【俺の楽器・私の愛機】1300「愛以上」

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【Gibson Les Paul Standard '50s】(奈良県 Fatboy 33歳)


彼女との出会いは昨年の6月。

この少し前にギブソン・レスポール・スタンダードの60sモデルを購入していたのだが、どうも相性が合わず、直ぐに手放してしまった。しかしどうしてもレスポールへの気持ちを捨て切れず、いつもの楽器店のオーナーに50sモデルのレスポールを注文した。

ギターを始めた中学生時代、ギブソンのレスポールは私の憧れであり、夢そのものだった。しかし、いい大人になった今に至るまで何故かギブソンは愚か、レスポールモデルのギターにさえも全くと言って良いほど縁が無く、やっとの思いで買った60sにも振られてしまうという始末。

絵に描いたような庶民の私にとってギターは決して安い買い物ではない。注文したは良いが、また振られてしまうのではないだろうか?楽しみと不安、そしてある種の諦めの混じった心持ちの中、楽器店からの連絡を待った。

そしてその日が来た。連絡を受け、私は大急ぎでいつもの楽器店へ向かった。

「届きましたよ。」店主は笑顔で私を迎えてくれた。

目の前には「Gibson」の名を冠したギターケース。幾度と無く目の当たりにし、憧れ、諦め、失望してきたギターケース。私は何とも言えない気持ちでケースを開けた。

私は恋に落ちた。

まだ購入はおろか、触れてさえいないのに確かに感じる所有感。レスポールなんて何度も何度も目にしてきたし、試奏もした。何なら自分の物にまでしたこともあるというのに、こんな気持ちは初めてだった。

「よく頑張ったね。待ってたよ。」そんな声が聞こえた気がした。

私はすぐにお金を支払い、彼女を家に連れて帰った。自宅に到着すると、私は少し不安になった。何せ、試奏どころかギターケースから出す事も無く買ってきてしまった物だ。

楽器にとって音は最重要事項だ。たかだか一目惚れの衝動買い。これでは以前の60sと全く一緒ではないか。肝心な音を聴かずに楽器店に30万円を放り投げて来た自分の馬鹿さ加減に溜息が出る。

私は楽器店以来、ギターケースを恐る恐る開けた。やはり美しい。

派手さは無いが清楚さを感じる杢目。少年時代から恋焦がれてきたチェリーサンバースト。最近では珍しくなった漆黒のローズウッド指板。燦然と輝く「Gibson」のロゴ。そしてギブソンギターのみから感じられる独特の香り。

私はこのギターに「ローズ」という名を付けた。不安は完全に忘れ去られ、私はしばらくローズの美しさに魅入っていた。

だが見ているだけでは仕方ない。ギターは音があってこそなのだ。私はローズにシールドを接続し、アンプのスイッチを入れた。

使用しているアンプはMarshall CODE。実際に所有している人は分かるだろうがこのアンプ、音が出るまでに少し時間が掛かる。この数秒の間、私はまたとても緊張していた。

アンプの設定はハイゲインチャンネル。スピーカーから「ジーッ」という演奏OKのサインの音が出た。恐る恐るEコードを弾いてみると、目の前にスタジアムが広がった。

憧れて憧れて、何度も何度も夢に見た光景だ。大好きだったスラッシュ、ザック、ギターを始めるきっかけとなった松本孝弘。みんな手元にGibson Les Paul。今俺はあの人達と同じ音を出している!

同時に私は初めてギターに触れたことを思い出していた。この至福、この多幸感。もう感じることは無いんだと思っていたのに。

今では恋も愛に変わり、ローズを抱く度に愛は増し、愛以上の存在になっている。余暇の時間は常に私の側にいる。

そんなローズにぴったりの曲がある。私の大好きな歌だ。皆様も愛機を手元に、この曲を聴いてみてほしい。

Guns N' Roses
SWEET CHILD O' MINE





   ◆   ◆   ◆

熱い。甘い。濃い。楽器への恋心と成就したときの興奮や喜びが、そのまま艶めかしく渦巻いております。多かれ少なかれみんな味わってきたこの思い、ここの住人は全員遠い目をしていることでしょう。ということで、締めの音楽は、「Welcome To The Jungle」といきましょう。(JMN統括編集長 烏丸)


★皆さんの楽器を紹介させてください

「俺の楽器・私の愛機」コーナーでは、皆さんご自慢の楽器を募集しています。BARKS楽器人編集部までガンガンお寄せください。編集部のコメントとともにご紹介させていただきますので、以下の要素をお待ちしております。

(1)投稿タイトル
 (例)必死にバイトしてやっと買った憧れのジャガー
 (例)絵を書いたら世界一かわいくなったカリンバ
(2)楽器名(ブランド・モデル名)
 (例)トラヴィス・ビーン TB-1000
 (例)自作タンバリン 手作り3号
(3)お名前 所在 年齢
 (例)練習嫌いさん 静岡県 21歳
 (例)山田太郎さん 北区赤羽市 X歳
(4)説明・自慢トーク
 ※文章量問いません。エピソード/こだわり/自慢ポイントなど、何でも構いません。パッションあふれる投稿をお待ちしております。
(5)写真
 ※最大5枚まで

●応募フォーム:https://forms.gle/KaYtg18TbwtqysmR7

「楽器人の投稿がmusic UP'sに掲載されます」

全国約1,000カ所の音楽関連スポットで、毎月20日に配布されるフリーマガジン「music UP's」にて、楽器人の特集を掲載、【俺の楽器・私の愛機】で紹介された投稿の中からあなたの愛機をご紹介させていただきます。

※毎月の掲載数は2~4件ほどの予定です。選出はBARKS編集部で行ないます。
※掲載の選出対象は【俺の楽器・私の愛機】コーナーにて2022年5月30日以降に掲載された投稿が対象となります。

引き続き【俺の楽器・私の愛機】をお楽しみください。今後ともBARKS楽器人をよろしくお願いいたします。

◆【俺の楽器・私の愛機】まとめページ
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