【ライブレポート】ゴホウビの魔法で、世界の見え方は変わる

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男女混声“豆腐メンタル”5人組、自己肯定型タウンポップバンド・ゴホウビが、5月11日に東京・渋谷WWWで<ゴホウビ ONEMAN LIVE "Home Sweet Home!! Vol.1">を開催した。

1月にメジャーデビューしてから初となるワンマンライブ。そして声出しも解禁されたライブとあって、まさにご褒美感あふれる“HAPPY”な一夜となった。

◆ライブ写真

ライブは未発表曲「おかえり」からスタート。いきなり未発表曲から始まるのか、と驚かされたが、cody(Vo, G)とスージー(Vo, Key)による優しい“おかえり”“ただいま”の掛け合いで、ライブタイトルにある“Home Sweet Home=家が一番”というテーマにリンクしていることに気づかされる。歌詞も、頑張れないときもある、君は君でいい、といった内容で、ゴホウビの伝えたい“自己肯定”のメッセージがたっぷり詰まっていた。そもそもゴホウビは、“みんなにとっての「ただいま」と呼べる場所になりたい”というテーマを掲げたバンドであることも考えると、彼らが今日作るライブの世界への導入にぴったりな一曲だった。


たっぷり自己肯定してもらったあとは、むんちゃ(Dr)のカウントから、「ゴキゲンなLOVER」へ。タイトル通りゴキゲンでポジティブなナンバーで、会場のオトメン(ファンの呼称)も手拍子で一緒に盛り上がる。“すべてはうまくいく”という魔法をかけられたような気分だ。

恋愛ソングもお上手。「次の恋が見つかるまで」は失恋後に誰しもが感じたことのある切ない気持ちそのままが描かれているし、「友達だったよね」は好きな人に振り回されるあやふやだけどどこか心地よい関係がリアル。codyとスージーの歌い分けとハーモニーが、曲中の“君と僕”の輪郭を明確にしていく。


アンビエント的なサウンドで始まる「ターミナル」は少しナイトシティポップ調なおしゃれサウンドで、405(B)のベースプレイも冴える。ぐっと雰囲気を高めたあと、最初のMCでスージーが広島弁全開で「今日のワンマンライブのタイトル<Home Sweet Home!!>は、やっぱり我が家が一番じゃ!という意味なんよ。今日は行き慣れた友達んちに遊びにきとるような感覚で、心持ちゆったりと聴いてもらえたら嬉しい」と。その言葉通り、続いてはアコースティックコーナーが始まる模様だ。

初めてのアコースティックスタイルということで、ドラム台を離れステージ前方に座った感想を聞かれたむんちゃは「最高」と一言。いつかドラムを放棄してダンスしながら前に出てきたいという要望があるらしく、「来年あたり、“ハイパーむんちゃタイム”作っていいですか?」とおねだり。405が唐突に「(codyが)“ちゅっ”という絵文字を使ってくる意味をハッキリさせたい」と言い、遠征先でも同じホテルだったことを知ったむんちゃが「私の中ではカップリングが決まってて」と語り始め……スージーが「アットホームが過ぎるわ!」とツッコミ。本当に友達の家に来てなんでもない話をしているようなアットホーム感。それも楽しくて、これはこれでもっと聞いていたくなる。


そして山崎裕也(G)のギターが柔らかい、アコースティックアレンジの「kissしよ」が始まる。サビではオトメンたちによる“アイラブユー”の合いの手が上がり、会場中が愛に溢れていく。スージーから「とっても大切な曲です」と紹介された「好きなんだろ」はシンプルにピアノとボーカルだけで始まり、徐々に入ってくる楽器隊の音色とともに、見事なコーラスワークで愛する人へのどれだけ“好き”かという独白を奏でる。ひたすらシンプルなテーマだけど、恋愛にも家族愛にもファン愛にも聴こえて、聴く人それぞれの柔らかいところに届くような歌だ。

もとのバンドスタイルに戻り、この空気を引き継いだのは、「ラーメン」。どこか寂しいようなメロディに、「ラーメン」をきっかけにしたありふれた日常の一幕がのる。不思議な浮遊感から徐々に深みを増していくサウンドに、どんどん音の海に沈んでいくような感覚を覚える。歌われていることは、きっといつかの自分も経験したことのあるようななんでもない日常と気持ちなのに、優しくて気持ちがいい。


確かなゴホウビの楽曲の力を堪能したアコースティックコーナーのあとは、codyが「ここからはテンポ上げて、気分上げて、もっともっとひとつに! 心を丸裸にして楽しんで」と煽り、カンテレ 木曜深夜ローカル連ドラ『全ラ飯』オープニング曲に起用された「一糸まとわぬアイを見せてよ」へ。ワクワクする華やかなサウンドで、codyもステージをあっちこっちに移動して楽しそう。オトメンたちもクラップで盛り上げる。“君がいるだけでご褒美になる”なんて、とってもニクい。


405がシンセベースでデジタル感をプラスした「SABISHINBO STREET」は夜にタクシーを流しているような感覚のエモーショナルな楽曲でそもそも構成も面白いのに、間奏ではそれぞれの楽器ソロがあり、どんどんド派手サウンドになっていくところに一筋縄ではいかないゴホウビらしさを感じる。「ゴホウビエクササイズの時間です!」と言って始まった「ラムネ」は、転がる炭酸の泡のような音符に合わせオトメン全員で両手を上げて盛り上がる。むんちゃのドラムのオカズが多くて楽しい「NO RAIN, NO RAINBOW」は青春ロックで、ラストの“この手を伸ばして”のフレーズでは何も言わなくても会場全体に手が上がり、楽しい気分がぐんぐん高まった。


それはメンバーも同じようで、codyは「最高です。本当にいいね、ライブって」と噛みしめる。そして「誰かの心に寄り添う音楽をテーマにやってきました。あなたの心がホッと一息つけるような音楽をこれからも作って届けていくので、これからもよろしくね」と、感謝を込めて言葉をつないだ。

そして「大人になってくると周りの目を気にしちゃって、本当はこれが好きだけど言えないなって隠しちゃうこともあるけど、たまにはあなたの好きなこと、あなたのやりたいことを、思いっきり楽しんでほしい」というcodyの言葉から、本編ラスト「好きな服」へ。“自己肯定”がたっぷり詰まった、ゴホウビらしい曲だ。

“明日好きな服を着る” ──たったそれだけ?と思ってしまうようで、それが案外難しくて案外できないのが人生だ。人の目を気にしてしまったり、思っていた姿になれなかったりする。もちろん服を選ぶ行為だけでなく、人生そのものもそうだ。でも、好きでもない服を着て生きていくのはやっぱり嫌だ。「好きな服を着る」というシンプルな行為から、「自分なりの幸せを見つけよう」と人に思わせることができるのは、ゴホウビの曲が持つ魔法だ。


「日々、あなたが笑顔で過ごせますように」──cody

ゴホウビが歌うのは、壮大な夢物語ではない。半径5m以内の情景、気持ち、感情だ。しかし、その小さな小さな範囲でも目を凝らしてみると、幸せのカケラはたくさん転がっている。それこそ、自分の思いを肯定して「今日好きな服を着てみる」それだけでも幸せなはず。スージーは読書と映画、405は釣りやラーメン、むんちゃはパフェにホラー、codyはコーヒーを淹れたりリサイクルショップを巡ったりする時間が幸せだという。そんなことで十分。悲しいことがあったり疲れてしまったときでも、そんな“自分なりのご褒美”に気付けるかどうかで、世界の見え方は変わる。ちょっと大げさかもしれないけれど、ゴホウビの楽曲はそんな大切なことを教えてくれるような気がする。大人になるとなかなか誰かから“ご褒美”をもらうこともなくなるけれど、たまにこうして彼らのライブで“ゴホウビ”をもらうのもいいな、と思う。

取材・文◎服部容子(BARKS)
写真◎鈴木友莉

セットリスト

1.おかえり
2.ゴキゲンなLOVER
3.次の恋が見つかるまで
4.友達だったよね
5.ターミナル
6.kissしよ
7.好きなんだろ
8.ラーメン
9.一糸まとわぬアイを見せてよ
10.SABISHINBO STREET
11.ラムネ
12.NO RAIN, NO RAINBOW
13. 好きな服
en1.ラブ≠∞
en2.LIFE

<ゴホウビ 5th ANNIVERSARY ONEMAN LIVE 〜GOHOBIRTH 2023〜>

日程:2023年11月2日(木)open 18:15 / start 19:00
会場:SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
席種・料金:全席指定・4,500円(入場時ドリンク代¥600必要)
チケット枚数制限:お一人様4枚まで
オフィシャル1次先行URL:https://eplus.jp/gohobi/

メジャー4thデジタルシングル「なんぼのもんじゃい」

2023年7月5日(水)リリース
詳細後日

ライブ出演情報

<Lady's eardrop>
日程:2023月5月17日(水)open 18:30 / start 19:00
会場:心斎橋JANUS
出演:ゴボウビ/マルシーボク/ドットルーム/Charmant coco
席種・料金:オールスタンディング・2,800円
チケット購入方法:イープラス、JANUS店頭販売
チケット購入URL:https://eplus.jp/sf/detail/3851560001-P0030001
(問)心斎橋JANUS:06-6214-7255

<SAKAE SP-RING 2023>
出演日:2023年6月3日(土)
公式HP:http://sakaespring.com/


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