【インタビュー】Deep Sea Diving Club、メジャーデビュー作に“ポップス”の意識と人間としての成長

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■ みんながやることには、それなりの理由がある

── 大井さんが作曲と編曲を手掛けた「リユニオン」は、新曲ですね。

谷:「自分たちが演奏しているのをお客さんが楽しんでいる。そして自分たちも楽しい」っていう共有が大井の考える「ポップ」らしくて。それがすごく出ている曲です。

── ものすごくわかりやすいリズムですから、初めてこの曲を聴いた人もすぐに手拍子で参加できると思います。

谷:そうですね。大きいホールで演奏している姿が想像できる曲でもあります。

── 前半のリズムはシンプルですけど、2番に入ったところでイレギュラーな感じに急に切り替わる悪戯も面白いです。これ、ライブでやったら、乗り遅れる人が出てくるはずです。

谷:うちのメンバー、みんな悪戯っ子なので(笑)。昔のポップスとかも2番は好きなことをする場所みたいな感じもありますし。「2番は、ちょけれる場所」みたいな共通認識は、メンバー内にあるのかもしれないです。

▲大井 隆寛/Gt&Cho

── 予定していないイレギュラーな演奏を、メンバーのみなさんがライブ中にしてくることもあるんじゃないですか?

谷:全然ありますよ。ソロじゃないところでソロが始まったりとか。もともと大井以外の3人はセッションバーにいましたし、初期はよくセッションで曲を作っていたんです。そういう部分も、どんどん上手に使えるようになっている気がします。好きなアーティストが昔、「バンドは生き物」って言っていたんですけど、うちのバンドにもそれを感じます。

── 「Miragesong」は、昨年の12月に配信リリースしましたが、冬の歌は珍しいんじゃないですか?

谷:そうですね。夏が好きなので自然と夏になっていたし、それによって「シティポップ」って言われるようになった面もあったと思うんです。鳥飼、大井はシティポップを聴いて育ったわけでもないですし、「シティポップ」って呼ばれたことで「そうなんだ?」ってなったバンドなんですよね。だからあんまり冬の曲ってなかったんだと思います。冬の曲を作ると暗くなるというか。自分の暗さを隠すために夏の話をしているところもあったので。


── 歌謡曲的なウェットさがあるのも、「Miragesong」の独特さだと思います。

谷:この曲を作った出原は歌謡曲が好きで、めっちゃ詳しいんですよ。生バンドでカラオケができるお店で働いていた時期もあるので。00年代のR&Bのディーバの曲は冬の歌のイメージがなんとなくありますけど、その要素も入っているのが「Miragesong」ですね。

── 終盤の転調が気持ちいいです。

谷:俺も出原もひねくれたところがあるから、転調を「J-POPでよくある」みたいな感じで捉えていた時期もあるんです。でも、「真摯に受け止めてやってみよう」ってなったんですよね。転調したアレンジのものを聴いて、「良いなあ」って感じたのを覚えています。みんながやることには、それなりの理由があることを改めて知りました。うちのバンドは「やってみてから決めよう」ってよく言うんです。やってみて違ったら、やめればいいですから。この曲は結構複雑な転調をしていて、1回落ちてからさらに上げる展開です。ボーカリストとしては、「やめてくれ」っていう感じですけど(笑)。

── (笑)。カラオケで歌おうとしたら、苦戦することになるでしょうね。

谷:ぜひ歌ってみて欲しいです。上手く歌えたら気持ちいいと思いますよ。

── 歌ってみた動画とか、動画サイトに投稿されていたりします?

谷:「T.G.I.F.」のMVの監督さんは鳥飼さんの友達で、福岡の地元のテレビ局で働いているんです。「T.G.I.F.」のギター弾いてみた動画が上がっていて、鳥飼さんに教えたら「あいつだ!」ってなって(笑)。その人、面白いんですよ。「SUNSETCHEEKS」を全部DTMで打って、自分で歌ったフル差し替えの動画も上げているので。身内に動画を投稿されるDeep Sea Diving Clubです(笑)。

── (笑)。動画とか配信に海外からのコメントが来ることもあります?

谷:ありますよ。「フラッシュバック’ 82」を出した時は、アジア圏の方々がたくさん聴いてくださって。インスタライブのコメントの8割くらいが外国語の時もあります。こういう音楽が海外でも聴いてもらえるのは、嬉しいですね。そういえば「フラッシュバック’ 82」は、モンゴルでの反応がすごかったことがあります。モンゴルのShazamのチャートに入ったみたいなんですよ。「誰かモンゴルに知り合いがいるの?」ってなったんですけど(笑)。

── (笑)。出原さんは、今作でアレンジャーとしても良い仕事をしていますね。「Miragesong」「goodenough.」「ゴースト」で構築しているサウンドが素敵です。

谷:彼は、こういうことが好きなんです。

▲出原 昌平/Dr&Cho

── 少し余談っぽくなりますけど……出原さんはスパイスカレーが好きですよね?

谷:はい。

── スパイスの配合を考えてカレーを作るのと、サウンドアレンジは通ずるものがあるとおっしゃるミュージシャンは結構多いんですよ。

谷:出原も言うんです。「音楽と料理は一緒」って。彼はバランスをとるのが上手いんです。人間関係のバランスをとるのも上手いですから。

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