【インタビュー】Amber's、『勝利の法廷式』主題歌「オセロ」にデュオとしての自信とメッセージ「自分が納得できる人生を選べるように」

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■ ストリングスに美しく泥を塗るようなイメージ

──「オセロ」はドラマ『勝利の法廷式』の主題歌。こちらは書き下ろしだそうですね。

こうき:もともと僕はいろんな作品とコラボレーションするような、書き下ろしをたくさんやっていきたいタイプなんです。その作品に触れて、“自分はこの作品のどの立ち位置に当てはまるんだろう?”と探すのが楽しいんですよね。ひとりで曲作りしてたら絶対に出てこなかったもの、作品に引っ張り出してもらえたと感じられるものが生まれることこそ、コラボレーションの醍醐味だと思うんです。Amber’sが伝えたいこと、豊島こうきが思っていること、その作品のメッセージをどうブレンドしていいものにしていくかを考えていくのがすごく難しいし、何より面白くて。

©ytv

拓人:僕らはもともと勝手にテーマを作って曲を作ることも多かったので、実際にタイアップ曲の書き下ろしのお話をいただくのは、今までの練習の成果を見せるような感覚というか、純粋に好きでやってきたことを正式にやらせていただける喜びがあります。自分たちなりに作品をより良く、色鮮やかにできるような楽曲を届けたいですし、それは普段の自分たちだけでリリースする楽曲とは、またちょっと違った感覚なんです。わくわくしながら試行錯誤してます。今回主題歌を書き下ろした『勝利の法廷式』は一筋縄ではいかない話の展開で、幅広い年齢層の人が楽しめるドラマだなと台本を頂いたときに感じて。

こうき:僕はドラマを結構観るタイプなので、最初の15分くらいで“この話はきっとこういうラストを迎えるんだろうな”と考えたりするんです。でも『勝利の法廷式』はその想像を裏切ってくるし、どういう着地を迎えるのか想像できない。そこがすごく面白いんですよね。



──『勝利の法廷式』に対して、“ひっくり返す”という意味合いを持つ“オセロ”というタイトルがぴったりですし、楽曲の中でオセロの要素がいろんな角度から作用しているのもギミックが効いていますよね。「オセロ」には“白黒を決めつけるのではなく、自分が納得できる信念を探し求める”というメッセージが込められているとのことですが。

こうき:『勝利の法廷式』の台本を読んでまず感じたのが、登場人物たちが“仕方なくその選択をしている”人が多いなということで。

──そうですね。不本意ながらも大事な人を守りたいがために状況に飲まれてしまったり、傷つきたくなくて嘘をついてしまったり。

こうき:はい。でも話の最後には、自分の意志で自分の人生を選んだり、自分から真実を打ち明けていったり、自分の気持ちを赤裸々にするという選択をしているなと感じたんです。自分もそうありたいし、聴いてくれた人にも自分で考えて自分の納得できる人生を選べるように導いていけるような曲を書きたいなと思ったんですよね。

──それが公式コメントにあるような“正しさとは何なのか最近よく考える”というマインドにつながったということですか?

こうき:そうです。SNSやTVのニュースを眺めていると、“正しさとは?”とよく考えるんですよね。バカげたことをして人に迷惑をかけることも罪を犯すことも確かに良くないけど、その人たちについてSNSで“くそダセえ”とか“こいつ馬鹿じゃね?”と汚い言葉で晒し上げるのは正解なのか?と思ったんです。でもそう思っている自分も“そんなこと言うの良くないよ”とツイートしたりはしないし、それも良い行いとは言えないし。それで“正しいことってなんなんだろう”と考えるようになって、“自分で考えること”が現代社会では最も大事なことなんじゃないかという結論に至ったんです。そういう自分の思いと、ドラマの世界をリンクさせたいなというところから制作がスタートしました。でも制作は難航しましたね……(苦笑)。

拓人:こうきくんの書きたいテーマははっきりしていたんですけど、それを歌詞に落とし込むまでにすごく悩んでいたんです。いろんな試行錯誤をしているのを横で見ていました。

こうき:制作期間が「buddy」のリリースイベントのタイミングと重なって。いつもは家の近くを散歩して思い浮かんだ言葉を歌詞にしていくんですけど、リリースイベントで行った名古屋、大阪、福岡を歩き回って……冗談抜きに100km以上歩いたと思います(笑)。それでも自分にしっくりくる、納得できるものが浮かんでこなかったんです。それでいいタイトルないかなあ……と考えているなかで、おばあちゃんの部屋に行ったんですよ。

──お祖母様というと、こうきさんの音楽ルーツのキーマンですよね。

こうき:おばあちゃんの影響でフォークや昭和の歌謡曲を聴き始めたくらいのおばあちゃん子ですね。おばあちゃんの部屋をぼーっと見渡してて、なにげなく引き出しを開いたらオセロが出てきたんです。おばあちゃんとそのオセロでよく遊んでたな、おばあちゃんと一緒にオセロをやっていた頃の自分ってどんな人間だったかな……?と物思いに耽っていくうちに、今まで思い浮かばなかったことがスルスルと出てきて、自分の書きたいテーマとばっちりハマったんです。これだ!と思って、すぐに拓人に「オセロ」というタイトルを送って。そこから一気に歌詞を書いていきました。

拓人:「オセロ」というタイトルが来たときに、“白と黒”の要素も“ひっくり返す”という逆転の要素もばっちりハマった、すごくいい言葉を見つけてきたな!と思ったんです。僕は、Dメロの《たとえこちらが世界の隅でも/オセロだったらベストな居場所》はこの曲でいちばん好きな歌詞で。“端っこだけど逆転できるよ、大丈夫だよ”というメッセージはこうきくんらしいなって。

──こうきさんは今までもずっと、そういう反骨精神を歌詞にしていますものね。

こうき:今までもずっと、そうやって生きてきましたね。世界の中心にいる人がかっこいいなとは思わなかったので……って、ひねくれてるのかな(笑)。

──先ほど話してくださった“自分で考えて選択をしていくことが大事”という思考からも、我が道を行くことに美学を感じてらっしゃるのではないかと思いました。2番のAメロの《流行りものに縋り付いて/生きていくなんてさ/誰にもできるね そんなのつまりね/器用でも鬼才でもない》という歌詞も、そういうメンタリティが表れていると感じます。

こうき:僕みたいに世界の隅っこに追いやられているように感じている人は、自分なりの道を進んでいるという感覚を持てていないかもしれないけど、そういう人たちに“隅っこでもいいじゃん。隅っこからでもできることはあるよ”って言いたかったんですよね。流行りを取り入れたものもそれはそれでいいけれど、自分たちが目指す音楽はそうじゃない。「オセロ」に限らず、Amber’sはそういうことを歌っていく存在でありたいんです。



──アレンジも“オセロ”という言葉にリンクして、“綺麗”と“汚い”が融合した人生のようなサウンドを目指したそうですね。

拓人:「オセロ」というタイトルを先にもらって、音でも“裏と表”のような対極のものを表現したいなと思ったんですよね。僕にとって、美しい音の代表はストリングスで、ギターは汚さのなかにある美しさを持っている楽器なんです。だからストリングスに美しく泥を塗るようなイメージで音を足していくというチャレンジでした。子どもが綺麗な壁に絵を描くようなわくわく感のなかでの制作でしたね。

こうき:……拓人はこう言ってますけど、実は最初はもっとギターがたくさん入ってたんですよ(笑)。それを“ちょっと遊びすぎだよね”ということで削っていました(笑)。

──ははは。ストリングスも迫力があります。

拓人:今回念願叶って、初めて生のストリングス隊の皆さんに入っていただいたんです。ずっと自分たちの音源に入れたかった音を入れられた感動だけでなく、表現の広がりも感じていて。メジャーデビューさせていただいたからこそできたことなので、本当にありがたいです。古き良きJ-POPの中に新しさ、自分たちらしさを表現できました。

こうき:やっぱり生のストリングスは違いますね。歌入れのときに音源を初めて聴いて、拓人が打ち込みで作ったストリングスとは全然違う! 奥行きがすごい! と思わず聴き入っちゃいました。

拓人:打ち込みで出来る限りいい音を追求してきたけど、やっぱり生には敵わないね(笑)。

こうき:僕らがこの贅沢な音に慣れてしまうとチームの皆さんも大変になりますね(笑)。今回の「オセロ」の制作で、こういう制作が続けられるように頑張ろうという新たな目標もできたし、サウンド面でもすごくいい経験をさせていただけました。

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