【インタビュー】緑仙、にじさんじ所属ライバーの覚悟と決意「自分はこうありたいという願い」

ポスト
no_ad_aritcle

バーチャルライバーグループ“にじさんじ”に所属する緑仙が、自身の誕生日の4月16日に新曲「ジョークス」を配信リリースした。2020年にリリースされたオリジナル曲「イツライ」の続編として制作されたこの曲は、生きづらさや疑心暗鬼を抱えながら、新しい自分に向かって進む決意を描いたメッセージソング。しなやかなグルーヴを感じさせるロックサウンド、起伏に富んだメロディ、そして、生々しい感情をたたえたボーカルなど、アーティストとしての魅力が込められた楽曲だ。

◆緑仙(りゅーしぇん) 画像 / 動画

BARKS初登場となる今回は、緑仙の音楽的ルーツ、これまでのキャリアや作品の数々、新曲「ジョークス」の制作過程、今後のビジョンなどについて語ってもらった。


   ◆   ◆   ◆

■とにかくこの場所で何者かにならなくちゃ
■とにかく全部やらなきゃ!って


──緑仙さんは2018年にライバー(ライブ配信者)として活動をスタート。ライバーになろうと思ったのはどうしてですか?

緑仙:初回の配信でお話した理由は「友達を作りたくて」だったんですけど、実はもうひとつあって、VTuberという職業にシンプルに興味があったんです。2018年の時点で“自分にはこれができる” “これはできない”ということをなんとなく理解していたんですけど、それを活かせる仕事って何だろう?と考えていて。“話すことが得意” “こういうジャンルに強い”とかいろいろあったんですが、VTuberは、それをすべて満たしてくれる環境だなと。何をやっているかを見てもらって、好きになってもらいたかったというか。

──なるほど。当初から音楽活動を中心にしたいと思っていたんですか?

当時、歌系のVTuberで名前が挙がるのは、にじさんじのなかでも3人くらいしかいなかったんですよ。でも、歌というのはどんな場所でも求められるところがあって。たとえばゲーム実況者の歌もめちゃくちゃ需要があるじゃないですか。だったら自分が歌ってもいいんじゃないかというのが、最初の理由ですね。初期の頃は「歌といえば、緑仙」と言われたくて、週1本、歌の動画の投稿をとにかくやってたんです。2年くらい続けたのでカバー動画が200本を越えちゃってるんですけどね(笑)。たくさんの方に聴いてもらえたのはたまたまというか、運が良かっただけでしょうね。VTuberという場所にこういう人がいなかっただけというのかな。才能があるとか、歌が上手いとか、声に特徴があるとか、まったく思ってないので。

──緑仙さんの音楽のルーツはどんな感じなんですか?

緑仙:初めて借りたCDは、東京事変さんの「スポーツ」と9mm Parabellum Bulletさんの「Revolutionary」ですね。あとはSEKAI NO OWARIさんとか。その後、ラジオで『SCHOOL OF LOCK!』(TOKYO FM)を聴くようになり、“音楽ってこういうふうに作るんだ?”とか“こんなに若い人たちが音楽をやっているんだな”と思って。中学のときに自分でバンドを組んだこともあるんですよ。ただ、いかんせん田舎で。ライブハウスまで電車で30分以上かかるし、練習スタジオもない場所だったので、何も形にならずに終わっちゃったんです。

──楽器もやってたんですか?

緑仙:ギターは持ってますね。“バンドを組んでは解散”を繰り返してたときに、「ボーカルやるんだったら、ギターもやれ」って言われて。ギターも弾いては辞め、弾いては辞めを繰り返しているんですけど、形から入ったこともあって、40数万円のギター(LSL INSTRUMENTS製)を買ったんですよ。今もすぐ後ろにあります(笑)。

──がんばって練習してください(笑)。

緑仙:みなさんに言われます(笑)。FLOWのTAKEさんにお会いしたときも「ギターやってね」って言っていただきました。

──ははは。邦楽ロック以外だと、どんな音楽を聴いてました?

緑仙:歌謡曲やアニソンですね。“音楽を聴いているとAcid Black Cherryにぶち当たる”というのが持論なんですが(笑)、Acid Black Cherryは邦楽のカバーアルバム(『Recreation』シリーズ)を出してるじゃないですか。そこで歌謡曲に出会い、いろいろ聴くようになって。別軸でアニメや漫画も好きだったから、昔のアニソンもチェックしはじめて、だんだん歌謡曲とアニソンが重なってきたんですよね。“工藤静香さんって、アニソンも歌ってるんだ!”みたいな(笑)。あとニコニコ動画も見てたので、ボーカロイド系の曲もまあまあ聴いてたみたいです。それはデビューしてから気づいたことなんですけど。

──めちゃくちゃ幅広いですね。音楽活動を始めた当初は、どんなアーティストを目指してたんですか?

緑仙:“とにかくこの場所で何者かにならなくちゃいけない”というか。もともとクリエイティヴが好きだったので、ここだったら何かになり得るのかなと思ってました。ただ、“何かできそう”という予感があるだけで、あとはフワッとしてたんですよね。“こんなアーティストになりたい”という明確なものは何もなくて、とにかく全部やらなきゃ!っていう。



──2020年3月にオリジナル曲「イツライ」を公開。緑仙さんにとってはどんな楽曲ですか?

緑仙:実は「イツライ」の前にもオリジナル曲を作っていて。ファンの人たちに向けて“これから自分はこうなっていくので、ついてきてほしい”という曲を作りたくて、YOASOBIのAyaseさんに依頼させてもらったんです。当時は“自分が好きなクリエイターの方の世界観に自分を入れていただく”というやり方がいいと勝手に思っていて。自分は音楽のプロではないし、「ここを変えてほしい」みたいなことを言うのは失礼だろうなと思ってたんですけど、“お任せし過ぎてしまった”という後悔もあるんですよ。たぶんAyaseさんも「ぜんぜん反応が返ってこないな」という感じだったんだんじゃないかな、と。

──良くない遠慮をしてしまった、と。

緑仙:はい。「イツライ」はそのときの反省点も踏まえて、作詞作曲を手がけていただいたぼっちぼろまるさんに、第一回目の打ち合わせの時点で、長文を送ったんです。たぶんみなさんが想像する5倍くらいの長さなんですけど(笑)、日常のなかの不満や納得いかないこと、楽しいこともちょっとだけ書いて。もともと自分自身を言葉で表現するのが苦手で、そんなつもりはなくてもトゲがある言葉を選んでしまう傾向があるんですよ。でも、この業界において自己表現はすごく大事じゃないですか。「イツライ」は自己紹介というか、「緑仙ってどういう人なの?」と聞かれたときに、これを聴けば全部わかるような曲にしたかったんです。そういう話をさせてもらったんですけど、ぼろまるさんから送られてきた曲を聴いた瞬間、「ええやん!」って。悩みを聞いてくれるカウンセラーみたいな存在ですね、ぼろまるさんは。

──メロディやサウンドに対しても要望を伝えたんですか?

緑仙:はい、拙いながらも。自分の好きな音楽の傾向、ポイントみたいなものがいくつかあって。箇条書きすると“ベースの音がデカい” “声ではじまる” “Bメロが印象的”みたいな感じなんですよ。あとは“9mmが好き”(笑)。最初はそれくらいだったんですけど、今は「この曲の〇分〇秒のブレース が好きなんです」くらいは伝えられるようになりました。

──9mm Parabellum Bullet、本当に好きなんですね。

緑仙:衝撃的だったんですよね。幼心に歌詞が刺さってしまって…。9mmさん、SEKAI NO OWARIさんは何を歌ってるかはっきりわかるじゃないですか。もちろんサウンドや演奏もカッコいいんだけど、子供の頃はやっぱり歌詞のフレーズが残る曲に惹かれていたので。

◆インタビュー【2】へ
この記事をポスト

この記事の関連情報