【コラム】とた、SNS総再生回数4億回越えの代表曲「紡ぐ」から見える魅力とは。「THE FIRST TAKE」にも抜擢

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2000年代生まれのベッドルームアーティスト、“とた”がいま話題を呼んでいる。

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活動をスタートし、ネット上にオリジナル曲やカバー投稿をはじめたのはコロナ禍の2021年2月のこと。動画共有サイトやSNSでの活動が中心だが、1年足らずで活動初期に投稿した「紡ぐ(Short Ver.)」がTikTokで計270万回再生を超えるスマッシュヒットとなり、またユーザー投稿動画では現在総再生数が4億回を超えるなど、その存在感は確実に広がっている。



今年2月1日には、この「紡ぐ」が配信リリースとなり、同時にミュージックビデオが公開となったが、こちらも異例のスピードで再生回数を伸ばしておりYouTube公開2ヶ月の現在ですでに110万回再生を超え、コメント欄にはShort Ver.から待ち望んでいたフル尺が聴けた喜びや、曲と出会えた感動が寄せられ続けている。

動画共有サイトやSNSでは、同世代の10代から20代のリスナーが中心だろう。今というほんの一瞬のきらめきや尊さ、大人と子どもの間のマーブル模様の気持ちが封じ込められた曲はたしかに、同世代の子たちが抱く言いがたい繊細な思いと共振するものになっている。ただ、とたの曲が発する周波数はもっと大きく、強く、世代を超えてパーソナルに届くものだ。

SNSだけでなく、2月1日に配信リリースとなった「紡ぐ」は、Spotifyでは多くのヒットソング系のプレイリストに入り、「Viral50 JAPAN」では最高位が20位を記録し、台湾での「Viral Hits Taiwan」にもランクイン。iTunesトップソングチャートでトップ10入りを果たし、Billboard Japan Hot100で最高75位(2月15付)、Billboard Japan Heatseekeres Songs最高位3位(2月22日付)を記録。またラジオ各局でのパワープレイを獲得し、USENでは3月1日付週間USEN HIT SNSランキング1位となった。日常や街中で耳にする機会が増えたからだろう、周囲で流れる音楽を検索するアプリShazamの「Shazam Discovery Japan」チャートで1カ月にわたって連日1位となるなど、「紡ぐ」はたくさんの人の耳に届き、これは誰?と聴き手にもうひとアクションを起こさせる力を備えている。



一滴が水面を打つ音でスタートする「紡ぐ」。水たまりに落ちた一滴の雫で、世界が波打って歪んで見えた──とても静かな表現だが、この一節で悲しみや痛みの衝撃の大きさが伝わってくる。ただ、何かを失ってしまった気持ちや別れを、悲しい、つらいと言ったひとつの形容詞に押し込めることなく、文学的で余白のある歌詞のタッチと感情を抑えた透明感のあるヴォーカルや柔らかなブレスで描いているのがとても美しい。アレンジャーでamazarashi等を手がける出羽良彰を迎えたサウンドは、繊細なピアノをベースに、時に扇情的に叫びをあげるギターやストリングス、ダイナミックなビートでドラマティックに彩られた重厚なものになっているが、全体の印象はそよぐ風のように、こちらもエアリーに聴き手を包み込む感触だ。

この語りすぎない空気感が、ある時は悲しみを増幅させてくれたり、またある時はその痛みをすっと撫でて癒すようにも響いてくれる。その時々の寄り添い方で隣にいてくれる、普遍的な歌。人生何週目?という歌心をさらりと描き、伸びやかに歌っているところも、多くの人の耳を捉えた理由だろう。



この「紡ぐ」で、とたはYouTubeの人気チャンネル「THE FIRST TAKE」にも出演した。「THE FIRST TAKE」バージョンの「紡ぐ」は、マイク前にやってくるとたの衣擦れの音から始まり、「紡ぐ(Short Ver.)」とは違う、今回のための詩が読まれる。真っ白な空間に響く“インクは色を変えていて”というワードが耳に残り、非常に印象的だ。そして水滴の音からおなじみのピアノのメロディが流れ、歌が始まる。ごまかしのきかない一発撮りという緊張感のある空間とあっても、歌は柔らかく、和やかに届く。むしろ「THE FIRST TAKE」だからこそのシンプルなアレンジが繊細な息遣いや表現を際立たせ、透明感をも生んでいる。「紡ぐ(Short Ver.)」、「紡ぐ」と、少しずつ違う印象を魅せてきたこの楽曲に、また新たな彩りが生まれた。



DAWでの楽曲制作だけでなく、アートワークや映像のセルフプロデュースも行なう才能豊かな、とた。「紡ぐ」に続き、2月には初のフルアルバム『oidaki』をリリースし、詩的でポップセンスの高いリリックで今を切り取り、想像力あふれる音楽に託している。「紡ぐ」のようなミディアムな曲だけでなく、USインディーロックからこれぞベッドルームサウンドというドリーミィなサウンドもあり、幅広い。

どこか飄々としていて少しばかり早熟だけれど、でも生き急ぐことなく日々の心の機微や移ろいをしっかりと味わっていることは、歌のひとつひとつから伝わってくる。未体験だというリアルなライブへの期待も募るが、まずはこの新たな才能の登場を「紡ぐ」のミュージックビデオや、「THE FIRST TAKE」で体験してほしい。

文◎吉羽さおり

配信シングル「紡ぐ」

2023年2月1日(水)配信リリース
配信リンク:https://lnk.to/tsumugu

1stアルバム『oidaki』

2023年2月22日(水)リリース
配信リンク:https://lnk.to/oidaki
REP-065
2,500円(税込)

[収録曲]
01.栞
02.君ニ詠ム。
03.ブルーハワイ
04.薔薇の花 (in the bedroom)
05.あしたてんき
06.通り雨
07.一弦
08.せーかいせかい
09.こうかいのさき
10.紡ぐ
11.ぬるくなったら
12.薔薇の花 (in the bathroom)

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