【ライブレポート】0.1gの誤算、7周年と革命初日。Spotify O-EAST単独公演で迎えた2つの記念日

ツイート

3月29日、0.1gの誤算が7周年記念ワンマン<こんな時代に風穴を開ける、俺達が0.1gの誤算だ>を開催した。

◆ライブ写真

「チケットが取りにくいバンド」と言われ始めている0.1gの誤算が今年の周年ライブの会場に選んだ場所は、Spotify O-EAST。新旧多くのファンによって2階席まで完全に埋め尽くされ、開演前から熱気が立ち込めている。

「まもなく開演いたします」というスタッフのアナウンスが入ると、開演の時を今か今かと待ちわびるファンから自然と拍手が沸き起こり、SEの音と同時に拍手は大きな歓声へと変わった。

「ヴィジュアル系? あぁ、下火になっちゃったジャンルね」「0.1gの誤算、まだやってたんだ」「コロナの時期になって新規のファンなんかつくわけないのに」。暗転した場内で流れる音声。その言葉を喰らうように、「それでも俺はこの道を諦めなかった」「考えることをやめなかった」「生き残るための0.1gの可能性を模索した」「その結果、いま俺の前には1,000人の観衆がいる」「ようこそ、0.1gの誤算の世界へ」と、緑川裕宇(Vo)が畳みかける。


0.1gの誤算は、最初から順風満帆なバンド人生を歩んでいるわけではない。大箱でのワンマンの実績やSNSでの人気ぶりなど、彼らの活躍を見ているとつい忘れてしまいそうになるが、このバンドの強さの根底にあるのは、ハングリー精神だ。

前日の18時ちょうどに解禁となった新ビジュアル、悪魔モチーフの衣装でメンバーが登場すると、コール&レスポンスで勢いをつけ「Act of rebellion〜支配ト破壊ノ血印〜」から演奏をスタート。ダークな曲調、ヴィジュアル系のライブ特有のノリが、新衣装ともマッチしており、0.1gの誤算だけでなく、「ヴィジュアル系シーン全体を盛り上げていく」というもう一つの使命も全うしようとする姿勢に頼もしさを感じる。

0.1gの誤算のライブでは、初めてライブに来た人、久しぶりにライブに来た人向けの「暴れないゾーン」や自由にライブを見たい人、知ってる曲だけ暴れたい人向けの「マイペースゾーン」など、会場内の場所によって観客が自由に選択してライブを楽しめるような工夫が施されている。今日のライブでは「暴れないゾーン」が2階席となっていたが、いざライブが始まると、そのことに気付かないほど会場の隅々まで熱が浸透していった。


初期の人気曲「21gの感傷」、ライブの定番曲「オオカミ男と月兎」を含む5曲を続けて披露した後に広がったのは、「お前らなんでこんなにいるんだよ」というめいっぱいの嬉しい叫び、「やっと辿り着いたね」という安堵感、そして、会場に咲く満面の笑み。今日のライブではチケットのソールドアウトを記念してYouTubeやニコニコ動画でも配信されており、無料配信枠はここで終了となったが、「配信参戦組も盛り上がってこー」「イーストワンマンおめでとー」といった、たくさんのコメントが寄せられていた。会場にいる人だけでなく、リアルタイムで配信を見ている人、後日アーカイブを見る人も全員、この大切な瞬間を分かち合う仲間だ。

緑川裕宇がギターを持って歌う中、ステップを踏みながら軽やかに音を刻む眞崎大輔(B)、ソロパートで曲を引き立てる水田魔梨(G)、お立ち台の上から身を乗り出してアグレッシブな演奏を届ける河村友雪(G)と、自由闊達に演奏する楽器隊。軽快さが癖になる「しいたけ人生論」、小気味良さが続く「VITAL」と、ノリの良いナンバーをセットリストのこの位置に持ってくるのも良いセレクトだったように思う。ここまではある種、7年間で積み重ねてきた安定感のあるライブという印象を受けた。しかし、それで終わらないのがこのバンドだ。


「ここで、今日のために用意したスペシャルなゲストを呼ぼうと思います。俺の母さんだ」と、緑川裕宇が叫ぶと、ドレス姿の緑川母が登場。お立ち台に上がり、「かかってこいよ」と煽りを挟み、「廃課金式ラブストーリー」の演奏にキーボードで参加した。エモーショナルな演奏が、とにかく格好いい。曲中、緑川裕宇が母の横に行き、肩に手を乗せたりモッシュのように身体をぶつけたりとアクションを起こすが、母も負けじと全身全霊でぶつかり、鍵盤を鳴らす。それは、母をちょっとステージに呼んでみましたというレベルではなく、音楽を通して心が一つに繋がる美しい瞬間だった。演奏後はメンバー全員が緑川母と笑顔でハイタッチを交わすシーンも。

以前、動画で配信した母との演奏が好評だったことから実現した今日のサプライズ企画。そんな経緯を説明している途中で、「こんな景色、初めてで~」と話し始める母に「人の話を聞け(笑)」と、すかさず突っ込みを入れる息子。その様子を「ほんと仲良いな」と言いながら微笑ましく見ているメンバー。さらに、煽りの言葉を忘れないようにと手の甲に「かかってこいよ」や「いけるか」という煽り文句を書いてきたという母の可愛いエピソードが飛び出したり、他のメンバーも2階席にいる自分の母の名前を呼んで手を振ったりと、楽しい空気が広がっていた。

その後は、「桜花爛漫!天晴れサムライ応援歌」で緑川裕宇がフロアに降り、上手下手を行き来したり、2階席にも登場したりと、一瞬たりとも目が離せないライブを繰り広げた0.1gの誤算。彼らのサプライズはまだまだ終わらない。今年の「誤算の日」は、53時間企画と銘打ち、5月3日から3デイズ4公演のライブを開催。しかも、2回目となる小学生以下限定ライブや、コロナ禍で約3年間封印していた逆ダイ曲「こんな僕ら、どうですか?」を復活させるライブなど、内容も濃いものになっている。さらに、5月23日、6月26日は、オメでたい頭でなによりとの2カ月連続2マンライブも決定。ジャンルは違えど、熱いライブを届け、人を楽しませることに全力を注ぐエンターテイナーいう意味では、通ずるものがある2バンドなのではないだろうか。どんな化学反応が生まれるのか、今から楽しみでならない。


そして、ライブはいよいよアンコールを迎える。キャッチ―なメロディが弾む「救済バタフライ」、ライブ前日に今回の新ビジュアルとともに公開されたばかりの「Le Diable〜太陽を裁く者〜」、そしてもう一つの新曲「JUDGEMENT [THE] DAY」が演奏された。アンコールで新曲を立て続けに披露するという戦略も意外性があって面白い。しかも、緑川裕宇が伸縮ポールカメラを持ち、再びフロアで大暴れ。2柵にまたがりファンのヘドバンの波を撮影したり、2回目のアンコールでもダイブ、クラウドサーフが行われたりと、予測不能なライブを展開していった。

実は、今日のライブは、ここ1年で0.1gの誤算を知った新規のファンが大半だった。だから、「7周年を祝う日であり、ここから革命を起こしていく首謀者とその一味が集結した記念すべき第一日目でもある」のだ。「せっかくの機会なんで」と、前置きし、緑川裕宇は新旧ファンに次のような言葉を届けた。「SNSや動画を見て、新しくファンになってくれた新世代のみんな、見つけてくれて本当にありがとう。バンド結成当初からファンでいてくれてる古株のみんな、今までよく残ってくれた」。そして「今はもうファンじゃないかもしれないけど、ここまで繋げてくれた人たちも全員、一生忘れません」。


彼らを支える所属プロダクションのクルー、ライブの時に駆け付けるスタッフ陣、いつも温かく見守ってくれる家族、そして、かけがえのない多くのファン。0.1gの誤算はこの日、7年間の歩みを繋げてくれた人たち全員に感謝しながら、革命を起こすための第一歩を力強く踏み出した。

文◎藤代冬馬
撮影◎堅田ひとみ 株式会社リンクソルウ

セットリスト

1.Act of rebellion〜支配ト破壊ノ血印〜
2.利己的メルヘン症候群
3.21gの感傷
4.溺愛ヤンデレボーイ
5.オオカミ男と月兎
6.嘘とシアン
7.Desire
8.しいたけ人生論
9.VITAL
10.廃課金式ラブストーリー
11.脳漿炸裂ガール
12.桜花爛漫!天晴れサムライ応援歌
13.【K】0626【渇望】
14.絶望メンブレガール

― EN1 ―
15.救済バタフライ
16.Le Diable〜太陽を裁く者〜
17.JUDGEMENT [THE] DAY
MC
18.混沌的極悪暴曲-ヴィジュアロックパロディウス-
19..Truth
20.アストライアの転生

― EN2 ―
21.必殺!からくり七変化!
22.フルニトラゼパム
23.有害メンヘラドール
24.男闘魂戦争卍燃えよ誤算光殺砲卍

ライブ アーカイブ配信情報

<7th Anniversary ONEMAN『こんな時代に風穴を開ける、俺達が0.1gの誤算だ』>
2023年3月29日 Spotify O-EAST
配信視聴ページ(アーカイブ〜4/12まで)
https://live.nicovideo.jp/watch/lv340512935

この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス