【インタビュー】山本彩、アルバム『&』に両立する二面性「自分の中にあるネガティヴへの抵抗」

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■辞める前の自分に言ってあげたい
■「間違ってないよ」って


──自身のネガティヴさもポジティヴさもすべて認めての『&』というタイトルですけど、私はこの作品にネガティヴさは全く感じませんでした。全体を貫く明るさと光は山本彩の本質ということなのかな。

山本彩:…っていうより、自分の中にあるネガティヴへの抵抗というか、逆の明るさが生まれているというか。たぶん素直にそのまま表現しようと思ったら、本当にすごくネガティヴな曲ばかりになると思うので、それを否定するわけじゃないんですけど、それをエネルギーやパワーに変えていきたいっていう気持ちがあるので、それがサウンド面だったり、暗くなりきらない部分なんだと思います。

──心地よい爽やかさなどは、自然と出てくるもの?

山本彩:いや、意識はしています。やっぱりネガティヴな楽曲のラストにもどこか出口みたいなものがないと救いがないというか、聴く側が一緒になってローになってしまうのはどうなのかな…って思います。“聴く側にとっていいのか?”っていう目線はいつも持ちつつ書いてはいます。



──バンド時代の挫折やNMB48での経験など全ての出来事が、シンガーソングライターとしての人格を作り上げてきたのでしょうね。

山本彩:そうですね。言葉選びやフレーズで年齢を重ねたなって感じるけど、内にあるポジティヴみたいなもの…根底は変わっていないとは思っています。学生時代に書いた曲を思い出しても、それはそれで今とは違うポジティヴさがあって、その時にしか書けなかった曲だと思うんです。それも間違いなく自分だなって思いますから。

──その頃の自分に声をかけるとすると?

山本彩:「間違ってないよ、そのままを書けばいいんだよ」っていうのは伝えたい。グループ(NMB48 / AKB48)に入る前に一回音楽を辞めているので、辞める前の自分に言ってあげたいですかね。“こうじゃないかな” “こうじゃないんだろうな”って思って辞めていったので。

──アイドル活動をやるときに、音楽を諦める感覚はあったんですか?

山本彩:加入前は完全に辞めていた感じです。

──当時と今と、音楽表現の違いは感じますか?

山本彩:どうだろう。グループ時代って本当にいろんな楽曲があって、サウンド面でも歌詞の反骨的な意味でも、ロックな楽曲もたくさんあったんですよね。もちろん感情移入して歌いはするんですけど、本人たちから生まれたものじゃなく、自分たちに当てて書いていただいたものを表現するかたちだったので、あくまでクリエイターというよりかは表現者っていう役割だったと思います。


──だからこそ、自分で曲を作りたい欲求は消えなかった?

山本彩:そうですね。でもグループ時代では表現者としての楽しさもすごくあったので、毎回いろんな楽曲があって曲ごとに表現の仕方が変わったり振付やパフォーマンスが変わったり、そういうところがすごく楽しかった。ただひとりでやるとなると、ひとりで歌いたい楽曲があることにも気付いて、“曲も書いてみようかな”っていう感じでした。

──これまでの経験で得たものの中で、特筆すべきポイントはどんなところでしょう。

山本彩:音楽のジャンルの食わず嫌いがなくなったのがすごく大きかったかな。グループに入るまではアイドル/ポップな楽曲をあまり聴いてこなかったので、自分にとっては開拓でもあったんです。アイドルと言っても、らしい楽曲ばかりじゃなくいろんな楽曲があって、こんな幅広くできるんだなって思いました。自分が今ソロでやっている音楽も“ノージャンル”をひとつのテーマに楽曲制作しているので、そこはグループ時代の経験が大きいですね。

──“山本彩みたいになりたい”って思っている子たちは、まずアイドルの道を目指すのが良さそう…ですか?

山本彩:…どうですかね。最終的に自分がどう思うかだとは思うんですけど、確かに自分も“アイドルをやらずに音楽を続けていたらどうなってたかな”っていうのは考えるときもあります。今こういうやり方で音楽をやれているのは間違いなくグループを経てきたからだと思うので、私は今の自分がここまで来れたのは、正しい道…というか間違ってはいなかったかなとは思いますね。

──アイドルじゃなくても、自分の思う道を進むことが正解ということか。

山本彩:そうですね。選択肢は常にひとつじゃないと思うので、何を選ぶかで全然変わるし、可能性も広がると思います。最初にアイドルを選んだとしてもそれもひとつにすぎない。そこからいくらでも道が何本もあると思うので、いくらでも自分で正しくできるかな。

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