【インタビュー】眉村ちあき、アルバム『SAI』に宿る自信と変化「やっと“まっすぐ”の意味がわかった気がします」

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■ 良い音楽を歌えるんだったら、それでハッピー

── アレンジをお願いした曲に関しては、Numaさんが手掛けた「ナントカザウルス」と「未来の僕が手を振っている」もそうですね。「ナントカザウルス」は、ニッポン放送「ミューコミ VR」“眉村ちあき怪獣シンガー化計画”で作った曲でしたっけ?

眉村:はい。にっちゃん(METAMUSEの西井万理那)に「めっちゃいい曲じゃん。普通にいい曲なんだけど」って言ってもらえました。その感想、すごくいいなあって思いました。ほんとにお茶の間の意見過ぎて(笑)。




── (笑)。「未来の僕が手を振っている」は、駿台予備学校「DIVERSITY OF STUDY」受験生応援ソングですが、受験生に取材して作ったんですよね?

眉村:はい。100人のアンケートを読んで、3人にインタビューして、私の身体に受験生が降臨したんです。降臨し過ぎて書き直して、サビを客観的にして、受験生の背中を押してあげられるようにしました。

── 《僕ら傷ついてるのは 上だけ見てる証拠さ》って、いいフレーズです。

眉村:ね? 自分で歌いながら「ほんとそれな」って思います。《道を切り咲いて行ける》の《道を》のサビで上がるんじゃなくて下がりつつを経ての展開は、切り咲く感じをイメージしてメロディを作りました。あと、この曲の頃からDメロで冒険をするようになってきました。Dメロで全然違うメロディを作るのは「春一番」もそうですね。今まではラップとか間奏で済ませてたことをDメロでやる面白さに気づきました。

── 駿台の方々は、この曲をどのように受け止めていました?

眉村:喜んでくださっていました。駿台の専務が「お礼を言いたい」っておっしゃって、お会いした時にクッキーを頂きました。めっちゃ偉い人だから、たくさん人がいましたね。緊張感があったので、「笑ってはいけない」みたいな感じ過ぎて、心の中はニッコニコでした。


── 眉村さんは、笑っちゃいけない場で笑いをこらえるのが大変になるタイプですよね?

眉村:そうなんです。子供の頃は弟とお葬式でずっと笑っちゃってました。駄目ですねえ。

── 僕もお葬式で吹き出しそうになるので困っています。

眉村:そういえば……コロナ禍で友だちのお祓いに付き添ったことがあったんです。「今年、厄年なんだよね」っていうことで。その時に7人のお坊さんが出てきて、「ドラゴンボールズだ! うちのライブと一緒だ!」ってなって。お坊さんがみんなでコンコンコン!ってビートを刻んでお経をあげたんですけど、「生歌を久しぶりに聴いた! 早くライブしたい!」ってなって、ボロボロ泣いちゃいました。7人のドラゴンボールズと、生歌と、生ビートによって、ライブを久々に観た感覚になって、自分がお祓いを受けたわけじゃないのに、めっちゃ浄化されました(笑)。

── (笑)。お坊さんは人々を迷いや悩みから救うのがお仕事ですから、そういう役割も果たせたということですね。

眉村:たしかに! 友達の付き添いだった私のことまで浄化してくれて、本当に素敵でした。

── アルバムのお話に戻りましょう(笑)。TACOS BEATSさんとコラボレーションをした「浜で聴くチューン」も今作に収録されていますね。

眉村:はい。四谷HEART-MEN STUDIOというライブハウスで音響のスタッフさんだったのがTACOS BEATSさんなんです。私がソロ活動を始めたほやほやの時からお世話になってて、その頃から「きみはどんどん曲を作ってれば絶対に売れるから」って言ってくれてたんですよね。

── 最初期から認めてくれてたんですね。

眉村:そうなんです。TACOS BEATSさんの音響でライブをしていた頃なんて本当に右も左もわからなくて、他のスタッフさんに怒られたりしてたんですけど、「気にしなくていいよ。もっと暴れていいから」ってずっと言ってくれて、支えになってました。

── 去年は堂島孝平さんやザ・リーサルウェポンズともコラボをしましたが、他のクリエイターが作ったトラックで歌うことも楽しめるようになっていますよね?

眉村:はい。良い音楽を歌えるんだったら、それでハッピーっていう感じです。



── 眉村さんが100%手掛けた曲も、何とも言えないかっこよさの塊です。「ピカレスクヒーロー」「Natto」「十二支のアマゾン」、大好きです。

眉村:わーい! 

── 「ピカレスクヒーロー」は、ビートのノリ、ラップがものすごくかっこいいです。

眉村:インスタライブをしながら、「曲、つーくろっかなあ~」って作ってたビートだったんですけど、まさかこんな成長をするとは思ってなかったです。ラップのところはラップラップせずに、“訛ってる早口の女”みたいな感じで録りました。

── 効果音の入れ方も素敵です。

眉村:効果音を取り入れたのは、ぜったくんの影響です。ぜったくんをラジオのゲストにお迎えした時に、いろいろな曲を聴いて、「めっちゃ、サンプリングが上手いな」と思ったんですよ。効果音は情景が浮かんでくるのが面白いって気づいて、早速取り入れさせてもらいました。

── 「Natto」のラップもかっこいいですね。

眉村:「音数少ない曲もつーくろっと!」って思って作りました。このアルバムの曲がわりと揃った段階の最後の滑り込みで入れたんですけど、全体のバランス的にこういう音数が少ないダークな感じか、カントリーな曲のどっちかを入れたくて、「Natto」が先にできたんです。なんで作り始めたのかは覚えてないです。ずっと昔からビートの種はできてたんですけど、「なんでこれ作ったんだっけ?」っていう感じです。

── 納豆をこんなにかっこよく歌えるのって、いいですね。

眉村:ね? そういえば、私が19歳くらいの時にシェアハウスに住んでて、東大に通ってる留学生の女の子に納豆を教えたんです。「ディス・イズ・ナロ」「ナロ? アッハハ!」って。ずっとふたりで「ハイ! ナロ!」みたいな挨拶をしてて。この曲、多分そこからです。



── 「十二支のアマゾン」も斬新ですね。歌詞の十二支の動物の盛り込み方も面白いです。

眉村:十二支の動物たちの生態を調べて、ネズミから順番に歌ってるんですけど、意外とイノシシが寂しがり屋というか、臆病なことを知りました。

── 展開がものすごくて、歌のスタイルも多彩ですね。

眉村:そうなんですよ。十二展開を作るって決めてたんですけど、繋ぎ目のテンポやコードを変えちゃうと全然違う曲に切り替わりまくり過ぎちゃって、トレーラーを聴いてるみたいな気がしてきちゃうから、1曲として聞こえる綺麗な繋ぎ目にするように頑張りました。最後のコードが最初と一緒なので、またネズミに戻れるようにもなってます。これ、12分解してNFTとして売るんですよ。「ネズミパート」「牛パート」みたいにして絵も添えて、「音付きの絵」みたいな感じで。絵をNFTで売る人はいるけど、音を付けるのは面白いんじゃないかなと思ってます。

── サウンド面で遊びつつ、自然でキャッチーに聴けるものに仕上げるのって、ものすごく難しいんです。それができてしまう眉村さんは、アレンジ力も非常に高い人です。

眉村:そうなんです(笑)。「気持ちいい!」って感じる音だけを考えてるからなのかなと思うんですけど、既存の曲をアレンジするのも超得意ですからね。アレンジのアイディアはいっぱい出るんですけど、「このギターソロを思い通りに弾けるか?」とかがあるから、そういう時に音楽隊を降臨させます。こういうことができる今って恵まれてますね。

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