギャといいますか……一回ヴィジュアル系を通っている方、その中で二次元コンテンツも好きな方って結構いらっしゃると思うんです。このコンテンツで一番最初にアピールすべき層はそこではないかと、プロジェクトでも話し合いました。



──マガツノートのターゲット層がなんとなく想像できるのは、それが理由だったのかと腑に落ちました。

うちP氏:まずは一人の趣味に照準を合わせることで、その趣味の人にだけはしっかりと伝わると思うので。でも、最初は「どうして今ヴィジュアル系コンテンツを作るのか……?」と疑問に思うところがありました。

──え、そうなんですか?

うちP氏:安直ですが、流行っているものを取り入れたほうが大衆的ではあると思うので、それこそ楽曲を絡めたコンテンツならネットカルチャー系のアーティストや、K-POP系のアーティストを取り入れるなど、他の選択肢もあるのではないかと思ったんです。

──でも結果的にマガツノートは、ヴィジュアル系バンドが多数起用されるコンテンツになっています。

うちP氏:ヴィジュアル系バンドを起用するということを考えるために、久しぶりにチケットを買ってライブを見に行ったんです。現在進行形のヴィジュアル系がどんなものか、肌感として分かってなかったので。

──ちなみに何を見に行ったんですか?

うちP氏:2021年11月のアルルカン主催イベント<束の世界-SONOSEKAI->です。ステージを見て、衝撃を受けました。自分の中では過ぎたものだったけど、初めて今のシーンのヴィジュアル系を見て、昔の記憶を塗り替える楽しさがありました。「ダメ人間」で激しく拳ヘドバンしてるファンの方を見たときに、ものすごい熱量を感じて圧倒されたんです。熱量はコンテンツにとって大切な要素なので、このシーンの音楽を使いたいと強く思った瞬間でした。

──ヴィジュアル系とひとくちに言っても、世代ごとで印象って大きく違いますよね。

うちP氏:そうですよね。世間一般のヴィジュアル系のイメージっていろいろで、たとえば華美であることとか非日常的なことが中心であったり。私は世代で言えばネオヴィジュアル系世代で、どちらかというと日常寄りというか、現実の闇と向き合うバンドが好きで。ライブを見てから改めて楽曲を聴いて歌詞を読みこみながら、これってマガツノートが描く「うまく生きられない人たち」の物語にぴったり嵌るのでは、と自分の中で落とし込めてからは葛藤が消えて、早かったですね。マガツノートは社会に抗う人々のもがく様子を描いた作品なので。

──そういった経緯があったから、主人公陣営・ARK監査局のイメージソングをアルルカンが手がけていたんですね。

うちP氏:制作が進んでいたマガツノートのラジオドラマSeason:1のイメージに、一番近かったんですよね。人生の悩みだったり不満だとかを割とストレートに歌っている感じが、マガツノートで訴えようとしていた“抑圧からの解放”というテーマとARK監査局という陣営の持つストレートな暗さにも合致していて。



──“抑圧からの解放”というテーマはもともとあったのでしょうか。

うちP氏:徐々に明確になっていきました。「その欲望を、解き放て。」というキャッチコピーは、Season:1のラジオドラマが完成したときに付けました。

──祁答院さんが描くシナリオに関しては?

うちP氏:シナリオはとてつもない紆余曲折がありましたね(笑)。悪魔、戦国、近未来など、要素が多かったので、どう組み合わせて何をメインテーマにして書いていこう、と祁答院先生を交えて何度も話し合いました。



──そうそう、それで言うと、どうして戦国をモチーフにしたのか気になっていたのです。ほかにも、乙女ゲームでの展開っていう道もあっただろうな、とか。

うちP氏:乙女ゲーム風に、甘々にした方がいいんじゃないかという話もあったんですけど、結局、「私たち甘くないものが好きじゃん?」という(笑)。甘くないとはいっても、苦い旨味というか。甘いドキドキより、危険のドキドキ感。刺激的な方の意味合いに寄せたかったので、現在の方向になりました。大きな感情同士がぶつかり合って生まれる人間ドラマみたいなものを描こう、戦国時代の因縁も取り入れよう、と調整されていきました。

──カズキヨネさんのイラストもとても綺麗で。しかも結構ヴィジュアル系文化のビジュを意識していません?

うちP氏:本当に素敵な武将たちを生み出していただきました!戦国武将の銘を持つキャラクターたちということで、武将のイメージは取り入れつつ、ダークな要素としてネイルやピアス、そして重要な「ツノ」のデザインがされていきました。最新の陣営、六道閹はヴィジュアル系らしい見た目の陣営を作りたいというところからデザインしていただきました。佐助に関してはツインテールの男が必要だと訴え、採用いただきました(笑)。


──こだわりが(笑)。そもそもカズキヨネさんってツノ好きじゃないですか。祁答院さんも重めのシナリオを書く方だし。そしてうちPさんもヴィジュアル系が好き。いろんな人の“好き”が入ってますね。

うちP氏:それはあるかもしれないですね。コンテンツって熱量で出来上がるものなので。「よくわかんないけどなんでもいいでしょ」っていうモノは、やっぱりお客さまに伝わると思っていて……。関係者の皆様、チームの皆それぞれの好きな気持ちの熱量で出来上がっていると思います。

──信頼できます。声優さんについてはいかがでしょうか。

うちP氏:声優さんについてもチームで話し合って希望を出しました。主人公・政宗役をお願いした峯田さんは、もともとヴィジュアル系が好きというお話もあったりして、結果的にすごくマッチしていると思います。

──声優さん側の反応は?

うちP氏:マガツノートは声優さんとアーティストさんが音楽上でも舞台上でも共演するという点がこれまでにないチャレンジで、制作側の課題は多くあります。ですが、声優さんもアーティストさんも非常に協力的に挑戦をしてくださり、ありがたかったです。

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