【ライブレポート】良質なバンドが揃いぶみ、新イベント<heaR>開催。ポニーキャニオンが新たな才能を発掘

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新たな才能を見つけるために始まったポニーキャニオン発の対バンライブシリーズ<heaR>(読み:ヒアー)。その記念すべき第1回が、5月12日に東京・池袋harevutaiで開催された。

◆ライブ写真

ポニーキャニオンが運営するディストリビューションサービスのearly Reflectionと池袋にある未来型ライブ劇場のharevutaiがタッグを組み、それぞれのスタッフが“今ライブを観てほしい”おすすめのアーティストを選び、新たな音楽との出会いの場を創る。

そんなイベントの初回<harevutai pre.『heaR』vol.01>には、まんぷく、irienchy、Laura day romance、Mellow Youthと、色鮮やかな個性を放つ注目の4バンドが名を連ねた。当日の昼に行なわれた学生限定のオーディションを勝ち抜いたさとじゅん。がオープニングアクトを担い、アコギ弾き語りのパフォーマンスでフロアを温め、いよいよ本編がスタート。


トップバッターを飾ったのは、まんぷく。2020年10月に東京・小金井で結成され、今年3月には渋谷La.mamaで初のワンマンライブを実施、ピュアなボーカルやノスタルジックで多幸感あふれるサウンドが光る4人組バンドだ。

さかのひかり(Vo, G)の心に染み入る歌声や菊地紬(Key)が吹く鍵盤ハーモニカなど、冒頭の「ひとつ」から響く夕暮れ時を思わせるしっとりとしたメロディ、中村ヒロキ(B)とはせ(Dr)が刻むリズムを軸にした余白の効いたアンサンブルが、彼らの実直さをそのまま物語っているかのようだった。曲が進むにつれ、4人の音が軽やかに力強くなっていく展開も気持ちよすぎる。


「我々、まんぷくというバンドです。池袋harevutai<『heaR』vol.01>にお越しいただきありがとうございます。では、早々に次の曲へ行きたいと思います……」と固い感じで話すさかのをはじめ、自身最も大きな会場でのライブとあって緊張した様子のメンバー。

それでも演奏に入れば持ち前のグッドメロディが輝きを放っていたし、4月に配信されたばかりの新曲で、春に大切な人を見送る際のもどかしさを爽快なエレピが映えるアレンジでエモーショナルに表現した「伝えたいこと」、同じく疾走感が立った「あの頃のまま」は、とりわけオーディエンスの胸を震わせていたのが推察できた。フジファブリックやくるりが好きなリスナーなら、まんぷくもぜひチェックしてみてほしい。


続いては、2020年1月に結成してすぐコロナ禍に見舞われながらも粘り強く活動し、その生きざまを映し出したライブが脚光を浴びているポップロックバンドのirienchyが登場。

物語の始まりを感じさせるミドルバラード「メイビー」から、言葉が聞き取りやすい宮原颯(Vo, G)の歌が場内に清々しく広がる。明るい曲調の「ライライライ」ではアウェーの状況を覆そうとする攻め気が見え、メンバー全員が満面の笑顔で歌うシーンも。


さらに「俺たちはギターの入江さん(諒孟(G, Cho)の本名)の家で組んだけん、irienchyっていう名前っちゃね。1回目のイベントってやっぱり好きだし、ポニーキャニオンのスタッフさんにどうしても聴かせたいバンドとして呼んでもらって。いやー、選ばれたねえ(笑)」と、宮原が博多弁を交えつつ嬉しそうにMC。こういった品定め感のあるシチュエーションでこそ、彼らのハートフルな人間性はますます魅力的に映ったりもする。

“そうだよな 負けたくないよな?”と闘志を示した最新曲の「ソルジャー」以降は、井口裕馬(B, Cho)と本多響平(Dr, Cho)の屈強なビートを中心に、熱量満点のロックナンバーを畳みかけ。ハンドクラップで沸くフロアに、宮原は「全員ハッピーにして帰る!」と言い放ち、諒孟は腰面弾きでギターソロを繰り出すなど、本当に楽しげに演奏する4人の姿、猛然と迫ってくるポジティブで人懐っこいメロディには、思わず表情が緩んでしまった観客も多かったに違いない。


<SUMMER SONIC>など大型フェスにも出演してきたインディロックバンドのLaura day romanceは、サポートメンバーを従えた6人編成でステージへ。

ポップで程よい疾走感を湛えた「rendez-vous」が始まると、タンバリン片手に歌う井上花月(Vo)の憂いと切なさをほんのり帯びた声、川島健太朗(G, Vo)のアコギを含むトリプルギターの朗らかなアンサンブル、情景が浮かぶやわらかなメロディなど、ローラ節が早くも冴えわたる。甘美で都会的なダンスナンバー「sweet vertigo」も素晴らしい。


礒本雄太(Dr)の軽快なリズムが耳を惹く中、鈴木迅(G)の弾くフレーズに加えてアウトロのコーラスもビートルズを彷彿とさせた「worrying things」。井上と川島によるツインボーカルのハーモニーが眩しい「lookback&kick」でも、鈴木の流麗なリフがスミスを思わせたりと、オマージュの入れ具合も絶妙だ。行き場のない気持ちを受け止めてくれるような、寂しくも優しい、やるせなくも温かい、さまざまな解釈ができる彼らの楽曲は、映画やアートに近い余韻を残す。

「配信ライブをここでやらせてもらったことがあるんですけど、有観客は初めてでなんだか緊張します」(井上)、「池袋は学生時代に乗り換え駅だったので、今日も出番前にちょっとフラフラしてきました」(川島)とささやかなMCを挟み、ラストはファンからの支持も大きい「sad number」。終始とにかく小気味いいサウンドで、現場を独自の世界観で彩ってみせた。


そして<heaR>第1回のトリを務めたのは、Mellow Youth。

「さあ、踊る準備はできてるか?」と石森龍乃介(Vo)がフロアに威勢よく呼びかけ、彼らの大きな持ち味である伊佐奨(Vo, G)とのツインボーカルをいきなりホットに響かせれば、木立伎人(G)の妖艶なソロも流れるように決まり、あっという間に場の空気を支配する。「PEARL」では、肥田野剛士(B)の跳ねるスラップと阿部優樹(Dr)のしなやかなビートが観客のハンドクラップを誘うなど、歌を引き立てるグルーヴに加え、ロックやソウル、ファンク、シティポップ……さまざまなジャンルをミックスさせたサウンドの旨みもたまらない。

ワイルドかつソウルフルに歌う石森、甘いハスキーボイスの伊佐。声質の異なるツインボーカルが織りなすハーモニーを活かしてバンドはぐんぐん熱を帯び、ストロボと共にギラついた音像で爆発したり、色気と渋みをもってアダルトにアプローチしたりと、変幻自在のパフォーマンスを見せていく。



「楽しいね。池袋でのライブは初めてなんですけど、上京1年目に住んでいたので、懐かしい想いを抱えながらやってます。今日はすげえいいメンツで気持ちよかったです」と石森は笑顔で語る。

後半は「Neon sign」「Flash night」を披露し、レイドバックした夢心地なムードでオーディエンスを大いに酔わせてくれたMellow Youth。今後の躍進に期待が高まるばかりだ。


幅広い層に届き得るポップスを鳴らす良質なバンドが揃い、とても楽しく有意義な一夜となった<harevutai pre.『heaR』vol.01>。次回<vol.2>の開催は8月4日に決定しているので、本イベントの行方も注目しよう。


取材・文◎田山雄士
写真◎エドソウタ

セットリスト

【さとじゅん。】※Opening Act
1. FRUITS
2. ONH(オーバーナイトハイク)
3. Switch

【まんぷく】
1.ひとつ
2.あたたかい風
3.あなたが聴こえない
4.伝えたいこと
5.あの頃のまま
6.街

【irienchy】
1.メイビー
2.ライライライ
3.ヒトミシリ流星群
4.ソルジャー
5.ドリームキラー
6.スーパーヒーロー

【Laura day romance】
1.rendez-vous
2.sweet vertigo
3.worrying things
4.lookback&kick
5.夜のジェットコースター
6.sad number

【Mellow Youth】
1.Odor
2.PEARL
3.Rouge&Memory
4.Run
5.Neon sign
6.Flash night

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◆heaR 公式Twitter

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