【インタビュー】浜田省吾プロデュースの中嶋ユキノの新作と未来「たどり着いた所が目的地、というお言葉を胸に」

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浜田省吾プロデュースのシンガーソングライター、中嶋ユキノのニューミニアルバム『新しい空の下で』が3月15日にリリースされた。2003年から音楽キャリアをスタートさせた彼女は、これまで数々のアーティストのライブやレコーディングのコーラスワーク、さらには歌詞提供など幅広く活動。2015年には浜田省吾のアルバムにフィーチャリングボーカリストとして参加したのをきっかけに、ツアーバンドのメンバーとなり、翌年にはメジャーデビューアルバム『N.Y.』をリリースしている。そんな彼女の最新作『新しい空の下で』に向けて、BARKSは初のインタビューを実施した。3月19日からスタートするアコースティックツアーにぴったりの楽しさ、軽やかさ、共感性が豊かな今作。歌詞では、かつてないほど自身の日常や恋愛観を等身大に表現しており、そんな作品の方向性も浜田省吾からの助言に後押しされたという。新作のエピソードとともに、歌い続けたこの20年間について振り返りながら、音楽活動の“目的地”についても語ってくれた。

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■ 自分が体験していることは、きっと誰かも体験している

── 祝!BARKS初登場。まずは、ミニアルバム『新しい空の下で』について伺いたいと思います。

中嶋ユキノ:ありがとうございます。制作が決まったのは昨秋で、3月から4月にかけて全国を廻るアコースティックツアー「アコ旅」にあわせて、せっかくならライブに足を運んでくださる皆さんに新曲を届けたいという気持ちから作ることにしました。タイトルは、ずっと自分の中で大切に温めてきた同名曲から付けたもので、この曲を軸にツアーを廻りたいと思い、そのまま作品のタイトルにしました。

── タイトル曲「新しい空の下で」では、プロデューサーである浜田省吾さんと歌詞を共作されていますね。

中嶋:浜田さんと話しながら、私が創ったデモをもとに歌詞をより深く、磨いていきました。土台となる私の言葉を尊重しつつ、より世界観が広がったり深まったりする言葉を浜田さんが所々に置いてくださったと感じます。たった1つの言葉で、歌詞の印象がこんなにも変わるのかとハッとさせられることばかりでしたね。

── どのあたりに、浜田さんらしい言葉選びを感じましたか?

中嶋:最後の方に出てくる「限りある時間の その向こう」というフレーズを見たときは、しびれました。「生きるとは なんだろう/愛することとは なんだろう」は、もともと私が書いた歌詞ですが、どこかそれだけではありきたりな感じがしていました。でも、「限りある時間の その向こう」という表現が入ることで、歌詞の世界観がすごく広がったり、次につながっていく感じになると感動しました。

── 「虹」は唯一のカバー曲ですが、なぜこの曲を歌おうと?

中嶋:オリジナルは、浜田さん、水谷公生さん、春嵐さんによるプロジェクトFairlifeの曲です。浜田さんと、今回のアルバムにどんな曲を入れたらいいか話をしていく中で、「この曲は中嶋さんの歌声や歌い方に合っていて、きっといい作品になるはず。ライブでも映えると思いますよ」とご提案してくださいました。デモを作ってみたらとても良かったので、ぜひカバーさせてくださいとお願いしました。

ミニアルバム『新しい空の下で』ジャケット

── 浜田さんは、とても親身になって作品に関わるタイプのプロデューサーなのですね。

中嶋:本当にありがたいです。もともと私が書いていた歌詞や、仮歌、メロディを聴いては、その都度、思ったことなど共有してくださるんです。今回は、浜田さんから「作品を通して中嶋さん自身のことを書いてみてはどうですか」とアドバイスをいただいたことで、今までにないほど自分を深く掘り下げた作品になりました。1曲目「はじまりの鐘」は、今まさにライブでみなさんにいい歌を届けるんだという私の高まる気持ちをそのまま込めた歌で、イントロの高揚感溢れるストリングスのフレーズも私が考えたものをそのまま使っていただきました。また、「All or Nothing」は20代に書いた曲ですが、歌詞が…今聴くと恥ずかしいくらい幼くて(苦笑)。でも、改めて歌詞を書き直したことで今までで一番、素顔の中嶋ユキノが投影された作品になりました。これまでも「わたしのはなし」など、自分のことを綴った曲はありましたが、「All or Nothing」は、久しぶりにノンフィクションソングを書いたなと感じる曲です。

── 「不安ばかりを いつもかき集めて/それでも お腹は空いてしまうし/寝たら半分くらい 忘れちゃうけど」という部分は、特に共感性が高いと感じました。

中嶋:そう言っていただけると嬉しいです。私はとても心配症で、いつも不安に陥りがちなんです。でもその一方で、食いしん坊で食べることが大好きというのは紛れもない事実(笑)。私の中にはいろんな自分がいて、そんな自分が体験していることは、きっと誰かも体験していることなんじゃないかなって。今作では、ようやくありのままに感じたことを思い切ってさらけ出せた気がしますね。

── なぜ今までは思ったことをそのまま書けなかったのでしょうか?

中嶋:20代は職業作家として、他のシンガーの皆さんへ楽曲提供させていただくことが多かったので、自分の経験や心情を書くよりも、歌う方の気持ちやキャラクターを汲み取って書いていました。そうした活動を長く続けているうちに、いつしかそれが無意識に身に沁みついてしまい、自分のことを書くというシンガーソングライターとしては当たり前のことがなかなかできなくなってしまったんでしょうね。今回はそうした自分を解き放って、風通しの良い作品が創れました。だから、「なんでなの!?」という曲では、ストレス解消にハンバーグをこねてみたり(笑)。

── うまくいかないもどかしさを、ユーモラスで軽やかに歌っている素敵な曲ですね。

中嶋:ありがとうございます。この曲は、リズムも軽やかなので気分があがる、心が弾む曲にしたいと思って作り始めました。サビにもっとキャッチ―なメロディが欲しいなと思いながら、ギターでポロンと弾いていたら、「中嶋、こんなに頑張ってんのになんとかならないの、なんでかな〜!?」ってフレーズが口をついて出てきたんですよ。その瞬間に、「うん、うん、これだ」って(笑)。ストレス解消のために作る料理は何がいいだろうと考えていて、餃子では包むのが大変そうだから(笑)、ハンバーグだなと。歌詞を書いた後、リアルに煮込みハンバーグや、おろしハンバーグなどいろいろと作って、全部美味しくいただきました(笑)。


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