【対談後編】龍ヶ崎リン × 水槽、新曲「ギヴミー」サウンドを語る「音でぶん殴り続けるなかで見せる一瞬の人間味」

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VTuber事務所ななしいんく所属の⿓ヶ崎リンが6月4日、3rdデジタルシングル「ギヴミー」をリリースした。同楽曲はシンガーとしてもソングライターとしても知られる⽔槽に楽曲提供を依頼して完成したもの。前2作までのシティポップ調とは異なり、サウンドもリリックもアグレッシヴなナンバーに仕上がった。冒頭のスラップベースからして扇動的だ。アタッキーでダークなトラックが、⽇常の鬱憤に対する⽪⾁を織り交ぜたリリックを、より刺激的に響かせる。

⿓ヶ崎リンと水槽の対談前編では、両者の接点はもとより、お互いの印象や楽曲に込められたテーマについて語り合っていただいた。続く対談後編では、ボーカルレコーディングやそのディレクション、トラック制作の方法論などミュージシャンシップが解き明かされる。「ぜひまたご一緒したい」とは水槽の言葉だが、その実現がますます楽しみなトークセッションとなった。


▲3rdデジタルシングル「ギヴミー」

   ◆   ◆   ◆

■こんなふうに歌ってくれたら
■リンちゃんのオタクは喜ぶだろうなと


──「ギヴミー」はメロディとラップとセリフが巧みに切り替わるボーカルワークも特徴的ですが、龍ヶ崎さんはこの曲とどう向き合いましたか?

龍ヶ崎リン:デモと歌詞をいただいてすぐに、“水槽さんのフィルターを通ったこのリリックは、自分の伝えたどの言葉なのか”を一つひとつ紐解いて、歌詞カードに全部書き込むところから始めました。そこから“どういうニュアンスで歌ったら、自分の気持ちが水槽さんのフィルターを通して聴く人に伝わるのかな”と考えて。レコーディングの日まで、歌詞カードを見ながら毎日歌い込んでいたんですけど…ふとしたときに感情が入りすぎたのか、自宅で泣き崩れてしまって(笑)。

──インタビュー前編で水槽さんがおっしゃっていたように、当時の気持ちがフラッシュバックしたのかもしれませんね。

龍ヶ崎リン:歌いながら涙が止まらなくなっちゃって。それぐらい感情が入りきった状態でレコーディングに臨みました。水槽さんがディレクションをしてくださったんですけど、家で歌詞カードに書き込んだことだけではなく、自分の引き出しにないニュアンスをたくさんレクチャーしていただけたんですね。水槽さんの言葉で仕上がった曲だからこそ、歌い方にも水槽さんのエッセンスが入ったことで、いい着地ができたんだと思います。



▲龍ヶ崎リン

水槽:満足に歌うことすら難しい曲なのに、リンちゃんはあれだけ感情を込めながら表現できていて。ものすごく練習していただいたんだろうなと思いました。

龍ヶ崎リン:ありがとうございます。

水槽:リンちゃんの歌い方から、水槽の曲をよく聴いてくださっていることが伝わってくるというか。歌声に水槽のニュアンスが出ていたんですよ。それがうれしくもあり、すごいと思いました。こんなに曲を大切にして、自分なりに噛み砕いて向き合ってくださるなんて、ソングライター冥利に尽きるなと思いましたね。

龍ヶ崎リン:“これで満足ですか”という言葉が歌詞に2回出てくるんですけど、1回目と2回目のニュアンスを変えるアイデアをいただけたのが、すごく印象に残っているんです。

水槽:あ、「どっちかを感情的に、どっちかを諦めた感じで」って言ったかな。

龍ヶ崎リン:そうですそうです。「1回目を諦めた感じで、2回目を攻撃的に全力でカッコよく」と言っていただきました。

水槽:リンちゃんがこんなふうに歌ってくれたら、リンちゃんのオタクは喜ぶだろうなと。

龍ヶ崎リン:あははは。水槽さん、それディレクションのときにすごく言ってくださったんですよ。

水槽:やっぱり自分自身がオタク気質なんで(笑)。プロデュースをするには、まずその人のファンになる必要があると思っているんです。いろんなリンちゃんの動画を観て、曲を聴いて。2回目の“これで満足ですか”のところで、ガラの悪いリンちゃんが出てきたらファンが喜ぶと思ったんですよね。だから“龍ヶ崎リンとしてのパフォーマンス”という観点を第一にディレクションしていきました。

龍ヶ崎リン:あと水槽さん、ものすごく褒め上手なんですよ。


▲水槽

──そうなんですね。クールなイメージがありますが。

龍ヶ崎リン:ボーカリストのモチベーションが上がる言葉ばっかり掛けてくださって。やっぱりレコーディングしている側って、ディレクションしてくださる人の言葉で一喜一憂するので。そのメンタル調整の部分ですごく助けていただきました。いい気持ちでレコーディングと向き合えましたね。

水槽:自分で曲作りする前の、ディレクションを受ける側だった経験がすごく出たんだと思います。まず最初に良かったところを伝えて、その後に直してほしいところを伝えたほうがパフォーマンスが上がる。そういうことを、身をもって実感しているんですよね。あとシンプルに、リンちゃんのボーカルにテンションが上がってました(笑)。

龍ヶ崎リン:めちゃくちゃうれしい。

水槽:ボーカルレコーディングはずっと立ちっぱなしだし、結構モチベーションに左右されるし、集中力が切れちゃうといいテイクが取れなくなっちゃうんですよね。自分にそういう経験があるので、そこはすごく気をつけました。

──サウンドは生楽器と打ち込みのハイブリッドで、水槽さんの得意技的なアプローチではないかと思いました。

水槽:いつも自分のミックスを手掛けてくださっている土岐彩香さんにミックスをしていただいたんですけど、この曲って歌詞を見ずに聴いて言葉が入ってくるかというと、そうじゃないと思うんです。だからこそ聴いている人を音で殴るサウンドを作ってくれる土岐さんの力を借りて。まず音でぶん殴りたいと思っていましたね。息つく間もなく殴り続けるなかで、一瞬だけBPMが落ちてピアノだけになる部分がある。そこで人間味を見せるリリックが入ってくるとか…結構こだわっています。

龍ヶ崎リン:やっぱり水槽さんにお願いするからには、水槽さんの特色を全面に出していただきたかったんです。イントロのベースをはじめ、シャッターを切るような音や通電音を入れるセンスはすごく水槽さんらしいなと思うし、水槽さんのことが好きな自分にとってはガンガン色を出していただけて、すごくうれしかったです。

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