【インタビュー】中村ゆりか、「女の子の味方になれる、引っ張って励ませるアーティストになりたい」

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■月はみんなに与えられたスポットライトなんじゃないかな

──寄り添うスタンスは『Moonlight』の楽曲にも表れていると思います。音楽活動を後押ししたCHIHIROさんが作詞作曲を担当されていますが、楽曲の方向性はどのようにお決めになったのでしょうか?

中村ゆりか:初めてちいちゃんの曲を聴いたときに、頭の中にドラマが出来上がっちゃうぐらいの歌詞能力と歌の世界観に感動したんです。だから、ちいちゃんの武器でもある生々しいメッセージや女の子が実際に経験したことを歌詞に入れたかったです。わたしもちいちゃんのように女の子の味方になれる、引っ張って励ませるアーティストになりたいんですよね。そのためにもお芝居で得てきた経験を生かしたいなとは思っていて、歌にちゃんと自分が乗っかって世界を膨らませられるように心掛けています。だから『Moonlight』の4曲は、ちいちゃんの思いとわたしの思い、どちらも乗っているんですよね。

──「Lovely Baby」には大人の少女性が表現されていて、「分かっていても」には年の差恋愛に悩む女性の心情が描かれていたりと、大人の若者の恋愛が楽曲になっている印象を受けました。中村さんの声や年齢に合わせてソングライティングをなさっているのではないでしょうか。

中村ゆりか:プライベートな部分もたくさん話せるし、尊敬し合える関係性を築けているのは大きいと思います。ちいちゃんはわたしの等身大の人となりも、お芝居してる中村ゆりかも好きと思ってくれていて、わたしのお芝居から今回の楽曲の方向性も見つけてくれたのかなとも感じていますね。でも1stシングルはどんなテイストで行くべきか、すごく迷ったんです。わたしの声質から、1曲目は甘めの歌なのかなと想像する人は多い気がしたので、それとは違う方向性にしたくて。



──その結果、浮気された女子の心情を生々しく描いた「浮ついたHeart」が生まれたということですね。

中村ゆりか:美しいだけではないリアルな恋愛や恋愛観を詰め込んだ曲のほうがグサッと来るし、自分が歌っていても納得がいくし、中村ゆりかとのギャップもあるかなって。ちいちゃんと一緒にじっくりいろいろと探ってたどり着いたものではありますね。



──歌詞は生々しいけれど中村さんの声質はちょっとミステリアスなので、だからこそじわじわと火傷のように心に言葉が染みてきます。

中村ゆりか:あ、そう言っていただけてうれしいです。わたし自身がよく、“何考えてるかわかんない”とか“私生活が謎”と言われることが多くて(笑)。たぶんそれはお芝居で謎めいたキャラクターをやってきているのもあるんだと思います。わたし自身は全然普通なんですけどね(笑)。でもそういう役もすごく楽しんでやっているんです。ミステリアスなムードを持っている人がメッセージをストレートに伝えると、そのギャップで言葉がより響くのは、少なからずあるのかなと思いました。

──実体験を感情的に歌う生々しさとは、違う趣向のそれですよね。

中村ゆりか:うんうん。実体験を歌詞にしてご自身で歌うシンガーソングライターさんはすごく説得力もあるし、わたしも大好きなんですけど、わたしが音楽をやる場合はちいちゃんが綴ってくれたメッセージをドラマチックに届けることが重要だと思うんです。もともと恋バナが好きなので恋愛コラムとかもよく読むし、いろんな話を聞きながら「わかる~!」って思うんですよね。だから実体験でなくても自然と歌詞の主人公の心情を想像して共感しちゃうんです。だから「浮ついたHeart」もイメージを膨らませていくうちに自分も浮気された気になってきて(笑)。


──わたしも浮気された経験はないのに浮気されたような気持ちになって胸が痛くなりました。

中村ゆりか:経験者の共感だけでなく、経験していない人も引き込んじゃうのがちいちゃんの能力のすごいところですよね。本当に好きで好きで仕方ない人には盲目的にのめり込んでしまうのかな、とスッと想像させてくれる。「Lovely Baby」もすごくキュートな曲なので、ケンカしてる恋人同士の間に流してくれたら仲直りするかもしれない。「分かっていても」みたいな切ない恋をしている人は、ご自分と重ね合わせて聴いてもらえたらなと思うし、同じような経験をしている人もいるってことが仲間意識や励みになってくれたらなと思います。

──ラストの「Positive」は恋愛ソングというよりは、凛々しい女性の生き方が反映された楽曲だと感じました。歌詞には中村さんが憧れる芯のある女性像が反映されて、アレンジもK-POPテイストで。

中村ゆりか:自分を奮い立たせてくれる曲ですね。自分のためのエールなんだろうなって。誰かを引っ張っていくのは大変なことだと思うんです。たとえばカメラ回す人、音を録る人みたいにお仕事で関わる方々のやる気も、わたしの行動次第だと常々思うんですよね。一緒に仕事する人が“中村ゆりかと仕事してよかったな”と思ってもらうためにも、自分は強くならなきゃいけないなって。

──「Positive」に綴られているのは、中村さんのポリシーと言ってもいいのでしょうね。

中村ゆりか:やっぱり皆さんご存知のとおり、芸能の世界は甘くないんですよね。今はテレビに出られるチャンスや注目を浴びる機会がすごく多くなったけれど、TikTokがここまで盛んになる前は本当にテレビに出るのは大変で難しいことで。スカウトされてからこの世界に入って、その時代を経験しているから、ずっと頭の中に“この世界は簡単じゃない”というのがあるんです。だから責任を持ってお仕事をしたいし、疲れさえも充実だと感じるようになりました。そういう自分をかっこいいなと思ってもらえたらいいな。……生きてると“逃げたいな”と思うこと、やっぱりあるじゃないですか。


──そうですね。

中村ゆりか:絶対に逃げちゃいけないわけではないけど、逃げたい気持ちをちょっと引き止められるような、落ちてるメンタルをちょっとでも掬い上げられる、強くて優しい女性になれたらなと思います。

──それこそタイトルにもなっている“Moonlight”みたいな、静かに包み込んでくれる存在というか。

中村ゆりか:ちょっと恥ずかしいんですけど、わたしはつらいことあると夜空を見上げちゃうんです(笑)。月を見ると癒されて、心がちょっと落ち着くんですよね。24歳の誕生日に初めて出した写真集のタイトルも『Over the moon』で、“Over the rainbow”の持っている、“非常に幸せ”や“どんなに辛いことがあってもそばにいてくれる人は必ずいるし、1人じゃないから大丈夫だよ”というメッセージを、自分なりの言い方にすると“月”がぴったりだったんです。



──『Over the moon』の先にあったのが『Moonlight』なのかもしれません。

中村ゆりか:孤独を感じている人も、今まで関わってきてくれた、自分のことを大切にしてくれた人を思い返してみたら、SOSを出してみようかなと思ってくれるかなという気持ちは大きかったですね。悲しいときは暗くなっちゃうけど、月明かりが差し込んだときは明るく照らされる。月はみんなに与えられたスポットライトなんじゃないかなと思うんです。“あなたは特別ですよ”という気持ちも伝えたかったんですよね。

──ご自身の大切なものを詰め込んだ、素敵なデビュー作になりましたね。

中村ゆりか:ありがとうございます。この先もやりたい音楽のイメージはいろいろあるんです。癒されるような曲も好きなので子守唄みたいな曲もやりたいし、いろんな音が入ってる曲を聴くとテンションが上がるのでそういう曲もやってみたいし、ラップもやってみたいし……。この先もお芝居も音楽も頑張っていきたいです。

取材・文◎沖さやこ



1st EP「Moonlight」

2023年3月1日(水)リリース

・初回限定盤CD+DVDセット
TECI-916  価格5,500円(税込)
CD:8曲収録
収録曲
M1.浮ついたHeart
M2.Lovely Baby
M3.分かっていても
M4.Positive
M5.浮ついたHeart(Instrumental)
M6.Lovely Baby(Instrumental)
M7.分かっていても(Instrumental)
M8.Positive(Instrumental)

DVD内容
「浮ついたHeart」Music Video + Artist Visual Shoot Making 
 
・通常盤CDのみ
TECI-917  価格1,800円(税込)
CD:4曲収録
収録曲
M1.浮ついたHeart
M2.Lovely Baby
M3.分かっていても
M4.Positive

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