【インタビュー】Deep Sea Diving Club、メジャーデビュー作に“ポップス”の意識と人間としての成長

ツイート


■後々まで残っていく作品って、呪術的な要素が含まれていると思う

── 「goodenough.」も、絶妙なバランスで仕上げられた曲ですね。メランコリックな音像に不思議な気持ちよさがあります。

谷:この曲はもともとBPMが倍で、リード向けの曲だったんですが、このEPのためにこのアレンジになったんです。この曲は、音を聴いて言葉が浮かびました。渋谷のヒカリエ側に出た時に雨が降っていて、ビルのビジョンに流れている広告が濡れている地面に反射しているのを見たことがあるんです。あれは綺麗でもあるんですけど、雑踏の苛立ちみたいなのも感じて、都会の寂しさが凝縮された風景だなあと。その印象をメモっていたことがあって、この曲に合うと思ったんですよね。

── この歌詞は、出原さんとの共作ですよね?

谷:はい。BPMを落とした結果、歌詞が合わなくなって、出原の歌詞は2番になったんです。自分が1番を書いて、2番の出原の世界観に助走をつけました。コラボは普通、手紙の返事を書くような作り方ですけど、これは先に決まっている返事を踏まえて、「最初にどういう手紙を出したでしょう?」って考えるような作り方が面白かったです。

── 《非常識な人間でなくちゃ 死の瞬間まで》という一節が印象的です。

谷:そこは出原が書きました。ここの行の辺りは、彼が常日頃言っているようなことなんです。彼の内面にあるものが、上手に作品化されていますね。

── 序盤の靄がかったムードを経て、突然クリアになっていくサウンドも、不思議な気持ちよさがあります。

谷:あのノイズは、昔の『金曜ロードショー』のオープニングで、おじさんが映写機でフィルムを回しているイメージを感じます。出原は想像をさせる音を作るのが上手なんですよ。



── 「ゴースト」も、アンニュイなサウンドの要素が効果的なアレンジですね。

谷:もともと鳥飼さんが昔持ってきたコード進行があって、ボツになった曲だったんです。この曲のコードを使いたいっていうのがずっとあったんですよね。鳥飼さんの家でギターを弾きながら作って、鳥飼さんが整えたデモを出原が聴いて、「俺がアレンジする」ってなりました。その結果、もともとのコードがなくなって、鳥飼さんが驚いていましたけど。俺らあるあるで、「出原クラッシュ」って呼んでいます(笑)。コードが少なくなった結果、浮遊感が出ました。

── スピリチュアルなテイストのソウルミュージック的というか、異世界に足を踏み入れたような香りを感じる曲です。

谷:俺、妖怪と怪談が好きで、『蟲師』っていう漫画も好きなんです。そういうことを描きたかったんですけど、音で表現するのは無理だったんですよ。出原が音でそれをやってくれました。解釈が一致したんだと思います。「変な世界に迷い込んだ」みたいな、こういうのは俺にはできないです。

── 別れた人の幻影をゴーストのように捉えつつも、自分自身がゴーストだったことに気づく様を描いた歌詞ですね。

谷:昔よく書いていたような散文的なものではあるんですけど、「原点回帰に見えるけど、ちゃんと話が繋がってるね」って鳥飼さんに言ってもらいました。「Miragesong」や「Left Alone」を経たからできたというか。やりたいことが全部できました。

── MVも作りましたし、リード曲的な位置づけですけど、ポップでありつつ、かなり思い切ったことをやっている曲だと思います。

谷:そうなんですよ。リード曲コンペで俺はもう1曲「ザ・ポップ」っていう感じのわかりやすいものを書いたんです。「Miragesong」も作家的、プロジェクト的に書いたので、「俺のやりたいことを久々にやりたいな」って思ったんですよね。やっぱり後々まで残っていく作品って、呪術的な要素が含まれていると俺は思ってて。お葬式でかける曲のプレイリストを作っているんですけど、そこに入れる曲ってグロいんです。人の内側を触ってくるような曲がいっぱいあって、「俺の好きなことって、それだなあ」と。そういうものをうちのバンドで避けてきたんですけど、「メジャーデビューというこのタイミングでそれをやっておかないと後悔するかもなあ」と思って作ったのが「ゴースト」です。「ボツになってもいいや」と思っていたんですけど、意外とチームの人たちに面白いと思っていただけて、共感性があったのは発見でした。グロさみたいなことに目を向けつつ、「ポップスって何だろう?」っていうことも嫌々ながらではなくてこだわりとしてできるようになったのは、作家としてというより、人間として成長したと感じています。

── リード曲コンペでは「bubbles」を推していたと、先ほどおっしゃっていましたよね?

谷:はい。あの曲でいい反応がなかったら、自分で歌っているのに他人のせいにしちゃっていたと思うんです。それは嫌でした。だから「ゴースト」ができて良かったです。「この曲も自分の葬式でかけるプレイリストに入れられるかもな」と(笑)。そんなことも思って、かなり満足しています。

取材・文=田中 大

  ◆  ◆  ◆

New EP『Mix Wave』


2023年5月10日(水)リリース
TOY'S FACTORY

税込2200円 / TFCC-81011


http://lnk.to/DSDC_MixWave

収録曲
1. bubbles
2. フーリッシュサマー
3. Left Alone feat.土岐麻子
4. リユニオン
5. Miragesong
6. goodenough.
7. ゴースト

<Mix Wave Tour>

7/7 (金) 福岡 OP’s
18:30/19:00

7/16(日) 大阪 Live House Pangea
17:30/18:00

7/17(月・祝)東京 Spotify O-nest
17:30/18:00

この記事をツイート

この記事の関連情報