【ライブレポート】ONE OK ROCK、コロナ禍乗り越え深めた絆「むき出しの感情を僕らにぶつけてください」
会場へ向かう電車の混雑が、バンドTシャツ着用率の多さが、興奮で上ずる周囲のおしゃべりが、いやがうえにも気分を高揚させる。アルバム『LUXURY DISEASE』を引っ提げた、初の6大ドームツアー<ONE OK ROCK 2023 LUXURY DISEASE JAPAN TOUR>。最新型のONE OK ROCKと共に、長く辛いライブ受難の季節の終わりを告げる時、それは今。4月23日、埼玉・ベルーナドームでのライブをレポートする。
<ONE OK ROCK 2023 LUXURY DISEASE JAPAN TOUR>ライブ画像
オープニングから度肝を抜かれた。Tomoya(Dr)を乗せたドラム台が空高く上がり、グラウンドの後方からToru(G)とRyota(B)が歩いて客席を突っ切り、Taka(Vo)が火花のイリュージョンと共にグラウンド突き出た花道に登場する。「楽しむ準備はできてるか!」Takaの叫びに応えて燃え上がる、巨大な火柱と大歓声。バンドも観客も、1曲目「Wonder」からテンションはマックス。Toruのヘヴィなギターリフがリードする「Save Yourself」から、Takaがクラップとコーラスを煽る「アンサイズニア」へ。アッパーな曲を連ねて加速し、有無を言わさずオーディエンスを巻き込んでゆく。
「むき出しの感情を僕らにぶつけてください」とTakaが叫ぶから、こちらも受け身じゃいられない。オーディエンスが一体となって手振りとジャンプで応える。全員に配られたシンクロライトが一斉に点灯し、広いドームを青、白、ピンクのカラフルな光が埋め尽くす。曲は「Let Me Let You Go」と「Clock Strikes」。明るい曲調と激しいサウンドが一体化して、ぐんぐんスピードが上がる。
「埼玉、調子どうですか。後ろのほうも見えてますからね。ベルーナドームは初めてです。日本ツアーは残り2本。楽しんで帰りたいと思います」──Toru
「めちゃくちゃ楽しいです。みんなのおかげで今日もいい緊張感を感じつつ、リラックスして演奏できてます。全部出しきるんで、みんなも全部出しきってください」──Ryota
「昨日も見たけど、すごい景色です、ほんまにありがとう。昨日を超えていきませんか。行けますか!」──Tomoya
「今回のドームツアーは、すごい気合を入れて臨んでます。今日はみなさんが楽しめるセットリストを用意しています。何も気にしなくていいから、大声出して歌って、最高の1日を作りましょう」──Taka
やる気満々の4人のMCと、サポートキーボード・Gakushiの「ひとことで言うとONE OK ROCKは最高ですね」というセリフに喝采が湧いた。「カゲロウ」をTakaと一緒に気持ちよく合唱したオーディエンスは、一転して怒りに満ちた「Mad World」の激しいリリックに圧倒されてスクリーンに見入っている。ドローンカメラを使った映像が、臨場感たっぷりにTakaの表情を大写しにする。サイケデリックな映像がうねる「Vandalize」から、壮大なロックバラード「So Far Gone」へ、ONE OK ROCKの楽曲は感情の起伏がとても激しい。美しい青と白の光がステージから放たれ、シンクロライトがドーム全体をまばゆい白に染め上げる。光の渦に巻き込まれ、音に溶けてゆくような快感がある。
中盤には驚きの展開があった。セットリストにはなく突如披露された「欲望に満ちた青年団」は16年前のファーストアルバム収録曲で、当時のTakaの心境を赤裸々に綴ったリリックが今も鮮烈。続いてシンプルなピアノから壮大なロックバラードへ発展する「Heartache」、そしてメランコリックなR&Bスタイルのメロディが胸に沁みる「Gravity」は、ステージから花道に降り注ぐ美しい銀の紙吹雪と共に。さらにブルージーなハードロックのインストを経て「Neon」へ。あたりはすっかり暗くなり、都会のネオンサインを映し出すカラフルな映像がどぎついほどに美しい。
「後半戦行こうか!」とTakaが叫ぶ。夜の闇の中で光と音の迫力がぐっと増した。レーザービームが縦横無尽に飛び交う中、ヘヴィでグラマラスなロックンロール「Deeper,Deeper」から、白いスモークと赤いライトにまみれたゴシック&ヘヴィな「Renegades」へ。オーディエンスの大合唱に煽られるように、Takaのボーカルもどんどん迫力を増してゆく。
「人生は一本の紐みたいなもの。生まれてから死ぬまでに、1本の紐の中に固結びをいくつ作れるか、そればかり考えてきました。でもそれだけが正解じゃない。これから世界を背負って行く若者たちに、固結びを作ることだけが正解じゃないと伝えたい。人間って自分の幸せばかりを考えちゃうけど、俺は、人を幸せにできて初めて幸せになるものだと思います。ぜひみなさん、人を幸せにして生きていってください」
コロナ禍を経てつかみ取った新しい心の持ちようについて、真剣に、しかしフレンドリーに語るTakaの言葉には強い説得力がある。その思いをリリックに詰め込んだバラード「Your Tears are Mine」には、彼自身の成長を刻み込んだ深いメッセージが宿る。『LUXURY DISEASE』の収録曲はどれも、メンバーの成長と進化を強く感じさせるものばかりだと、ライブを体感してあらためて思う。
ピアノとシンセを駆使したGakushiの素晴らしいソロプレーでほっと和んだあとは、いよいよクライマックスへ向けてのラストスパートだ。「The Beginning」「キミシダイ列車」と絶対のキラーチューンを畳みかける。Takaがいきなりステージを駆け下りてレフトスタンドに走り寄り、歌いながらオーディエンスを煽りまくる。グラウンドに突き出た花道へ飛び出し、数万人のエナジーを受け止めながら「the same as…」を歌う、すさまじい気迫と完璧な表現力にドームが揺れる。残すはあと2曲。
「年を取ればきっと、怖いものが出てくる。でもまっすぐ生きて年を重ねて行けば、怖いものなんて絶対ない。俺は何も怖くない。間違ってるか合ってるかはどうでもいい。俺はこれからもまっすぐ生きていくつもりです」
10代、20代の若者にはめいっぱいの期待とエールを。30代、40代の同志には愛情と共闘を。そしてそれ以上の世代には「いつまでも権力にしがみついてるんじゃねぇぞ」と警告する、実にTakaらしいまっすぐなセリフに会場が湧いた。曲は永遠のアンセム「We are」。そして最後を締めくくる「Wasted Nights」。ドーム全体を包み込む光の海に浮かぶ、若い魂の共闘のメッセージ、サビの大合唱が壮観だ。もはやロックもポップもR&Bもない。ONE OK ROCKが到達した、生き方としての音楽というフリーダムな境地。
そしてアンコールは本編の緊張感から解き放たれたように、よりリラックスしたムードで明るく朗らかに。「When They Turn the Lights On」のサビの大合唱を経て、最後はやはりこの曲。全員しゃがむ→ジャンプ!のパフォーマンスで盛り上げる「Stand Out Fit In」だ。全員ジャンプの圧巻の光景に、「すごい景色!」とTakaが笑う。すべての音がやみ、濃密な2時間30分をやり切ったメンバーの顔に晴れ晴れとした笑顔が浮かぶ。「Gakushiくんのパパ、今日誕生日なんだって」とTakaが笑顔で付け加える。完璧に演出されたハイクオリティのライブでありつつ、バンドらしい一体感と、オーディエンスとの親密さを失わない。最大規模のドームツアーを体験して確信した。数万人が相手でもONE OK ROCKは等身大のままだった。
取材・文◎宮本英夫
撮影◎MASAHIRO YAMADA、Kazushi Hamano、Rui Hashimoto [SOUND SHOOTER]、cazrowAoki、MASANORI FUJIKAWA
※ライブ写真は<ONE OK ROCK 2023 LUXURY DISEASE JAPAN TOUR>の模様
<ONE OK ROCK 2023 LUXURY DISEASE JAPAN TOUR>セットリスト
1.Wonder
2.Save Yourself
3.アンサイズニア
4.Let Me Let You Go
5.Clock Strikes
6.カゲロウ
7.Mad World
8.Vandalize
9.So Far Gone
10.Heartache
11.Gravity
12.【INST】
13.Neon
14.Deeper Deeper
15.Renegades
16.Your Tears are Mine
17.The Beginning
18.キミシダイ列車
19.the same asㆍㆍㆍ
20.We are
21.Wasted Nights
- ENCORE -
22.When They Turn the Lights On
23.Stand Out Fit In
ライブ配信情報
2023年6月3日(土)START 19:00(日本時間)
※アーカイブあり(6月3日19:00からの配信終了後〜6月4日23:59まで)
詳細・視聴・チケット購入:ONE OK ROCK Official Live Streaming Site
https://liveship.tokyo/oneokrock2023JapanTour/
ライブ情報
2023/06/03 Wiener Neustadt, AT – Stadion Openair *
2023/06/04 Prague, CZ – Lucerna Music Bar #
2023/06/06 Hannover, DE – Capitol #
2023/06/07 The Hague, NL – Malieveld *
2023/06/09 Cologne, DE – RheinEnergie Stadion *
2023/06/10 Berlin, DE – Columbiahalle #
2023/06/29 Bordeaux, FR – Matmut Atlantique *
2023/07/01 London, UK – Eventim Apollo #
2023/07/03 Barcelona, ES – Razzmatazz 1 #
2023/07/04 Santander, ES – Estadio De El Sardinero *
2023/07/06 Nancy, FR – Nancy Open Air *
2023/07/07 Paris, FR – Elysee Montmartre #
2023/07/08 Paris, FR – Stade de France *
2023/07/09 Strasbourg, FR – La Laiterie #
2023/07/11 Zurich, CH – Xtra #
2023/07/12 Bern, CH – Bernexpo Areal Openair *
2023/07/15 Marseille, FR – Orange Velodrome *
2023/07/18 Rome, IT – Stadio Olimpico *
2023/07/20 Florence, IT – Ultravox #
2023/07/21 Milan, IT – Santeria Toscana #
2023/07/22 Milan, IT – Stadio San Siro *
# Headline Shows
* <MUSE WILL OF THE PEOPLE EUROPE TOUR 2023>
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