【インタビュー】浜田省吾プロデュースの中嶋ユキノの新作と未来「たどり着いた所が目的地、というお言葉を胸に」

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■ 浜田さんからは、本当に学ばせていただくことばかり

── そもそも、中嶋さんはどのように曲作りするのですか?

中嶋:私の人生は紆余曲折があるので、ちょっと長くなりますけど…それでもいいですか(笑)。

── もちろんです(笑)。

中嶋:そもそもは、小さいころに松田聖子さんが赤いドレスで歌う姿を見て、歌手へ憧れを抱くようになりました。その後、宇多田ヒカルさんの1stアルバム『First Love』を聴いて衝撃を受けるんです。高校時代は、自分の想いを誰かに伝えるのが苦手で、日々の想いを日記みたいに綴っていたので、自分も曲を創れるんじゃないかと思いました。ただ、楽器を習ったことがなかったので、どうやって曲を創ればいいか分からず、アカペラでメロディを創るようになったんです。そのころ、姉と同じ部屋だったので、姉が寝ている横で頭から布団をかぶりながらMDレコーダーに吹き込んで(笑)。大学に進学してからは、親友で本作でも編曲を手がけてくださっている宗本康兵君と出会いました。そのときに、生まれて初めて自分の曲にコードがついたんです。

── 大学時代に、大事な出逢いがあったのですね。

中嶋:はい。宗本君は本当に信頼できる素晴らしいミュージシャンです。宗本君に誘っていただき、2003年に、川嶋あいさんのライブでのコーラス仕事から、音楽キャリアがスタートしました。次第にいろいろとお声をかけていただけるようになり、FM京都でレギュラー番組を担当することになったんです。でも、その番組では弾き語りのコーナーがあったので、一生懸命ピアノを練習するうちにコードから曲作りができるようになりました。最近になって、まだまだ未熟ですがギターでも曲作りするようになりました。

── 布団の中で密かに鼻歌を歌っていた少女が、ピアノやギターで曲を創れるまでに成長したと。それだけで十分20年の重みを感じます。

中嶋:20年間、ずっと「歌うことが大好き」という気持ちは変わりませんが、正直を言えば思い悩んだ時期も沢山ありました。特に20代半ば過ぎは、強く感じていました。そのころ、ようやく自分名義でシングル「桜ひとひら」のリリースが決まり本当に喜んでいたんです。事務所やレーベルの皆さんも、「この曲をこの年の桜ソングとしてたくさんの方に聴いてもらおう!」と、プロモーションを考えて下さいました。でも、配信リリース日が2011年3月2日で…。

── 東日本大震災の直前だったのですね。

中嶋:はい。「桜ひとひら」は、私が5年間ずっと温めていた大事な曲でもあったので、本当にどうしていいか分からず途方にくれました。それ以来、とにかく悪戦苦闘しました…それでも前に進もうとお世話になっていた事務所を離れフリーになり、弾き語りで一発録音したCD「Starting Over」を自主制作で1000枚だけ作りました。年齢的にも30歳になるタイミングだったので、コーラスでも楽曲提供でも、歌が歌えるならどんな形でも構わないという心境でした。そんなときです、浜田さんと出逢ったのは。浜田さんに音源を聴いていただき、「中嶋さん、まだ、夢をあきらめるのは早いですよ。一緒にCDを作りましょう」と言っていただけたときは、すごく嬉しかったですね。



── まるでドラマみたいなお話ですね。

中嶋:本当ですよね。つい先日、私の最初のマネージャーさんから連絡をいただいたんです。3月2日に「桜ひとひらをリリースしてから12年」とTwitterにあげたのが目に留まったようで、「本当に名曲だ!ファンの方からコメントがくることが、凄く嬉しい」とメッセージをくれました。苦しい記憶が多い20代ですが、その時も一緒に頑張ってくれたスタッフさんがいて、歌を聴いてくださった方々がいたんですよね…。そう思うと、この20年間は無駄なことは何1つなかったんだなと、なんかこう、文の終わりに“。”がついたみたいな瞬間でしたね。

── 遠回りしたからこそ、浜田さんと出逢えたのかもしれませんし。

中嶋:そうですよね。浜田さんがライブのMCで、「目的地を定めてたどり着くかどうかより、旅の途上のその時その時が大切で、かけがえのない時間。結局たどり着いた所が、目的地だったと自分自身に言えるような旅であったらと思います」とおっしゃっていて。そのお言葉にとても励まされました。浜田さんからは、本当に学ばせていただくことばかりです。音楽に対して常にストイックに向き合ってらっしゃって、人に対しても誠実で謙虚、そして年齢関係なく優しく接してくださいます。ですから、音楽家としてはもちろん、人間性も含めて心から尊敬できる数少ない方ですね。また、父と年齢も近いのでもう一人の父親のようにも感じています。

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