【インタビュー】安斉かれん、初のアルバム2枚同時リリース「成長した私の“音楽”を聴いて貰えたら嬉しい」

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安斉かれんが、3月29日に初となるアルバム『ANTI HEROINE』と『僕らはきっと偽りだらけの世界で強くなる。』をリリースする。

◆アルバム コンセプト映像

『ANTI HEROINE』は、多様性が失われた“ヒロイン”像に“アンチ”する、常識にとらわれない新曲中心の作品。対する『僕らはきっと偽りだらけの世界で強くなる。』は、デビュー時のサイバーパンクとY2Kを先取りしたサウンドと世界観をコンパイルしたヒストリカルなアルバムだ。

この2作を聴いて思うのは、「安斉かれん」の奥深さだ。姿を隠してのデビュー、ドラマ『M愛すべき人がいて』でのいきなりの主役抜擢、そして数々のブランドとのタイアップ……これらで見えていた「安斉かれん」像が変わる。彼女はただの可愛いギャルではなく、音楽的に野心家なアーティストでもあるのだ。

   ◆   ◆   ◆

■“これだけ”だと思って欲しくない

──アルバムを完成させた今の心境を教えてください。

安斉:デビュー曲からの自分と、いい意味で新しくなった自分という2作品を同時にリリースできることは、すごく感慨深いです。自分の中の成長を見せられたらいいなという気持ちでいっぱいです。

──デビューから、ファーストアルバムまでが、かなり長かったですよね。

安斉:そうですね。5月でデビューしてから4年を迎えるので、いまあらためてデビュー曲を聴くと、懐かしいと言うよりもエモくなってきちゃって(笑)。高校生の頃に作った曲もいまになってアルバムに収録されるので、感じるものが多いですね。

──自分の中では、どんな成長を感じましたか?

安斉:声がすごく“若いな”って思いますね。でも、その分真っ直ぐ歌っていることは伝わってくるんです。いまは、歌い方や声の出し方も違うし、どういう声質で歌おうかなって考えられるようになってきたんです。

──声質ですか?

安斉:はい。声質に変化を付けられるようになってきたんですよね。もちろん、まだまだだけど、今は曲によって声色を変えることが出来るようになったんです。

──それが出来ると曲の深さも変わってきますよね。

安斉:そうですね。今後もどんどん表現の幅を増やせるように頑張りたいという目標が出来ました。

──今回、様々なクリエイターさんたちと制作を共にしたことで、かなり大きな刺激を貰ったのではないでしょうか。

安斉:そうですね。Charli XCXやCHVRCHES、Danny L Harle、Justin Tranterなど、海外のクリエイターと一緒に曲を作れたのも凄くいい刺激になりましたね。とくに、「へゔん」や「ギブミー♡すとっぷ」は、もともと英詞だったんですよ。それを日本詞にするのが初めは苦戦するかな?と思ったんですけど、意外とバッチリはまってくれて、新しい可能性を感じたんです。

──より日本語の良さも感じたのではないですか?

安斉:そうですね。日本語は言葉遊びがしやすいからこそ、“かれん語”もできやすいですし(笑)。

──「不眠症☆廃天国」はまさにその“かれん語”が満載ですよね。

安斉:はい(笑)。造語を作って歌詞に入れてしまう面白さもあったし、それでもいいんだと教えてくれたのもこの曲なんです。自分らしさがより伝わりやすくなりましたね。



──アルバムには『ANTI HEROINE』というタイトルが付けられていますが、どんな意味が込められているのでしょうか。

安斉:ヒロインって、清純派のイメージがあると思うんです。でも、そういうヒロインが道を外したり、想像外のことをすると、すぐに叩かれてしまう。でもそれって、その人の見えなかった部分が見えただけで、勝手に想像していたヒロイン像じゃなかっただけだと思うんです。結局私も “安斉かれんってこういう人でしょ?”と思われることが多いから、それを逆手にとって、“こういうこともするんだ”って、みんなが思っていないところも表現していけたらと思い、このタイトルが思い浮かんだんです。

──たしかに、かれんさんのイメージって、デビュー当時の『M 愛すべき人がいて』での姿や、デビュー曲のイメージが強いと思うんです。でも、音楽を聴いていると、ものすごくクリエイティブだし、つねに新しいジャンルを取り入れて楽しんでいますよね。そのギャップが、まさに今作に詰め込まれているように感じました。

安斉:ありがとうございます。私もそのギャップをすごく楽しんでいますね。これまでのイメージを無理に覆したいとも思わないんですよ。それも含めて全部が自分なんで、過去を否定するわけでもなく、それがあっての今の私がこれですよ、というものを表明できたらと思います。



──かれんさんは最近、enzanialak名義で曲を発表しましたよね。安斉かれんという名前を隠して配布した反響も、楽しかったのではないでしょうか。

安斉:安斉かれんって名前はいい意味でも悪い意味でも広がっているから、別名義で出すことで、フラットに音楽を聴いてもらえる気がしたんです。実際、SNSで「すごいいい曲だけど誰?」といいう書き込みがあって、それが、凄く嬉しくて。

──今後もこの名義でリリースはありそうですか?

安斉:別名義でライブが出来たら面白いだろうなとか、頭の中で色々と妄想してます(笑)。別名義だからこそ、違う表現が大胆にできることもあるので、こういうトライアルは今後も考えて行きたいですね。



──さらに、“私の本性=音楽”というキャッチコピーがすごく印象的でした。そこがまさに今作の真髄だと思ったのですが……。

安斉:そうですね。昔から音楽が大好きで、いろんな曲に挑戦したいと思っていたんですけど、どう形にしていいかわからなかったんです。それが、今回のアルバムを作る過程で、もっとちゃんと形にしたいって強く思うようになったんです。それこそ、安斉かれん=J-POPというイメージが色濃いと思うんですが、それだけじゃない。それだけだと思って欲しくないんですよね。もっといろんな音楽を表現したいし、しているんだよって。そんなことが伝わる作品になればと思い、今作を制作したんです。

──まさに、それが伝わる1枚ですよね。そんな想いで作ったからこそ、より新鮮だった曲は何ですか?

安斉:「おーる、べじ♪」ですね。歌詞はかなり激しい言葉になっているので、強めに響くと思うんです。普段そういう言葉ってなかなか言えないじゃないですか。でも、絶対にこの歌詞と同じ様な事を感じたことあると思うんです。思っているのに言っちゃいけない場面って絶対にあるし……。もしみなさんが日々の中で、“何か違うな”と思ったことがあれば、この曲が少しだけ背中を押せると嬉しいです。ここまで尖った歌詞を書いたことがなかったので、ある意味挑戦でもありました。

──このメッセージはずっと書きたかったことですか?

安斉:書きたかったというか、いつもこの歌詞の様なことを考えていて。そんな時に、この曲のデモを聴いて、すごく尖りを感じたので、それならこういうメッセージを書いてもいいと思ったんです。



──この曲のビジュアライザーは、顔が隠れているビジュアルがサムネイルになっていますよね。

安斉:この曲の主人公はめちゃくちゃ舐め腐っているので(笑)、サングラスも取らないし、反骨芯がずっと溢れているんです。

──でも、こういった曲って、奥に弱さがあるからこそ、攻めていく強さが感じられるというか。

安斉:それはあります。生きていく中で、“私弱いんです”って言うのってめちゃくちゃダサイじゃないですか。だからこそ、少しでも強く見せようとするんです。ギャルも同じで、とても優しい子が多いんですけど、自分の辛い部分や弱い部分を隠すために虚勢を張るんです。それって、すごく人間らしくていいなと思っていて。

──そう言う部分があるからこそ、共感する人は多そうですよね。

安斉:そう思ってもらえたら、嬉しいですね。

──サウンド面で挑戦となったのはどの曲ですか?

安斉:「へゔん」が今までになかった曲だと思います。最初に聴いたときに、本当に天に召されるのかなって思ったくらいなんですよ! そこで“天=神”というイメージから、歌詞を書き始めました。

──「18の東京feat.初音ミク」は、この4月から新生活を迎える人たちには響く曲になりそうですね。

安斉:そうですね。この曲は18歳で上京したときに書いた曲なんですが、あの時にしか感じられないことを歌っているんです。1番の最初が“溜め息が滲んでいく”、2番が“溜め息が馴染んでいく”というフレーズがあるんですが、そこがこの曲の芯になっていて。最初は希望と怖さなどでいっぱいだと思うんですが、いつの間にか環境に馴染んでいきますよね。私も今年で上京して4年になりますが、その頃より大分東京に馴染んできたんです。メンタルもどんどん強くなっていくし、自分らしく生きられているなと感じることも多くて。だからこそ、今、悩んでいる人も、馴染んでいくから大丈夫なんだと感じてもらえたら嬉しいですね。



──いまあらためて18歳の自分に声をかけるとしたらなんて言いたいですか?

安斉:客観的に見られるようになった今、自分が1人欠けても世界は回るから大丈夫だと思えるようになったんです。それからは気楽に生きて行けるようになったんですよね。だからあまり重く考えすぎずにいて、って伝えたいですね(笑)。

──ちなみに、かれんさんにとってのヒロインは誰ですか?

安斉:それはドキンちゃんです! 今回、「私はドキンちゃん」をダークポップにアレンジしてカバーしているんですが、あらためてドキンちゃんのマインドが好きだなって。ドキンちゃんって、バイキンマンの手下なので、菌なんですよ。しょくぱんまんに恋をするんですが、菌なのでくっつけないんですよね。それでも一途に思い続ける健気さがすごく愛おしくて。わがままなところもたまらないんですよね。

──今作では本当にいろんなことに挑戦ができたんですね。

安斉:はい。いまの安斉かれんを詰め込んだアルバムができたと思っています。ぜひ、成長した私の”音楽”を聴いて貰えたら嬉しいです。

取材・文◎吉田可奈

アルバム情報

2023年3月29日リリース

1st album『ANTI HEROINE』
各配信リンク:https://kalenanzai.lnk.to/ANTIHEROINE

1st album『僕らはきっと偽りだらけの世界で強くなる。』
各配信リンク: https://kalenanzai.lnk.to/bokurahakitto


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