【ライブレポート】星屑スキャット、3者3様の魔法がキラめくショータイム
星屑スキャットが全5公演のツアー<星屑スキャット TOUR 2023『023』>を開催中だ。
◆ライブ写真
ミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵、メイリー・ムーによって2005年に結成され、新宿2丁目を中心に活動してきた3人は2012年にメジャーデビュー。そのエンターテインメントで華やかなステージと3者3様の個性が織りなす絶妙なトークで、多くの人たちに愛されている存在だ。
大阪国際交流センター 大ホールを皮切りにスタートした本ツアーの東京公演は5月18、19日のEX THEATER ROPPONGI 2デイズ。ゴージャスなライトアップが似合う星屑スキャットにピッタリの会場だ。2日目はあいにくの雨風に見舞われたが、天候など吹き飛ばす煌びやかなショーを見せてくれた。
まばゆい照明がステージ全体を覆い、「Overture」が鳴り響き、コンサートは新曲「FREAK SHOW」で幕を開けた。ステージセットの上部に姿を表した3人は色違いの鮮やかなワイドパンツの衣装に身を包み、ファンキーなビートと息がピッタリのハーモニーで観客を星屑スキャットの世界にいざなっていく。階段を降り、セクシーさと疾走感が畳み掛けるナンバー「ANIMALIZER」は3人の絡み合うボーカルも刺激的で拍手と声援が沸き起こった。
「どうもみなさん、こんばんは。今日はお天気の悪い中、たくさんお運びいただきましてありがとうございます」──ミッツ・マングローブ
話題は声出しが解禁になったコンサートのことに。「どうにかこうにか、みんなの力でコロナの波を乗り越えて、ここまで来ました。昨年のコンサートでは全員マスクで場所によっては1席ずつ開けて、声も出せない中、お送りしてきましたけど、(規制が)少し緩やかになったところで今日はいいですね。黄色い声援と言いたいところですが、野太い声援ありがとうございます」と言うミッツに和恵が「黄土色ぐらいかな」と返し、メイリーは「ちょっと嬉しかったですよ。和恵さんだけかなぁと思ったら、私の時も(声援)くれたから」と嬉しそうな笑顔。
恒例のメンバーいじりも客席を沸かせる。ミッツが和恵の方を見て「いいですね。今日も現代美術のような顔面で」(和恵は武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科中退)と突っ込むと「私、アシンメトリーの女王って言われてますから」と返すといった具合で、メイリーは置物のような安定感があるといじられる。ウイットに富んだトークも星屑スキャットの魅力だ。
会場を和ませた後はアン・ルイスの1984年の大ヒット曲「六本木心中」をアグレッシブなパフォーマンスで披露。星屑スキャットのカバーの代表曲のひとつであり、岩崎宏美の1982年の大ヒット曲「聖母たちのララバイ」が届けられると1コーラスを歌い終わった時点で大きな拍手が鳴り響いた。
インタールードを挟んで3人がシックなドレス(といってもキラキラな生地)に着替えて披露されたのは『新宿EP』(2019年)に収録されている振り付けもインパクトのある「お姉さんポルカ」。チェコ民謡とシャンソンと歌謡曲が混ざり合ったようなレトロで妖しい世界観が各自の個性を引き出し、吸い込まれずにはいられない。
ミッツが客席に「今日、初めて観る方は?」と問いかけ、多くの人たちが手を挙げているのに驚き、以前から足を運んでいる人たちが後ろの方の席にいることを確認して「去年、観ていろいろわかったのね。オカマっていうのはちょっと離れて観た方がきれいなんです」と沸かせると「富士山と一緒ってよく言われますね」とメイリー・ムー。「キレイ!」と叫ぶ客席の声に「別にいいのよ。声が出せるようになったからって」と突き放すミッツだが、カーディガンを羽織っている人がいるのを見逃さず、寒さを気遣うところが心にくい。
ちなみにこの日、ミッツはTOKYO MX『5時に夢中!』の生放送を終えて、会場に駆けつけた。MCの最中に「ちょっと水飲んできていい?」とミッツが袖にはけることがあるのも星屑コンサートでは珍しい現象ではないらしく、その間は2人がトーク。かなり自由な3人である。
「しっとりドレスで歌うコーナーでございます。毎年、ツアーでタイトルにひっかけて新曲をお届けしているんですけど、この<023>ツアーでも新曲を作ってまいりました。今回の新曲はひとつ前のシングル「BAD PARADISE」を作詞、作曲、プロデュースしてくださったNONA REEVESの西寺郷太さんに新たに書き下ろして頂き、星屑としても新境地開拓といった感じで、メンバーそれぞれ非常にお気に召している曲にございます。ならばひとつ、是非とも皆さんにも好きになって頂ければ、この上ないかなと」──ミッツ・マングローブ
そう前置きして暗くなったステージで届けられたのはミッツ、和恵、メイリーの艶のある声が際立つサウンド。ミドルテンポながらもダンサブルで、独特のグルーヴで聴く者を湿潤な世界へトリップさせる新曲「蜃気楼」だった。リズムと一体化した切ない歌詞が刺さる。続いてピアノの音色が響き、星屑スキャットの面々が子どもの頃から並々ならぬ思い入れを抱き続けてきたという竹内まりやの1987年のヒット曲「駅」をしっとりと。
MCでは客席とのやり取りに即興で応えるリクエストコーナーも。「青い珊瑚礁!」という声に松田聖子の大ヒット曲をハンドクラップの中、その場でキーを合わせてアカペラで歌ったり、「氷雨!」の声にミッツに振られてメイリーがサビを歌い上げたりと大盛り上がり。
その後、メイリーが水を飲みに捌けたため、ミッツが和恵は大丈夫かと聞くと「大丈夫よ。干からびてるようで水分量高いから」と笑わせ、ゴールデン街の話から「みなさんもよくご存知の曲を」と「新宿シャンソン」を歌い上げた。1stアルバム『化粧室』収録(2018年)のこの曲は「お姉さんポルカ」と同じくリリー・フランキーがプロデュースを手掛けたバラードで、MVに蒼井優が出演したことでも話題になった。’80年代のポップで踊れる星屑スキャットとは違うドラマと哀愁があり、3人の歌がじっくり味わえる。
再び、インタールードを挟み、スパンコールをあしらったお揃いのワンピース姿で3人がステージに揃い、披露されたのはミッツ作詞、作曲よるフレンチポップとユーロビートが融合したようなチャーミングな「半蔵門シェリ」。サビのふわっとしたハーモニーがクセになるナンバーだ。
コンサート後半戦はミッツが「今回のツアーで、これは歌いたい。何ならしれっと「私たちのオリジナルです」って顔をして、今後も歌い続けたいぐらい素敵な曲に出逢ったんです」と話し、1983年にデビューしたTHE GOOD-BYE(野村義男・曾我泰久が在籍していたバンド)の名前を出すと、客席の嬉しそうなリアクションに「歳がバレるわよ」と突っ込みなら、スペーシーでスターリーなラブソング「浪漫幻夢(Romantic Game)」のカバーを初披露。“君と星達のShowの始まり”という歌詞も確かに星屑のショーにハマっている。
続いてこれも初披露となった松任谷由美の「真珠のピアス」のカバーではシティポップの世界観を90年代初頭のUKで大流行したグラウンドビート風にアレンジし、何層にも重なったバッキングコーラスの醍醐味を体現。さらには、2021年の全国ツアーで歌われたオリジナル「la distanza」はラテンテイストが盛り込まれたマイナー調のナンバー。めくるめく華やかなパフォーマンスに大きな声援と拍手が送られた。
「la distanza」(意味はディスタンス)はコロナ禍で軒並みコンサートが中止になっていく中、自身のモヤモヤやイライラを形にしておこうと思い立ち作った曲だとミッツが振り返った。
「この曲をいつかみなさんが声を出せて隣合って座っている前で歌える日が来ればいいなと思ってましたけど、とはいえ3年間、長かったね。お疲れ様でした。まだまだ終わったわけじゃないですから、各々の付き合い方、向き合い方で取り戻した日常、そしてこれを機に生まれた新たな日常を、今度こそ手放さないように、お互いに生きて生かされて進めたらね」──ミッツ・マングローブ
「そうですね。できることしかできません」──メイリー・ムー
「また、みなさんの前で歌えて踊れることが、とにかく嬉しく尊い限りです」──ミッツ・マングローブ
そんなメッセージを伝え、ギラギラな照明の中、キャッチーなダンスチューンで星屑スキャットの2ndシングル「コスメティック・サイレン」を披露し、本編ラストはディスコティックな「REMEMBER THE NIGHT」。外の雨さえも色とりどりの光る粒に変えてしまいそうなショーが終了した。
アフリカンテイストのダンストラックが場内に響いたアンコールではツアーTシャツに短パン(和恵はスリムパンツ)に着替えた3人が階段を使ってひとりひとりポージング。ループするリズムが心地いい「BAD PARADISE」で年齢を超越したキュートなパフォーマンスで場内を悩殺した。
3人のわちゃわちゃトークが楽しいツアーグッズ紹介を挟み、ミッツが最後にメッセージを届けた。
「こんなお仕着せがましいことは言いたくないんですけど、楽しんでいただけていますか? こんな感じで私たちは18年やってきましたけど、この先も体力とか友情が続く限り、やっていくと思いますので、今後ともご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます」──ミッツ・マングローブ
「私たちが愛してやまないジャニーズソングをもう1曲」と星屑スキャットのコンサートではお馴染みの少年隊の1987年のカバー曲「君だけに」が届けられ、最後の曲は客席が手を振る中、届けられた7thシングル「Absolutely Adorable」。開放感たっぷりのハッピーエンディングだ。
ツアーファイナルは6月17日の愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール。魔法をかけるキラめくショーは続いていく。
取材・文◎山本弘子
<星屑スキャット TOUR 2023『023』>
open 17:00 / start 18:00
【東京】5月18日(木) EX THEATER ROPPONGI
open 18:00 / start 19:00
【東京】5月19日(金)EX THEATER ROPPONGI
open 18:00 / start 19:00
【福岡】5月27日(土)ももちパレス 大ホール
open 17:00 / start 18:00
【愛知】6月17日(土)日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
open 16:00 / start 17:00
■チケット情報(全国共通)
指定席 ¥8,800(税込)
※東京公演のみ、入場時別途ドリンク代
※未就学児童入場不可
※お一人様8枚まで
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