【ライブレポート】Omoinotake、ブラス隊を交えた記念すべきワンマン<SUEHIROGARI>で「これからも突っ走っていく」
藤井怜央/レオ(Vo&Key)、福島智朗/エモアキ(Ba)、冨田洋之進/ドラゲ(Dr)からなるピアノトリオ、Omoinotakeが4月28日に東京Zepp DiverCity(TOKYO)でワンマン公演<Omoinotake SPECIAL LIVE 2023“SUEHIROGARI”>を開催した。大阪(3月21日@なんばHatch)と東京の2公演行われたこの<SUEHIROGARI>は、ブラス隊を交えた8人編成によるライヴ。ぬましょう(Per)と柳橋玲奈(Sax)も加わり、通常のライヴにも増してよりゴージャスで分厚いサウンドでOmoinotakeのエモーショナルな世界を色付けていくステージだ。
東京公演の4月28日はバンドが11周年を迎えた結成日にあたり、メモリアルなライヴをたくさんの人と分かち合えるようにと、急遽一部がYouTubeで生配信された。コロナ禍でのメジャーデビュー(2021年)でライヴ活動もままならない中、バンドの原点となったストリートライヴの経験を生かし、「#NoBuskNoLife」と題して様々な無観客のオンライン・ストリートライヴツアーを行ない、昨年の結成日はストリートライヴを行なっていた渋谷から無観客のオンライン・ストリートライヴを生配信したOmoinotake。今回はZepp DiverCityのフロアを埋めるたくさんの人、さらには画面の向こうの人と一緒に迎える結成日、しかも声出しもOKのため一緒に歌うこともできる一夜となった。そうして会場が一体となった分厚いアンサンブルからは、メンバーの喜びや鼓動も漏れ聞こえてくる高揚感と祝祭感で満ちたライヴであった。
真紅のクラシカルなカーテンと、ファンキーなデザインの<SUEHIROGARI>のロゴが映えるステージにまず登場したのは、パーカッション、サックス、トランペット、トロンボーンのプレイヤーたち。グルーヴィなセッションがスタートし、観客の拍手がアッパーな手拍子に変わっていく中、レオ、エモアキ、ドラゲが位置につきセッションからなめらかに「EVERBLUE」へとなだれ込んでいく。焦燥や葛藤も飲み込んだエネルギーが全身を駆け巡っていくスピード感や躍動が、そのまま音楽になったメジャーデビュー曲「EVERBLUE」。8人編成でボリューム感が増したアンサンブルが曲の持つ爆発力を大きくし、晴れやかにはじまりの狼煙をあげると、続く「So Far So Good」はバウンシーなビートと舞い上がるメロディで、心地よいドライブへと観客を連れ立っていく。
最初のMCでレオは、「結成した頃は、11年経ってこんなにたくさんの人の前でライブをする未来は想像もしていなかった」と語り3人でしみじみとしながらも、「全身でいろんな音を浴びて帰ってほしい」と、続いては「産声」、そして「心音」の2曲を連投。ドラマ版、映画版もヒットした『チェリまほ』の主題歌として、作品の盛り上がりの一翼となった曲は、ライブでも威力を発揮する。レオのファルセットが伸びやかに響きわたると、前半にしてクライマックス感たっぷりで、会場が歓喜で満ちていく。エモアキはフロアを眺めながら「路上ライヴ時代から来てくれている人もいる。長いこと来てくれて、ありがとうございます」と言い、ドラゲは「嬉しいという感情がマックス」だと言った。その鼓動が乗った弾むような演奏は心地よく、明るい。
中盤では、バンドとぬましょうの4人編成で、華やかさとはまた違った面も見せる。ダークかつ寒色のライティングの中でスタートしたのは、コロナ禍のステイホーム真っ只中にフルリモートで制作され、世の中が孤独感や徒労感で息が詰まっていくリアルを描いた「One Day」。ペシミスティックな空気が広がっていく当時のムードを捉えながらも、思いの灯火、音楽の灯火を消さぬようにという願いが強い光となったこの曲は、あのつらい時期を越えたいまもなお、日々のエンジンとなる力を放っている。ミニマムなサウンドだが、強い衝動から生まれた音楽のタフさ、普遍性を物語る1曲だろう。また、憂いを帯びたピアノとボーカルではじまる「彼方」では、「踊りましょう、東京!」(レオ)の一声で上昇感のあるアンサンブルが高鳴る。エレクトロな音響がクールなダンス&シンガロングチューン「By My Side」では、「今日はみんなで歌える」とレオが合図して観客の手拍子と歌声をクレッシェンドしていく。そして「空蝉」からはサックスの柳橋玲奈を加えた、ここ数年のパーマネントな5人編成スタイルで、Omoinotakeの詩情的な部分を丹念に描いた。淡々とした歌の背景で、リバーブ感のあるドラムとシンセ音、サックスのソロが切なさや揺れ動く心情を饒舌に浮かび上がらせていく「雨と喪失」。「モラトリアム」は、ピンスポットの下でピアノの伴奏と歌でスタート。抑えたボーカルとピアノのタッチに観客は耳を澄まし、会場にブレス音も響く静かな時が訪れた。ベース、ドラムはそこにずっしりとした重力を加えていく。どっぷりとその音に、音楽の世界に耽溺する瞬間だ。
YouTubeでの生配信もスタートした後半は、再び8人編成でのステージとなった。前半で披露した曲は、原曲にもホーンアレンジが加わった曲たちだったが、後半から演奏する曲はこの<SUEHIROGARI>のために新たなホーンアレンジを施したスペシャルバージョン。ド頭からメロウなホーンのアレンジが加わった「Blanco」はよりドラマティックに、「惑星」はよりシンフォニックに、曲の世界を広げていく。ステージの上下に据えたミラーボールから放たれる眩しい光がフロアにさす「惑星」での演出も美しい。エモアキはリハーサルでこの8人で合わせた時にラスサビのアレンジが素晴らしく、感動のあまりアウトロのベースに入り忘れてしまったそうなのだが、この日の「惑星」でも同じような現象が起きたと笑顔交じりに語る。ファンもまた同様だろう。ライヴの定番であり長く馴染みのある曲に、ホーンのアレンジで新たな風が吹いて、曲を鮮やかに色付ける。やっぱりいい曲だなと再確認し、甘美な余韻を味わう。
そんな感動に浸る気持ちをぐっと引っ張り上げるように、ラストはダンサブルなナンバーで踊らせていく。まずは、メロウでソウルフルな「Stand Alone」のグルーヴでゆらりと体を揺らし、そこから一転、テンポをあげた「トロイメライ」ではレオが鍵盤の前を離れ、マイクを持ってステージを歩き歌う。軽やかなメロディラインとエフェクティヴなボーカルがポップで、アグレッシヴなドラゲとぬましょうが生み出すビートに、エモアキのダイナミックなベースが絡まって、それぞれの音がカラフルにぶつかっていく。ダンスしたり、ジャンプをしたり、大きく手を振ったりと温度を上げていくフロアに、「歌いましょう!」(レオ)と声をあげてラストに据えた曲は「Never Let You Go」。刻々とライブが終わりに近づいていることと別れを惜しむフレーズがピタリと合って、盛り上がりながらもどこか切ない寂しさも混じり合ったフロアから、大きな声と、フィルに合わせた手拍子が巻き起こる。パーカッションやホーンのソロをつなげながら、1秒でも2秒でも長く共に過ごす時間を味わいたいという3人の気持ちも感じる「Never Let You Go」。ラストのレオの力強いロングトーンが響くと、この日いちばんの大きな拍手や歓声が起きて、会場は多幸感で包まれた。
アンコールでは、3月にリリースした3人の出身地であるNHK松江放送局 開局90周年記念テーマソング「オーダーメイド」を3人のみで演奏。また、9月からは全国5都市を回る初のZEPP TOURを開催し、ツアーファイナルを地元・島根県で締めくくるバンド史上最大規模のツアーが決定したこと、そしてメジャー初となる待望のフルアルバムをリリースすることがアナウンスされた。「こういう発表を<SUEHIROGARI>でできるのが嬉しい」とレオ。今回は8人編成という新しいスタイルでのライヴとなったが、次のZEPP TOURは新曲もたくさん加わった新たなセットリストとなっていると思うので期待したい。「これからも突っ走っていくのでよろしく」(レオ)とラストは再び全員を呼び込んで、この曲がなければ終われないとばかりに「トニカ」でシンガロングを巻き起こして、Omoinotake11周年を迎えた、記念すべき<SUEHIROGARI>を締めくくった。
文:吉羽さおり
撮影:Daikichi Motouchi
◆ ◆ ◆
<Omoinotake ONE MAN TOUR 2023(仮)>
9月23日(土)大阪・Zepp Osaka Bayside 開場/開演:16:00/17:00
9月30日(土)福岡・Zepp Fukuoka 開場/開演:16:00/17:00
10月6日(金)東京・Zepp DiverCity(TOKYO) 開場/開演:18:00/19:00
10月14日(土)北海道・Zepp Sapporo 開場/開演:16:00/17:00
10月28日(土)島根・松江テルサホール 開場/開演:16:00/17:00
【券種・チケット料金】
全席指定(一般) 5,500円(税込/ドリンク代別)
全席指定(学割) 4,500円(税込/ドリンク代別)※オフィシャル先行のみ取扱い
※3歳以上有料
※学割チケットをご購入の方は、入場時に学生証を確認致します。
(特に高校生、大学生、専門学生の方は、学生証を忘れた場合は、一般料金との差額をいただく場合がございます。予めご了承ください。)
※お一人様1公演につき4枚まで申込み可
※松江公演のみドリンク代徴収なし
◇チケット先行
●オフィシャル1次先行
2023年5月2日(火)21:00~ 5月16日(火)23:59
URL:https://w.pia.jp/t/omoinotake23/
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