Hana Hope、1stアルバム発売記念ライブで坂本龍一や高橋幸宏の楽曲もカバー

Hana Hopeがファースト･アルバム発売記念ライブを4月6日、東京・表参道WALL&WALLにて開催した。Hana Hopeは2022年2月にシングル「Sentiment / Your Song」でデビューしたデジタル･ネイティブのZ世代、17歳の女性シンガー。この日のライブは3月15日に発表したファースト･アルバム『HUES（読み：ヒューズ）』を記念して行われた。

19時30分、ステージ後方のスクリーンにイメージ影像が流れる。“Enjoy the Music Together!”のメッセージが映し出されるとHana Hopeがステージに登場。演奏に身体を委ねながら静かに歌い出し、冒頭3曲はアルバム曲順通りのミディアムテンポ・ナンバーを披露した。ここでHana Hopeは満員のフロアを見回し「アルバムをリリースして1ヶ月。やっと皆さんの前で歌えて嬉しいです」とオーディエンスに挨拶。幾分、緊張してるように見えた彼女だが、3曲歌って少しほぐれたのか「凄く大切な曲です。楽しみに聴いてください」と歌ったのは「きみはもうひとりじゃない」。ここまでは英詞曲が続いたが、この曲は加藤登紀子が詞を書いた日本語曲。Hana Hopeが歌う美しい詞がじわじわと身体に浸透していく不思議な感覚を体感できる。そう。彼女の声の魅力は染みいること。樹々の間から射し込む木漏れ陽のようであり、湖に石を落として拡がる水紋のように、じわりじわりと染みこんでくる。ウィスパー・ヴォイスなのにアグレッシブ。絶妙なバランスを持って丁寧に歌い綴る。

ここからライブはROTH BART BARONをフィーチャー。2019年にリリースされた「けもののなまえ」に当時13歳のHanaが参加し、三船雅也と共に歌ったのを機にROTH BART BARONとの交流が始まる。2曲目に歌った「16 - sixteen」、5曲目の「Dawn Dancer」はいずれもROTH BART BARONが関わった楽曲だ。

「このライブのリハーサルの帰りに教授の訃報を知り、たいへんショックでした。お会いしたことはないのですが」と語り、歌ったのは「Ballet Mecanique」。アルバム『未来派野郎』（1986）に収められた坂本龍一の楽曲だ。無機質なエレクトロ・サウンドに生のギターが絡む。後半のせり上がってくるようなアレンジに合わせ、Hanaの歌も高揚感を上げていく。

続いての「CUE」はYMOのカバー。Hanaが音楽活動を始めるきっかけになったのは、2019年3月14日に新宿で開催されたYMO結成40周年記念イベント＜Yellow Magic Children＞に13歳で参加したこと。そのとき高野寛と歌ったのが「CUE」で、ファースト･アルバムにも新録音で収録したHanaにとっての思い出の曲だ。彼女の声がフロアを晴れやかな祝祭感に包み込む。

ここまではスロウ/ミディアムテンポの楽曲を中心に構成されてきたこの日のライブだが、後半に歌ったのは、壮大な広がりを感じさせる「Sentiment」。エレクトロ・ユニット、Black Boboiがプロデュースした奥行きある楽曲だ。この流れで、続いて披露したのは「それでも明日は」。まつむらしんご監督の映画『あつい胸さわぎ』の主題歌となった、明日への希望に満ち溢れるバラード・ナンバー。Hana Hopeといえばちょっとオシャレなウィスパー･ヴォイス・シンガーと思っていたが、この曲を聴いてその考えは改めさせられた。ド直球の正統派J-POP！。凜とした佇まいで圧巻の歌唱を披露し、そっちのフィールドでも充分に勝負できる歌唱力を見せつけた。Hana Hope恐るべし。

ラストはデビュー・シングルのカップリング「Your Song」。ファンク･サウンドをベースにソウルフルな歌をハンドマイクで聴かせる。このグルーヴに、フロアもクラッピングで応じ、場内の熱気も最高潮に。コーラス･パートではHanaが客席にマイクを向け、ステージとの一体感を促す。何より歌っているHanaの表情が楽しそう。アンコールで再びステージにあがった彼女は「2年かけて作ったアルバムを、みんなと歌えて嬉しいです」とオーディエンスにお礼。「音楽に入るきっかけになった方です。一緒に歌うことは叶いませんでしたが、上から見守って頂ければと思います」と歌ったのは高橋幸宏が2006年にリリースした「Blue Moon Blue」。1ワード、1ワードをかみしめるよう想いを込めて歌い、70分超に及んだライブを締めくくった。

Text：石角隆行

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