【インタビュー】超学生の「推し愛」と「誠意」と「探究心」

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2月にメジャー1stフルアルバム『超』をリリースしたことも記憶に新しいソロアーティスト・超学生。彼がニューデジタルシングル「スペースキャットビッグバン」をリリースした。

◆撮り下ろし写真

同曲はTVアニメ『カワイスギクライシス』のオープニングテーマ。作品のキーワードである“宇宙”、“猫”、“ペット愛”が盛り込まれた、エッジと浮遊感が交錯するユニークな楽曲だ。荒ぶる無償の愛が綴られたこの曲と、彼は一体どのように向き合ったのだろうか。制作の背景はもちろん、メジャーデビュー以降で彼が抱くクリエイティブへの思いについても聞いた。

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■“推し愛”を持っている人には共感してもらえる

──メジャーデビューを目標に掲げていた超学生さんの次なる目標は、YouTubeチャンネル登録者数100万人だそうですね。活動の場が増えている超学生さんにとって、YouTubeはどんな場所になっていますか?

超学生:安心して帰ってこられるホームみたいな感覚になってきています。YouTubeチャンネルは視聴者の皆さんにとっての憩いの場というか、日頃の生活のなかでほっとできるエンターテインメントだと思うし、僕もそれに応えられるような投稿をしてきたんですけど、ライブやメディアへの出演など活動の幅が広がったからこそ、僕自身にとってもそういう場所になっていて。YouTubeに「歌ってみた」をアップするのは自分の原点でもあるし、場所によって求められる超学生が違うのでなおさらそう感じるのかなとも思います。

──発信する場所で、見せるものを分けている。

超学生:YouTubeを観てくれている人は、「歌ってみた」以外はそこまで興味ないだろうなとか(笑)。

──いやいや(笑)。歌を楽しみにしてくれている人が多いということですね。

超学生:だから結果的にYouTubeは「歌ってみた」とミュージックビデオがほとんどで、YouTube Shortsは小ネタがあったら上げるくらいの感じになって。Twitterをフォローしてくれてる人は、どうやら超学生の歌というよりは日常を覗けることを楽しんでいるっぽいなとリプライなどで感じるようになったのでそういう部分を発信して……という感じでSNSごとに分けている感じですね。


──多方面に活躍中の超学生さんは、今回メジャー1stフルアルバム『超』から2カ月もしないうちに新曲「スペースキャットビッグバン」をリリースしました。こちらはTVアニメ『カワイスギクライシス』のOPテーマ。超学生さんにとって初めてのアニメタイアップです。

超学生:TVから自分の曲が流れるのは大きな夢でしたし、僕自身がアニメオタクなのでずっとお世話になっていたコンテンツのひとつに関わることができることへの感慨深さがあります。アニメの話をしていると自然と主題歌を口ずさむ人が多いので、オープニングテーマはアニメの象徴のような存在だと思っていて。初めてアニメ化する作品の初オープニングテーマソングを務められることは、これ以上ないありがたいお話です。

──『カワイスギクライシス』は猫が可愛すぎることやペット愛がテーマのコメディで、登場人物に共感する人も多い一方、なかなか個性的なキャラクターが多いのも特徴的な作品だと思います。

超学生:一見ほんわか日常漫画なんですけど、ツッコミ不在で平和な方向にクレイジーでぶっ飛んでるところも多いですよね。そこのギャップやハイブリッド感が面白くて、すごく自分好みです。その主題歌に超学生を起用していただいたことにもシンパシーを感じると言うか。

──確かに、超学生さんはお写真などから受けるイメージはクールだけど、インタビューでもサラッと冗談を交えてくださいますよね。

超学生:ツイキャスの配信でもそういうことばっかりやっています(笑)。自分自身も、ギャップに惹かれるところは結構大きいかもしれない。『トランスフォーマー』や『ピクサー』、『ウォーリー』みたいに、無機物と生命という真逆なものが合わさっているものがすごく可愛いなと感じるんですよね。機械なのにものすごく人間味を感じる、なのに機械だから壊れちゃう。そういう瞬間にも可愛さを感じたりするんです。“可愛い”という感情は、何をしていても許せちゃうものに対して抱くもののような気がしていて。

──『カワイスギクライシス』のキャラクターたちもそうですものね。ペットに翻弄されながらも、惜しみない愛を注ぎ続けている。

超学生:猫を可愛いと感じている人は、猫がブスッとしていても、目が半分しか開いていなくても、どんなにひどいポーズをしていても、何もしていても“可愛い!”ってなりますよね。「スペースキャットビッグバン」も愛を叫んでいる曲だけど、恋愛や友情、家族みたいなお互いの思いが通じ合うことで生まれる愛というよりは、“ただそばにいたい”とか“息してくれてるだけでサンキュ”という歌詞のとおり、ペット含め“推し”への愛なんですよね。



──だからこそ、歌詞も愛情表現が一方的なのが「スペースキャットビッグバン」の特徴だと思います。“無償の愛にエゴはいらない”というように、自分のためにああしてほしい、こうしてほしいと求めてないんですよね。

超学生:おっしゃっていただいた“一方的”という言葉で思ったんですけど、見返りを求めない、自分が一方的に愛情を傾けるだけで満たされる存在を“可愛い”と感じるのかもしれない。それが恋愛の“好き”とはまったく違うところですよね。“推し愛”を持っている人には共感してもらえる歌詞じゃないかな。僕も好きになったものにはのめりこんじゃうので、アニメやゲームの設定資料集とかも揃えてじっくり読んじゃうタイプですけど、それは知識が増えていくことが楽しいし満たされるからなんですよね。ものすごく力は注ぎ込むけど、僕自身はそれを努力だとは思っていないというか。

──そのメンタリティは“超学生”の活動にもつながっていそうですね。

超学生:そうですね。いいものを作るために必死に頑張ることもあるけれど、いつも努力をしてるという意識はなくて。ゲーム好きな人が10時間くらいゲームをぶっ続けでやってレベルを上げていくのは、努力というよりは好きだからだと思うんです。僕がSNSを通じていろんな面を見せるのも、“歌以外の超学生を知りたい”という方に向けた誠意でもあって。リラックスしないといいパフォーマンスができないタイプなので、超学生の活動で好きなことをやり続けて、結果的に外から見たら努力に等しいパワーになっていたらいいなと思っています。

──「スペースキャットビッグバン」の作詞作曲編曲を手掛けているJazzin’parkの栗原暁さんと久保田真悟さん、サウンドクリエイターの前田佑さんとは、昨年6月にリリースされた「Untouchable」以来のタッグです。

超学生:こちらから依頼させていただきました。まずお三方に好きに作っていただいて、僕はその世界観を一挙に引き受けるのがいちばんいいだろうなと暗黙の了解がお互いにありましたね。すりぃさんと「サイコ」を制作したときの感覚に近いです。そのかたちが作家さんたちもいちばんリラックスして作っていただけるのかなと思うし、結果暴れてもらえてすごい曲ができました(笑)。

──“宇宙”、“猫”、“荒ぶる愛情”の3本柱と、ユニークだけどおふざけになりすぎない『カワイスギクライシス』の持ち味がぎゅっと詰まった楽曲になりました。

超学生:イントロだけで“宇宙”と“猫”が伝わるし、1番のAメロとBメロの歌詞は韻を踏むだけでなく第1話の内容が詰まっているので、やっぱりさすがですよね。お三方は素晴らしい実績と経験をお持ちなのに皆さんすごく謙虚で、何よりフレッシュなんです。まだまだ貪欲にクリエイターとしてのスキルを伸ばしたいと思っていて、積極的にいろんな要素をどんどん取り入れている。だから皆さん第一線で活躍できるんだろうなと思います。ご一緒するのが2回目だったので、よりいろんなお話をすることもできて。“個人でインターネットで音楽活動をしている人は、こういう時にどういうプラグインで処理をしているの?”と聞いていただいたりもしました。

──それは機材オタクの顔も持つ超学生さんには非常にうれしいことでは。

超学生:僕がその何十倍も質問してるんですけど(笑)。話の中でメモを取ってくださったりして、“家帰ったらこのソフト入れてみよう”と言ってくださったり……。機材の話をたくさんできて、すごくうれしかったし楽しかったです。今回は僕が持っているマイクもスタジオに持っていったんですけど、それも試したうえで“確かにこっちのマイクのほうが合うね”と言ってくださって、レコーディングには僕のマイクも使っているんです。“これはこう”と決めつけずに、常にフラットな視点を持ち続けてる方々なんですよね。僕も意固地にならずに新しいものを積極的に取り入れていきたいなと、すごく勉強になりました。

──超学生さんのボーカルのバリエーションの広さが、かなり生きた曲にもなっていると思います。

超学生:主人公のリザが感情の起伏が激しい人なので、セクションごとに歌い方を変えるのがいいんじゃないかなと僕なりに解釈をしました。いちばん苦労したのがイントロの猫の鳴き声で。いい声で猫の鳴き真似をしたら面白いんじゃないかと思ったんですけど、自分のイメージ通りのいい声がなかなか出せなくて、何度も何度も録って、どれがいいのかわからなくなってきて……本当に難しかったですね(苦笑)。久保田さんは使うテイクの判断が的確ですごく早いので、とても助かりました。

──お互いのスキルを持ち寄る、いいボーカル録りができたということですね。

超学生:「Untouchable」よりも濃密なディレクションになりましたね。僕から“こういうコーラス入れてみるのはどうですか?”と提案させていただいたり、ミックスの段階でメインボーカルからハモリを生成してもらったり。その結果、エッジは効いてるけどどこか独特な浮遊感があって、脳みそが書き回されるような音になったのかなと思います。

◆インタビュー(2)
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