【インタビュー】グラビティ、「今までやってきたことを肯定しながら深みを出していきたい」

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■ウチはちゃんと“売れたい”っていう意志がある

──お話を聞くと、非常にしっかりした意識でバンドをされていて、メッセージ性も深いのに、やはりポップでカラフルなイメージが強いとヴィジュアル系においては……。

六:薄っぺらく聞こえる、みたいな?

──そうですね。この界隈特有の偏見だと思うのですが、ヘヴィだったりダークなバンドの方が、真面目にバンドをやっている印象が強いのは否めないかと。

六:それは僕自身も感じます。ただ、単純にカッコいいことをやっても、カッコいいバンドってたくさんいるから、埋もれちゃうと思ったんですよ。特に僕らって社長以外は、グラビティが初めてのバンドなんですね。

──つまり、もともとの知名度や、ついてくれているお客さんがゼロだった?

六:はい。そんな中で、どうやって頭一つ飛び抜けようか?と考えたときに、他のバンドがやっていないようなポップで可愛いイメージの方が、人の頭に残りやすいなと判断したんです。それが功を奏して、グラビティというバンド名を、ヴィジュアル系好きな子だったらなんとなく耳にしたことはあるくらいに広めることはできたんですけど……まぁ、そこからのイメージ払拭が一番難しいんですよね。たぶん3年くらいはかかるんじゃないかな。

──まさに「ORIGINATEに帰す」は、その払拭を進めるためのものなんでしょうね。

六:そうですね。だから今はパブリックイメージの“薄さ”と、ライブを観たり曲を真剣に聴いたときの“深さ”で、ギャップがあると思うんです。そのギャップを埋めていくのは大事だけれど、今までやってきたことを肯定しながら深みを出していきたいので、そこは悩みどころですね。そもそもアイドル寄りな曲だって、別に嫌いじゃないんですよ。ただ、バンドの未来を考えていくと、その曲たちだけでやっていくのは、自分らがやりたいバンド像と食い違ってきちゃうなぁって。

──ちなみにYouTubeでバラエティ動画を頻繁に公開したりしているのも、さっきおっしゃった“頭一つ飛び抜ける”ための手段の一つなんでしょうか?

六:そうですね。とにかく目立ちたかったんです。新しいことに飛びつけるのは強みでもあるし、最近ではいわゆる大御所の方もTikTok始めたりされてるじゃないですか。




──そこに潔く飛び込める皆さんは幸運な世代かもしれませんね。少し上の世代になると、憧れのバンドはSNSの無い時代にカリスマ性で売れているから自分もそうでありたいという気持ちと、でも、今の時代SNS無しには広がっていかないという現実との狭間で苦しんでいる人も多いですから。

myu:結局は“売れたいか、売れたくないか”じゃないですか。別にプライド持って何もやらずに沈んでいくんなら、それはそれでいいだろうし、ロックバンドだと40代の人たちでもTikTokガンガンやってるし。ただ、そうやって何もしない人ほど「いやぁ、今の時代は……」とかって、居酒屋でゴチャゴチャ言ってるイメージですよね。ウチはちゃんと“売れたい”っていう意志があるんで、できるだけ流行りのものには飛びついていくスタンスなだけです。

リクト:業界的に規模縮小しているのも、ヴィジュアル系が閉鎖的だからじゃないですか。若者が求めるものをやっていないから、若者が入りづらい。このままだと、本当にヴィジュアル系って終わるなと思うんで、やれることはやったほうがいいというのはありますよね。

──そういった想いを踏まえて聴くと、この曲の歌詞に対する解像度もグッと上がりますね。しかし2017年に始動して、もう6年になりますが、初めてのバンドがこんなに長く続くって、かなり珍しいですよ。

六:そこに関してはいろんな要因があって、まずは友達みたいな関係だというのもそうだし、実際myuは高校からの付き合いなんですね。あと、僕らって社長以外はローディーをやっていたので、いろんな話を先輩たちから教わったり、カメラマンさんとかメイクさんとかっていう横の繋がりも得られたんです。だから他の人よりはバンドを進めやすかったんだろうし、最初から“売れるバンド”にしたくて戦略的に始めていたので、最初のMVも絶対にお金をかけて“観れる”MVにしようって決めていたんですよ。高校生のときに“こんな安っぽいMV、誰が観る!?”って思うこともあったから、そういうバンドは絶対やりたくなかった。その結果の長続きでもあるし、まぁ、他にもいろんな要因がありますね。性格バラバラだけどメンバーのバランスが良かったり、みんながボーカルに優しくしてくれたり(笑)。

──楽器隊からすると、やっぱりボーカリストは尊重しているんですか?

リクト:俺ら、メチャメチャ優しいですよ! もう、全員が六という人間を理解してるんで、何をしても許容範囲!みたいな。例えば、遅刻してもあんまり怒らない。

myu:社長には申し訳ないですけど、六に「お前、ドラマーだったら絶対殺す」って言ったことありますもん。ボーカルだからギリ許すけど、って(笑)。

社長:でも、最近は六のほうが、いろいろ気を遣ってくれたりもするんですよね。長く一緒にやっていく中で、やっぱり全員変わっていってるんじゃないかな。

──お互いに尊重し合っているということですね。ちなみにカップリングの「PARADISE」と「死にたくなってたあんな夜に」はmyuさん作曲ですが、それぞれどんなテーマで作られたんでしょう?

myu:ウチって同期がバキバキ入ってる曲が多いんで、逆に同期が全く無い曲が欲しかったのと。さらに、ギターロックみたいな曲があったら、ライブでもスパイスになるんじゃないかということで作ったのが「死にたくなってたあんな夜に」ですね。

杏:こういう王道でカッコいい曲、すごく好きなんですよ。でも、曲に入り込めはしない。俺、死にたくなったことがないんで(笑)。



──じゃあ、歌詞を書いた六さんは死にたくなったことがある?

六:というより、そういう人たちがファンに多いんで、生きていたいと望む“続き”を作っちゃってゴメンね、って歌です。例えば、僕自身は辛いとき、アニメとか映画とかバンドのライブとかに対する楽しみが、自分を支えてくれていたんですね。よく“死んで楽になる”っていう言葉がありますけど、本当に楽になれるのかなんて、死んだあとに戻ってきた人でもいない限りわからないじゃないですか。やっぱり生きている限りは楽しみたいし、ファンにも楽しんでほしいし。強要するつもりはないけど、生きていてほしい。だから“死にたい”という考えを覆すほどの続きを作っていきたい──つまり、バンドが楽しみすぎて死ねない!って思わせたいんですよね。

──なるほど! では、「PARADISE」の方は?

myu:これは、とあるロックバンドのライブを観に行ったときに着想を得た曲で。ヴィジュアル系以外のバンドって、特に振り付けなんか無くても、お客さんが手をあげて勝手にノッてるじゃないですか。ああいう“普通にカッコいい曲”って、逆にヴィジュアル系では新しいんじゃないかと思ったんですね。なので、サビ以外ではヘドバンできる箇所もあったりしますけど、サビは縦ノリができる感じで作りました。

リクト:メンバーもファンもコーラスする箇所が多いんで、本当にライブ向けの曲だし、グラビティの一体感を作るのに良い役割をしてくれていますね。

社長:あんまり僕ってコーラスしないのが、唯一全員でコーラスする場面もあったりして。熱くなれるし、すごく好きな曲です。

六:歌詞に関しては、myuから“超える”っていうのをテーマにした曲にしてほしいって言われたんですよ。“超える”って何だよ!?と思いつつ、でも、MCで「前のライブを超えていこう!」とかって言ってる自分は想像ついたんですよ。で、自分にとって“超える”って何だろう?と考えたときに、初めて挑戦するものをクリアできたときの喜びみたいなものが一番しっくりきたんです。例えば、ライブハウスって最初はちょっと行くのが怖いじゃないですか。でも、それを乗り超えて慣れたら楽しくなっていく。つまり“PARADISE(=パラダイス)”になるんだということで書いていきました。



──ああ、わかります。ライブハウスって一見アウトローなイメージがありますもんね。

六:世間でもパイオニア的な人って、初めはちょっと変な人に見られがちじゃないですか。でも、貫いて第一人者になれば独占市場なわけで、それで“始まりは stranger”っていう歌詞も入れてるんですよね。ヴィジュアル系が好きな人だって、世間から見れば、ある意味“変な人”だし(笑)。

社長:今回のシングルは個人的に好きな曲ばっかりなんで、どれ聴いてもらっても絶対楽しめるんじゃないかなって思います。

──そんな楽曲たちが聴ける6周年ツアーが現在開催中で、9月25日にはZepp Hanedaでファイナルが行われますが、チケットが前売り5000円、当日0円というのは……?

六:タダってことです! タダだと友達も誘いやすいし、学生にも優しいし、観てもらえるチャンスも増えるじゃないですか。もちろん有料の前売りだと早く入れるとか、何かしらの特典もありますけど、僕らは別の部分で収益を出してるんで、そこはタダにできるんです。

──ライブ以外で収益を出しているから、ライブは好きなように自由にできるということですね。

六:ただ、最近考えが変わりつつもあって、ちゃんとチケット代を取ったほうが価値を見出してもらえるのかな?っていう気持ちもあるんです。だから、これは記事にしていいのかわかんないですけど……上手くイメージを変えていきたいんですよね。お洋服に例えると、世間的なイメージが今しまむらだとしたら、ZARAには行きたい。ゆくゆくはハイブラに行きたいよねって。でも、今回は純粋に“観てもらいたい”という気持ちからの0円です。

社長:とにかく、いろんな人に知ってもらいたいという気持ちで動いてはいますね。前回、4月にZepp DiverCityでやったときも大道具が入ったんで、今回も確実に仕掛けはあるんじゃないかと思いますよ。

六:そのへんの演出はmyuが……。

myu:いやいや、みんなの意見をまとめて、大道具さんに話す係なだけ! まずはライブのタイトルを六が付けてからじゃないとイメージが膨らまないので、まだ何も決まってないですね。動きだすのは公演3ヶ月前くらいじゃないかな。

リクト:当日券が0円だとしても、もちろんお金を払う価値が見出せるものにならなくてはいけないじゃないですか。元々グラビティが持っているポップさもありつつ、ちゃんとカッコいいバンドであるということを伝えられるステージにしていきたいと個人的には考えているので、いろんな先輩たちのバンドを観に行って吸収していきたいです。

杏:ツアーを続ける中で感じることもたくさんあるだろうし、その都度みんなで話し合って。このままカッコいいステージをやるだけだと思いますね。

取材・文◎清水素子

12th SINGLE「ORIGINATE」

2023年3月28日(火)発売
2TYPE同時発売

・GRA-025 A-TYPE
¥1,500(tax in)

収録曲
1.ORIGINATEに帰す
2.死にたくなってたあんな夜に
3.ORIGINATEに帰す(instrumental)
4.死にたくなってたあんな夜に(instrumental)

・GRA-026 B-TYPE
¥1,500(tax in)

収録曲
1.ORIGINATEに帰す
2.PARADISE
3.ORIGINATEに帰す(instrumental)
4.PARADISE(instrumental)


<グラビティ ONEMAN TOUR FINAL 「電撃スクリーンショット」>

2023年4月3日(月)
・会場
Zepp Diver City(TOKYO)

・時間
OPEN 17:00 / START 18:00
※20:00終演予定

・チケット
前売:¥4000
当日:¥0
[各チケットドリンク別]

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